- 著者
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黒田 長久
柿澤 亮三
堀 浩
大阪 豊
臼田 奈々子
内田 清一郎
- 出版者
- Yamashina Institute for Ornitology
- 雑誌
- 山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.1, pp.1-15, 1982-03-31 (Released:2008-11-10)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
3
6
22目57科185種の鳥類の血球(一部胸筋)を試料として,澱粉ゲル竜気泳動法(pH7)により,ミトコンドリア内リンゴ酸脱水素酵素(M-MDH)の陰極側への移動度を測定した。移動度の表現は,マガモ血球のM-MDH移動度を100と定めたときのこれに対する相対値である。鳥類M-MDHの移動度は各種組織間に差がなく,またこれまで種内,属内での変異は見られなかった。さらに科内,目内での変異も比較的少なく,他の酵素(アイソザイム)にくらべて極めて均一性の高い酵素である。ダチョウ目,ミズナギドリ目,ペンギン目,カイツブリ目,ペリカン目(ウ科),コウノトリ目(トキ科),フラミンゴ目,ガンカモ目,キジ日(ツカツクリ科•キジ科),ツル目,チドリ目(チドリ科•カモメ科)に属する鳥類は何れも移動度100を示した。これらの目は比較的に原始的とされる地上•水生鳥類の大部分を含んでいる。しかし,ペリカン目のペリカン科(130),コウノトリ目のコウノトリ科(130)•サギ科(150),キジ目のホウカンチョウ科(140),チドリ目のシギ科(250)•ウミスズメ科(190)では100以上の移動度が見られた。また,地上性のシギダチョウ目は例外的に160の,コウノトリ目に比較的近いとされるワシタカ目(ワシタカ科)は140の値を示した。一方,いわゆる樹上性の鳥類では140から360までの移動値が得られ,ハト目からスズメ目へと次第に高い値を示す傾向が見られた。すなわちハト目(140,190),ホトトギス目(200),フクロウ目(200),ヨタカ目(200),アマツバメ目(220),ブッポウソウ目(220,250),キツツキ目(230,300),スズメ目(360)である。ハト目に近いとされるオウム目では,300から360のスズメ目に近い値が得られた。以上の結果から,電気泳動法によるM-MDHの移動度は,科•目を含む高いレベルでの進化を反映しているように思われる。