- 著者
-
井村 誠孝
- 出版者
- 関西学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本年度は信号処理の改良と多数の種類の感覚を通じた情報提示技術の開発を行った.信号処理における深層学習の利用については,引き続き最新の研究成果の導入を試行し,敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Networks; GAN)の利用を検討した.嚥下音や発話音をセンシングする際には,音が気導ではなく骨導であることによって生じる音声信号の変調が信号処理に影響を与える.気導音と骨導音の計測に基づき,骨伝達関数を推定することにより,骨伝達関数を考慮した音声信号処理を実施した.頸部の様々な感覚を通じたクロスモーダルな情報提示のために,力触覚ディスプレイの構築を行った.振動による触覚提示について,デバイスの小型化と振動情報からの主要成分の抽出を行った.また相関を用いた周波数応答法により計算機から振動デバイスまでの伝達関数を求め,振動デバイスが出力する振動刺激の適切化を行った.力触覚提示に関しては,新しい手法として以下に述べる3手法を考案し試作システムを構築した.(1) 空気噴流に周期的変調を与えることで力触覚の同時提示を実現する手法では,人の感覚のうちでも複合的なものである「こそばい」や「かゆい」といった感覚を再現可能とした.(2) MR(Magnetoreological)流体を利用して運動に対して抵抗感を生じさせることにより,頭部に対する力覚提示を実現した.(3) 腱に対して振動刺激を与えることによりバーチャルな運動が生じる運動錯覚の利用を試み,振動刺激と外部物体の接触による相互作用の性質について調査を行った.