著者
有泉 知英子 佐藤 真理子 並木 理可 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, pp.279, 2010

【目的】世界には様々な民族服があり,各々の生活様式や気候に適応するよう工夫が凝らされている.本研究では下衣の形態に着目し,民族服3種の運動機能性及び温熱的快適性について検討を行った.<BR>【方法】被験者は平均年齢22歳の若年女子4名.実験衣はパンタロネス(グアテマラ),シャルワール(インド他),パー・チュンガベン(タイ),現代服としてストレートパンツ,計4種をシーチングで製作した.測定は運動機能性評価として衣服圧及び官能評価を,温熱的快適性評価として衣服内温湿度を計測した.1)衣服圧…静立・屈曲・あぐら姿勢で,前面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点),側面(MHL・HL・大腿中央),後面(WL・MHL・HL・大腿中央・膝蓋骨中点)の計12点を測定した.2)官能評価…動きやすさについて5段階評価を行った.3)衣服内温湿度…実験衣を着用し,28℃・50%RH環境下で安静5分→足踏み3分における腹部前突点・大腿前面中央・殿部後突点の計3点を測定した.<BR>【結果】衣服圧では,現代服の前面(大腿・膝蓋骨),側面(MHL・HL・大腿),後面(HL)が高い値を示した.現代服は民族服より総じてゆとりが少ないと考えられる.シャルワールは,屈曲時の膝蓋骨中点とHLを除くほとんどの部位で低い値を示し,官能評価においても有意に高い評価を得た.衣服内温湿度測定の結果,温度変化量において現代服は安静時の上昇(A)大,動作時の下降(B)小であった.3種の民族服はA小,B大であり,ゆとりが多いため動作によるポンピング効果が生じたと考えられる.本研究により,民族服の機能性を定量的に評価できる可能性が示唆された.
著者
佐藤 真理子 趙 羅衡 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

目的 民族衣装には,気候・風土に適応可能な素材の選択,姿勢・動作を含む生活様式を反映したデザインの工夫等,長い年月にわたり積み重ねられてきた知恵が詰まっている.本研究では,アジアにおける民族服の下衣に着目し,素材とデザインが温熱的快適性,運動機能性へ及ぼす影響について検討を行った.<br>方法 被験者は23&plusmn;1歳の若年女性5名,実験衣はシャルワール(インド),バジ(韓国),ストレートパンツ(現代服)の3種である.運動機能性評価としては,同一素材で製作した実験衣を着用し,9種の動作時(立位,椅座,正座,胡坐,立膝,横座り,体育座り,日本のお辞儀,韓国のお辞儀)における衣服圧測定と官能評価,温熱的快適性評価としては,各市販品(ポリエステル100%・重量約200gで統一.インド,韓国,東京で購入)による物性試験と衣服気候計測(27℃・50%RH環境下で立位安静&rarr;足踏み運動&rarr;座位安静)を行った.<br>結果 シャルワールは,通気性と透湿性に優れ,接触冷温感が高く,暑熱気候への適応性が示された.バジは,接触冷温感が低く,衣服内温度は高く,防寒機能に優れていると考えられる.現代服は,正座,胡坐,立膝,日本と韓国のお辞儀において,高い衣服圧を示し,床に座っての姿勢や動作の多い&ldquo;伝統的所作&rdquo;に適さない様子が明らかとなった.
著者
佐藤 真理子 王 佳琪 青木 識子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.220, 2018 (Released:2018-07-28)

【目的】近年,多様性社会への取り組みが進む中,性的少数者(LGBT)への理解は深まりつつあるが,制服における画一的な男女差等,衣服分野でLGBTの人々に十分対応できていない現状がある.本研究では,男性用体型補正インナーに着目し,男性同性愛者の体型に関する意識,体型補正インナーに求める要素等を明らかにすると共に,市場の体型補正インナーの快適性・機能性を検討し,LGBTの人々の衣環境における質向上への寄与を目指した.【方法】男性同性愛者26名(26±6才)と異性愛者26名(21±3才)を対象に,体型意識,インナーに求める要素等の調査を行った.また,市販されている体型補正インナーの着用効果と着用快適性を検討するため,三次元計測と官能評価を行った.【結果】アンケート調査の結果,男性同性愛者の体型意識において,自身については異性愛者と差はなかったが,恋愛対象に求める体型は筋肉体型が8割近くを占めた.体型補正インナーの認知度,着用希望共に,同性愛者で高い割合を示した.三次元計測の結果,体型補正インナーは一般インナーに比べ,肩先点下5cmで約105%,チェストラインで約110%周径が増大し,三角筋,大胸筋を模擬した状態が実現できており,官能評価においても,体格がより良く見えるとの申告が得られた.しかし,肌触り,筋肉パッドの擦れ等の評価が低く,着用快適性の改善が今後の課題と考えられる.
著者
佐藤 真理子 熊谷 伸子 小出 治都子
出版者
文化学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

袴は,前後2枚の台形状の布を縫製した構造で,腰部と脚部を覆い,前布の襞,後布の腰板,前後二重に締める紐を特徴とする和服の一種である.本研究では,袴を,日本発のクールなファッションとして広く世界に発信することを目指し,市場に関する現状調査,マンガにおけるイメージ分析,日本と海外での意識調査,機能性・快適性評価,伝統的所作における役割分析を行った.その結果,袴は,新しい和のモードとしての可能性を有する.着心地の良い機能的な民族衣装であることが明らかとなった.
著者
佐藤 真理子 齋藤 紘野 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.124, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】日本舞踊の伝統的所作である「振(ふり)」は,日本舞踊特有の身体動作であり,舞踊表現の基本的要素として伝承されてきた.本研究では,「振」のポーズと動きにおいて,男舞と女舞の所作の違いが,和服と人体の関係性にいかなる影響を及ぼすか,明らかにすることを目的とした.【方法】被験者は現代日本舞踊T流師範を持つ22歳の女性2名.着装条件は通常の稽古時と同様,浴衣・半幅帯・足袋・下着(キャミソール・スパッツ・和装用ブラジャー・ショーツ).測定動作は,(1)「束(そく)」;両足を揃えてまっすぐに立つ,(2)「座り」;片膝を付いて座る,(3)「入れ込み」;片足の爪先の前に反対の足を入れ込んで置く,(4)「姿見」;袖を胸に当て自分の姿を見る,(5)「振り返り」;片方の肩を引いて振り返る,(6)「かけ回り」;片足を軸足にかけるようにして身体の向きを変える,(7)「すり足」;足をするように前に出し歩く,の7種の「振」とし,男舞と女舞で踊り分けた.測定項目は,(1)~(5)の静止時の衣服圧と重心動揺,及び(1)~(7)の動作時の筋電とした.【結果】重心動揺では,「姿見」において女舞の総軌跡長の値が大であった.女舞は,男舞に比べ腰を落とし膝を曲げるため,姿勢の保持が難しいと考えられる.筋放電量では,男舞で前脛骨筋と大腿直筋,女舞で腓腹筋と大腿二頭筋の値が大であり,女舞で脚部の背面の筋をより使う傾向が明らかとなった.衣服圧では,女舞の所作において,身体をねじる,腰を落とす等,女らしさを強調する曲線的な動きをとるため,総じて値の大きい傾向が示された.
著者
佐藤 真理子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
no.36, pp.217-228, 1996

This paper is partial product of ethnographic research at an elementary school. It deals with a teacher's evaluation behavior in classroom. Currently, most grade teachers don't make achievement test by themselves, but use ready-made "gyosha-test", which is standardized all over Japan. And in classroom I observed, pupils'grades on report cards are mostly determined on the basis of these results. The purpose of this paper is to describe mechanisms which lead a teacher to adopt the results of "gyosha-test" as a main criterion of grading report cards. I analyze this teacher's behavior from the following three view points. First, a teacher's evaluation is restricted by the present environmental conditions at school. Second, it's the most fundamental point, this teacher's evaluation behavior is based on his layer knowledge in everyday life. Third,a teacher prepares his assertion which can remove some conflicts caused by this present evaluation behavior.
著者
桑野 玲子 佐藤 真理
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.673-677, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
8

近年都市部で頻発している道路陥没は, 多くの場合老朽埋設管の破損部等から土砂が流出することに起因し, 社会的損失が大きいにもかかわらず, 対症療法的な対策が中心となっているのが現状である.また, 道路や住宅造成地等で起こる比較的大規模な陥没にははっきりした原因が特定できない場合もあり, 埋設構造物周辺の埋戻し不良や地下の水みちに沿った土砂流出等が長年にわたって地盤内ゆるみを助長し陥没に至ったと推定される.舗装下の地表近傍で顕著な空洞が存在するような陥没寸前の状態においては, 現状のレーダー探査技術により比較的高い確度で探知可能であるが, 空洞が深層部にある場合, 空洞・ゆるみの境界が不明瞭な場合, 輻輳した地下埋設物と空洞・ゆるみ部が渾然としている場合などは, 探知技術の限界により問題箇所の検出が困難である.本研究では, 地盤陥没を未然に防止するための探知手法を提案するために, 地盤内空洞・ゆるみの形成過程を明らかにし空洞・ゆるみのパターンを類型化すること, さらに陥没に至る“危険な”ゆるみを抽出することを目指している.まだ本取組みは継続中であるがその概要を紹介する.[本要旨はPDFには含まれない]