著者
橘 省吾 澤田 弘崇 岡崎 隆司 高野 淑識
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.265-278, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
101

Hayabusa2 is the sample return mission to the near-Earth C-type asteroid (162173) 1999 JU3 (2014–2020). Samples from C-type asteroids, which are abundantly present in the asteroid belt and of which reflectance spectra resemble those of carbonaceous chondrites, may well preserve the information covering the entire history of the Solar System; the epoch prior to the birth of the Sun, planetesimals and planet formation including a behavior of volatiles to terrestrial planets. Moreover, asteroidal surface samples record current surface geological processes and the dynamical evolution of small bodies in the Solar System, which are not recorded in meteoritic samples. The Hayabusa2 spacecraft will launch off in 2014, and arrive at the asteroid 1999 JU3 in mid-2018. Investigations by several remote sensing techniques and sample collections at three different locations will be carried out during its 18-month stay. The spacecraft will return to Earth with asteroidal samples in December 2020. In this article, we describe the outline and cosmochemical rationales of the Hayabusa2 mission with its significance in primitive small body exploration missions.
著者
橘 省吾 田近 英一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Japan Geoscience Letters (JGL) は,JpGU発足時に地球惑星科学分野全体に情報を伝達する初めての媒体として創刊された.季刊誌として,これまでに15巻1号まで計55号が発行されている(2019年大会時には15巻2号が発行されている予定である). 対象,手法が多岐にわたる地球惑星科学においては,時に互いの研究の理解が難しいこともあり,分野全体で興味を持たれそうな話題を共有することを目的に,JGLでは毎号最大4本のトピックス記事を掲載してきた.分野や著者の所属機関などのバランスを考慮しながら,編集委員会でトピックスを選定し,15巻1号までに157本の記事を掲載してきた.執筆依頼を快く引き受けてくださり,限られた誌面のなかで,地球惑星科学分野の様々な話題をわかりやすく紹介してくださったすべての著者の皆様に感謝したい. これまでの15年の間に議論はされたものの実現できなかったことのひとつに,執筆いただいたトピックス記事をもとにして,一般向けの書籍を出版することがある.JGL誌面ではひとつの記事は4500文字程度で,図表が2-3枚含まれる.これに解説を加えたり,新たな成果を盛り込んだりしていただき,分量を倍にすれば,1万字となり,4-5年分の記事で新書一冊程度にはなる.地球惑星科学分野の研究最前線を一般の方に楽しんでもらう書籍として出版できれば,JpGUの広報普及活動としての新たな柱となるのではないかと考える. 国際化のために,英語版ニュースレターをつくってはどうかなどの意見もあるかもしれない.しかし,編集の現場は人手が足りず,現状では手が回らない.地球惑星科学全体をできるだけ広くフラットに見渡す意識で,編集作業に加わっていただける方がおられれば大変有難い.とはいえ,大学や研究機関が現在置かれている状況や,現在のJpGUの規模や今後の国際戦略を考えると,研究者だけで実現できることには限界がある.大学では昨今URAを導入し,大学マネジメントと研究者を繋ぐ活動の強化を進めているが,そのような仕組みをJpGUでも取り入れられないだろうか.地球惑星科学という研究コミュニティを代表するJpGUだからこそ,JGLをひとつの軸とした広報普及活動を発展させ,コミュニティ内の共通理解をさらに進め,社会とのつながりを強固にするために,そのような人材活用も考えるべきではないだろうか. JGLの15年は,我が国における地球惑星科学分野全体をまとめるコミュニティの形成と発展の15年でもある.JGLは地球惑星科学コミュニティ全体をまとめることに対し,ある程度の貢献をしてきたと編集委員会では考えているが,JpGUの財政状況などを考慮し,今年からJGLの配付は希望する会員限定となっている.JGLではこれまでアンケート調査など読者の皆様からのフィードバックを受ける機会を設けてこなかったが,本講演の場ではぜひJGLのこれまでや今後のあり方について,参加者の皆様からのご意見を頂戴したい.
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
倉本 圭 川勝 康弘 藤本 正樹 玄田 英典 平田 成 今村 剛 亀田 真吾 松本 晃治 宮本 英昭 諸田 智克 長岡 央 中川 広務 中村 智樹 小川 和律 大嶽 久志 尾崎 正伸 佐々木 晶 千秋 博紀 橘 省吾 寺田 直樹 臼井 寛裕 和田 浩二 渡邊 誠一郎 MMX study team
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.207-215, 2018-09-25 (Released:2018-12-21)

火星衛星Phobosからのサンプルリターンに挑む火星衛星探査計画 (Martian Moons eXploration: MMX) は,現在,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) プリプロジェクトとして,2024年の打ち上げと5年の往還期間を設定し,精力的な検討・初期開発が進められている.MMXは,サンプル分析,Deimosを加えた火星衛星の近接観測,そして火星大気および火星圏のモニタリング観測を組み合わせることにより,惑星に寄りそう衛星という切り口と視座から,太陽系における大気と水を湛えたハビタブル惑星の形成と進化の解明に迫ろうとしている.
著者
橘 省吾 はやぶさ2サンプラーチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.261-268, 2013-12-25

「はやぶさ2」計画では,地上での汚染や大気圏突入によるサンプリングバイアスのないC型小惑星試料を地質情報とともに複数地点から採取し,地球にもちかえることをめざす.リターンサンプル(<5mm)の詳細分析と,リモートセンシング機器,小型ランダーで得る天体スケール(km)から表層粒子スケール(cm-mm)での構造・物質・熱といった現在の情報をリンクさせ,対象小惑星(1999 JU_3)そのものの形成と現在までの進化を理解するだけでなく,太陽系の誕生から最初期の物質進化,そして,地球の海や生命の材料となる揮発性元素の最終進化の場としての小惑星の役割を明らかにする.
著者
橘 省吾
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.189-194, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
16

Hayabusa2 explored a near-Earth C-type asteroid (162173) Ryugu for 17 months (June 2018–November 2019) including two landing operations for sample collection. Ryugu has a top shape with an equatorial ridge, and its bulk density of 1.19±0.03 g cm-3 suggests that Ryugu is a rubble-pile body with a large macro-porosity of ∼50–60%. The surface has a very low geometric albedo (∼0.02), darker than most of meteorite samples, and shows a weak but ubiquitous 2.72-µm absorption feature of hydrous minerals. The surface samples will be delivered to the Earth at the end of 2020. Detailed analysis of Ryugu samples will reveal the history of Ryugu and the Solar System from the beginning to the present.
著者
藤谷 渉 古川 善博 菅原 春菜 馬上 謙一 Nancy L. Chabot 小池 みずほ 三浦 弥生 Frederic Moynier Sara S. Russell 橘 省吾 高野 淑識 臼井 寛裕 Michael E. Zolensky
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2020年度日本地球化学会第67回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.88, 2020 (Released:2021-01-29)

火星衛星探査計画(MMX)は火星衛星フォボスからのサンプルリターン計画であり、2024年に探査機打上げを予定している。本計画では、コアリングおよび空気圧サンプリング機構により表層レゴリス試料を10 g以上回収することを目標としている。試料分析ワーキングチーム(SAWT)は現在、回収試料の分析プロトコルを作成中である。まず、試料の岩石鉱物学的観察、全岩化学組成および同位体組成から、フォボス材料物質の起源に関する情報を得る。フォボス表面で起こるプロセスは、希ガスの同位体比や試料表面の宇宙風化組織の詳細観察によって明らかになる。さらに、放射性核種による年代測定は、フォボス物質の変成作用など重要なイベントに時間的制約を与える。また、フォボスレゴリスには小天体衝突によって火星から放出された物質が少量含まれると予想されている。フォボス表面に存在するであろう火星物質は極めて貴重な試料であり、そうした物質をキュレーションの段階において発見するための手順・方法についても議論を進めている。
著者
橘 省吾
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.38, 2016

太陽系は今から 45 億 6700 万年前に誕生 した.太陽系のもととなった元素は,ビッ グバンで誕生した水素,ヘリウムを除いて, 恒星内部の核融合反応でつくられる.恒星 内部でつくられた金属元素は,進化末期の 恒星からの質量放出風の中で塵として凝縮 し,星間空間へと放出される.このような 塵が次世代の恒星や惑星の材料となる. <br>進化末期の恒星が放出するガスの中や, 誕生直後の恒星の周囲の原始惑星系円盤 (惑星を産む母胎となる)に存在する塵の 正体は赤外線天文観測で調べられている. <br>塵による特定波長の赤外線の放射や吸収 の特徴から,かんらん石や輝石,コランダ ムといった鉱物,非晶質ケイ酸塩,非晶質 炭素,芳香族炭化水素などの存在が報告さ れている.ペリドットやルビー,サファイ アが宇宙には塵として存在する. <br>このような塵が宇宙を旅し,太陽系に持 ち込まれた証拠が隕石のなかに見つかって いる.隕石の中には,太陽系の平均的同位 体組成とは大きく異なる微粒子が存在する. 同位体組成の大きな違いは太陽系での物理 化学反応では説明できないため,これらの 粒子は太陽系ができる前に銀河系内の恒星 の放出するガスの中でつくられ,その恒星 での元素合成(核融合)を反映した同位体 組成を保っているものと考えられている.<br>これらの微粒子は先太陽系(プレソーラー) 粒子とよばれ,太陽系の材料そのものだと 考えられている.最大でも 100 ppm 程度の 量ではあるが,ケイ酸塩,酸化物,炭化物, 窒化物,ダイアモンドなどのプレソーラー 粒子が見つかっている(プレソーラーコラ ンダム粒子(約 1 マイクロメートル)の電 子顕微鏡写真を以下に示す). <br>また,隕石には誕生直後の太陽系で高温 のガスからつくられた塵やその集合体も含 まれる.難揮発性包有物とよばれる太陽系 最古の固体物質はカルシウムやアルミニウ ムといった難揮発性元素に富む鉱物の集合 体である.また,鉄に乏しいかんらん石の集合体も存在する. <br>我々の研究室では宇宙での塵の形成を実 験室で再現し,塵をつくりだす実験をおこ なっている.進化末期の恒星の周囲や誕生 直後の太陽系の高温・低圧環境を実験室に つくりだし,鉱物の晶出過程を調べている. 実験室でおこなう天文学である.以下に真 空赤外炉の写真およびガスから凝縮したフォルステライト微粒子(スケールバーは 1 マイクロメートル)の電子顕微鏡写真を示 す. <br> プレソーラー粒子は太陽系の材料の形成 プロセスを,難揮発性包有物やかんらん石 集合体は太陽系初期の高温鉱物形成プロセ スを知る手がかりとなる.これらの固体物 質は前述のとおり,隕石に含まれる.隕石 は宇宙から来た石であるが,実は隕石が本 当にどこから来たのかについてははっきり とはわかっていなかった.それに決着を付 けたのは,2010 年に小惑星イトカワの表面 粒子を回収し,帰還した探査機「はやぶさ」であった.地球に豊富に存在する普通コン ドライトとよばれる隕石が小惑星を起源と するということが証明されたのだ. <br>しかし,炭素質コンドライトとよばれ, 鉱物だけでなく,水(含水鉱物として)や 有機物を含み,海や生命の材料を地球にも たらした可能性のある隕石がどこから来た のかについてはわかっていない.また,水 や有機物が鉱物を主とする天体でどのよう に進化したのかについてもはっきりとした 結論は出ていない.これらの問題は炭素質コンドライトのもととなったと考えられる 天体に行けば,解決の糸口がつかめるはず である.太陽系の起源と進化,海や生命材 料の進化の場をさぐることを目的に,2014 年 12 月に探査機「はやぶさ 2」が小惑星リュウグウへと旅立った.リュウグウは C 型 小惑星に分類され,炭素質コンドライトの 母天体である可能性が高い.2020 年末から 始まるリュウグウサンプルの分析で私たち がなにを解き明かそうとするのかについて もお話ししたい.
著者
安部 正真 橘 省吾 小林 桂 伊藤 元雄 渡邊 誠一郎
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.28-37, 2020-03-25 (Released:2020-05-22)

探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウ表面での試料採取のための二回の着陸運用を成功させ,現在,地球帰還に向けて,飛行中である.2020年末に地球に届けられるリュウグウ試料は,地球帰還から6ヶ月の期間,JAXAキュレーション施設内に設置された専用のクリーンチャンバーの中で,地球大気にさらされず,窒素ガス中で初期記載される.その後,一部試料に対し,外部機関でのJAXA主導の高次キュレーションならびに「はやぶさ2」科学チームによる初期分析がおこなわれる.地球帰還から18ヶ月後には,それらの分析結果はカタログ化され,国際公募による分析に試料が配布される.本稿では,初期記載,高次キュレーション,初期分析に関し,それぞれの目的や実施内容,計画について示し,国際公募開始以前にJAXAならびに「はやぶさ2」プロジェクトが主導しておこなうリュウグウ試料分析の全体像を紹介する.
著者
橘 省吾 瀧川 晶 川崎 教行 圦本 尚義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

太陽系の原材料となったダストは,太陽より前世代の恒星周囲でつくられたダストや,星間空間で破壊され,再生産されたダストと考えられる.これら太陽系原材料となった「太陽型ダスト(恒星周ダストと星間再生産ダスト)」が,太陽系最初期にガスとの酸素同位体交換を経て,地球や隕石の材料である「地球型ダスト」へと変身する過程に注目する.(1) ダストとガスとの酸素同位体交換反応に必要な原始太陽系円盤の物理化学条件を実験より定量的に決定する.(2) 隠された太陽系原材料物質を始原隕石中に発見することにより (1) の過程の証明をめざす.
著者
関根 康人 高野 淑識 矢野 創 船瀬 龍 高井 研 石原 盛男 渋谷 岳造 橘 省吾 倉本 圭 薮田 ひかる 木村 淳 古川 善博
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.229-238, 2012-09-25

エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.
著者
橘 省吾 浦川 聖太郎 吉川 真 中村 良介 石黒 正晃
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.4-13, 2013-03-25

地球外始原物質(より古い情報を記憶する物質)の科学は私たちの太陽系の歴史を銀河の歴史と実証的につなげる唯一の手段である.「はやぶさ」「はやぶさ2」の探査天体よりさらに始原的な情報が残されている可能性が高く,また来る10年に往復探査が可能な天体である107P/Wilson-Harrington(彗星/小惑星遷移天体)へのサンプルリターン探査を提案する.本探査計画は惑星物質科学の進展のみならず,太陽系初期につくられる揮発性物質を多く含む小天体の物理的特性を明らかにできる探査であり,惑星形成論においても大きな貢献をなすものである.
著者
高木 靖彦 平田 成 橘 省吾 中村 良介 吉川 真 はやぶさ2プリプロジェクトチーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.48-55, 2010-03-25
被引用文献数
1

「はやぶさ」に続く小惑星探査計画「はやぶさ2」が最初に提案されてからの約4年間の経緯と,計画の概要をまとめた.その中で,ミッションの目標と,それに基づき選定された搭載機器の仕様についても簡単に述べる.
著者
橘 省吾
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

金星環境を地球と対比しながら理解することは比較惑星学上の重要なテーマである.しかし,金星研究は鉱物学・岩石学・地球化学的探査の困難さもあって,これまでは限られた探査データに基づいた理論的研究が先行し,金星環境の安定性や表層物質循環を論じるための重要な化学反応であるパイライトの分解速度データとして,10年以上前に金星環境とはかけ離れた条件下で求められた実験データ(Fegley et al., 1995)がほぼ無批判に使用されてきた.本研究では,高温超臨界二酸化炭素中で金星表層を再現したパイライト分解実験をおこない,高温超臨界二酸化炭素によるパイライトの分解速度,分解メカニズムを求めることを目的とする.また,結果に基づき,金星表層環境でのパイライトの安定性を明らかにし,金星気候モデルに応用することをめざす.研究期間を通じて,パイライト分解に関する1気圧での予備実験を系統的におこなった。結果,金星表層で予想されるよりも酸化的な環境においては,酸素によるパイライトの分解反応が反応速度を支配することがわかったが,金星表層で推定される酸化還元条件では,反応に対する酸素の影響は大きくないことが明らかとなった.これらの予備実験の結果を踏まえ,高温超臨界環境での実験系の立ち上げた.しかし,金星表層の極低酸素分圧を実験系でどのように作成し,制御するかという問題が大きいことがわかり,その解決を試みた.結果として,実験系に酸素ゲッター(グラファイト,チタン)を設置し,酸素分圧は遷移金属酸化物(V2O5, V2O4, MoO3,Fe2O3,Fe3)4, Na4V2O7)の酸化還元を調べることで測定可能であることがわかった.
著者
田近 英一 多田 隆治 橘 省吾 関根 康人 鈴木 捷彦 後藤 和久 永原 裕子 大河内 直彦 関根 康人 後藤 和久 大河内 直彦 鈴木 勝彦 浜野 洋三 永原 裕子 磯崎 行雄 村上 隆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

約25億~20億年前に生じた全球凍結イベントと酸素濃度上昇の関係を明らかにするため,カナダ,米国,フィンランドにおいて地質調査及び岩石試料採取を実施し,様々な化学分析を行った.その結果,同時代の地層対比の可能性が示された.またいずれの地域においても氷河性堆積物直上に炭素同位体比の負異常がみられることを発見した.このことから,氷河期直後にメタンハイドレートの大規模分解→温暖化→大陸風化→光合成細菌の爆発的繁殖→酸素濃度の上昇,という可能性が示唆される.