著者
鈴木 一之 井関 邦敏 中井 滋 守田 治 伊丹 儀友 椿原 美治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.551-559, 2010-07-28 (Released:2010-08-31)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

透析条件・透析量と生命予後の関係を明らかにするため,日本透析医学会の統計調査結果を用いて,後ろ向き・観察的な研究を行った.2002年末の週3回施設血液透析患者を対象に,事故・自殺を除く死亡をエンドポイントとして,患者の透析条件・透析量と2003年末までの1年死亡リスク,および2007年末までの5年死亡リスクについて,ロジスティック回帰分析を行った.2002年末の平均的透析条件は,透析時間239分,血流量(Qb)192 mL/分,ダイアライザ膜面積(膜面積)1.55 m2,透析液流量(Qd)486 mL/分であった.また,尿素の標準化透析量(Kt/V urea)は平均1.32,指数化しない透析量(Kt urea)は平均40.7 Lであった.予後解析の結果,透析時間は240分以上270未満を基準として,それより透析時間が短い患者群で死亡リスクが高く,透析時間が長い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.Qbは200 mL/分以上220 mL/分未満を基準として,それよりQbが少ない患者群で死亡リスクが高く,Qbが多い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.膜面積は1.2 m2未満の患者群で死亡リスクが高かったが,それ以外の膜面積と死亡リスクの関係は明確ではなかった.透析量はKt/V urea 1.4以上1.6未満またはKt urea 38.8 L以上42.7 L未満を基準として,それより透析量が少ない患者群では死亡リスクが高く,それより透析量が多い患者群で死亡リスクが低かった.以上の傾向は,残腎機能がないと仮定が可能な,調査時点で透析歴5年以上の患者で顕著であった.一般的な週3回血液透析では,平均的な透析条件・透析量よりも,透析時間の延長やQbの増加によって透析量を増大させることが,患者の生命予後の改善につながる可能性が示唆された.
著者
中井 滋 鈴木 一之 政金 生人 和田 篤志 伊丹 儀友 尾形 聡 木全 直樹 重松 隆 篠田 俊雄 庄司 哲雄 谷口 正智 土田 健司 中元 秀友 西 慎一 西 裕志 橋本 整司 長谷川 毅 花房 規男 濱野 高行 藤井 直彦 丸林 誠二 守田 治 山縣 邦弘 若井 建志 渡邊 有三 井関 邦敏 椿原 美治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-31, 2003-01-28
被引用文献数
34 5

2008年末の統計調査は全国の4,124施設を対象に実施され,4,081施設(99.0%)から回答を回収した.2008年末のわが国の透析人口は283,421人であり,昨年末に比べて8,179名(3.0%)の増加であった.人口100万人あたりの患者数は2,220人である.2007年末から2008年末までの1年間の粗死亡率は9.8%であった.透析導入症例の平均年齢は67.2歳,透析人口全体の平均年齢は65.3歳であった.透析導入症例の原疾患ごとのパーセンテージでは,糖尿病性腎症が43.3%,慢性糸球体腎炎は22.8%であった.2008年に透析液細菌数測定を行った施設の52.0%において透析液細菌数測定のための透析液サンプル量は10 mL以上確保されていた.施設血液透析患者の治療条件では,全体の95.4%は週3回治療を受けており,1回治療時間の平均は3.92(±0.53;s.d.以下略)時間であった.血流量の平均値は197(±31)mL/分,透析液流量の平均値は487(±33)mL/分であった.ダイアライザではpolysulfone(PS)膜使用患者が50.7%と最も多く,膜面積平均は1.63(±0.35)m<SUP>2</SUP>であった.ダイアライザ機能分類ではIV型ダイアライザを使用している患者が80.3%と最も多かった.体外循環を用いた血液浄化療法を施行されている患者の治療前各種電解質濃度平均値は以下のようであった;血清ナトリウム濃度138.8(±3.3)mEq/L,血清カリウム濃度4.96(±0.81)mEq/L,血清クロール濃度102.1(±3.1)mEq/L,pH 7.35(±0.05),HCO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度20.7(±3.0)mEq/L.施設血液透析患者のバスキュラーアクセス種類では,自己血管動静脈瘻が89.7%,人工血管動静脈瘻は7.1%を占めていた.2007年1年間のHCV抗体陽性化率は1.04%であり,透析歴20年以上の患者のHCV抗体陽性化率は極めて高かった.また,透析前血清クレアチニン濃度,血清アルブミン濃度,血清総コレステロール濃度,かつまたは,body mass indexが低い患者でHCV抗体陽性化リスクは高かった.
著者
中井 滋 若井 建志 山縣 邦弘 井関 邦敏 椿原 美治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.599-613, 2012-07-28 (Released:2012-08-07)
参考文献数
48
被引用文献数
7 13

日本透析医学会が2001年から2010年までを対象期間として,全国の透析施設を対象に実施した調査の報告に基づいてわが国の透析人口の将来推計を試みた.各年の施設調査回収率によって補正された2001年末から2010年末までの各年末透析人口に基づいて2002年から2010年までの9か年の各年について透析人口年間増加率を算出した.次いで西暦年をx,当該年の透析人口年間増加率をyとする直線回帰を最小二乗法にて行い,その回帰式を求めた(y=450.372044-0.222751 x,R-square=0.7227,p=0.0037).この回帰式に基づいて2011年以降の各年透析人口年間増加率を推定し,推定された年間増加率に従って各年末透析人口を逐次推計した.その結果,わが国の透析人口は2021年末に348,873人(90%信頼区間:302,868~401,119人)で最大となり,その後減少に転じることが推計された.
著者
宮里 均 耒田 善彦 古閑 和生 井関 邦敏 比嘉 啓 古波蔵 健太郎 諸見里 拓宏 杉山 諒
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.101-107, 2023 (Released:2023-03-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1

新型コロナウイルスに対するワクチン接種は全世界的に進められ3回目,4回目接種も行われている.新型コロナウイルスによる重症化リスクの高い末期腎不全患者に対して積極的なワクチン接種が進められているが診療に関わる透析医療従事者のワクチン接種について十分なデータはない.沖縄県全透析医療施設(74施設)に依頼し医療スタッフのワクチン接種状況をアンケート調査した.2回接種は96.4%(1,746人中1,683人),3回接種は88.3%(1,139人中1,006人)で受けられていた.2回目接種時58.1%の施設でまた3回目接種時29.2%の施設で職員すべてが新型コロナウイルスワクチン接種を受けていた.3回目接種時のアンケートにてワクチン接種を行わない理由を調査した.副反応が怖いが最も多く33件,ついでワクチンは無効と考える26件,周囲に止められた7件などがあげられた.患者の安全を守るためにもより積極的に新型コロナウイルスワクチン接種を進めていくべきと思われる.
著者
井関 邦敏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.1253-1258, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9

慢性腎臓病(CKD)は腎機能(糸球体濾過量:GFR)を中心とした分類であったが,アルブミン尿(albuminuria:A)が追加され腎臓病の原因(cause:C)と併せてCGA分類(仮称)に変更された.3カ月以上持続する慢性の病態であり,予後(死亡,心血管障害,末期腎不全など)と密接な関連がメタ解析で証明され,ヒートマップとして示された.高齢者に多いステージ3が3a,3bに細分化された.
著者
井関 邦敏 藤見 惺 川崎 晃一 尾前 照雄
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-163, 1979 (Released:2010-07-05)
参考文献数
14

A case of pseudo Bartter syndrome in furosemide abuse was described. The case was 24 year-old female, a nurse, who was admitted because of persistent hypokalemia on, she noted pretibial edema for which furosemide was prescribed by a local doctor. Since then, she had taken about 80 mg of furosemide daily until, when transient cardiac and respiratory arrest developed and serum potassium was found to be 2.0 mEq per liter. The patient was advised to discontinue furosemide. Serum potassium, however, remained inn hypokalemic range in spite of potassium supplementation. At admission she appeared healthy and denied using furosemide, diuretics and laxatives. Serum potassium was 2.4, sodium 143, chloride 90 mEq per liter. Arterial blood pH was 7.477 and plasma bicarbonate 31.3 mEq per liter. Diagnosis of pseudo Bartter syndrome was suspected because of 1) persistent hypokalemia with increases in potassium clearance, plasma renin activity, plasma aldosterone concentration 2) low response of blood pressure to angiotensin II 3) minimal to moderate hyperplasia of J-G apparatus 4) no improvement of clinical condition with indomethacin. After discharge, the patient had been well with persistent hypokalemia until, when she became unconscious abruptly followed by generalized convulsion. Serum potassium was 1.5 mEq per liter. Incidentally it was discovered that she had obtained a lot of furosemide from pharmacy without doctor's prescription. At first she insisted not to take furosemide but finally admitted taking furosemide 280 mg daily. It was quite surprising that she had been taking furosemide continuously even though having episodes of cardiac and respiratory arrest, generalized convulsion which, she should know, might be deeply related to f urosemide usage. It is strongly suggested that furosemide abuse would be one another etiologic condition for pseudo Bartter syndrome and furosemide should not be prescribed without careful supervision.
著者
中井 滋 政金 生人 秋葉 隆 井関 邦敏 渡邊 有三 伊丹 儀友 木全 直樹 重松 隆 篠田 俊雄 勝二 達也 庄司 哲雄 鈴木 一之 土田 健司 中元 秀友 濱野 高行 丸林 誠二 守田 治 両角 國男 山縣 邦弘 山下 明泰 若井 建志 和田 篤志 椿原 美治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-30, 2007-01-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
12
被引用文献数
7 7

2005年末の統計調査は全国の3,985施設を対象に実施され, 3,940施設 (98.87%) から回答を回収した. 2005年末のわが国の透析人口は257,765人であり, 昨年末に比べて9,599名 (3.87%) の増加であった. 人口百万人あたりの患者数は2,017.6人である. 2004年末から2005年末までの1年間の粗死亡率は9.5%であった. 透析導入症例の平均年齢は66.2歳, 透析人口全体の平均年齢は63.9歳であった. 透析導入症例の原疾患毎のパーセンテージでは, 糖尿病性腎症が42.0%, 慢性糸球体腎炎は27.3%であった.透析患者全体の血清フェリチン濃度の平均 (±S.D.) は191 (±329) ng/mLであった. 血液透析患者の各種降圧薬の使用状況では, カルシウム拮抗薬が50.3%に, アンギオテンシン変換酵素阻害薬が11.5%に, アンギオテンシンII受容体拮抗薬が33.9%に投与されていた. 腹膜透析患者の33.4%が自動腹膜灌流装置を使用していた. また7.3%の患者は日中のみ, 15.0%の患者が夜間のみの治療を行っていた. 腹膜透析患者の37.2%がイコデキストリン液を使用していた. 腹膜透析患者の透析液総使用量の平均は7.43 (±2.52) リットル/日, 除水量の平均は0.81 (±0.60) リットル/日であった. 腹膜平衡試験は67%の患者において実施されており, D/P比の平均は0.65 (±0.13) であった. 腹膜透析患者の年間腹膜炎発症率は19.7%であった. 腹膜透析治療状況に回答のあった126,040人中, 676人 (0.7%) に被嚢性腹膜硬化症の既往があり, 66人 (0.1%) は被嚢性腹膜硬化症を現在治療中であった.2003年の透析人口の平均余命を, 男女の各年齢毎に算定した. その結果, 透析人口の平均余命は, 同性同年齢の一般人口平均余命のおよそ4割から6割であることが示された.
著者
岡田 一義 天野 泉 重松 隆 久木田 和丘 井関 邦敏 室谷 典義 岩元 則幸 橋本 寛文 長谷川 廣文 新田 孝作
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.817-827, 2010-09-28
参考文献数
3
被引用文献数
1

社団法人日本専門医制評価・認定機構が設立され,学会ではなく,第三者機関が専門医を認定する構想も浮上してきており,現状の専門医制度の問題点を早期に改善し,誰からも評価される専門医制度に改訂しなければならない時期に来ている.全会員と現行の専門医制度の問題点を共有するために,今回,専門医制度の現状を分析するとともに,意識調査を実施した.専門医制度委員会が把握しているデータを2009~2010年の各時点で集計した.さらに,認定施設または教育関連施設が2施設以下の7県の専門医180名および指導医50名を対象に,無記名アンケート調査を2009年10月に実施し,12月までに回収した.2009年9月1日時点での施設会員は3,778施設であり,認定施設は420施設(11.1%),教育関連施設は456施設(12.1%)であり,合格期より認定を継続している認定施設数は45.1%であった.正会員数は11,303人であり,専門医は4,297人(38.0%),指導医は1,620人(14.3%)であった.認定施設における専門医在籍数は,専門医0人0施設(0%),専門医1人(代行)11施設(2.6%),専門医2人256施設(61.0%),専門医3人以上153施設(36.4%)であった.施設コード別の認定施設数と教育関連施設数は私立病院が最も多く,大学附属病院の多くは認定施設であったが,教育関連施設も12施設認めた.認定施設が指定している教育関連施設は,0施設が39.4%,1施設が24.2%,2施設が19.6%,3施設が12.1%,4施設が3.7%,5施設が0.9%であった.意識調査の回収率はそれぞれ専門医38.9%と指導医76.0%であった.専門医は,指導医の申請について申請予定あり:17名(24.3%),申請予定なし:44名(62.9%),未記載:9名(12.9%),指導医は,指導医の更新について更新予定あり:36名(94.7%),更新予定なし:1名(2.6%),未記載:1名(2.6%)であった.低い施設認定率,低い認定施設継続率,低い専門医認定率,低い指導医認定率,認定施設継続のための余裕の少ない専門医在籍数,代行施設認定,基幹病院の非認定施設化,教育関連施設指定のない認定施設,専門医の低い指導医申請予定率,地域格差など解決しなければならない問題があり,専門医制度委員会において議論を継続している.
著者
鈴木 一之 井関 邦敏 中井 滋 守田 治 伊丹 儀友 椿原 美治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.551-559, 2010-07-28
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

透析条件・透析量と生命予後の関係を明らかにするため,日本透析医学会の統計調査結果を用いて,後ろ向き・観察的な研究を行った.2002年末の週3回施設血液透析患者を対象に,事故・自殺を除く死亡をエンドポイントとして,患者の透析条件・透析量と2003年末までの1年死亡リスク,および2007年末までの5年死亡リスクについて,ロジスティック回帰分析を行った.2002年末の平均的透析条件は,透析時間239分,血流量(Qb)192 mL/分,ダイアライザ膜面積(膜面積)1.55 m<SUP>2</SUP>,透析液流量(Qd)486 mL/分であった.また,尿素の標準化透析量(Kt/V urea)は平均1.32,指数化しない透析量(Kt urea)は平均40.7 Lであった.予後解析の結果,透析時間は240分以上270未満を基準として,それより透析時間が短い患者群で死亡リスクが高く,透析時間が長い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.Qbは200 mL/分以上220 mL/分未満を基準として,それよりQbが少ない患者群で死亡リスクが高く,Qbが多い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.膜面積は1.2 m<SUP>2</SUP>未満の患者群で死亡リスクが高かったが,それ以外の膜面積と死亡リスクの関係は明確ではなかった.透析量はKt/V urea 1.4以上1.6未満またはKt urea 38.8 L以上42.7 L未満を基準として,それより透析量が少ない患者群では死亡リスクが高く,それより透析量が多い患者群で死亡リスクが低かった.以上の傾向は,残腎機能がないと仮定が可能な,調査時点で透析歴5年以上の患者で顕著であった.一般的な週3回血液透析では,平均的な透析条件・透析量よりも,透析時間の延長やQbの増加によって透析量を増大させることが,患者の生命予後の改善につながる可能性が示唆された.
著者
中井 滋 政金 生人 秋葉 隆 井関 邦敏 渡邊 有三 伊丹 儀友 木全 直樹 重松 隆 篠田 俊雄 勝二 達也 庄司 哲雄 鈴木 一之 土田 健司 中元 秀友 濱野 高行 丸林 誠二 守田 治 両角 國男 山縣 邦弘 山下 明泰 若井 建志 和田 篤志 椿原 美治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-30, 2007-01-28
被引用文献数
19 7

2005年末の統計調査は全国の3,985施設を対象に実施され, 3,940施設 (98.87%) から回答を回収した. 2005年末のわが国の透析人口は257,765人であり, 昨年末に比べて9,599名 (3.87%) の増加であった. 人口百万人あたりの患者数は2,017.6人である. 2004年末から2005年末までの1年間の粗死亡率は9.5%であった. 透析導入症例の平均年齢は66.2歳, 透析人口全体の平均年齢は63.9歳であった. 透析導入症例の原疾患毎のパーセンテージでは, 糖尿病性腎症が42.0%, 慢性糸球体腎炎は27.3%であった.<br>透析患者全体の血清フェリチン濃度の平均 (±S.D.) は191 (±329) ng/mLであった. 血液透析患者の各種降圧薬の使用状況では, カルシウム拮抗薬が50.3%に, アンギオテンシン変換酵素阻害薬が11.5%に, アンギオテンシンII受容体拮抗薬が33.9%に投与されていた. 腹膜透析患者の33.4%が自動腹膜灌流装置を使用していた. また7.3%の患者は日中のみ, 15.0%の患者が夜間のみの治療を行っていた. 腹膜透析患者の37.2%がイコデキストリン液を使用していた. 腹膜透析患者の透析液総使用量の平均は7.43 (±2.52) リットル/日, 除水量の平均は0.81 (±0.60) リットル/日であった. 腹膜平衡試験は67%の患者において実施されており, D/P比の平均は0.65 (±0.13) であった. 腹膜透析患者の年間腹膜炎発症率は19.7%であった. 腹膜透析治療状況に回答のあった126,040人中, 676人 (0.7%) に被嚢性腹膜硬化症の既往があり, 66人 (0.1%) は被嚢性腹膜硬化症を現在治療中であった.<br>2003年の透析人口の平均余命を, 男女の各年齢毎に算定した. その結果, 透析人口の平均余命は, 同性同年齢の一般人口平均余命のおよそ4割から6割であることが示された.
著者
井関 邦敏
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日本透析医学会の調査によるとわが国の慢性透析患者数は増加の一途をたどっている。2005年度には国民500人に1人の割合を超え、沖縄ではすでに400人に1人の高頻度である。透析導入の原因疾患は1998年度よりそれまで首位であった慢性腎炎から糖尿病(DM)に移行した。前者が減少しつつあるのに対し、後者は直線的に増加し続けている。透析患者増加の背景には膨大な数の透析予備軍が予想される。健診データ数の変動にもかかわらず2mg/dl以上のCKD頻度は約0.2%前後(千人に2人)と一定である(沖縄県総合保健協会の資料)。CKDは多くの場合、自覚症状がなく検尿異常(またはGFR低下)から始まり、徐々に腎機能が低下して末期腎不全に進行する。これまでに報告された透析導入の発症危険因子のなかで最も鋭敏で簡便な検査法は試験紙法による検尿(蛋白尿)である。透析導入の発症率は蛋白尿が多いほど高い。加齢に伴い腎機能は低下するが、蛋白尿を伴わなければ透析導入が必要になるほど低下しない。検尿以外の項目では血圧が重要で、血圧値は高いほど、性別に関係なく透析導入が増える。高血圧は患者数が多いこと、降圧薬で治療可能であることを考慮すると、血圧コントロールの重要性が伺える。肥満は蛋白尿発症および透析導入の有意な危険因子で、とくに男性において肥満の影響が大である。男女差の要因は不明であるが、男性では女性に比し生活習慣、治療コンプライアンスに問題があるのではと考えられる。空腹時血糖値:126mg/dl以上では糖尿病の可能性が高く、透析導入率も高くなる。CKDの発症、進展にメタボリック症候群、肥満が関与していることは明らかとなっている。禁煙、適度な運動、食事指導(蛋白質、食塩、カロリー)が必要である。肥満者では体重減少によって蛋白尿が低下する。生活習慣の改善は末期腎不全予防に有効である。