著者
下野 義人 糟谷 大河 松田 陽介
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.67-77, 2023-11-01 (Released:2023-12-02)
参考文献数
33

長野県の亜高山帯針広混交林で得た標本について,形態比較ならびに分子系統解析によって,アメリカを基準産地とするRussula granulataと認め,日本新産種として報告する.子実体は中型,傘は灰色を帯びた橙色から赤味を帯びた褐色,表面に強い粘性を有し,中央部は黄色を帯びた赤色から赤味を帯びた褐色,柄は触れると中・下部が淡褐色に変色する.核rDNAの分子系統解析によって,日本産と北アメリカ大陸およびユーラシア大陸産R. granulataは単系統群をなした.本種の和名をヌメリクサハツモドキとする.
著者
糟谷 大河 有馬 裕介 百原 新
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Insitute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.12, pp.187-192, 2019-02-28

大阪府泉佐野市の大阪層群最下部の炭質層,および同枚方市の大阪層群上部,Ma8海成粘土層より産出した3点の子嚢菌類の化石について,形態的特徴を観察した.その結果,子座および子嚢殻の形態的特徴に基づき,これらは現生の分類群であるクロコブタケ属との類似性が示された.また,これら3点の化石の子嚢殻と子嚢胞子の形態にはそれぞれ違いが認められ,これらは異なる分類群である可能性が示唆された.
著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016-05-01 (Released:2016-08-17)
参考文献数
45

3種の日本新産のチャツムタケ属菌,Gymnopilus crociphyllus (オオチャツムタケ),G. dilepis (ムラサキチャツムタケ)およびG. suberis (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.
著者
丸山 隆史 糟谷 大河
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-109, 2021-11-01 (Released:2021-12-28)
参考文献数
28

日本新産のモリノカレバタケ属菌Gymnopus densilamellatus(ミツヒダニオイカレバタケ,新称)を,新潟県産標本に基づき形態的特徴の記載と図を添えて報告した.本菌の子実体は異臭を発し,白色型と褐色型の2型があり,ひだが緻密である点が特徴である.核rDNA ITS領域の系統解析により,日本と韓国産標本の配列は単系統群をなし,本菌が朝鮮半島から日本列島へ連続的に分布することが示された.
著者
小林 一樹 糟谷 大河
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.10, pp.53-56, 2017-02-28

千葉県版レッドリストで一般保護生物(準絶滅危惧種)とされている,リンドウ科の草本植物コケリンドウが銚子市に生育することを2016年に初めて発見した.確認された生育地は千葉科学大学マリーナキャンパス内のシバ草地1か所で,開花個体数は10~100個体の範囲であった.本種の生育地の状況から,人為的に植栽された形跡は認められなかった.また,今回発見された生育地は海岸を埋め立てて造成された土地であることから,造成時の土砂等に種子が混入し発芽して定着した可能性が推測される.今回発見された生育地では定期的に草刈りが実施されており,このことがコケリンドウの生育に適した環境を維持していると考えられる.
著者
竹橋 誠司 高橋 春樹 糟谷 大河 柿嶌 眞
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.101, 2007 (Released:2008-07-21)

日本各地の海岸砂地から採集された2種のホウライタケ型菌類について報告する. 1. Crinipellis scabella (Alb. & Schwein.) Murrill:北海道石狩市の海岸砂丘の海浜植物群落内で採集された.本種は枯れたイネ科植物,あるいは海岸砂地の主に枯死したイネ科植物の根茎から発生し,かさと柄に帯橙~帯赤褐色の短毛を密生させるという特徴を持つ.本種の和名について本郷(1952, 植研雑27: 368)はニセホウライタケ,川村(1954, 原色日本菌類図鑑3巻)はカヤネダケとそれぞれ命名した.このため現在,本種に対しニセホウライタケとカヤネダケの和名が並存して用いられている(伊藤,1959:日本菌類誌2巻5号).しかし,C. scabellaの和名についてはニセホウライタケが一般に広く使われていることから,本種の標準和名をニセホウライタケに統一することを提案する. 2. 日本新産種,Marasmiellus mesosporus Sing.:北海道,本州(宮城,福島,千葉,静岡,富山,石川,兵庫)および四国(徳島)の海岸砂地から多数の子実体が採集された.本菌の子実体は小型,かさ表面は平滑で周辺部に強い小じわを持ち,ひだは肉厚で直生~やや垂生,柄は細い円筒形となり表面は粉状~綿毛状という特徴を持つ.本菌はアメリカ,アジア,ハワイ,ヨーロッパの砂地,特に海岸砂地に分布し,イネ科植物に胴枯病を起こすMarasmius-blightとして知られる.日本では,夏から秋にかけて海岸砂地のハマニンニク,チガヤ,コウボウムギ,コウボウシバやケカモノハシの茎と根茎からごく普通に発生する.本菌はM. carneopallidusと形態的に類似するが,後者とはかさ表皮構造,縁シスチジアの形状,担子胞子の大きさで異なる.本種の和名としてスナジホウライタケを提唱する.
著者
糟谷 大河 中島 結里乃 河原 栄 保坂 健太郎
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.15-21, 2023-05-01 (Released:2023-07-22)
参考文献数
23

日本新産種Bryoperdon acuminatum(モリノコダマタケ,新称)を,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.子実体が小型,卵形~円錐形で無性基部を欠く点,担子胞子がほぼ平滑~わずかに疣状突起に覆われる点,外皮の刺が球形,類球形,卵形あるいは棍棒形の偽柔組織からなる点が本菌の特徴である.核rDNA塩基配列の分子系統解析により,日本およびヨーロッパ産B. acuminatumの同一性が支持された.
著者
糟谷 大河 丸山 隆史 保坂 健太郎
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.5-15, 2022-05-01 (Released:2022-07-07)
参考文献数
31

日本新産の2種のザラミノシメジ属菌,Melanoleuca alboflavida(アシボソザラミノシメジ,新称)およびM. griseobrunnea(ネズミザラミノシメジ,新称)を,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.細長く直立し,軟骨質で白色を帯びる柄と,フラスコ形から紡錘形の側シスチジアおよび縁シスチジアがM. alboflavidaを特徴づける形質である.一方,M. griseobrunneaはかさが淡灰褐色を帯びる点,柄の基部の肉が淡灰色から褐色を帯びる点,そして縁シスチジアが長首フラスコ形で結晶を有する点により特徴づけられる.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析により,これら2種の同定結果が支持されたとともに,M. alboflavida はMelanoleuca亜属に,M. griseobrunneaはUrticocystis亜属に位置することが示された.
著者
糟谷 大河 塙 祥太 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.jjom.H26-10, 2015-11-01 (Released:2018-01-27)
参考文献数
23

日本新産のホウライタケ型きのこ,Crinipellis dipterocarpi f. cinnamomea (新称:シナモンニセホウライタケ) について,千葉県の照葉樹林内地上のタブノキおよびスダジイの落葉落枝上より採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNA のITS 領域を用いた分子系統解析の結果,日本,タイ,インドネシアおよびマレーシア産のC. dipterocarpi f. cinnamomea は最節約法のブートストラップ値で強く支持される同一のクレードに位置した.この解析により,日本および東南アジア産のC. dipterocarpi f. cinnamomea は同一の分類群であることが支持された.
著者
糟谷 大河
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-115, 2005-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

2002年10月から2003年2月にかけて,関東平野中部においてムクドリの冬季塒の配置と採食範囲について調査し,1953~1962年に実施された調査結果(黒田1955,1956,1962)と比較検討した。調査地域内においてムクドリの冬季塒は37ヵ所発見され,これらは3ヵ所の大規模塒と34ヵ所の小規模塒の2つに分類された。大規模塒に就塒する群れの採食地は塒を中心として放射状に遠距離まで展開するが,小規模塒のそれは塒から近距離の特定地域に限られていた。大規模塒の中で,新浜鴨場(千葉県市川市)に就塒する群れの個体数と採食範囲には,1953~1962年当時と比較して顕著な変化は認められなかったが,埼玉鴨場(埼玉県越谷市)の就塒個体数は大幅に減少し,また就塒する群れの採食範囲も異なっていた。関東平野における近年のムクドリの塒は冬季分散型,夏季集中型であると考えられていたが,現在のムクドリの冬季塒には大規模塒と小規模塒の両者が存在することが示された。
著者
糟谷 大河 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
pp.jjom.H29-01, (Released:2017-05-31)

日本新産のチャツムタケ属菌,Gymnopilus decipiens (ヤケノヒメチャツムタケ),について,北海道で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.北海道産 G. decipiens は火山性ガスを含む高温の水蒸気が噴出する噴気孔周辺に発生し,子実体は小型で温和な味であることが特徴である.分子系統解析の結果, 日本産標本の核 rDNA の ITS 領域は,ロシア( ヤクーツク) 産 G. decipiens のものと完全に一致する塩基配列を有し,本菌がシベリアから北海道の亜寒帯にかけて連続的に分布することが示された.
著者
糟谷 大河 下保 有紀子 下保 敏和 下保 晴稜 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-91, 2016-12-16 (Released:2016-12-23)
参考文献数
13

本州より初めて発見された海浜生の担子菌類であるスナハマガマノホタケ Typhula maritima について,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.本菌は新潟県,富山県および石川県の海浜のケカモノハシ Ischaemum anthephoroides およびチガヤ Imperata cylindrica 群集付近で採集された.核rDNA のITS 領域を 用いた分子系統解析の結果,日本 (本州および北海道) 産のスナハマガマノホ タケは最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.これらの結果は,スナハマガマノホタケの海水に浮く菌核が海流によって長距離分散するという考えを支持している.
著者
糟谷 大河 丸山 隆史 池田 裕 布施 公幹 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.47-52, 2018-11-01 (Released:2018-12-12)
参考文献数
19

日本新産のオオフクロタケ属菌,Volvopluteus earlei (ヒメシロフクロタケ)について,新潟県と千葉県で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.Volvopluteus earleiはかさが径50 mm以下と小型である点,担子胞子長径の平均値が12 µm以上である点,側シスチジアを欠く点,そして縁シスチジアに嘴状突起を持つ点により特徴づけられる.分子系統解析の結果,日本産標本の核rDNAのITS領域は,インド,アフリカ大陸およびヨーロッパ産V. earleiのものと一致する塩基配列を有し,本菌が複数大陸に広域分布することが示された.
著者
糟谷 大河 小林 孝人 黒川 悦子 Hoang N.D. Pham 保坂 健太郎 寺嶋 芳江
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-45, 2016

<p>3種の日本新産のチャツムタケ属菌,<i>Gymnopilus crociphyllus </i>(オオチャツムタケ),<i>G. dilepis</i> (ムラサキチャツムタケ)および<i>G. suberis</i> (エビイロチャツムタケ)について,本州(茨城県,富山県,石川県,愛知県),鹿児島県(奄美大島)および沖縄県(西表島)で採集された標本に基づき,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析の結果,これら3種はそれぞれ,最節約法のブートストラップ値で強く支持される単系統群を形成した.</p>
著者
阿部 淳一 保坂 健太郎 大村 嘉人 糟谷 大河 松本 宏 柿嶌 眞
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第55回大会
巻号頁・発行日
pp.18, 2011 (Released:2012-02-23)

2011年3月の福島第一原子力発電所の事故により,多量の放射性物質が環境中に放出され,広い地域に拡散した.3月15日には,当該発電所から167 kmに位置する筑波大学構内でも,最大放射線量2.5 µSv/hが大気中で測定された.野生きのこ類および地衣類の放射性物質濃度を調査するため,構内およびその周辺で発生していたきのこ類8種および地衣類2種を4月26日に採取し,本学アイソトープ総合センターで放射性セシウム(137Cs, 134Cs) およびヨウ素(131I)濃度を測定した.その結果,きのこ類ではスエヒロタケ (木材腐朽菌)>ツチグリ(外生菌根菌),チャカイガラタケ(木材腐朽菌)>Psathyrella sp.1,Psathyrella sp.2 (地上生腐生菌)の順に,それぞれの核種で濃度が高かった.スエヒロタケでは137Cs:5720,134Cs:5506,131I:2301 (Bq/kg wet)であり,これは,2004年に構内で採取した標本と比較しても極めて高い値であった.なお,アミガサタケ,カシタケ(外生菌根菌),ヒトクチタケ(木材腐朽菌)では,放射能物質濃度は比較的低かった.一方,地衣類では,放射性物質の濃度が極めて高く,コンクリート上で採取したクロムカデゴケ属の一種では137Cs:12641,134Cs:12413,131I:8436 (Bq/kg wet),樹幹から採取したコフキメダルチイでは137Cs:3558,134Cs:3219,131I:3438 (Bq/kg wet)であった.これまでの報告で,きのこ類や地衣類は放射性物質を蓄積することが報告されているが,今回の調査でも,そのことが認められた.現在,継続的に調査を行っているが,その結果も加えて報告する.