著者
坂本 昇太郎 高雄 由美子 上嶋 江利 柳本 富士雄 前川 信博
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.519-522, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
14
被引用文献数
2

術前5日前の凝固系検査では異常のない患者に硬膜外麻酔併用全身麻酔を行った際,硬膜外穿刺部から多量の出血を認めた症例を経験した.術直後の凝固能検査では,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は正常値であったが,プロトロンビン時間(PT),トロンボテスト(TT),ヘパプラスチンテスト(HPT)が異常値を示しており,これらの結果より,出血はビタミンK依存性凝固因子である第VII因子の低下が原因であると疑われた.本患者は,術前よりイレウス症状を呈しており,長期の絶食,セフェム系抗生物質の投与が行われていた.これらの要因が重なり,ビタミンKが欠乏したと考えられた.凝固障害の原因判明後,ただちにビタミンKおよび新鮮凍結血漿投与が行われ,出血傾向は改善され,後遺症を残すことはなかった.長期の絶食患者に抗生剤を投与する際にはビタミンK欠乏に注意が必要である.
著者
上杉 貴信 高雄 由美子 安藤 俊弘 魚川 礼子 前川 信博
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.495-498, 2009-09-25 (Released:2011-09-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

幻肢痛が持続硬膜外ブロックを併用した鏡療法により軽減した症例を報告する.症例は37歳の男性で,腕神経叢引き抜き損傷と多発外傷に起因した難治性の幻肢痛であった.最初に鏡療法を用いて幻肢痛の軽減を試みたが,鏡療法を導入した後に,断端痛が増悪し,鏡療法を継続することが困難となった.持続頸部硬膜外ブロックを行い,断端痛を軽減させると,鏡療法が円滑に可能となった.その後,硬膜外刺激電極植込み術を行い,幻肢痛と断端痛は軽減した.
著者
Agnew Neville 前川 信
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.66-72, 2000-02

紀元前1290年から1224年までエジプトを支配したラムセス2世に寵愛されたネフェルタリ王妃について,わかっていることはほとんどない。だが,ネフェルタリの墓の壁画は,ファラオの墓葬芸術の中でとりわけ美しい。
著者
高雄 由美子 村川 和重 森山 萬秀 柳本 富士雄 中野 範 福永 智栄 上嶋 江利 真田 かなえ 佐藤 仁昭 前川 信博
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-16, 2010-01-25 (Released:2010-08-04)
参考文献数
15

ボツリヌス毒素療法は痙性斜頸に対しての有効性が報告されているが,痙性斜頸には明らかな頭位偏奇がなく慢性的な頸肩部の疼痛や随意運動障害が症状の主体である,いわゆる重度の肩こり症例も含まれる.今回われわれは,このような患者に対するボツリヌス毒素療法を施行し効果と安全性を検討した.症例は26症例(男性12症例,女性14症例),平均年齢58.6歳であった.ボツリヌス毒素(BTX-A)100 単位を肩から頸部にかけての持続性緊張状態にある筋群の筋腹に10~20単位/カ所で施注し,4週ごとに12週まで追跡調査をした.痛みとこわばりは視覚アナログスケールで評価し,SF-36によるアンケートを実施し,副作用を問診した.頸肩の痛みやこわばりはボツリヌス毒素投与によりすべての観察期において治療前と比較して有意に軽減した.SF-36のアンケートの結果からは,治療に伴うQOLの改善があまりみられなかった.副作用は4例で頸部の不安定性が出現したが,いずれも短期間で消失し重篤な副作用は認めなかった.ボツリヌス毒素療法は重度の肩こりの症状の軽減に対して効果的な治療である.
著者
小川 寛恭 横田 治 関 啓輔 小倉 真治 前川 信博
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.439-442, 2004-10-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10

74歳女性。肺炎で加療中,全身に薬疹が出現し,これが急速に表皮剥離性病変となった。表皮剥離性病変は全体表面積の約70%に及び中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis, TEN)と診断された。第8病日に敗血症性ショックとなり,一時循環動態は安定したが,第13病日に再度敗血症性ショックとなり第20病日に死亡した。血液細菌培養検査・便細菌培養検査の結果から,敗血症の原因としてbacterial translocation (BT)が示唆された。TENは長期完全静脈栄養法や抗菌スペクトルが広い抗菌薬の投与が必要になる場合が多いことと,腸管粘膜障害を起こすことからBTを起こしやすい病態と考えられる。また,TENの致死的合併症のほとんどは敗血症であり,敗血症の原因の1つとしてBTが挙げられる。この敗血症を予防するためにselective decontamination of the digestive tractによる積極的予防策が必要であると思われた。