著者
井上 淳子 上田 泰
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.18-28, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
42

本研究はアイドルを応援する(推す)ファンがアイドルに対して心理的所有感を持つことを主張し,その影響について論じるものである。具体的には,アイドルに対するファンの心理的所有感は,同じアイドルの他のファン(同担)に対する複雑な意識を生み出し,さらにその意識が当人のウェルビーイングと推し活動を継続させる原動力となることを理論的かつ実証的に明らかにする。550人のアイドルファンから収集したデータを分析した結果,アイドルに対する心理的所有感は心理的一体感と心理的責任感から構成され,心理的一体感が同担仲間意識に,心理的責任感が同担競争意識に影響を及ぼすことが実証された。また,ファンのウェルビーイングは2つの同担意識からともに正の影響を受ける一方で,現在のアイドルを推し続けたいという推し活継続性は,心理的一体感と同担仲間意識から正の影響を受けるものの,同担競争意識から負の影響を受けることが明らかになった。
著者
塩見 尚礼 近藤 雄二 小道 広隆 片野 智子 宮沢 一博 原田 佐智夫 稲葉 征四郎 上田 泰章 今井 俊介
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.1592-1596, 1996-07-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
6

豊胸術後に発生した稀な乳癌の3例を経験した.症例1は43歳の女性.豊胸術後11年目に外傷にてシリコンバッグ破裂.以来乳腺腫瘤の生検を繰り返され, 3年後に乳癌と診断され,左Brp+Ax,広背筋皮弁移植を行った.症例2は56歳の女性,豊胸術後24年目に右腋窩リンパ節腫脹を認め,自潰してきたため当院受診.多発性骨転移を認める進行例であった.術前化学療法を行った後両側Brt-Axを施行した.症例3は66歳の女性.豊胸術後28年目に左乳房緊張感を主訴に受診.腫瘍摘出術にて乳癌と診断されBrt+Axを施行した.豊胸術後の乳癌は本邦では1970年以来37例の論文報告をみるに過ぎず.稀な疾患である.自験例3例を含め,文献的考察を加えて報告した.
著者
上田 泰
出版者
成蹊大学
雑誌
成蹊大学一般研究報告 = Bulletin of Seikei University (ISSN:03888835)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-11, 2020-03

This study examines young students' views of idols' romances. Statistical analysis of data collected from 171 university students reveals that the Sakamichi group is more popular among students than the AKB48 group; students tend to require idols to have comprehensive features and accept idols' past romances. They also consider many idols to have a secret significant other and are not opposed to them concealing the secret. Regression analysis also finds that fans of the Sakamichi group, particularly those of Nogizaka46, show a tendency for romantic fixation on a particular member, and female students have a more realistic view of idols' romances.
著者
金子 雅明 岡崎 倫江 上條 史子 上田 泰久 柿崎 藤泰 桜庭 景植
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.27-31, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
2

〔目的〕足部・足関節アライメントに着目しACL損傷の危険肢位とされる膝関節軽度屈曲・外反および着地直前および直後の下肢筋群筋活動との関係を明確にし,予防や再建術後プログラムの指導に役立つ指標を示すことを目的とした。〔対象〕健常成人男性27名を対象とした。〔方法〕左片脚着地後の最大膝関節屈曲角と外反角,着地直前直後の筋活動,下肢アライメント評価として,脛骨捻転角,thigh foot angle,leg-heel angle,navicular drop testを計測した。〔結果〕navicular drop testの値が小さい場合,左片脚着地後の最大膝関節外反角が大きくなるとともに着地直前直後の半腱様筋の筋活動が大きくなった。〔結語〕navicular drop testの値が小さいことは,ACL損傷の危険肢位である膝関節外反を生じる可能性が高い選手を把握する指標になることが示唆された。
著者
関野 良祐 釜野 洋二郎 石井 真理子 中崎 慶子 中俣 修 上田 泰久
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2222, 2011

【目的】側腹筋は外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋に分けられ、それらの腱膜は1つの機能単位を構成して体幹の運動に関与している。特にインナーユニットの一つである腹横筋は体幹の安定性に重要といわれている。腹横筋の収縮を促すために,Abdminal Drawing-in(腹部引き込み運動)やPelvic tilt(骨盤後傾運動)などの運動療法が実施されることが多い。しかし,これら運動療法で収縮を促すことが難しい症例に対して,仰臥位での股関節内転運動を実施すると体幹の安定性が向上した。股関節の内転運動に関する先行研究では,股関節の運動(内転・外転・外旋)が骨盤底筋の収縮を活発にするという報告(小林ら2008) がある。また解剖学的な連結として,大内転筋が坐骨結節や内閉鎖筋を介して骨盤底筋と連結される(Thomas W. Myers 2009)。骨盤底筋と腹横筋はインナーユニットを形成する筋であり,内転筋群の収縮を促通することにより骨盤底筋を介して腹横筋の活動も高まると考えられる。本研究の目的は,股関節の内外転運動と側腹筋との関連性を検討することである。<BR><BR>【方法】対象は,健常成人20名(年齢20.9±1.3歳、身長165.8±7.2cm、体重56.9±7.7kg)とした。計測機器は,側腹筋の筋厚の測定として超音波診断装置My Lab25(日立メディコ社製)を使用した。測定肢位は,上肢を体側へ伸ばし,下肢が股関節内外旋中間位(第2中足骨が床へ垂直) になる背臥位とした。運動課題は背臥位での等尺性の股関節内外転運動とした。筋力の測定はhand-held dynamometer(以下、HHD)を用い,股関節内外転運動の最大等尺性収縮時の発揮筋力を調べ,負荷量は各々20%と60%の2種類とした。測定部位は軸足側の中腋窩線上で,肋骨下縁と腸骨稜の中間点とし,安静時・20%内転・60%内転・20%外転・60%外転の5条件における腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋の筋厚を測定した。測定はランダムに行い,十分に休憩をはさみ5条件を各3回実施して,その平均値を求めた。統計処理は一元配置分散分析後、多重比較(Bonferroni)を用いて行った。有意水準は5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】本研究の内容を書面にて十分説明し,同意書に署名を得た。<BR><BR>【結果】腹横筋の筋厚は、安静時2.79±0.69mm・20%内転3.10±0.66 mm・60%内転3.48±0.83 mm・20%外転2.91±0.86mm・60%外転3.05±0.89mmであった。安静時と比較して,20%内転・60%内転では筋厚が有意に増大した(p<0.01)。また20%内転よりも60%内転で有意に増大した(p<0.05)。さらに、20%外転よりも60%内転で有意に増加した(p<0.01)。<BR>内腹斜筋の筋厚は、安静時8.59±1.66 mm ・20%内転8.90±1.65 mm・60%内転9.39±2.04 mm・20%外転8.87±1.99 mm・60%外転9.04±2.05mmであった。安静時と比較して20%内転(p<0.05)と60%内転(p<0.01)で筋厚が有意に増大した。さらに、20%外転よりも60%内転で有意に増加した(p<0.05)。<BR>外腹斜筋の筋厚は、安静6.37±1.24 mm ・20%内転6.38±1.39 mm・60%内転6.53±1.55 mm・20%外転6.25±1.39mm・60%外転6.32±1.38mmであり,有意差は認められなかった。<BR><BR><BR>【考察】腹横筋では安静時に比べ20%・60%内転時に有意な筋厚の増加がみられた。これは骨盤底筋群との筋膜を介した連結を大内転筋がもつために生じたと考えられる(Thomas W. Myers 2009)。大内転筋の収縮は閉鎖筋膜・肛門挙筋腱弓に伝わり、骨盤底筋を収縮させたと考えられる。その結果、骨盤底筋の収縮により腹腔内圧は上昇し、インナーユニットが活性化され腹横筋が収縮したと考えられる。内腹斜筋では、安静時に比べ20%・60%内転時に有意な筋厚の増加がみられた。これに対し、外腹斜筋の変化については、すべての課題動作に対して筋厚の増加がみられなかった。これは、胸腰筋膜を介し内腹斜筋には腹横筋との連結があるが、外腹斜筋では連結がなかったために変化が起こらなかったと考える。胸腰筋膜は、内腹斜筋と腹横筋の収縮を繋いだ水圧ポンプ作用があり、これが腰椎の安定性に寄与しインナーユニットの収縮を促す(Diane Lee 2001)。これらのことから、股関節内転筋運動により骨盤底筋を介した、インナーユニットである腹横筋と腰椎安定に関わる内腹斜筋の、筋膜連結による活性化が可能であることが分かった。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】今回の実験で、股関節内転筋収縮により腹横筋の収縮を促すことが可能であることが解った。腹横筋エクササイズは体幹のみだけでなく、股関節内転筋からの介入によりインナーユニットの活性化も可能であることを理解し、これらを併用した運動療法の有効性が示唆された。
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 信原 克哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】投球障害肩の治療・予防を考える上で,投球動作中の肩関節に加わる力学的ストレスを3次元的に求め,それに関連する運動学的・動力学的因子を検討することが重要である。これまで投球動作中の肩関節に加わる圧縮力については検討されているが,それ以外の前後方向・上下方向への力学的ストレスついてもそれらに関連する因子を検討する必要がある。本研究の目的は,投球動作中の肩関節に加わる圧縮力,前後方向および上下方向の力学的ストレスに影響を与える運動学的・動力学的因子について明らかにすることである。【方法】対象は次の条件を満たす中学・高校生の野球投手81名とした(年齢15.0±1.4歳,身長172.0±9.8 cm,体重63.2±9.8 kg,右63名・左18名)。1)投球動作の測定時に疼痛がない,2)肩・肘関節の手術経験がない,3)測定より6カ月以内に肩・肘関節の疼痛や障害のために投球動作を禁止された期間がない。投球動作の測定にはモーションキャプチャ・システムを用いた。解剖学的骨特徴点の皮膚上に36個の赤外光反射マーカーを貼付し,投球マウンド周辺に設置した7台の高速CCDカメラ(ProReflex MCU-500+,Qualisys Inc., Sweden)と2台のハイスピードビデオカメラ(HSV500C<sup>3</sup>,nac Image Technology,Japan)を用いて測定を行った。運動学的・動力学的パラメータを算出するために,胸部,上腕及び前腕座標系を設定し,胸部に対する上腕座標系の回転,上腕に対する前腕座標系の回転をオイラー角で示し,それぞれを肩関節,肘関節角度とした。また,水平面上での両肩峰を結ぶベクトルV<sub>s</sub>,両上前腸骨棘を結ぶベクトルV<sub>p</sub>それぞれとマウンドプレートとの成す角度を肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度とした。さらにV<sub>s</sub>とV<sub>p</sub>との成す角度を体幹回旋角度とした。肩関節,肘関節に加わる関節間力ならびにトルクはニュートン・オイラー法を用いて推定した。統計学的解析には,SPSS 12.0J(エス・ピー・エス・エス社,日本)を使用し,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。投球動作時の肩関節に加わる最大圧縮力,最大前方関節間力および最大上方関節間力を従属変数とした。独立変数はトップ・ポジション(TOP),非投球側足部接地(FP),肩関節最大外旋位(MER),ボール・リリース(BR)時の肩関節および肘関節の関節角度,肩甲帯回旋角度,骨盤回旋角度,体幹回旋角度,肩関節および肘関節へ加わるトルクの最大値とした。【結果】最大肩関節圧縮力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.67であった。標準偏回帰係数はBRでの肩関節水平内転角度が0.60,BRでの体幹回旋角度が-0.51,MERでの骨盤回旋角度が-0.40,最大肩関節外旋トルクが-0.33,最大肘関節外反トルクが0.31,TOPでの肩関節水平内転角度が-0.23,最大肩関節内転トルクが-0.22,BRでの肘関節屈曲角度が-0.20,FPでの体幹回旋角度が0.17であった。肩関節最大前方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01でありR<sup>2</sup>=0.63であった。標準偏回帰係数はFPでの肩関節水平内転角度が-0.84,最大肩関節水平内転トルクが0.41,FPでの肘屈曲角度が0.25,最大肩関節外旋トルクが-0.18,最大肩関節内転トルクが-0.16であった。肩関節最大上方関節間力を従属変数とした場合,p<0.01であり,R<sup>2</sup>=0.69であった。標準偏回帰係数は最大肩関節外転トルクが0.59,FPでの肩関節内転角度が0.55,FPでの肩関節外旋角度が-0.51,TOPでの肩関節内転角度が-0.36,BRでの肩関節内転角度が0.32,FPでの肘関節屈曲角度が0.32,FPでの骨盤回旋角度が-0.20,最大肩関節外旋トルクが-0.19,BRでの肩関節外旋角度が0.14であった。【考察】投球動作時に加わる力学的ストレスに影響する因子は,そのストレスの加わる方向により異なることが示された。肩関節の圧縮力にはBRでの肩関節水平内転やBRでの体幹回旋角度,肩関節最大前方関節間力にはFPでの肩関節水平外転や最大肩関節水平内転トルク,肩関節上方関節間力には,最大肩関節外転トルクやFPでの肩関節内転角度が影響を与える因子であった。また,それぞれの肩関節に加わるストレスに影響する因子として,FPでの肩・肘関節の関節角度が挙げられることから,この時点での投球動作に着目することは肩関節に加わる力学的ストレスを軽減させるために重要であることが定量的に確認された。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,投球障害肩の疼痛部位や病態に応じた理学療法の一助となると考える。また,投球動作を詳細に分析することで,今後起こりうる投球障害肩を予測し,予防するためにも有用である。
著者
上田 泰雅 鷹尾 和敬 村瀬 有紀 好井 正治
出版者
日本インスティテューショナル・リサーチ協会
雑誌
大学情報・機関調査研究集会 論文集 第11回大学情報・機関調査研究集会 論文集 (ISSN:24363065)
巻号頁・発行日
pp.52-55, 2022-11-11 (Released:2022-12-21)

2021 年 4 月から兵庫大学(短期大学部も含む)では、IR データを活用した面談を行っている。これまでも学科主体で五月雨式に面談を行っていたが、退学者の防止や学生満足度の向上を目的に学修支援体制の一つとして再構築し、半期ごとに計画的に実施されている。2022 年 3 月に実施した“学生面談システム”のアンケートを元に振り返り、2022 年 4 月からの改善点等も含めて、IR 推進室のかかわりを軸に説明する。
著者
上條 史子 千代丸 正志 大川 孝浩 上田 泰久 西村 沙紀子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.567-572, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
29

〔目的〕健常高齢者における素早い立ち上がり後のふらつきの要因について検討すること.〔対象と方法〕対象は男性健常高齢者15名とした.三次元動作解析システムを使用し,素早い立ち上がりとその後の立位姿勢を計測した.立ち上がり後の立位不安定の指標には,重心の進行方向位置から実効値を算出し使用した.実効値と立ち上がり動作における下肢運動学的項目と運動力学的項目の相関について検討した.〔結果〕実効値と左股関節伸展モーメント最大値の発生タイミング間には負の相関を,左膝関節モーメントの最大値とは正の相関を示した.〔結語〕立ち上がり後の立位を不安定にさせる要因には,離殿後の股関節の遠心性制御能力が考えられ,それに関連して膝関節の伸展筋力も関与すると示唆された.
著者
大饗 和憲 井口 浩一 森井 北斗 上田 泰久 八幡 直志 高橋 翼 松田 浩美 笠原 知樹 田沼 悠太
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.36.3_03, (Released:2022-03-04)
参考文献数
7

高齢者の非骨傷性頸髄損傷に対する積極的早期手術療法の治療成績について報告する. 対象と方法 : 70歳以上の非骨傷性頸髄損傷患者に可及的早期に除圧術を施行し, その術後成績を検討した. 結果 : 治療を行ったのは59例でそのうち手術を行ったのは57例であった. 男性48例, 女性9例, 平均年齢78.2歳, ASIA分類でAIS A13例, B8例, C36例であった. 受傷から手術までの時間は中央値9時間, 在院日数は46日, 入院中の死亡は5例 (8.8%) であった. 入院中にAISで1段階以上改善した症例は40例 (70.2%) で, そのうち7例 (全体の12.3%) では2段階以上の改善がみられた. 考察 : 高齢者の脊髄損傷は神経学的予後が悪く, 合併症により死亡率も高いと報告されている. しかし, 高齢者であっても積極的に早期に除圧を行うことで死亡率を下げることができ, 機能予後も改善できると考える.
著者
上田 泰之 田中 洋 亀田 淳 立花 孝 乾 浩明 信原 克哉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.101-108, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
28

【目的】投球動作中の肩関節離開力,前後および上下方向の力学的ストレスに影響を与える因子を明らかにすること。【方法】対象は野球選手81 名。肩関節最大離開力・前方・上方関節間力を従属変数とし,肩関節,体幹,骨盤に関する因子27 個を独立変数とした重回帰分析を行った。【結果】肩関節離開力を従属変数とした場合,ボール・リリースでの肩関節水平内転角度,体幹回旋角度など6 個の因子が選択された。肩関節前方関節間力を従属変数とした場合,非投球側足部接地での肩関節水平外転角度と肩関節水平外転トルクの因子が選ばれた。肩関節上方関節間力を従属変数とした場合,肩関節最大外旋位での肩関節外旋トルク,ボール・リリースでの肩関節外転トルクなど7 個の因子が選択された。【結論】肩関節離開力に影響する因子は報告されていたが,本研究では肩関節前方・上方関節間力についても検討した。その結果各々の力学的ストレスに対し影響する因子は異なることが示された。
著者
四辻 彰 伊東 優子 保田 隆 才川 勇 大角 誠治 矢野 三郎 上田 泰
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.294-303, 1988

Compromised host の対象として高齢者を取り上げ, その血清中での β-lactam 系抗生剤の sub-minimum inhibitory concentration (sub-MIC) シこおける抗菌作用を調べた。各血清60μl に薬液10μl を加え, それに菌懸濁液10μl を接種し 37℃ 4時間培養後, 生菌数の増減を測定した。高齢者の血清殺菌力は健常者に比べ <I>Escherichia coli</I> および <I>Klebsiella pneumoniae</I> に対しては弱まっている例が多かった。<I>Proteus</I> <I>mirabilis</I> T-277 株に対しては約半数例で高齢者の血清殺菌力は強まっていたが, T-250株 に対しては強まっている例はなかった。また<I>Proteus vulgaris</I>。<I>Pseudomonasaeruginosa</I> および<I>Staphylococcus aureus</I> に対しては健常者と同等の殺菌力であった。この殺菌因子として非働化で弱められる易熱性物質やペントナイト処理で除かれるリゾチームの関与が推定された。次に高齢者血清中での beta-lactam 系抗生剤の sub-MIC での殺菌作用をみると, pipera-cillin, cefoperazone および cefbuperazone は nutrient bmth (NB) 中でも高齢者血清中でも殺菌的または静菌的に作用した。一方 carbenicillin, cefazolin および cefmetazole は NB 中では菌の増殖を阻止したが高齢者血清中ではほとんど抗菌作用を示さなかった。
著者
上田 泰己
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S14-1, 2016 (Released:2016-08-08)

2000年前後の大規模なゲノム配列決定を契機に分子から細胞への階層における生命科学・基礎医学研究が変革した。ゲノムに基づくシステム科学的アプローチは分子から細胞への階層の生命現象の理解に有効であるものの細胞から個体への階層の生命現象への応用は難しい。細胞から個体の階層におけるシステム科学的アプローチを実現するためには、細胞階層での基幹技術の確立が必要不可欠である。そこで我々は、成体組織を丸ごと透明化し1細胞解像度で観察できる技術の開発に取り組んだ。我々が開発したCUBIC法は、透明化が困難な血液を豊富に含む組織をアミノアルコールによる色素除去作用により透明化することで、マウス成体全身の透明化を世界で初めて実現することに成功した(Susaki et al, Cell, 2014, Tainaka et al, Cell, 2014)。我々は、CUBIC法の持つパフォーマンス・安全性・簡便性・再現性の高さをさらに生かすために、複数のサンプルを定量的に比較可能な計算科学的な手法の開発に取り組み、取得したイメージングデータを標準臓器画像に対してレジストレーションすることで、同一領域の細胞活動変化を直接比較する計算科学的な手法の開発にも成功している。全身や各種臓器を用いた全細胞解析は、細胞と個体の階層においてシステム科学的なアプローチを提供し、解剖学・生理学・薬理学・病理学などの医学の各分野に対して、今後の貢献が期待される。参考文献1. Ueda, H.R. et al, Nature 418, 534-539 (2002). 2. Ueda, H.R. et al, Nat. Genet. 37, 187-92 (2005).4. Ukai H. et al, Nat Cell Biol. 9, 1327-34 (2007).5. Ukai-Tadenuma M. et al, Nat Cell Biol. 10, 1154-63 (2008).6. Isojima Y. et al, PNAS 106, 15744-49 (2009).7. Ukai-Tadenuma M et al. Cell 144(2):268-81 (2011).8. Susaki et al. Cell, 157(3): 726–39, (2014). 9. Tainaka et al. Cell, 159(6):911-24(2014).10. Susaki et al. Nature Protocols, 10, 1709–27 (2015)11. Sunagawa et al, Cell Reports, 14(3):662-77 (2016)12. Susaki and Ueda, Cell Chemical Biology, 23, 137-57 (2016)
著者
上田 泰之 浦辺 幸夫 大林 弘宗 山口 織江
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.485-490, 2008-08-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
25
被引用文献数
15 2

A number of studies have described typical scapular kinematics during arm elevation in adults. However, spinal structure and function differ between normal and elderly adults. To our knowledge, trunk kinematics during arm elevation in the elderly has never been clarified. The purpose of this study was to describe and compare the kinematics patterns of the trunk during arm elevation between normal and elderly adults. Forty-one normal adults (14 male and 27 female, mean age 22.1±1.1 years) and twenty-eight elderly adults (8 male and 20 female, mean age 75.8±7.2 years) participated in this study. The kinematics data were collected using an analog digital measuring device to record the sagittal outline of the back by using the Spinal Mouse system (Idiag AG, Switzerland). Subjects were instructed to raise their arm in the scapular plane, and measurements were performed with the arm in the dependent position, at 0, 30, 60, 90, 120, 150 degrees of abduction, and maximum abduction. The normal adult group demonstrated a significant decrease in thoracic kyphosis at 150 degrees and maximum abduction, and an increase in pelvic tilt at the maximum abduction ; while the elderly group showed no significant differences. This study demonstrates that there are significant differences in thoracic and pelvic kinematics patterns between normal adults and elderly adults. From a clinical prospective, these results can be applied to improve shoulder movements in the elderly.
著者
上田 泰久 福井 勉 小林 邦彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C4P1164, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】座位姿勢において上半身質量中心位置(Th7-9)を前方へ移動すると頭部を水平に保つために下位頚椎は伸展して上位頚椎は屈曲し、後方へ移動すると下位頚椎は屈曲して上位頚椎は伸展することが観察できる。座圧中心は上半身質量中心位置を投影している重要な力学的な指標である。我々は第64回日本体力医学会大会(2009年)において「座圧中心と頚椎の回旋可動域の関連性」について報告し、左右の移動では座圧中心を頚椎の回旋側とは逆側へ移動すると回旋可動域が有意に向上したが、前後の移動では回旋可動域に有意差はない結果を得た。しかし、座圧中心の前後の移動では頚椎回旋の運動パターンが異なることが観察されたため、頭部肢位の変化により後頭下筋群の働きに違いがあるのではないかと考えた。今回、頭部肢位の違いと後頭下筋群の関係について肉眼解剖を行い観察することができたため報告する。【方法】名古屋大学大学院医学系研究科の主催する第29回人体解剖トレーニングセミナーに参加して肉眼解剖を行った。86歳男性のご遺体1体を対象とした。仰臥位で後頚部の剥皮後、左側の僧帽筋上部線維,頭板状筋,頭半棘筋を剥離し、左側の後頭下筋群(大後頭直筋,小後頭直筋,上頭斜筋,下頭斜筋)を剖出した。剖出した後頭下筋群を観察した後、他動的に頭部肢位を屈曲位および伸展位に変化させた後頭下筋群の状態を観察した。さらに、頭部肢位を変化させた状態から他動的に頚椎を左回旋させ、後頭下筋群の状態を観察した。後頭下筋群の状態はデジタルカメラを用いて撮影した。他動的な頭部肢位の変化と左回旋の誘導は1名で行い、デジタルカメラ撮影は別の検者が行った。【説明と同意】学会発表に関しては名古屋大学人体解剖トレーニングセミナー実行委員会の許可を得た。【結果】頭部肢位を屈曲位にすると上位頚椎も屈曲位となり、左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が離れて緊張した状態になった。一方、伸展位にすると左大後頭直筋,左小後頭直筋,左上頭斜筋,左下頭斜筋は起始と停止が近づき弛緩した状態になった。頭部肢位を屈曲位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋は緊張した状態から軽度弛緩した状態へと変化した。一方、伸展位から左回旋させると、左大後頭直筋,左下頭斜筋はより一層弛緩した状態へと変化した。左小後頭直筋,左上頭斜筋は頭部肢位に関係なく他動的な左回旋では著明な変化は観察できなかった。【考察】大後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節,環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる。小後頭直筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈させる。上頭斜筋は両側が働くと環椎後頭関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈して逆側に回旋させる。下頭斜筋は両側が働くと環軸関節を伸展させ、片側が働くと同側に側屈,回旋させる(河上ら,1998)。自動的に左回旋をする場合、左側(同側)の大後頭直筋,下頭斜筋は上位頚椎の回旋運動に大きく関与し、左側(同側)の上頭斜筋,小後頭直筋は回旋運動に対して拮抗する固定的な要素が強いと考えられている(五百蔵,1988)。後頭下筋群は筋紡錘の密度が高く非常に小さい筋群である(Kulkarni et al. ,2001)。そのため、頭部肢位の変化に伴い起始と停止の位置関係が大きく変わることは筋長に決定的な影響を与え、収縮のしやすさが変化すると考える。つまり、頭部肢位が屈曲位にある場合、後頭下筋群は緊張した状態であり収縮しやすい条件であると考えられる。一方で伸展位にある場合、後頭下筋群は弛緩した状態であり収縮しにくい条件であると考えられる。以上より、頭部肢位を屈曲位の条件では後頭下筋群が働きやすく、上位頚椎の回旋が誘導されやすい運動パターンになるのではないかと考えた。【理学療法学研究としての意義】頭部前方変位の姿勢を呈する症例では、胸椎が後彎して下位頚椎は屈曲位で上位頚椎は伸展位になり、後頭下筋群が短縮して伸張性が低下していることがある。このような症例では、後頭下筋群の伸張性を徒手的に改善させるだけでなく、姿勢と関連させて後頭下筋群が働きやすい状態にすることが望ましいと考える。本研究は、肉眼解剖により実際に後頭下筋群を観察して確認した研究である。後頭下筋群は姿勢制御においても大変重要な役割があるといわれており、ご遺体1体の観察ではあるが姿勢と後頭下筋群を関連させた理学療法学研究として意義のあるものと考えている。