著者
後藤 康彦 桧垣 正吾 柴田 尚 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.53-58, 2022-11-01 (Released:2022-12-28)
参考文献数
7

福島原発事故後に,富士山の方位別および標高別に野生食用きのこ3種を採集して,子実体の放射性Cs濃度を測定した.富士山東面では全ての地点で最高値を示す試料が多く,特に中標高地域が高かった.次いで北東面の中標高地域および高標高地域で高い傾向にあった.北面では低い値を示す試料が多く,高標高地域では特に低い値を示す傾向にあった.
著者
南 光太郎 堅田 元喜 北 和之 反町 篤行 保坂 健太郎 五十嵐 康人
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.208-218, 2020

<p> Following the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident, it has been recognized that bioaerosols with radioactive cesium may have released from radiologically contaminated forest into the atmosphere. In order to evaluate the above process, the emission rate of bioaerosol was inversely estimated using a numerical model named SOLVEG that includes the processes of emission, deposition, and turbulent transport of aerosols. For the inverse estimation, micrometeorological variables and bioaerosol number concentration and flux were observed at a Japanese temperate broad-leaved forest in summer. By tuning modelled emission rate of bioaerosols from forest floor, its best estimate was obtained at the agreement between calculated and observed concentrations below the canopy. General trends of calculated momentum, heat, and bioaerosol fluxes above the canopy were also reproduced in the simulation. In the numerical experiment without bioaerosol input at the top of atmosphere above the canopy, a certain amount (59%) of bioaerosol flux at the floor released above the canopy top, while the rest of the flux deposited onto both canopy and soil. This potential flux above the canopy top was 2.0±1.8×10<sup>-2</sup> μg m<sup>-2</sup> s<sup>-1</sup>, which may correspond to the re-emission rate proposed previously by the chemical transport model.</p>
著者
細矢 剛 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.6, 2008

「菌類」は俗に言う「日陰者」であり,一般には,悪いイメージでとらえられる.科博における大学・一般を対象としたアンケート調査(n=29)でも,菌類からイメージされる形容詞には「汚い・怖い・暗い・くさい・しぶとい」など,どちらかというとネガティブな単語が並ぶ.しかし,菌類は自然界では環境の調和を図る存在として重要な役割を担うばかりでなく,人間とも様々な利害関係を持っている.このような重要な存在をアピールし,菌類の知名度を向上するため,国立科学博物館では,日本菌学会にも協力を得て,本年10月より,菌類をテーマにした特別展を開催する予定である.本講演では,この展覧会の内容を紹介し,話題提供としたい.本展覧会は以下のような構成である.0)プロローグ:生命の星地球は菌類の星(コミック「もやしもん」のキャラクターなどによる展覧会全体の紹介),1)菌類の誕生と多様化(菌類の化石を展示し,地球と菌類の生命史を紹介する),2)菌類ってどんな生物(二界説・五界説など生物の世界での菌類の立ち位置を紹介し,バクテリア,変形菌など紛らわしい生物についてもとりあげる),3)菌類のすがた(各門の代表的な菌類を紹介する.大型の菌類は樹脂含浸品,液浸標本を展示する.微小菌類は拡大模型・写真),4)光るきのこのふしぎ(ヤコウタケ),5)きのこKids(においをかいでみよう,音をきいてみよう,さわってみよう,顕微鏡をのぞいてみよう,などの体験コーナーで,菌類に実際にふれていただく,子供を主な対象としたコーナー),6)菌類が支える森(寄生・共生・腐生によって様々な形で他の生物と関わる菌類の自然界の中での姿を紹介し,環境の中での菌類の役割を考える),7)菌学者の部屋(日本の菌学の発展に貢献した菌学者の紹介),7)菌類と私たちの生活(アイスマンのきのこ,縄文きのこ,コウジカビから始まる菌の利用,鎌倉彫,食用きのこ,毒きのこ,など),8)菌類研究最前線(カエルツボカビなど),9)菌類と地球の未来.以上の展示を通じ,菌類が人間の活動や自然界で欠かせない,無視できない存在であることをアピールする.
著者
糟谷 大河 丸山 隆史 池田 裕 布施 公幹 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.47-52, 2018-11-01 (Released:2018-12-12)
参考文献数
19

日本新産のオオフクロタケ属菌,Volvopluteus earlei (ヒメシロフクロタケ)について,新潟県と千葉県で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.Volvopluteus earleiはかさが径50 mm以下と小型である点,担子胞子長径の平均値が12 µm以上である点,側シスチジアを欠く点,そして縁シスチジアに嘴状突起を持つ点により特徴づけられる.分子系統解析の結果,日本産標本の核rDNAのITS領域は,インド,アフリカ大陸およびヨーロッパ産V. earleiのものと一致する塩基配列を有し,本菌が複数大陸に広域分布することが示された.
著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016

<p>3種の日本新産のチャツムタケ属菌,<i>Gymnopilus crociphyllus </i>(オオチャツムタケ),<i>G. dilepis</i> (ムラサキチャツムタケ)および<i>G. suberis</i> (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.</p>
著者
阿部 淳一 保坂 健太郎 大村 嘉人 糟谷 大河 松本 宏 柿嶌 眞
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第55回大会
巻号頁・発行日
pp.18, 2011 (Released:2012-02-23)

2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により,多量の放射性物質が環境中に放出され,広い地域に拡散した.3月15日には,当該発電所から167 kmに位置する筑波大学構内でも,最大放射線量2.5 µSv/hが大気中で測定された.野生きのこ類および地衣類の放射性物質濃度を調査するため,構内およびその周辺で発生していたきのこ類8種および地衣類2種を4月26日に採取し,本学アイソトープ総合センターで放射性セシウム(137Cs, 134Cs) およびヨウ素(131I)濃度を測定した.その結果,きのこ類ではスエヒロタケ (木材腐朽菌)>ツチグリ(外生菌根菌),チャカイガラタケ(木材腐朽菌)>Psathyrella sp.1,Psathyrella sp.2 (地上生腐生菌)の順に,それぞれの核種で濃度が高かった.スエヒロタケでは137Cs:5720,134Cs:5506,131I:2301 (Bq/kg wet)であり,これは,2004年に構内で採取した標本と比較しても極めて高い値であった.なお,アミガサタケ,カシタケ(外生菌根菌),ヒトクチタケ(木材腐朽菌)では,放射能物質濃度は比較的低かった.一方,地衣類では,放射性物質の濃度が極めて高く,コンクリート上で採取したクロムカデゴケ属の一種では137Cs:12641,134Cs:12413,131I:8436 (Bq/kg wet),樹幹から採取したコフキメダルチイでは137Cs:3558,134Cs:3219,131I:3438 (Bq/kg wet)であった.これまでの報告で,きのこ類や地衣類は放射性物質を蓄積することが報告されているが,今回の調査でも,そのことが認められた.現在,継続的に調査を行っているが,その結果も加えて報告する.
著者
大村 嘉人 保坂 健太郎
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

博物館などに保管されているタイプ標本は生物の学名の基礎となっており重要な価値を持つ。一方、近年ではDNA情報が分類学的研究に重要な要素となっており、古いタイプ標本からのDNA情報の収集が困難であることが研究の足かせになっている。本研究では、①標本庫に収蔵されているタイプ標本のDNAが経年変化で断片化することを示し(きのこ類は約50年で230bp以下、地衣類は約15年で200bp以下)、②そのような古いタイプ標本のDNA情報を補完するために、新たな標本をタイプロカリティーから採集し、エピタイプ候補として選定した。標本庫の古いタイプ標本に参考となるDNA情報が得られ、標本の価値向上に貢献できた。