著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.26-36, 2017-03-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
11 8

昨今, 深刻化・複雑化するいじめについて, 小学生(3,720人), 中学生(3,302人), 高校生(2,146人)に調査をおこなった。いじめの被害・加害経験を尋ねた結果より, いじめの加害役割と被害役割が固定したものではないことが明らかになった。また, いじめの被害者は自尊感情が低く情緒不安定な特徴を有するが, それに加害経験が加わるとより一層, 自尊感情(とくに人間関係における自己肯定感)は低くなることが示唆された。また, クラスメートをからかうことを「悪くない」「おもしろい」と認知するものの割合は, 年齢とともに多くなること, その傾向は, とくにいじめ加害経験を有するものに多いこともわかった。いじめによる不登校や希死念慮は, ネット上のいじめ・集団無視・金品たかりといういじめでとくに強く経験される。またこれらの辛さは, 加害経験がなくいじめ被害のみのものに強く, 仕返し願望は, いじめ加害経験者により強い。いじめを見たときの反応(注意する・誰かに相談する・傍観する)も, 発達段階による違いが見られた。さらに, そうしたいじめに対する反応の背景にも, いじめ加害経験や自尊感情の低さが関与していることがうかがえた。
著者
伊藤 美奈子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.115-122, 1993-08-10 (Released:2010-07-16)
参考文献数
18
被引用文献数
13 7

The processes of socialization and personalization were reexamined from the viewpoint of adjustment, and two concepts: social orientedness and individual orientedness, were proposed to capture the two processes. The main purpose of the current study was to construct a scale to measure social and individual orientedness, and examine its reliability and validity. Firstly, seventeen items were selected for the scale through item analysis, then its reliability was estimated with 310 male and 402 female students, using the split-half and test-retest methods. Factor analysis of the items yielded two factors. Secondly, validity of the scale was examined; those same subjects filled Self-consciousness scale and egogram test (TEG), Sociometrix-test, data on personal troubles, and teacher's judgement score on personal troubles were obtained. The results showed that the concepts were effective in measuring both personal trait and developmental level, and that social orientedness concerned the orientation to others and the external (interpersonal) adjustment, while individual orientedness was for the self and the internal.
著者
伊藤 美奈子 千勝 泰生 松本 明美
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-42, 2013 (Released:2013-09-30)
参考文献数
9

目的:生活をともにする夫婦の生活習慣と生活習慣病における類似性について分析した.方法:対象は2008年4月~2012年3月に当健診センターを受診した40~74歳の夫婦570組.夫と妻それぞれについて,6つの生活習慣(運動,朝食,間食,睡眠,喫煙,飲酒)のうち,保有する好ましくない生活習慣の数によって3群に分け,年齢,BMI,腹囲,体重変化,生活習慣病を比較した.上記で3群に分けた受診者の配偶者に関しても同様に3群比較を行った.夫婦の関連をみるために,夫が因子を有するときにその妻も有するオッズ比を求めた.結果:夫も妻も不良な生活習慣の数が多いほど,体重増加と腹囲が大きく,生活習慣病の保有率は高い傾向にあった.配偶者の比較でも同様の結果を得た.好ましくない生活習慣の数が多い受診者ほど配偶者の好ましくない生活習慣保有数も多かった.夫が不良な生活習慣を有するときにその妻も有するオッズ比は,6つの習慣すべてにおいて2以上となり有意差を認めた.夫が60歳以上の夫婦の方が60歳未満の夫婦に比べオッズ比が高かった.結論:夫婦の生活習慣は関連があり類似していることが示唆された.好ましくない生活習慣を有する受診者については,配偶者からの影響の可能性を意識した保健指導を早期に行うこと,また,単独受診者に対しては,次回から夫婦での受診を促し,夫婦単位で保健指導を行うことで効果的な習慣改善につながると思われる.
著者
伊藤 美奈子 川音 晴夫 仲由 武實
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.247-254, 1999-11-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
24

ポビドンヨード原末 (PVP-I) の2, 20および200mg/kgを雌雄ラットに28日間反復経口投与し, その安全性について検討した. その結果, 最高投与群の200mg/kg群で投与直後に一過性の流涎が認められ, また同投与群で総コレステロールの増加あるいはその傾向が認められた. しかし, 甲状腺の重量に変動はみられず, 組織学的検査においても変化は認められなかった. その他, PVP-I投与によると考えられる影響は認められなかった.以上, PVP-Iをラットに28日間反復経口投与してその毒性学的影響を検討した結果, 無毒性量は20mg/kgと推定された. この用量は, 成人がイソジンガーグル (PVP-I, 7.5%) の15倍希釈液60ml (1回の含嗽量に相当) の3倍量を28日間飲み続けた時のPVP-I摂取量にほぼ相当することから, 通常のうがい程度の使用であれば問題はないと考えられた. しかし, ヨウ素の過剰摂取は特に新生児や胎児の甲状腺機能異常をきたす報告もあることから, 妊婦や授乳期の母親, 新生児に対するPVP-I製剤の使用には十分な注意が必要と考えられる.
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.293-301, 1993-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

Two concepts: social orientedness and individual orientedness, relating to two-dimensionality of self-consiousness, were proposed in order to grasp personality traits and adjustmental level and developmental level. Three questionnaires: an orientedness scale, a SD self-concept scale, and a self-esteem scale were administered to adolescent and adult subjects. The results showed that orientedness scores rose with increasing age, but a difference between males and females on both changing phase and process was found. Each orientedness changed in content, such as social orientedness following the next process: from dependency and others-direction to coexistence; on the other hand, individual orientedness followed the next process: from egocentrism to autonomy. These orientednesses mean the content of horizontal axis and vertical axis of two-dimensional developmental schema. From the relation with self-esteem, and discrepancy scores between real self image and two ideal-images: ‘social ideal self’,‘individual ideal self’, by SD self-concept scale, it was clear that the individuation process on emotional aspect, and the socialization process on the cognitive one could be observed.
著者
伊藤 美奈子 中村 健
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-130, 1998-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
14
被引用文献数
4

本研究では, 教師312名とカウンセラー121名を対象に, 次に挙げる (1)~(4) の項目に基づき制度に対する両者の意識や意見を尋ねた。(1) 双方が教師・スクールカウンセラーに期待する役割,(2) スクールカウンセラーに必要と考える条件,(3) 制度への関心,(4) 制度導入に伴う変化の予測である。また, カウンセラーについては, 学校経験 (教職歴) の有無により二分し (経験あり群・経験なし群), 教師群を含む3群間で比較検討を行った。その結果, 教師群では双方の専門性をいくぶん折衷した役割を期待するのに対し, 経験なし群は両者の専門性を強調した関わりを良しとし, 経験あり群は教師・スクールカウンセラーどちらにも積極的な関わりを期待していた。またスクールカウンセラーに求める条件としては, 双方ともに専門性を最優先していたが, 3群間の比較より, 教師群は「教職経験」についても相対的に重視していることがわかった。また制度への関心や期待度は, 経験あり群が最も高く, ついで経験なし群で, 教師群は制度に対する関心も低く情報量も少ないことが示唆された。今後の見通しについては, 積極的に評価した経験あり群に対し, 教師群では生徒指導上の不安を, 経験なし群は教師集団との関係において少々の不安を感じていることが示唆された。
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.251-260, 2003-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
9 1

本研究では, 中学校における保健室登校の実態を調べるとともに, それに対する養護教諭の意識について明らかにすることを目的とした。小・中・高校の養護教諭285人に対し,(1) 保健室登校についての悩み,(2) 保健室での相談活動に関する意識と相談満足度,(3) スクールカウンセラー (以下sc) 配置の有無,(4) 昨年度と今年度の保健室登校児童生徒についての質問 (人数, 期間, 不登校のタイプ, 来室頻度, 経過, 他の教師との連携の様子など) からなる質問紙を実施した。研究1では, 回答が得られた保健室登校生徒男子106 人, 女子206人の回答を分析した。その結果, 保健室登校児童生徒の実態とそれに対する養護教諭の対応とその経過は, 校種によって異なるのであり, 不登校のタイプによっても差異のあることが明らかになった。研究IIでは, 保健室登校に関する悩みには〈多忙感〉〈連携の悩み〉〈対応上の不安〉という3つがあることが見出された。保健室登校を多く抱えるほど多忙感が大きく, 保健室登校に悩んでいる養護教諭ほど, 相談役割 (SC役) を兼ねることへの不安も大きいことが示唆された。さらに, 保健室登校とSC の有無の組み合わせによる3群を比較する中で, SCが配置された学校では, 保健室登校の人数が多いが, 対応上の不安は小さく, 養護教諭の相談活動満足度は高いことが明らかになった。それより, 養護教諭とSCとの連携の意義が検討された。
著者
伊藤 美奈子 伊藤 美奈子 栗本 美百合 白水 倫生
出版者
奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科
雑誌
人間文化総合科学研究科年報 (ISSN:09132201)
巻号頁・発行日
no.36, pp.25-37, 2021-03-31

The disruptions in the educational environment caused by Covid-19 have had a signifi cant impact on universities. In May of 2020, in the midst of the ongoing ban on university campuses, we conducted a survey of enrolled university and graduate students in order to understand their situation and to contribute to their future support. The content of the survey included 12 items asking about physical and mental stress, and 10 items on attitudes toward university life, such as asking them "What is worrying or troubling you now?". The results showed that the new students were more anxious about university life and preferred face-to-face classes to distance learning than other grades. In addition, a comparison of living arrangements revealed that students who live alone were more stressed mentally and physically than students living at home or in a dormitory. It was also suggested that there was a diff erence in attitudes toward the university and stress levels depending on the object of concern. In the future, support and assistance to students and graduate students based on these results will be required.
著者
伊藤 美奈子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.205-208, 1992-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

The purpose is to examine the relationship between self-acceptance and personalities developmentally, as for evaluative and affective dimensions. Results: Males and females showed differences in the formation of adolescent self-acceptance. At junior high school level, the accepted personalities are not yet differentiated as for two dimensions in both males and females. In males, they are differentiated at senior high school, and above this level, they showed a linear increase in differentiation. Females showed emotional differentiation at junior high school, and behavioral differentiation at senior high school, and further emotional differentiation at college level. The transition of male is “from a few limited to diverse”, while for females it is “from diverse to a few limited”, As the traits to self-acceptance diversify, the self-acceptance score is high.
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.12-20, 2000-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
25
被引用文献数
18 8

本研究は, 教師のバーンアウト傾向を規定する要因について調べることを第1の目的としている。208 名の教師を対象に次の項目についての調査が実施された。(1) 性格特性,(2) 教師としての能力評価と理想の教師像,(3) 仕事上のストレス,(4) サポート,(5) 周りの同僚に対するイメージ,(6) バーンアウトという内容からなる。その結果, 〈達成感の後退〉は, 性格特性の中でもNP (やさしさ・世話), 授業指導能力などの《指導性》と, 職場での人間関係やサポートなどの《関係性》により解消されることが示唆された。また〈消耗感〉はく達成感の後退〉が強い者に多く見られ, 《関係性》によって抑制されるという点では〈達成感の後退〉と同様であったが, 《悩み》によって促進されるという特徴が示された。また若年群とベテラン群を比較した結果, 若年群の方が〈達成感の後退〉を強く感じていたが, その背景には授業指導に関する自信の低さがあることが示唆された。また, クラス運営を重視する授業指導志向タイプと, 子どもとの関係性を大切にする関わり志向タイプを比較した結果, 前者では授業能力の評価がバーンアウトに関与するのに対し, 後者では同僚との人間関係がバーンアウトを防止するのに重要な機能を果たすことが示唆された。
著者
伊藤 美奈子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.18-24, 1994-04-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The degree of integration of contrasting traits in the person may be an index of personal maturity. This study examined such an integration process from the framework of individual and social orientedness. Subjects, 118 male and 329 female students, were asked to fill out an orientedness scale, a short version of TSPS: a measure of the two-sidedness of personality, and a self-esteem scale. Results showed that for those high on one-sidedness, individual orientedness turned out to be the sole factor, clearly bisecting those high and low on self-esteem and other traits. High correlations of self-esteem with traits like leadership and activity seem to indicate that the highly one-sided use a single dimension for their judgments. On the other hand, when one-sidedness was low, both individual and social orientedness became necessary, and ratings of personality traits moderate. Self-esteem correlated with flexibility and deliberateness, showing both active and reflective tendencies. As for the orientedness, individual orientedness is related to active traits and self-esteem, while social orientedness correlated with both active and reflective traits, implying moderate characteristics for the person's personality.