著者
今村 文彦 佐藤 翔輔 柴山 明寛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.241-252, 2012-07-01 (Released:2012-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

東北大学災害科学国際研究所では,総務省,国立国会図書館,文部科学省,科学技術振興機構,全国および東北企業,海外などの80を超える機関と連携して,東日本大震災に関するあらゆる記憶,記録,事例,知見を収集し,国内外や未来に共有する東日本大震災アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」を展開している。本プロジェクトは,今回の震災の被災地を中心にして,歴史的な災害から東日本大震災について分野横断的な研究を展開し,東日本大震災の実態の解明や復興に資する知見の提供を進めていく。これらの取り組みは,低頻度巨大災害の対策・管理の学問を進展し,今後発生が懸念される東海・東南海・南海地震への対策に活用する。本稿では,産学官民の連携を通した活動の事例について紹介する。
著者
佐藤 翔輔
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.222-226, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
16

災害研究・災害科学の領域では、「災害を語る」ことの意味や効果について、真に検証されていなかった。本稿では、これまで筆者が「災害対応経験を語ること」の意味や効果について実証的に検証してきた内容を紹介する。1つめは、宮城県庁職員における東日本大震災発生以前の災害対応経験の継承事例をもとに、語り合いの効果を定性的に検証した事例を示す。2つめは、震災語り部の語りを受けた聞き手におよぼす生理反応・心理反応・記憶量の変化を実証した実験研究の事例を示す。最後に、これらのエビデンスにもとづいて実践されている東日本大震災発生後の宮城県庁職員における継承の実装事例を紹介する。
著者
平川 雄太 佐藤 翔輔 鹿島 七洋 今村 文彦
出版者
日本災害情報学会
雑誌
災害情報 (ISSN:13483609)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.128-139, 2016 (Released:2021-04-01)
参考文献数
17

津波災害を受けて命名された地名は、津波の経験や教訓を後世に伝える媒体となることが期待される。本稿では、東日本大震災の被災地である岩手・宮城・福島の東北3県を対象に、刊行書籍から、「津波由来である」または「津波由来である可能性が高い」と記述されている地名を抽出した。これらをKJ法によって分類し、津波由来地名の空間分布を考察した。本研究の結論は次のとおりである。1)東北3県に存在する110個の地名が、津波に由来する可能性がある。2)津波由来地名は、「津波来襲に関するエピソードに由来する地名」と「津波痕跡を示す音に由来する地名」の大きく2つに分類され、さらに「津波来襲に関するエピソードに由来する地名」は、「モノが流れてきたことに由来する地名」、「津波の挙動に由来する地名」、「念仏を唱えたことに由来する地名」などに分類された。3)「津波来襲に関するエピソードに由来する地名」の多くは石巻市牡鹿半島以北の「リアス部(津波の常襲地域)」に位置しており、過去の大津波の経験が地名に残された可能性を示唆している。4)津波由来地名が存在している町・大字は全て東北地方太平洋沖地震津波の浸水域内に位置しているが、それらは浸水域全体の町・大字の約10%に過ぎず、津波由来地名が災害伝承に寄与しうる範囲は、東日本大震災のような極めて大きな津波に対しては限定的であると言える。
著者
佐藤 翔輔
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.662-668, 2020-10-15

【ポイント】◆「災害とSNS」に関連する議論・活動・研究開発はこの10年目まぐるしく,その変化のスピードは早い.◆10年間で災害時に実際起きたことを踏まえて.災害時のSNSの付き合い方(付き合わない方)を提案した.◆災害時,SNSはあくまで情報収集・発信の手段の一つとして捉えることが重要.
著者
戸川 直希 佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_493-I_498, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
10

防災訓練に参加することによる効果・効用については,様々な側面から評価されている.2016年は8月には台風第10号,11月には福島県沖で発生した地震に伴う津波等の災害があった.本研究では,これらのイベントにおいて,それ以前に参加した防災訓練時の経験が活かされたかや,訓練通りの行動ができたかといった,実災害時の対応行動への効果を評価した.その結果が次の3点である.1)訓練時の想定と実災害が一致する場合には一致しなかった場合に比べて,訓練時の経験がより活かされていた傾向がある.2)訓練時の想定と実災害が異なっていても訓練時と同様の行動がとれる可能性がある.3)津波災害時は高齢なほど,台風災害時では若いほど訓練時の経験が活かされて,訓練通りの行動ができていた.
著者
高島 正典 林 春男 田中 聡 重川 希志依 牧 紀男 田村 圭子 堀江 啓 吉富 望 浦川 豪 藤春 兼久 佐藤 翔輔 木村 玲欧
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 = Journal of social safety science (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.151-160, 2005-11-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

<p>We examined the effectiveness of Service Management Framework in designing counter operations in disaster victim support through the hands-on support activity for Ojiya city's victim certification after Niigata-ken Chuetsu Earthquake, Oct. 23, 2004. The service package and the Service Delivery System for the counter operation of victim certificate issuance was designed and implemented on the basis of Service Management Framework. As a result of customer satisfaction survey on Ojiya city and Kawaguchi town, a neighbouring town also affected in the event, it was clarified that the counter operation of Ojiya city was evaluated higher in terms of simplicity of the procedure by the victims than that of Kawaguchi town.</p>
著者
佐藤 翔輔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-174, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
17

1967年羽越水害に由来する新潟県関川村「たいしたもん蛇まつり」を対象に,インタビュー調査や資料調査にもとづいて,どのようにしてはじまったのか,どのようにして継続できているのか,災害伝承として機能しているのか,を明らかにすることを試みた。その結果,1 )「大したもん蛇まつり」は,祭を通した人材,特にリーダーの育成がもともとのモチベーションであり,災害伝承ありきではなかったこと,2 )大蛇をモチーフにしたのは,村に伝わる大里峠伝説では大蛇を退治するというストーリーと,大蛇が水害・土石流の象徴する神であることとが,羽越水害の犠牲者を供養するという位置付けと整合していたこと ,3 )竹と藁で作る大蛇という,「こわれるもの」「くちるもの」を媒体にすることで,更新の際に世代間をつなぐ役割が果たされていること,4 )村民に対しては強制をしないように,また,外部の人材資源を積極的に活用していること,5 )祭の由来を学習する学校教育を媒介することで,伝承の機能が果たされていること,などが明らかになった。
著者
川見 文紀 松川 杏寧 佐藤 翔輔 立木 茂雄
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.217-224, 2019-11-01 (Released:2020-05-08)
参考文献数
28
被引用文献数
1

The purpose of this study is to investigate causal effects of designated temporary housing policy on housing recovery. This study used two sets of population recovery data. The first was the 2015 Natori City Life Recovery Population Survey Data (N=1,695 out of 2331 households, return rate 72.7%). The second was the entire record of temporary housing residency in Natori City (N=3088 households). These datum were integrated (N=1206). After confounding adjustment by the propensity score analysis, survival analysis was conducted. The result showed that the effects of temporary housing types on temporary housing residency was non-significant when confounding factors were controlled.
著者
佐藤 翔輔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-174, 2020

1967年羽越水害に由来する新潟県関川村「たいしたもん蛇まつり」を対象に,インタビュー調査や資料調査にもとづいて,どのようにしてはじまったのか,どのようにして継続できているのか,災害伝承として機能しているのか,を明らかにすることを試みた。その結果,1 )「大したもん蛇まつり」は,祭を通した人材,特にリーダーの育成がもともとのモチベーションであり,災害伝承ありきではなかったこと,2 )大蛇をモチーフにしたのは,村に伝わる大里峠伝説では大蛇を退治するというストーリーと,大蛇が水害・土石流の象徴する神であることとが,羽越水害の犠牲者を供養するという位置付けと整合していたこと ,3 )竹と藁で作る大蛇という,「こわれるもの」「くちるもの」を媒体にすることで,更新の際に世代間をつなぐ役割が果たされていること,4 )村民に対しては強制をしないように,また,外部の人材資源を積極的に活用していること,5 )祭の由来を学習する学校教育を媒介することで,伝承の機能が果たされていること,などが明らかになった。
著者
佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_1309-I_1314, 2020

<p> 極近地津波であった2019年6月18日山形県沖の地震にともなう津波からの避難行動について,山形県鶴岡市温海地区と新潟県村上市山北地区を対象にした質問紙調査とその分析を行い,当日の津波避難行動の傾向や課題を明らかにした.温海地区では約9割とほとんどの住民が津波避難行動を実施した.一方で,想定される津波到達時間よりも前に避難を完了できたのは,避難を実施した人のうち,温海地区で約3割,山北地区で約2割にとどまった.両地区で多くの住民が避難していたのは,津波情報(津波注意報)よりも,ゆれそのものから津波発生を想起したことと,50年以上前に地域で発生した津波よりも,近年発生した東日本大震災を契機にした意識の向上や備えの実施が関係していたことが明らかになった.</p>
著者
寅屋敷 哲也 杉安 和也 花田 悠磨 佐藤 翔輔 村尾 修
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.243-252, 2019

<p>The authors conducted interview survey to the member of disaster management headquarter and also conducted questionnaire survey to all town officials of the Minamisanriku town government at the time of the Great East Japan Earthquake and Tsunami in 2011, in order to evaluate the impact of business continuity of municipality government in alternative facility after the tsunami. Firstly, it is revealed that the facts and issues in the initial disaster response by them. Secondary, we suggested considerations in two perspectives, "delay in composing member of the disaster management headquarter" and "issues of layout of alternative facility and other disaster response bases", based on the results of the surveys.</p>
著者
佐藤 翔輔 今村 文彦
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.383-396, 2019 (Released:2019-05-20)
参考文献数
11

本稿では,2018年西日本豪雨災害を対象に,発災当時に発信されていた「# 救助」ツイートに対する内容分析を,先行研究として実施した2017年7月九州北部豪雨の事例と比較しながら行った。その結果はつぎのようにまとめられる。1)「#救助」ツイートで,場所や人数等の具体的な状況を記述している「救助要請」のニーズを発信していたツイートは,分析対象の2,171件のうち,16.5 %とごくわずかであり,「救助要請」を実際に求めているツイートが埋没し,ハッシュタグ「#救助」による検索か゛困難て゛あった状況か゛定量的に確認された。2)「#救助」は付与されているものの,「救助要請」て゛はない, 「#救助」の存在や注意点を紹介するニュース記事とそのリンクや,一般ユーザーからの善意の投稿は依然として多く存在していた。「#救助」ツイート のうち,真に「救助要請」を行っていた発信の比率は,西日本豪雨災害では九州北部豪雨災害に比べて倍程度となり,やや検索・抽出しやすい状況になったものの,被災地外の不急の発信は依然として多いことが明らかになった。
著者
永村 美奈 佐藤 翔輔 柴山 明寛 今村 文彦 岩崎 雅宏
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.64, pp.49-66, 2013-03-31

東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動は、今後の防災教育や東日本大震災の記憶を風化させないための重要な活動である。東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動は多数存在する。今後、効果的な記録・証言などの収集活動を実施する上での基礎資料を提供し、記録・証言などの収集活動における課題の抽出、活動の空間的な偏りの把握を行なうために本調査を実施した。今回の実態把握は54件の東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動を抽出し、抽出した54件の収集活動を収集内容、継続性、空間分布、アクセス性、活動主体、活動形態の6つの着目点ごとに属性を整理し、収集活動における課題をまとめた。属性ごとに整理した結果、東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動の地域、継続性に偏りがあることがわかった。
著者
永村 美奈 佐藤 翔輔 柴山 明寛 今村 文彦 岩崎 雅宏
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.64, pp.49-66, 2013-03-31

東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動は、今後の防災教育や東日本大震災の記憶を風化させないための重要な活動である。東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動は多数存在する。今後、効果的な記録・証言などの収集活動を実施する上での基礎資料を提供し、記録・証言などの収集活動における課題の抽出、活動の空間的な偏りの把握を行なうために本調査を実施した。今回の実態把握は54件の東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動を抽出し、抽出した54件の収集活動を収集内容、継続性、空間分布、アクセス性、活動主体、活動形態の6つの着目点ごとに属性を整理し、収集活動における課題をまとめた。属性ごとに整理した結果、東日本大震災に関する記録・証言などの収集活動の地域、継続性に偏りがあることがわかった。