著者
佐藤 紀子
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.127-132, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
13

本研究は, 17世紀のオランダの画家フェルメールの描いた風俗画の室内空間を図学的に分析することにより, 彼が制作時にカメラ・オブスクラを利用したという仮説の可能性について考察する.彼の13作品から床のタイルサイズを基準として分析図や平面図立面図を作図した.その結果, カメラ・オブスクラは, 画家が構図を決定するとき, 描く対象の空間を構成する要素間の比率をキャンバスサイズが異なる場合でも, その比率を維持し, より正確に下書きを行うための補助的な役割を担っていたと考えられる.さらに, 画家は同じ視点から捉えた空間を描くとき, 遠近法によって.描かれた部屋の奥行きに変化を加えた可能性がある.このことから, カメラオブスクラは, 描かれる部屋の奥行きを決定し, 絵画空間を構成するための遠近法を使う目安となり, その位置を数パターン示したと考えられる.
著者
佐藤 紀子 雨宮 有子 細谷 紀子 飯野 理恵 丸谷 美紀 井出 成美
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-11, 2018-09

[抄録] 本研究の目的は,介護予防事業従事者(以下従事者とする)が活用できる「高齢者のエンパワメントに着目した介護予防支援ガイド」(以下ガイドとする)を作成し,ガイドを活用した従事者間の振り返りの内容からガイドの有効性を検討することである。まず,先行研究で明らかにした高齢者のエンパワメントに影響を及ぼす支援内容を精錬化させ,7項目21の支援内容からなる支援指針を作成した。ガイドは,この支援指針を含む6つの項目で構成した。作成したガイドを活用して,3施設で3か月間介護予防事業を実施してもらった。開始から1か月,2か月,3か月の時点において,従事者間でガイドを用いて支援の振り返りを行ってもらい,その内容をデータとした。振り返りの内容と変化から,1.従事者が高齢者のエンパワメントの視点から有効な支援ができたか,2.ガイドを活用した従事者間の振り返りによって,改善点を見出すことができたかの観点から有効性を検討した。その結果,「高齢者の理解」,「従事者と参加高齢者との関係性」,「他者との相互作用の場の提供」,「高齢者が継続的に介護予防に取り組める環境整備」というエンパワメント支援に求められる視点から実践の質を高められることが確認できた。また,本ガイドは「支援の方針の共有」「できている,あるいは不十分な支援を確認」「支援の必要性や重要性への気づき」「課題と今後の方向性の明確化」という振り返りを促進するものであり,実践の改善点を見出すことに有効であったといえる。[ABSTRACT] The purpose of this study was to create a "long-term care prevention support guide focused on the empowerment of elderly people"( hereinafter, "care guide") that can be used by long-term care prevention practitioners, and to investigate the efficacy of this care guide based on the reflections of practitioners who used the care guide. The first step involved refining the details of support that influence the empowerment of elderly people revealed in earlier research and subsequently creating a support guideline based on 21 types of support organized into 7 items. The care guide was formed of six of the items included in this support guideline. The created care guide was then used in the long-term care prevention activities of practitioners at three different facilities for three months. At one, two and three months after introducing the care guide, practitioners working at the three facilities were asked to reflect on support using the care guide. The details of these reflections were then rendered as data. The details of and changes in reflections were used to examine the efficacy of the care guide in terms of the success of(1) the care guide in effectively motivating practitioners to act from the perspective of empowering elderly people, and(2) reflections in improving the practices of practitioners who used the care guide. The results confirmed that the care guide was able to enhance the quality of practices required to support empowerment, such as "understanding elderly people," "relationships between practitioners and participating elderly people," "providing a place for interaction with others," and "providing an environment where elderly people can continuously work on long-term care prevention." Further, the care guide was also able to enhance the reflections, such as "sharing support strategies," "verifying feasible or inadequate support," "recognizing the necessity and importance of support," and "clarifying challenges and future objectives." This confirmed the efficacy of the care guide since practitioners were able to reflect on support in a way that enabled them to improve their practices.
著者
佐藤 紀子 西井 美甫 渕上 季代絵
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.75-80, 2004
被引用文献数
1

描画支援ツールは, デッサン初心渚および描くことが苦手な学生を支援するために作成するものである。従来, デッサン初心渚が, 見えるものを見えた通りに二次元上に表現できるようになるまでには, 訓練の時間と技術の取得が欠かせない。しかし, 本格的にデッサンを学ぶ場を持てない学生には, 学習ソフトとして機能するツールが必要だと考えられる。そこで, 初心渚がデッサンを学ぶ上で必要な指導項目の初期調査を行った。今回の研究では, 個々のデッサン力の現状把握とデッサンの描画傾向を調査目的とした。既にデッサンに必要な要素として渕上の調査報告 (1) から, 構図, かたち, 質感, 陰影に関する問題が検討すべき点として明らかにされている。そこで, 各要因に関してデッサンの特徴をあらいだした42項目について紙コップを対象としたデッサンを調査し, パターン分類の可能な分数量化III類によって解析した。その結果から初心者がデッサンを描いた場合に完成度に差がつきやすい描画要因, そして描画傾向について3グループを提示することができた。これらを統合し, 初心渚がデッサンを描くときに必要とする要素を描画ツールにどのようにいかせるのかその可能性を提案する。
著者
岩井 郁子 佐藤 紀子 豊増 佳子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

看護記録は、保健師助産師看護師法の規定や概念がない。診療報酬の算定要件として看護計画と経過記録が求められ、施設毎に記載内容と様式を決め標準化がなされていない。診療記録開示において看護記録は診療記録に含まれ、また、個人情報として位置づけられた。このような中で、診療記録開示の目的にかなう標準化された看護記録が求められている。本研究では、診療記録開示の目的を踏まえ、アメリカ、イギリスの看護記録の実際と記録指針から、カルテ開示の目的にかなう看護記録モデルの本質を検討し、また、74病院の看護記録の分析と109名の看護記録記載を指導する看護師の指摘から、現状の看護記録をめぐる課題を明らかにした。これらの結果を踏まえて、厚生労働省、関連団体である日本看護協会、日本医療機能評価機構の指針や保健師助産師看護師法、医療法等の法的な記述から看護記録の概念を抽出し、概念モデルを作成した。概念は、看護記録記載の目的と内容を示し、看護記録は、看護者としての倫理・業務上の責務の遂行、質を証明するものと位置づけた。さらに電子カルテ時代、患者を中心に、医療チームメンバーが共同で記載できる標準化された記録として、日本において一般化可能な記録枠組みを選択し、関連団体の指針を活かした構成要素およびその概念から看護記録モデルおよび記載基準を作成した。この基準は全国52の社会保険病院の看護記録記載基準に活かした。基準だけでは、記載内容の標準化は困難である現状から、基準に基づく具体的な記載例を含む看護記録モデルを提示した。このモデルは診療記録開示の目的にかなうしかも記録時間の削減に貢献できる内容をめざした。
著者
細谷 紀子 佐藤 紀子 杉本 健太郎 雨宮 有子 泰羅 万純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.606-616, 2022-08-15 (Released:2022-08-04)
参考文献数
27

目的 本研究は,全国市区町村における災害時の共助を意図した平常時の保健師活動の実態とその実施に関連する要因を明らかにし,災害時の共助,すなわち住民相互の助け合いを推進するための平常時における保健師活動に示唆を得ることを目的とする。方法 2019年1月1日現在,全国市区町村(特別区含む,政令指定都市は本庁を除き各区を対象)のうち,2019年中に災害救助法の適用があった市区町村を除く,1,463市区町村を対象に郵送式による無記名自記式質問紙調査を行った。回答は統括的な役割を担う保健師に依頼した。調査項目は市区町村概要,保健師の活動体制,防災に関する活動基盤,災害時の共助を意図した活動の実施状況である。得られたデータを用いて,災害時の共助を意図した平常時の保健師活動の実施を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行い,関連する要因を検討した。結果 541件の回答があり(回収率37.0%),主要な項目に欠損値があった6件を除く535件の回答を分析した(有効回答率36.6%)。保健師の活動体制は地区担当制と業務担当制の併用が81.7%,地域防災計画策定への保健師の関与有は31.6%であった。「災害時の共助を意図した平常時の保健師活動」のうち,避難行動要支援者等への「個別支援」実施有は223(41.7%),自主防災組織等の「住民組織への支援協働」実施有は186(34.8%),その他の「共助を意図した活動」実施有は160(29.9%)であった。未実施の理由は,防災対策が「事務分掌外」であること,「住民組織との接点がない」などが上位に挙がった。ロジスティック回帰分析の結果,災害時の共助を意図した平常時の保健師活動の実施には「保健師の活動体制が地区担当制であること」「地域防災計画策定への保健師の関与があること」「災害対策に関する保健師活動マニュアルの作成があること」などが有意に関連していた。結論 災害時の共助を意図した平常時の保健師活動として個別支援は4割,それ以外は3割の実施であり,十分に行われていない実態が示された。担当地区をベースにした地区活動のあり方を見直すこと,地域防災計画策定への保健師の関与と災害対策に関する保健師活動マニュアルの作成に向けた統括保健師の役割発揮および外部支援の必要性が示唆された。
著者
飯尾 淳 石山 泰弘 佐藤 紀子 和井田 理科
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2017-CE-141, no.5, pp.1-8, 2017-10-27

人間中心設計推進機構 (HCD - Net) では,各種の製品やサービスをデザインする企業における人間中心設計 (Human - Centered Design, HCD) の普及を推進する活動を実施している.その一環として,人事部門など企業内の教育に関する部門内に,HCD の概念と方法論そのものを教育 ・ 啓発する活動を促進することを計画した.そこで,HCD 教育の実践者を増やすための活動グループとして,講師拡大ワーキング ・ グループが設置され,現在,精力的な活動を続けている.その成果として,まず,入門教育のコンテンツを作成し,いくつかの組織において試行を始めたところである.本報告では,入門教育コンテンツ作成の概要と,実際の試行結果について報告する.
著者
佐藤 紀子
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.17-26, 2007-09-01
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では, 17世紀のオランダの画家フェルメールが, 構図を決め下図を作成するための補助的な道具として, カメラ・オブスクラを利用したという仮説について考察する.彼の作品に繰り返し描かれたのは, 室内空間の様子である.これらの風俗画は, 当時のオランダで描かれた同種のものよりも, かなり正確な遠近法で描写されている.本論では, 描かれた床のタイルサイズを基準として13作品から分析図と平面図・立面図を作図した.平面図から, 彼が遠近法の知識によってタイルの数を増減して様々な絵画空間を創作したことが推察できた.フェルメールの用いたキャンバスは, 似たようなサイズが数枚ずつある.分析より, そのサイズによって, 描かれた空間の大きさが類似していることがわかった.よって, いくつかの描かれた場面は, 同一の部屋のバリエーションとして, ある視点から, トリミングされたと考えられる.結論として, フェルメールは, カメラ・オブスクラの光の像を絵画空間の遠近的な整合性を画面に描写するために利用し, さらに透視図法を融合させることによって, よりリアルな空間表現を追求したといえる.
著者
佐藤 紀子
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.17-26, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本研究では, 17世紀のオランダの画家フェルメールが, 構図を決め下図を作成するための補助的な道具として, カメラ・オブスクラを利用したという仮説について考察する.彼の作品に繰り返し描かれたのは, 室内空間の様子である.これらの風俗画は, 当時のオランダで描かれた同種のものよりも, かなり正確な遠近法で描写されている.本論では, 描かれた床のタイルサイズを基準として13作品から分析図と平面図・立面図を作図した.平面図から, 彼が遠近法の知識によってタイルの数を増減して様々な絵画空間を創作したことが推察できた.フェルメールの用いたキャンバスは, 似たようなサイズが数枚ずつある.分析より, そのサイズによって, 描かれた空間の大きさが類似していることがわかった.よって, いくつかの描かれた場面は, 同一の部屋のバリエーションとして, ある視点から, トリミングされたと考えられる.結論として, フェルメールは, カメラ・オブスクラの光の像を絵画空間の遠近的な整合性を画面に描写するために利用し, さらに透視図法を融合させることによって, よりリアルな空間表現を追求したといえる.
著者
佐藤 紀子
出版者
東京工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

初心者の描画プロセスを時系列のデータとして扱い、定量的な分析から導きだす描画傾向を描画支援として応用することを目指した.本研究の成果により,描画過程を詳細に分析することが可能となった.1.ペイント系ソフトの開発 従来のアナログの描画形態を保ったまま描画内容をデジタル化する手法として,液晶ペンタブレットでの描画入力に特化したソフトを開発した.このソフトは,描画再生時間を任意に設定できる他,指定時間帯のみの再生も可能である.渡辺賢悟."でっさん"描画パート.Version 2.03, 2007-12-17.発信者(渡辺賢悟)info@mediatelier.net, Windows 2000/XR,ファイルサイズ:364KB.2、解析ソフトの開発 1のソフトで取得した時間単位ごとの描画結果を静止画で取り出すことが可能である.描画部分をAdobe社のIllustrator CSを用いて領域ごとに色で分割指定し^<*1>,領域内の濃度の推移を取得した.竹内 亮太."でっさん"分析パート.Version 2.00, 2007-6-24.発信者(竹内亮太)s2rita@nifty.com, Windows 2000/XP,ファイルサイズ:244KB.3.結果 参加者である美術大学生と工科大学生それぞれ5名が,9オンス紙コップとりんごをそれぞれ5回描画し,それらの描画時間の平均値と標準偏差,消去時間を求めた.どちらの参加者も,それぞれの項目で同じ数値を示す該当者がいた.特に,質感表現に傾向があり,時間の多くがこの表現に費やされることが時間単位ごとの静止画から把握できた.さらに,対象物を見ることに対する意識が異なることも描画結果のアンケートから示唆された.よって,形態の把握と平行して質感表現も描画支援する必要があると考える.注.*1色指定は8箇所まで可.ドロー系ソフトであれば,Adobe社以外のソフトも使用可能.
著者
高橋 紀子 岡田 ミヨ子 長谷川 由紀子 佐藤 紀子 成田 琢磨 神谷 千鶴 浅沼 義博
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13478664)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.58-67, 2004-03-31

糖尿病患者に対し,教育入院用クリニカルパスを作成し,7例に適用した.このパスの中での栄養士の果たす役割は,アウトカムを「食事療法の必要性が理解でき,ご飯などの秤量ができ,退院後も継続できる」とした.入院期間は平均24日であり,この間に全例において, 3回栄養指導を行うことができた.入院時に調査した患者の食事状況については,7例中6例が間食をしていた.また,食事傾向は7例中5例が基本量よりも多く食べていた.また,7例中2例では食事療法に対する家族の協力は得られず,問題を抱えていた.教育入院前後のBody Mass Index (BMI)は,入院時27.4±4.8,退院時26.7±4.6であった.また,収縮期血圧は,各140±26mmHg,117±18mmHgであった.BMI,収縮期血圧ともに入院により有意に改善した.血液検査成績として,空腹時血糖, HbAlcを測定した.空腹時血糖は,入院時182±40mg/dl,退院時132±52mg/dlであった.また,HbA1cは,各10.0±1.8%, 8.0±0.9%であった.空腹時血糖,HbA1cともに入院により有意に改善した.退院時に,食事療法の理解度を調査した.摂取エネルギー量や主食・主菜・副菜の組み合わせの理解は7例ともあった.また,食品交換表の理解は,「ある」が3例,「1部ある」が3例であり,「ない」は1例のみであった.糖尿病教育入院用クリニカルパスを用いて管理栄養士が食事療法に介入することは,計画的に栄養指導を行うことができる,栄養士がチーム医療のなかに積極的に入ることができる等の理由により有意義であると考える.