著者
橋田 剛一 井上 悟 阿部 和夫
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0151, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】感染後横断性脊髄炎では感染後に脊髄が横断性に障害され、運動麻痺・感覚障害及び膀胱直腸障害などが生じ、後遺症が問題となる。今回、対麻痺症状を呈した2例を経験したので報告する。【症例1】36歳、女性。感冒症状発現の10日後頃より排尿障害、対麻痺が出現し、近医から当院に転院し、急性横断性脊髄炎と診断され、入院後12日より、往診で理学療法(PT)開始。筋力は下肢近位部1~1+、遠位部2-~2、上肢は4であり、弛緩性対麻痺とTh7以下での表在感覚中等度鈍麻、深部感覚は軽度鈍麻を認めた。坐位・起居動作は介助が必要であり、ADLでは食事動作以外で介助が必要であった。尿意はなくバルーン留置状態であった。開始時ASIA(motor)は52点、FIM は62点であった。車椅子移乗動作、坐位、起居動作練習からPTを開始した。開始後15日頃より下肢の痙性が出現したため立位練習を展開し、開始後22日より、ロフストランド杖等を用いて歩行練習も行った。開始後37日のリハビリ転院時には筋力は上肢5、下肢は近位部3+~4-、遠位部4-~4、表在・深部感覚は軽度鈍麻に改善した。起居動作全般は自立し、立位保持は軽度wide baseで可能となった。歩行は両ロフストランド杖レベルとなった。ADLは最少介助レベルで可能、自己導尿管理が自立した。終了時ASIAは84点、FIMは 94点であった。【症例2】43歳、女性。頭痛、下肢のしびれ感出現、近医に入院。その後対麻痺が出現、徐々に臥床状態になった。発症後2ヶ月で当院に転院し、横断性脊髄炎と診断され、入院後16日より、往診でPT開始。筋力は下肢近位部で右1、左1+、遠位部で右0~1、左1~2であった。上肢は4-~4であった。Th7以下での表在及び深部感覚の重度鈍麻を認めた。ADLはほぼ全介助で、尿意はなくバルーン留置状態であった。開始時ASIA(motor)は 51点、FIM は60点であった。PTでは、早期離床目的でベッド上動作、坐位練習から開始、開始後10日には、車椅子移乗まで進めた。開始後37日より車椅子出診を開始し、下肢痙性の出現に応じ立位練習も進めた。開始後55日のリハビリ転院時には、筋力は上肢5、下肢近位部で右2~3+、左2+~4-、遠位部で右0~2-、左2+~3+となった。移乗動作は修正自立、床上動作は監視下で自立し、立位練習レベルまで至った。ADL全般は介助レベル、排尿はバルーン留置のままであった。終了時ASIAは69点、FIMは 72点であった。【まとめ】やや異なった経過を辿った2症例を比較することで、早期からPT介入する必要性と痙性の出現、機能回復に応じて立位・歩行へのアプローチにつなげていく重要性を認識した。また、脊髄炎後遺症の長期的な回復を見越したPT介入も求められることが示唆された。
著者
原 淑恵 山下 晴央 山本 浩隆 井上 悟志 松本 優
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.112-116, 2012 (Released:2013-03-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

We report three cases with endocarditis-related mycotic intracranial aneurysms. Two presented with hemorrhage and one with cerebral infarction followed by aneurysm formation in the same territory. All three suffered bacteremia and infectious endocarditis. Two had multiple aneurysms. Ruptured and/or enlarging aneurysms were treated with endovascular coil embolization. For unruptured, asymptomatic aneurysms that were stable in size, systemic antibiotic therapy and a serial follow-up with angiography was done. Embolization was successful in all cases. Two had cardiac surgery uneventfully. Two had untreated unruptured aneurysms that disappeared on the follow-up angiography after long-term systemic antibiotic therapy. There was no reassurance of treated aneurysms.
著者
大江 達也 三田 裕教 藤本 敦久 對馬 龍太 高橋 伴弥 井上 悟史 中江 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>スポーツ選手の膝痛で高頻度に発生するAnterior Knee Painは,膝蓋下脂肪体(Infrapatella Fat Pad;以下IFPの)内圧上昇(Bohnsack M, et al., 2005)や,IFPの疼痛感度が高い点(Dye SF, et al., 1998)などが関与しているとされ,IFPの機能は重要であると考えられる。IFPは膝伸展時に遠位や内側,外側へ広がり,遠位では膝蓋靭帯と脛骨近位前面の間へも移動し,膝蓋骨の動きに安定性を与えると報告されている(林ら2015)。しかし,動態に関する研究は散見する程度であり,本研究の目的はpatella setting時におけるIFPの動態を,超音波エコー(以下エコー)を用いて評価する事である。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>膝関節に整形外科的疾患の既往の無い31例62膝を対象とした。男性23例,女性8例,年齢は平均28.5歳(21~42歳)であった。IFPの動態評価にはHITACHデジタル超音波診断装置Noblusを使用した。IFPはpatella settingにより周囲へ広がる際,広がった部位においてIFP前後幅が増大することをエコーにて観察できた為,本研究においては周囲への広がりを前後幅として評価することとした。測定肢位は仰臥位で膝窩部にクッションを敷き,膝関節軽度屈曲位を基本肢位とした。膝蓋骨遠位1/3から下端の間で,膝蓋骨内縁,外縁それぞれにおいて大腿骨内顆関節面,外顆関節面と伸筋支帯を鮮明に描出できる短軸像にて評価した。関節面と伸筋支帯の間にはIFPが存在しており,その距離を計測することによりIFP前後幅を評価できると考えた。検討項目は,内側,外側それぞれにおけるIFP前後幅とし,弛緩時とpatella setting時の差を算出した。また,patella settingによるIFPの遠位への広がりを評価する為に,膝蓋靭帯と脛骨近位前面のなす角をエコー長軸像にて計測した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>弛緩時とpatella setting時におけるIFP前後幅の差は,内側は平均1.58±0.87mm,外側は平均3.76±3.63mmであり,外側の方が統計学的に優位に大きかった(P<0.01)。また,内側と外側の間には弱い負の相関関係を認めた(相関係数-0.31,P<0.05)。弛緩時とpatella setting時における膝蓋靭帯と脛骨近位前面のなす角の差は,平均5.37±4.9°とpatella settingにより角度は増大していた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>林ら(2015)はIFPの移動量を膝の最終伸展運動で内側,外側に流れ込む距離として測定し,外側への移動距離が内側より大きいと報告している。我々も移動距離を直接評価しようと試みたがエコーでは困難であった為,間接的にIFPの前後幅で評価した。本研究の結果から,外側への移動距離の方が内側よりも大きい事が示唆され,林らの報告を支持する結果となった。しかし,内側と外側の間には負の相関関係があり,内側へ移動しやすい膝は外側へ移動しにくく,その逆も存在することが示唆された。また,遠位への移動も観察でき,IFPはpatella settingにより周囲へ広がる事が確認できた。</p>
著者
井上 悟
出版者
社団法人 日本分光学会
雑誌
分光研究 (ISSN:00387002)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.197-202, 1996-08-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15
著者
吉本 陽二 長野 聖 井上 悟 柴田 政彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0906-C0906, 2004

【はじめに】<BR> 我々、理学療法士は疼痛の軽減を治療の目的として運動療法、物理療法を施行する。しかし、疼痛を主症状とした症例に対して疼痛軽減のみを目標に理学療法を行った場合に治療が難渋する場合が多くある。<BR> そこで今回、我々は、ペインクリニック外来を受診した患者に対してアンケートを行い、日常生活の動作能力や心理面に対する疼痛の影響について調査した。これらの結果より、疼痛を主症状とした症例に対する理学療法の目標について検討を行った。<BR>【対象】<BR> 大阪府・兵庫県の9施設のペインクリニック外来を受診し、筋骨格系疾患の診断を受けた606名を対象とした。対象者は男性284名、女性322名であり、平均年齢は56.2 ± 16.4 歳であった。<BR>【調査の方法と内容】<BR> 調査は、ペインクリニック外来初診日に以下の内容について調査を行った。疼痛の程度の評価としてvisual analog scale (VAS )と疼痛発症頻度の調査を行った。日常生活動作の障害の有無は、Pain Disability Assessment Scaleにて行い、抑うつ、不安はHospital Anxiety and Depression Scaleにて行った。<BR>【統計学的解析】<BR> VASは平均値よりも高値であった群と低値であった群の2群に分け、疼痛頻度は3群に分け、能力障害、抑うつ、不安は「ある」「なし」の2群に分けた。それらの群の関連性について年齢、性別にて調整し、多重ロジテック回帰分析を用いて統計学的解析行った。<BR>【結果】<BR> VAS と日常生活動作の能力障害の間には、関連性は認められなかった。また、疼痛頻度と能力障害の間にも有意な関連性は認められなかった。疼痛頻度と抑うつ、不安の間には有意な関連性が認められなかったが、VAS と抑うつ(オッズ比2.25、95%CI:1.25-4.07)、不安(オッズ比2.12、95%CI:1.17-4.14)の間には、有意な関連性が認められた。また、能力障害と抑うつ(オッズ比3.54、95%CI:1.95-6.41)、不安(オッズ比7.06、95%CI:3.21-15.51)の間には、有意な関連性が認められた。<BR>【考察】<BR> 今回の調査によるVAS および疼痛発生頻度と能力障害の有無に関連性が無かった結果の解釈は、VAS と抑うつ、不安と関連性がある結果からも疼痛軽減を目的とした理学療法を否定するものではない。疼痛症例の能力障害は、疼痛の程度や発生頻度に影響を受けるのではなく、活動の必要性や本人の意欲によって左右される症例像を示すものと考えられる。二次的障害の予防や能力障害と抑うつ、不安に有意な関連性があることからも疼痛症例に対する理学療法は、疼痛に対するアプローチのみを行うのではなく、早期に能力障害改善のアプローチを行うことが重要であることが示唆された。
著者
武村 啓住 細 正博 由久保 弘明 井上 悟 兼盛 淑子 立野 勝彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.71-76, 2001 (Released:2001-12-27)
参考文献数
13
被引用文献数
7 7

目的 : ラット膝関節拘縮モデルを用い、関節構成体である関節包や関節軟骨がどのような変化を起こしているのかを組織学的に観察し、検討した。対象と方法 : 9週齢のWistar系雄ラット3匹の右後肢を股関節最大伸展、膝関節最大屈曲位、足関節最大低屈位、にて固定し固定群とした。左後肢は自由にし対照群とした。採取した膝関節をホルマリン液にて組織固定し、脱灰後パラフィン包埋し標本を作製した。染色はヘマトキシリン · エオジン染色とエラスチカ · ワンギーソン染色を行い、光学顕微鏡下にて関節包、関節軟骨の病理組織学的観察を行った。結果 : 固定群では対照群に比べて関節包の厚さが減少し、線維性結合織が粗性から密性へと質的に変化して弾性線維は減少していた。また固定群では関節軟骨表層の線維増生と考えられる変化が観察された。結論 : 以上の変化は関節構成体である関節包、関節軟骨の萎縮と考えられ、この概念提起が有効であれば、筋や骨と同様関節包、関節軟骨にも廃用性萎縮の概念が適用できる可能性が示唆された。
著者
井上 悟 田川 英生 永松 公明 梶川 和武
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-46, 2004-06-07

前の3報に続いて,海中に設置した電極に微弱電流を流すことにより,海洋生物の付着を防止する試みを行った。水産大学校桟橋下と近くの海面に測定板を沈め,測定板への生物付着状況を調べた。2000年5月30日から10月2日までの4ケ月間(第1期)と,同年10月11日から翌年1月12日までの3ケ月間(第2期)に分けて実験を行った。電極には白金メッキされたチタン細線を使用した。あらかじめ,電極間隔および電極長と電流との関係を調べ,電極間隔50cm・電極長3mmの粂件のもとで,8V・数十mAの電流を常時印加した。海中に設置された電極に流れる電流は,電極間隔にはほとんど依存せず,電極長に大きく依存することが確認できた。8V・数十mAの電流を常時印加することにより,第1期と第2期を通じて,付着性の動物,特にフジツボに対しての周年の付着防止効果が確認された。ただ,第2期では,海藻類に対しての付着防止効果は認められなかった。しかし,海藻以外の付着生物(特に動物)は明らかに対照区に多く,8V・数十mAの電流による付着防止効果が認められた。
著者
井上 悟
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2003-03

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1764号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2003/3/6 ; 早大学位記番号:新3552