著者
桜井 国俊 Sakurai Kunitoshi 沖縄大学人文学部
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities and Social Sciences (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.16, pp.29-39, 2014-03-05

沖縄では嘉手納以南の米軍基地が返還されることとなっているが、返還基地の円滑な環境回復をいかに実現するかは極めて重要な地域課題である。日米地位協定第4条第1項は汚染者の米国政府に対し環境回復の責任を免除しているとされる。しかし韓米地位協定は同様の条項を含むにも関わらず韓米両国政府は米国に環境回復の責任が一定程度あると解釈している。この日米・韓米地位協定の解釈における差異を検討しつつ、今後予定される返還米軍基地においていかに円滑に環境回復を実現するかについて、韓国での先行事例を踏まえた提言を行う。Although the schedule is not fixed yet, US military bases south of Kadena are planned to be returned to Okinawa, and their smooth environmental restoration is a very important local issue. Article IV, paragraph 1, of US-Japan SOFA (Status of Forces Agreement)is said to exempt the polluter, namely the US Government, from the responsibility of environmental restoration. Although US-ROK SOFA has the same article, both the US and the Republic of Korea (ROK) Governments understand that the US Government has the responsibility of environmental restoration to some extent. This paper examines thisdifference between Japan and Korea in the interpretation of SOFA and tries to make some recommendations for smooth environmental restoration of US military bases in Okinawa based on the preceding experiences in Korea.
著者
梅津 顕一郎 Kenichiro UMEZU 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.193-202, 2022-03-10

本稿は、社会学的消費文化論の理論枠組みに関する一考察の試みである。かつて若者文化論、メディア文化論等に接点を持ち、ポスト・モダン化する現代社会を説明する有力な議論枠組みの一端を担ってきた所謂消費文化論は、今日、有効な理論的役割を果たしているとは言えない状況になっている。 これに対して本稿では、大塚英志が1989 年の『物語消費論』以来、幾度となく修正を試み展開してきたと思われる「物語消費」の概念を中心に、消費と物語性に関する従来の議論を再整理することで、消費文化論の社会的有効性を再生する足がかりを模索する。筆者は80 年代の消費文化論に対しては批判的な立場であり、その問題視座の根幹をマーケティングと80 年代の我国に於けるポスト・モダニズムの接点に置いていることを公言している大塚にとってその現代社会論的な貢献について筆者のような観点から議論することは、必ずしも本人の執筆意図に即したものであるとは言えないだろう。しかし筆者は大塚の議論が、益々グローバル化する情報社会の下での、消費を介した認識や社会観、あるいはアイデンティティの形成に対して批判的な議論を展開するための、有効な道具となりうる可能性を孕んでいると考える。彼の提示する「サーガ(saga)」としての大きな物語という概念は、J.F. リオタールが提起した「ナラティブ(narrative)」としての大きな物語とは本質的に異なるものである。しかしそれは決して概念的誤謬によるズレではなく、むしろ「物語」の変質を言い当てたものである。 ここでは、大塚の「サーガとしての物語」と、J.F. リオタールによる「大きな物語」の概念について比較検討を行い、それらを大澤真幸による3 つの時代区分に当てはめることにより、シミュラークルも含む記号的価値の消費と、それを通じた世界認識の概念地図を、試論的に構築していく。
著者
富山大学人文学部文化人類学研究室 藤本 武 野澤 豊一
出版者
富山大学人文学部文化人類学研究室
雑誌
地域社会の文化人類学的調査
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-198, 2020-02-28

はじめに(藤本武/野澤 豊一)地域概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第1部 文化資源の創造 1.小矢部に根付くメルヘン : 建築から市の象徴へ(吉田彩夏)・・・・・・・・・・15 2.小矢部に息づく武将・木曽 義仲 (福原悠平)・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 3.小矢部ブランドの現在 (小倉和裕)・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・64 第2部 人が輝ける居場所 4.小矢部市における障害者支援 : 障害者が働くということ(林美奈)・・・・・・・81 5.末友における農業の変遷と新たな女性の役割 (高島加奈子)・・・・・・・・・・112 第3部 地域と社会に貢献する活動 6.北蟹谷地区で活動する団体 : 伝承部会に焦点を当てて(安達史弥)・・・・・・・130 7.小神集落における地域行事の移り変わり(高社華)・・・・・・・・・・・・・・149 8.変化する民間伝承の語り : 宮島で語られる民間伝承と現在の語り(飯井清隆)・・171
著者
Melley Christopher めりー くりすとふぁー メリー クリストファー 沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科非常勤講師・Ph.D(哲学)
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 = Okinawa Christian University Review (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.13, pp.47-57, 2017-02-10

多くの他大学がそうであるように沖縄キリスト教大学もまた内外的に深刻な難問に直面している。この論文はこうした深刻な難問を概説し、人々の多様性を育てる学びの実行可能な中心的存在とその機能を果たすということがどのようなことを意味するのかを根本的に再考し、そして、持続可能な改革と洗練された改善法を採用し、各学部によって見出された本大学が保有する学術的強みを活かすことにより、沖縄の未来の貴重な一部を本大学が担うという可能性を高める具体的な手順を提案する。
著者
四方 由美 大谷 奈緒子 北出 真紀恵 小川 祐喜子 福田 朋実 Yumi SHIKATA Naoko OTANI Makie KITADE Yukiko OGAWA Tomomi FUKUDA 宮崎公立大学人文学部 東洋大学 東海学園大学 東洋大学 宮崎公立大学 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Toyo University Tokaigakuen University Toyo University Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.79-92, 2019-03-08

本稿は、宮崎公立大学人文学部紀要第25巻第1号に掲載の「犯罪報道の共起ネットワーク分析(1)」(以下、前稿)に続き、犯罪報道分析を行い、その結果をジェンダーの視点から考察したものである。週刊誌報道を対象にKHコーダーを用いて頻出語句を抽出した上で、共起ネットワーク分析を行い、事件報道において何がどのように関連付けて伝えられているのか、数量的かつ体系的にとらえることを試みた。犯罪事件の報道において女性被害者、およびその関係者の伝えられ方について特徴を導出することができた。
著者
崎原千尋 さきはらちひろ Sakihara Chihiro 沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科特任講師アメリカ研究
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 = Okinawa Christian University Review (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.14, pp.57-65, 2017-10-16

アメリカ文学の講義を担当するにあたって、いかにして沖縄の学生たちが黒人文学を身近な歴史や、社会、文化と関連 づけて読み解き、さらに、race(人種)、gender(ジェンダー)、そしてclass(階級)という概念をクリティカルに分析す る視座を身につけることができるのか、ということを常に問い続けて来た。本稿は、このような問いを基点とし、トニ・ モリスンのThe Bluest Eye(1970)を教材とした実践例を取り上げながら、文化研究の手法と「うちなーぐち」を使ったペダゴジカルな試みについて論述する。具体的には、(1)関連づけ:沖縄の歴史的、文化的文脈に関連づけさせ、親近感を持たせること、(2)可視化:視覚教材を用いて問題を可視化させ、分析概念を例示すること、に焦点を当て、学生たちが自ら進んで問題に対して取り組み、主体的かつトランスナショナルな学びが可能になることを示唆する。
著者
新垣 友子 島袋 純 あらかき ともこ しまぶくろ じゅん Arakaki Tomoko Shimabukuro Jun 沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科准教授・言語学 琉球大学教育学部教授・政治学
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 = Okinawa Christian University Review (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.13, pp.37-46, 2017-02-10

2009年、琉球諸語は危機言語としてユネスコに認定されたが、それ以来、復興のための言語計画はどのように展開されてきたのであろうか。琉球諸語の維持・継承に関する有効な対策を講じない限り、2050年には消滅するといわれているが、この件に関する行政の取り組みは、有効とは言い難い。本稿では、行政の取り組みを検証するとともに、国連やその他の国際機関がどのように「言語権」という概念を明文化してきたか軌跡を概観しながら、行政の取り組みがいかに遅れているか、また国として、いかにその概念の発展と逆行する見解を示しているかをみていく。
著者
Ulvog A. David あるふれっどでいびっどゆるヴぁーぐ アルフレッドデイビッドユルヴァーグ 沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科准教授法学
出版者
沖縄キリスト教学院大学
雑誌
沖縄キリスト教学院大学論集 = Okinawa Christian University review (ISSN:13498479)
巻号頁・発行日
no.14, pp.25-36, 2017-10

Japan's current constitutionally-guaranteed right to petition as well as laws and regulations detailing the procedures for exercising this right have emerged as part of a centuries old process through which people have sought to have their voice heard in state affairs. This paper looks at the development of the right to petition in Japan's modern constitutions, relevant laws and regulations, legal theories and judicial decisions, and shows how the right to petition has evolved into a quasi-political right, supplementing and enhancing representative democratic systems and administrative organs.日本憲法で保障された現在の請願権、そしてこの権利を行使するまでの手順を具体化した法規制は、国民が自らの意思を政治に反映させようと努力してきた長年の過程の中で生まれた。本稿では、日本の近代憲法下での請願権の発展と、関連法規制、法理論や判例に焦点を当て、請願権が如何にして民主的代議制や行政機関を補完、強化する準政治的権利に変化したのかを明らかにする。
著者
島村 聡 金城 隆一 鈴木 友一郎 稲垣 暁 しまむら さとる きんじょう たかかず すずき ゆういちろう いながき さとる Shimamura Satoru Kinjyo Takakazu Suzuki Yuichiro Inagaki Satoru 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.24, pp.51-62, 2019-10

沖縄本島中南部にある5か所の子どもの居場所等の職員、および、当該居場所を管轄する自治体の担当課の職員に居場所運営についてのインタビューを実施したところ、居場所は自身持つ指向から活動型と支援型に分かれ、行政のスタンスから地域型と機関型に分かれることが判明した。行政におかれた子どもに貧困対策支援員は、位置づけの曖昧さから、これらの居場所のネットワーク拡大には寄与できていない。
著者
チャンドララール ディリープ 後藤 亜樹 Dileep Chandralal Goto Aki 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.17, pp.73-87, 2016-03

沖縄スリランカ友好協会により企画・実施された「スリランカ命の水プロジェクト」が2年間の月日を経て完了した。これまで、なぜ、バルンガラ村に水道設備が設置されなかったのか、村の人々の経済事情、生活はどのような状態であるかを明らかにするためインタビュー調査を実施し、記録した。