著者
徐 可樹 竹上 勉
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.99-105, 1996-06-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Suramin, a polysulfonated naphthylurea, has been used for the treatment of trypanosomias and onchocerciasis, and is a potent inhibitor of nucleic acid polymerase including reverse transcriptase and DNA polymerase. This drug is used to examine an antiviral activity in the case of Japanese encephalitis virus (JEV) infection. Japanese encephalitis occurs in endemic and epidemic form over a wide area of Asia, at least tens of thousands of cases occur annually in East Asia. Although the vaccine against JEV is widely used, we have no antiviral drugs against JEV replication. Here we describe an antiviral activity of suramin on JEV replication in the cultured cells. In the presence of 50 μg/ml suramin, virus yields in human neuroblastoma cell line, IMR-32, reduced to 0.1% of control level. JEV growth in human hepatoma cell line, HepG2, was also inhibited, but inhibitory effect of suramin was lower than in IMR-32. The difference of inhibitory effects between host cells suggests that some host factors were involved in the process of inhibition of JEV growth. By Western blot analysis, it was clarified that expressions of JEV proteins, NS3 and E were markedly reduced by the treatment of suramin at 50-200 μg/ml. Especially the expression of E protein seems to be sensitive against suramin treatment. On the other hand, JEV-RNA level in the cells treated with suramin was not so different from control level, and in vitro JEV-RNA synthesis was also not inhibited by the addition of suramin. These results suggest that suramin inhibits virus replication through the influence to viral protein production, not to viral RNA synthesis.
著者
宮田 彬
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.161-200, 1975-09-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
199
被引用文献数
3 7

最近30年間に発表された原虫の凍結保存に関する論文は, 200篇を越えている。そこでこの論文では, それらのうち主な論文を紹介するとともに凍結保存が可能な原虫類の保存方法や保存期間などを総括し, さらに今後の問題点を論じた。また今までに十分な検討を加えずに用いられていた凍害保護剤について, 特にグリセリンとDMSOの用い方, 平衡時間などについて, 著者の研究を中心に紹介した。原虫類の最適保存法及びこの論文の論旨は次の通りである。1) 原虫は, 適当な保護剤を含む溶液あるいは培地中に攪伴し, 試験管またはアンプルに分注する。2) 保護剤の濃度は, グリセリンは10%前後, DMSOは, 7.5%前後が適当である。グリセリンの場合は, 比較的高い温度 (例えば37C) で30-60分平衡させる。高温に耐えない原虫は, 25C前後で60-90分平衡させる。DMSOは, 低い温度 (例えばOC) で加え, 平衡時間をおかず直ちに凍結する。3) 凍結は2段階を用いる。すなわち, -30C前後のフリーザー中で約90分予備凍結し (この時冷却率は約1C, 1分), ついで保存温度へ移す。4) 保存温度としては, 液体窒素のような超低温が好ましいが, -75Cでも数カ月程度は保存可能である。5) 凍結材料は, 37~40Cの恒温槽中で急速融解し, 融解後は, すみやかに動物あるいは培地へ接種する。6) 原虫の種類によっては, もっと簡単に保存できる。原虫ごとに予備試験を行い, 目的の保存温度に数日保存して高い生存率の得られる方法を採用するとよい。7) 今後の問題点としては, 保存原虫の性質 (薬剤耐性, 抗原性, 感染性など) の長期保存における安定性を検討することと純低温生物学的な立場から超低温下における細胞の生死のメカニズムを解明することである。前者については, 多くの研究者が凍結保存による実験株の性質の変化は認められないと指摘している。8) 終りに数多くの実験株を保存し, 研究者に提供する低温保存センターの設置の必要性を提案した。
著者
尾辻 義人 前田 忠 中島 哲 入江 康文 村山 忠裕 今村 一英 福岡 義雄
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.59-65, 1974-06-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
5

フィラリア症は, フィラリア性熱発作, リンパ管炎, 乳び尿, 陰嚢水腫, 象皮病等の多彩な症状を呈する疾患である。鹿児島県はバンクロフト糸状虫症の濃厚な流行地であり, 特に奄美大島地区は高度な浸淫がみられ, 1962年のフィラリア検診の結果でもMf陽性率は11.8%で, かつては多くの典型的な象皮病患者がかなりみられた。然しながら最近では典型的な象皮病をみる機会は減少しつつあり, 著者が行った鹿児島坊津町清原地区における, 1954年から1965年にいたる11年間のフィラリア有症者の追跡調査の結果をみると, 陰嚢水腫3例, 乳び尿7例の新発生をみているが, 象皮病の新発生は1例もなかった。すなわち乳び尿等は新発生があるが象皮病患者は半減していた。最近我々は, 巨大な陰茎, 陰嚢象皮病患者を経験したので報告する。症例は鹿児島県大島郡徳之島在住の44才の男性である。生来の白痴でIQは測定不能であった。生後13才迄は蚊の多い山間の家に住んでいた。14才の頃から月に1-2回熱発作があり, 30才位迄続いた。17才頃から陰茎が異常に大きくなりだして34才の時には膝位の長さになった。34才の時保健所の検診でミクロフィラリア陽性といわれ治療を受けた事がある。当科初診時, 陰茎長は恥骨上縁から58cm, 陰嚢周は76.8cm, 冠状溝周43.5cm, 亀願周50.5cmであった。陰嚢, 陰茎を合わせた重量は18.5kg (患者体重52.6kg) もあった。外尿道口は判然としなかったが, 亀頭先端に不規則にみられる溝から尿が滲みだしていた。各種の検査を行ったがEPT皮内反応が陽性であり%赤沈値中等度促進, 軽度の貧血, 尿蛋白 (+), CRP (+) の他には特に異常所見はみられなかった。
著者
安里 龍二 長谷川 英男 池城 毅
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.239-246, 1984-12-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
24

沖縄県に収容されたベトナム難民662名について消化管寄生蠕虫類の調査を行い, 444名 (67.1%) に寄生を認めた。回虫が最も高率 (56.3%) で, 次いで鞭虫 (21.8%), 鉤虫 (18.4%), 糞線虫 (2.3%) の順であり, 他に小形条虫 (3名), 無鉤条虫, 肥大吸虫, 肝吸虫 (各1名) がみられた。年齢別ではほとんどの年齢層で50%以上の高い保有率を示し, 性別では男子の保有率が高かった。これら蠕虫類の寄生状況はベトナム国内での都市部のものに類似していた。消化管寄生原虫類の調査は274名について行い, 50名 (18.2%) に原虫嚢子を認めた!内訳はランブル鞭毛虫 (3.6%), 大腸アメーバ (4.7%), 小形アメーバ (11.3%) で, 赤痢アメーバは検出されなかつた。住血性寄生虫の検査は311名について行ったが, マラリア原虫, ミクロフィラリアは証明されなかった。ベトナム難民の寄生虫が難民自身並びに収容施設周辺の住民に与える影響, 及び対策等について論じた。
著者
尾辻 義人 前田 忠 中島 哲 入江 康文 村山 忠裕 今村 一英 福岡 義雄
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.59-65, 1974

フィラリア症は, フィラリア性熱発作, リンパ管炎, 乳び尿, 陰嚢水腫, 象皮病等の多彩な症状を呈する疾患である。鹿児島県はバンクロフト糸状虫症の濃厚な流行地であり, 特に奄美大島地区は高度な浸淫がみられ, 1962年のフィラリア検診の結果でもMf陽性率は11.8%で, かつては多くの典型的な象皮病患者がかなりみられた。然しながら最近では典型的な象皮病をみる機会は減少しつつあり, 著者が行った鹿児島坊津町清原地区における, 1954年から1965年にいたる11年間のフィラリア有症者の追跡調査の結果をみると, 陰嚢水腫3例, 乳び尿7例の新発生をみているが, 象皮病の新発生は1例もなかった。すなわち乳び尿等は新発生があるが象皮病患者は半減していた。最近我々は, 巨大な陰茎, 陰嚢象皮病患者を経験したので報告する。症例は鹿児島県大島郡徳之島在住の44才の男性である。生来の白痴でIQは測定不能であった。生後13才迄は蚊の多い山間の家に住んでいた。14才の頃から月に1-2回熱発作があり, 30才位迄続いた。17才頃から陰茎が異常に大きくなりだして34才の時には膝位の長さになった。34才の時保健所の検診でミクロフィラリア陽性といわれ治療を受けた事がある。当科初診時, 陰茎長は恥骨上縁から58cm, 陰嚢周は76.8cm, 冠状溝周43.5cm, 亀願周50.5cmであった。陰嚢, 陰茎を合わせた重量は18.5kg (患者体重52.6kg) もあった。外尿道口は判然としなかったが, 亀頭先端に不規則にみられる溝から尿が滲みだしていた。各種の検査を行ったがEPT皮内反応が陽性であり%赤沈値中等度促進, 軽度の貧血, 尿蛋白 (+), CRP (+) の他には特に異常所見はみられなかった。
著者
伊藤 洋一 板垣 博 テフェラ ウオンデ
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-5, 1973
被引用文献数
1

エチオピア産<I>Biomphalaria</I>属の2種の貝にエチオピア人の患者から分離したマンソン住血吸虫ミラシジウムを実験的に感染させ, その感受性を比較した。その結果, 各地から採取した<I>B. Pfeifferi rueppellii</I>では67~100%の感染率が得られたのに比し, <I>B. sudanica</I>ではわずかに9%の感染率しか得られなかった。また両種のエチオピアにおける分布状態を調査したところ, <I>B. Pfezlfferi rueppellii</I>はエチオピア全土に亘り分布しているのに比し, <I>B. sudanica</I>は南部湖水地区の一部の湖水にしかその棲息が認められなかった。<BR>これらの結果より, エチオピアにおけるマンソン住血吸虫の主要な中間宿主は<I>B. Pfezifferi rueppellii</I>であると考えられる。
著者
堀田 進
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.369-381, 2000-12-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
46
被引用文献数
3 3

This series of papers will present an overview on dengue fever and dengue viruses. i.e., history, symptomatology, pathology, virus isolation, basic properties of viruses, pathogenesis, prevention, epidemiology, etc.The present issue consists of two chapters. The first chapter contains such sections as : historical aspects, relatedness to other arboviruses, nomenclature and classification.The second chapter describes big dengue epidemics which occurred in Japan during 1942-1945. Port cities such as Nagasaki and Kobe were heavily infected. The first onset was among seamen of cargo boats which were connecting those port cities and Southern areas such as Philippine Islands, Malaysia, Indonesia, New Guinea, etc. About two hundred thousand typical cases were reported and the whole number of patients including abortive and unrecorded ones were probably much greater. This was the first and only outbreak of dengue fever in Japanese main islands and also one of the grearest dengue epidemics ever recorded in the temperate regions.Chapters describing the other items will follow in later issues of this Journal.
著者
塚本 増久
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.215-228, 1989-09-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

1986年度文部省科学研究費による海外調査でマレーシアの蚊相を調べた際, ボルネオ島キナバル山の高所に自生する, 食虫植物ウツボカズラの壺から数種の蚊幼虫を採集する機会があったので, その系統分類学的研究を行った。それらのうちのクシヒゲカの1種は1929年に採集され, Culex shebbeareiとして記録されていたものであったが, これを精査したところ東ヒマラヤ原産のこの学名の種とは全く異なり, 新種であることが判明したので, Culex (Culiciomyia) raiahオウサマクシヒゲカ (新称) と命名して詳しい記載を与えた。また, 同種のウツボカズラから発生するオオカも未記載の新種であることが確認されたので, これもToxorhynchites (Toxorhynchites) rajahオウサマオオカ (新称) と命名し, 成虫, 蛹, 幼虫などの形態について記載を行った。学名および和名は, これらの蚊が採集された巨大なウツボカズラNopenthes rajahの種小名 (王様の意) に基づくものである。なお, 同じ水域にはCulex (Lophoceraomyia) jenseni, Uranotaenin (Pseudoficalbia) moultoni, Tripteroides (Rachionotomyia) sp. No.2などの蚊幼虫も発生していた。
著者
奥村 悦之 中嶋 敏宏 秦 光孝 MYPA EDY L.
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.23-30, 1990
被引用文献数
2

1987年1月, フィリピン・ネグロス島, バコロド市における住民検診時, 下痢を訴えた34名の糞便を直腸スワブにて採取し, 起因菌を検索し, 2例 (5.9%) に<I>Vibrio furnissii</I>が分離同定された。また一方1987年6月, 大阪市において, 法事の際の折詰弁当, 特に赤貝, サザエ, マグロ刺身, 海老の天ぷら, 鯖寿司などの魚介類を食べた同胞3児が下痢を訴え, それぞれの糞便を検索したところ, 同様に<I>Vibrio furnissii</I>を検出し, これら3例は本菌による食中毒症例と診断された。主要症状は下痢, 腹痛, 悪心嘔吐, 発熱の4主徴が必発した。潜伏期間は10-14時間, また下痢持続時間は12-30時間であった℃3症例のうち1例はVibrio pamkaemolyticusとの混合感染例であり, 当然のことながら脱水症などを合併して重篤となった。これら3症例の<I>Vibrio furnis-sii</I>感染による食中毒症例は本邦最初の報告例と思われる。<BR>また<I>Vibrio furnissii</I>は<I>Vibrio parakaemolyticus</I>や<I>Vibrio fluvialis</I>と同様, 病原性を有する株が, 主として魚介類を介して感染するとされており, 食中毒起因菌として今後も充分注目されるべきであろう。
著者
影井 昇 PURBA YUNITA 坂本 修
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.165-168, 1992
被引用文献数
5

本来は猿やその他の霊長類の腸管内に寄生する条虫, <I>Bertiella studeri</I> (AnoPlocephalidae) の北スマトラにおける人体感染の2症例を見出し, インドネシアにおける第11例目 (3歳, 女性) と第12例目 (成人男性) として報告した。<BR>共に詳細な病歴は不明であったが, 排出虫体の形態によって<I>B.studeri</I>と同定された。現在, 世界的には総計47例の本虫感染例報告のある中で, インドネシアにおける本虫感染例が, 極めて目立って多い事が解った。<BR>本虫の感染は自由生活性のダニ類の経口摂取にある所から, 人体への感染は偶然の機会に行われ, その感染予防の為には, 終宿主となる猿類を椰子の実取り等の労働に使用したり, ペットとして飼育する際に十分な注意を行う事が, 最も重要と考えられた。
著者
森重 和久 安治 敏樹 木村 Julieta Y. 石井 明 綿矢 有佑 松田 彰 上田 亨
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.317-325, 1988-12-15 (Released:2011-05-20)
参考文献数
17

L.donovani promastigote 2S-15M株を感染させたBALB/cマウスに対し, 3'-deoxy-inosineは100mg/kg, 1~2回おき5回, 静脈内投与で約63%の治療効果, c-c-inosineは100mg/kg, 1~2日おき5回静脈内投与で約92%の治療効果が見られた。しかし, c-c-inosineは100mg/kgの量では副作用が見られた。T.gambiense trypomastigoteを感染させたddYマウスに対し, 3'-deoxyinosineは200mg/kg, 腹腔内投与, 感染前日からの治療で, 少し治療効果を示したが, 有効と言えるまでには至らなかった。またc-c-inosine 200 mg/kg, 腹腔内投与は無効であった。
著者
野島 尚武 片峰 大助 川島 健治郎 中島 康雄 今井 淳一 坂本 信 嶋田 雅暁 宮原 道明
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.181-193, 1978
被引用文献数
1

ケニア国タベタ地区での淡水産貝類は以下の8属11種である。即ち<I>Btomphalarta pfeifferi</I> (Krauss), <I>B.sudanica</I> (Martens), <I>Bulinus globosus</I> (Morelet), <I>B.tropicus</I> (Krauss), <I>B.forskalii</I> (Ehrenberg), 以上5種は住血吸虫との関係種, <I>Lymnea natalensis</I> (Krauss), <I>Ceratophallus natalensis</I> (Krauss), <I>Segmentorbis angustus</I> (Jickeli), <I>Gyraulus costulatus</I> (Krauss), <I>Bellamya unicolor</I> (Olivier) <I>Melanoides tuberculata</I> (M&uuml;ller) である。<BR><I>B.pfeifferi</I>はLumi川と灌漑用溝に, <I>B.sudanica</I>はJipe湖畔に, それぞれの多数の棲息をみたが, マンソン住血吸虫の自然感染は<I>B.pfeifferi</I>のみに見られた。<I>B.globosus</I>は灌漑用溝のみに多数棲息し, <I>B.tropicus</I>は灌漑用溝とJipe湖畔に, <I>B.forskalii</I>は少数ながらあらゆる水系に見出された。ビルハルツ住血吸虫の自然感染は<I>B.globosus</I>のみに見出され, その貝の棲息数が多いと約10%の高い感染率が常時認められた。<BR>一方これらの実験感染では, <I>B.pfeifferi</I>には3隻のミラシジウムで, <I>B.secdanica</I>には5隻のそれで100%感染が成立し, 両種ともマンソン住血吸虫の好適な中間宿主であることがわかった。<BR><I>B.globosus</I>は1.5~8.5mmの若い貝は5隻のミラシジウムで100%感染が成立し, 11~12mmの成貝では20隻以上のミラシジウムが必要である。ビルハルツ住血吸虫の好適な中間宿主であることがわかった。<BR>以上からタベタ地区でのマンソン住血吸虫症, ビルハルツ住血吸虫症の媒介中間宿主として, 前者には<I>B.pfeifferi</I>と<I>B.sudanica</I>が, 後者には<I>B.globosus</I>が主な役割を演じていることが推測される。
著者
高岡 宏行 HADI UPIK KESUMAWATI
出版者
Japanese Society of Tropical Medicine
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.357-370, 1991
被引用文献数
2 4

1990年12月から1991年1月にかけて, ジャワ島において吸血性昆虫ブユの採集調査を行い, 得られた標本を検討した結果, 数種の新種が含まれていることが分かった。本論文では, ブユ属アシマダラブユ亜属に属する2新種の記載を行った。1種は, <I>tuberosum</I>グループに属し, 蛹の呼吸管基部近くの外皮に小孔を有し, 呼吸管糸が6本とも極めて短いなど, 他の近似種に見られない特徴を有する。本グループに属するブユ種は, これまでにインドネシアからは報告がなく, 本種が初めての記録である。他の1種は, これまで<I>Simulium iridescens</I>の変種とされていたブユであるが, 蛹の呼吸管糸が袋状に大きくなっているなど, 幾つかの形態的な違いがあることから, <I>S.iridescens</I>から独立させ, 新種名を与えて記載を行った。