著者
中川 威 安元 佐織
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.270-277, 2019-10-20 (Released:2020-10-23)
参考文献数
34
被引用文献数
2

社会的に構成された加齢に対するステレオタイプは,高齢者に内在化され,個人の行動や経験に影響する傾向がある.本研究では,19年間の縦断データを用いて,加齢に対してポジティブなステレオタイプをもつことが高齢者において長寿を予測するか検討した.加齢ステレオタイプがポジティブな者は,ポジティブではない者に比べて,4年間長生きだったことが示された.年齢,性別,教育歴,日常生活基本動作,疾患数,配偶者有無,同居子有無,主観的健康感を統制しても,加齢ステレオタイプと生存に有意な関連が認められた.ポジティブな加齢ステレオタイプが高齢者において長寿を予測するという仮説を支持する結果が得られた.今後,加齢ステレオタイプと生存の関連の背景にあるメカニズムを検討すべきである.
著者
中川 威 安元 佐織 樺山 舞 松田 謙一 権藤 恭之 神出 計 池邉 一典
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PR-013, 2021 (Released:2022-03-30)

疲労感は加齢の兆候として知られる。睡眠不足は疲労感を生じさせるが,過眠と疲労感の関連は明らかではない。そこで本研究では,地域在住高齢者を対象に日誌調査を行い,今夜の睡眠と翌日の疲労感の関連を検討した。ベースラインで,年齢,性別,居住形態,精神的健康,身体的健康を尋ねた。7日間にわたり,起床後に,就寝時刻,起床時刻,睡眠の質を,就寝前に,1日に経験した疲労感,ポジティブ感情,ネガティブ感情を尋ねた。分析対象者は1日以上回答した58名(年齢82-86歳;女性37.9 %)である。調査参加者は,朝に平均6.8回(SD=1.0),晩に平均6.9回(SD=0.7)回答した。睡眠時間は平均8.0時間(SD=1.0)で,2.0時間少ない日も2.4時間多い日もあった。マルチレベルモデルを推定した結果,個人間レベルでは,睡眠時間が多い人と少ない人では,疲労感に差は認められなかった。個人内レベルでは,睡眠時間の二乗項と疲労感の関連が統計的に有意であり,睡眠時間が少ない日と多い日では,平均的な日に比べ,疲労感が高い傾向が示された。高齢者では,睡眠不足に加えて過眠もまた疲労感を生じさせることが示唆された。
著者
崔 煌 権藤 恭之 増井 幸恵 中川 威 安元 佐織 小野口 航 池邉 一典 神出 計 樺山 舞 石崎 達郎
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.5-14, 2021-04-20 (Released:2022-04-26)
参考文献数
38

本研究の目的は高齢者の社会参加と主観的幸福感の関連において,ソーシャル・キャピタルがどのような役割を果たしているのかを明らかにすることである.地域在住高齢者のデータ(74〜78歳,N=624)を分析した結果,社会参加と主観的幸福感の関連は認められないが,4種類の社会参加のなか,地縁組織への参加は主観的幸福感と統計的に有意な関連があること,また,ソーシャル・キャピタルへの認識と近所の人の数を介した間接効果があることが確認された.この結果から,社会参加の種類によって主観的幸福感との関連が異なり,地縁組織への参加はソーシャル・キャピタルを介して主観的幸福感に影響を与えることが明らかになった.
著者
中川 威 権藤 恭之 増井 幸恵 石岡 良子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.205-216, 2018-03-01 (Released:2018-03-06)
参考文献数
52
被引用文献数
2 1

加齢につれ,人は感情状態を調整するように動機づけられ,その結果感情状態が良好になるとされる。本研究では,改訂版感情調整尺度を用い,成人期にわたって感情調整が発達するか検証することを目的とした。青年期を対象にした調査1 (153名)と壮年期から高齢期までを対象を対象にした調査2 (518名)の結果,すべての年齢群および青年期以外の各年齢群で改訂版尺度の1因子構造が確認された。青年期では適合度と内的整合性は低かった。また,改訂版尺度は,楽観性,外向性,適応的コーピング,肯定的感情,認知的再評価と正の相関を示した一方,神経症傾向,不適応的コーピング,否定的感情,感情表出抑制との関連は示されず,構成概念関連妥当性が確認された。年齢差を検討した結果,感情調整は高齢期で中年期以前よりも高く,仮説が支持された。今後,感情調整の発達が感情状態を良好にするか検討するため,縦断研究の必要性を議論した。
著者
李 世欽 鈴木 清 中川 威雄
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.552-557, 1988

For further development of the high performance self-lubrication materials being proof against vacuum or high temperature, cast iron fibre composites containing a large amount of graphite were investigated. The cast iron fibre of 20-40 μm in diameter and 1.2 mm in length, which was prepared by chatter-machining a ductile cast iron bar, was mixed with graphite powder and consolidated by compacting in a die, sintering and finally repressing. The optimum conditions for the processing were determined experimentally, and the composite of the almost same mechanical strength as grey iron was made with an addition of 28.8 vol% graphite. In conclusion the fibre metallurgical processing of the high performance self-lubrication composite materials of cast iron and graphite is feasible in the production.
著者
石岡 良子 石崎 達郎 髙橋 龍太郎 権藤 恭之 増井 幸恵 中川 威 田渕 恵 小川 まどか 神出 計 池邉 一典 新井 康通
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.219-229, 2015
被引用文献数
3

This study examined the associations between the complexity of an individual's primary lifetime occupation and his or her late-life memory and reasoning performance, using data from 824 community-dwelling participants aged 69–72 years. The complexity of work with data, people, and things was evaluated based on the Japanese job complexity score. The associations between occupational complexity and participant's memory and reasoning abilities were examined in multiple regression analyses. An association was found between more complex work with people and higher memory performance, as well as between more complex work with data and higher reasoning performance, after having controlled for gender, school records, and education. Further, an interaction effect was observed between gender and complexity of work with data in relation to reasoning performance: work involving a high degree of complexity with data was associated with high reasoning performance in men. These findings suggest the need to consider late-life cognitive functioning within the context of adulthood experiences, specifically those related to occupation and gender.
著者
中川 威雄 鈴木 清 植松 哲太郎 小山 浩幸
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.1399-1405, 1981-11-05
被引用文献数
10

金属短繊維は, 複合材料用基材など種々の用途をもつものと考えられているが, 既存の金属短繊維製造法はいずれも効率が悪く, コストも高い.本論文では, 旋削時に弾性切削工具にびびり振動を積極的に生じさせることにより極細の金属短繊維を製造する, 新しい「びびり振動切削法」を提案する.このびびり振動切削法によれば, 直径10〜250μm, 長さ0.5〜20mmの金属短繊維を, ほとんどすべての金属材料から直接, 安価に, 効率良く製造できる.びびり振動切削法における短繊維の生成機構についても実験により得られた結果をもとにその推定を行った.