著者
青木 宏明 高橋 秀明 田邉 成 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00225, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
21

塩分を含む地下水の流入による地中RC構造物の鉄筋腐食が報告されている.地中構造には地盤沈下等の外荷重が作用する場合もあり,塩害劣化の影響が重畳した場合の予測は重要性を増してきている.本研究では鋼材腐食させたRC中空円形試験体の8割を地中に埋設した載荷実験を行い,地中拘束下における外荷重の影響を調べた.その結果,地中円形トンネル構造の変形能と耐力は鉄筋腐食の影響はあまり顕著ではないが,先行曲げひび割れに沿って断面を貫通するせん断破壊が生じる場合があることを示した.このせん断破壊形態は,鉄筋の腐食域に非対称性があると,腐食域以外の健全部で起こり得ることを示した.さらに,曲げひび割れに沿う後続のせん断破壊のせん断耐力は,先行の耐力式を下回る場合があり,維持管理における留意点を明らかにした.
著者
岸 利治 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.526, pp.97-109, 1995-11-20
被引用文献数
19 28

コンクリート構造の耐久性照査において, 使用材料の特性値を一般化した形式で与えることは, 効率的な材料設計に不可欠である. 特に温度応力解析では, 任意の条件に対応可能なセメントの発熱モデルを与えることが求められる. 本研究は, セメント水和反応を構成鉱物ごとに記述し, ポルトランドセメントの種類による差を, 鉱物組成の違いとして表現した水和発熱モデルを提案するものである. 各鉱物反応の発熱速度は, 温度一定条件下の基準発熱速度と温度活性の2つの材料関数により表現され, 鉱物反応ごとに異なる温度依存性を反映して, 任意の温度履歴に対応したセメント総体としての発熱過程が定量化された. 構築した水和発熱モデルは, 断熱温度上昇値及び擬似断熱試験K体の温度計測結果によって検証した.
著者
前川 宏一 福浦 尚之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.634, pp.209-225, 1999-11-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究は, 著者らが提案し, 既にRC要素レベルでの検証を経た多方向ひび割れを有する鉄筋コンクリート構成モデルの, 部材レベルでの検証を行なったものである. 静載荷耐震壁実験との比較解析, 5層耐震壁の動的載荷実験と国際 blind ベンチマーク解析, 実構造物の縮小模型実験との比較解析, さらに, 構造物レベルで3方向以上の多方向ひび割れ状態が生じるケースについての試解析を行い, 本RCモデルが構造物の高非線形領域での挙動を求めるに必要な実用性を有していることを示した. あわせて, 使用したRCモデルの適用領域と, これが組み込まれた非線形応答解析の実用範囲を示し, なおもって技術的に不十分な点を明らかにすることで, 今後の課題を示した.
著者
前川 宏一 長谷川 俊昭
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.13-22, 1994-05-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
44
被引用文献数
2 8

本稿は, コンクリート構造物の有限要素解析などで必要とされる連続体コンクリートおよび鉄筋コンクリートの構成則 (応力-ひずみ関係) に関する研究動向と今後の課題について解説したものである。ここでは, 骨材最大寸法の数倍のコントロールボリューム内で空間的に平均化された応力とひずみの関係として定義される連続体コンクリートの構成則のうち, 塑性論的アプローチ, 損傷理論, 塑性・損傷の組合せ理論, 微細構造に立脚したモデルについて述べた。分散ひびわれを有する30~50cm四方のコントロールボリュームに関する鉄筋コンクリート構成則は, ひびわれの密度や本数, 鉄筋比などの影響要因が相互に関連をもって変動するため, 見かけ上, ひびわれの分散性には強く依存しないことを説明した。鉄筋が交差する1本のひびわれを対象とする鉄筋コンクリート離散ひびわれ構成則は, 鉄筋の構成則とひびわれ面の応力伝達構成則を組み合わせたものであり, 単独では表現されない経路依有牲を記述することができる。今後は構成則の論理の明快さと精度や適用範囲のバランスをとり, 部材レベルから構成モデルと解析手法を系統的に検証していく段階にきている。
著者
前川 宏一 半井 健一郎 牧 剛史 千々和 伸浩 浅本 晋吾 石田 哲也 石原 孟 三島 徹也 石橋 忠良 田辺 成 坂田 昇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

①ナノ流体モデルを拡張展開し,雨水の急速侵入,降雨後の蒸発散を高精度で評価可能とした。PC暴露試験体の曲率等の推移と水分計測から検証を重ねた。②水分準平衡と構造モデルを連成させ,中高層RC建物と原子力施設の中長期固有振動数の変化を予測できた。③浅地中ダクトの遅れせん断破壊を数値解析で予見し非破壊検査から現象を確認した。地盤との相互作用から長期せん断破壊が評価可能であることを示した。④ASRゲル,腐食ゲル,常温液状水,氷晶の混合移動を考慮できる数値解析モデルを開発した。⑤ASRに伴う構造損傷と凍結融解に伴う損傷に相互作用が強く表れること,これが部材のRC床版疲労延命化に寄与する機構が解明された。
著者
井上 純哉 足立 正信 石田 哲也 前川 宏一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

一般に局部変形の卓越する部材や鋼材が局部座屈する領域が内在する場合,すべての挙動を数値解析で追跡することは未だ困難である.そこで本研究では,実験によって代表させた領域での局所変形と力の関係に関する情報をそのまま構成則開発の検証データとするシステムの構築、並びに上記システムを構築する上で不可欠となる新たな解析手法及び設計手法の開発を目的とした.その結果,新たな知見として以下に列挙する研究成果を得る事が出来た.(1)解析-実験システム間の通信プロトコルの雛形の開発開発された通信プロトコルはデータ形式の拡張性・データの大規模化・分散/並列環境を考慮し,一般に広く用いられているDocument方式を採用した.開発された通信プロトコルを用い,小規模LAN内で通信試験を行い検証した結果,非線形性が小さい領域では概ね問題なく動作する事が確認された.(2)エレメントフリー確率有限要素法の開発材料の不確定性のみならず,複雑なRC構造物を容易にモデル化する事を可能にする事を目的に,エレメントフリーガラーキン法を摂動展開及びPolynomial Chaos展開を用いて拡張した確率有限要素法を開発した.開発された手法を様々な境界条件におけるモンテカルロシミュレーションの結果との比較により,その有効性及び効率性を示す事が出来た.(3)自己質量調整型仮想材料モデルの開発地中鉄筋コンクリート構造の接合部および隅角部に対して,自己質量調整型仮想材料モデルによって配筋を生成し,施工が前能で,しかも曲げせん断力を適切な裕度で伝達できる設計を提示した.本研究成果の特質としては,せん断破壊の寸法効果が顕著となる大型部材に対して特に有効である事が言える.
著者
前川 宏一 東畑 郁生 石田 哲也 内村 太郎 牧 剛史 半井 健一郎 龍岡 文夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

(1)土粒子間の連結空隙構造をセメント系複合材料の微細空隙構造モデルに導入し,物質平衡-移動-反応-変形解析に関する数値プラットフォームを開発し,拡張熱力学連成解析を土粒子間隙水の圧力と変形にまで連結させて,地震時の構造-地盤液状化解析と,構造中のコンクリートの過渡的な変性を追跡する多階層連結解析コードを完成させた。(2)コンクリートおよび地盤材料の水分保持能力の温度履歴依存性を実証し,過渡応答時の水分平衡モデルの精度を向上させた。大径空隙でブロックされる水分が高温時に急速に開放される状況が解明され,従来の定説を大きく変える契機を得た。セメント硬化体からのカルシウム溶出と自然地盤における吸着平衡モデルを,水和反応の過渡的状態に対して拡張した。(3)水和生成ゲルおよびキャピラリー細孔内の水分状態からセメント硬化体の巨視的な時間依存変形を予測するモデルを完成させ,分子動力学を適用し温度依存性に関するモデル化の高度化を図った。(4)鋼材腐食生成ゲルと周辺コンクリートのひび割れ進展,さらにゲルのひび割れへの浸入を考慮することにより,様々な条件下でのかぶり部コンクリートの寿命推定を可能にした。(5)飽和及び不飽和地盤中にRC群杭を設置した動的実験を実施し,初期振動状態から一気に液状化する厳しい非線形領域での杭と地盤の応答を詳細に分析した。土粒子構成則と多方向固定ひび割れモデルの結合で,地中埋設構造応答をほぼ正確に解析できることを示した。(7)非線形時間依存変形の進行モデルを弾塑性破壊型構成則の一般化で達成し,時間成分を取り除いた繰返し作用の影響度を、数値解析連動型実験から抽出することに成功した。ひび割れ面での応力伝達機構の疲労特性を気中・水中で実施し,高サイクル疲労に対応可能な一般化モデルを構築し,直接積分型高サイクル疲労破壊解析を実現した。
著者
石田 哲也 前川 宏一 半井 健一郎
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の主たる成果は,以下の点に集約される.1.無機複合材料の硬化から劣化過程を時空間上で予測する熱力学連成解析システム「DuCOM」をベースに、微生物による有機物分解反応を逐一シミュレーション可能な「BioDuCOM」システムの構築に成功した.熱エネルギー,水分移動,および酸素移動と好気性微生物反応モデルを連成させることで,任意の形状,寸法,温度・湿度・通気に対する環境条件のもと,反応過程をシミュレーションするシステムである.限定された範囲ではあるが,温度,含水量,ならびに酸素を変化させた実験結果に基づきパラメータを設定することに成功した.モデルの一般化および高度化のためには更なる実験検証が必要であるものの,任意の廃棄物組成,温度,含水量,ならびに酸素供給量における反応を予測する数理モデルのプロトタイプを開発することに成功したのである.2.新しい原理に基づく有機系廃棄物のコンポスト化技術を提案した。最先端のコンクリート練混ぜ技術「MY-BOX」を改良・発展させ、コンポスト材料を対象とした重力駆動式かくはん・切返し装置「BioMY-BOX」を開発した。材料かくはん実験結果から,かくはん後の材料の均等性は手動かくはんと比べてほとんど差が認められなかった。ここで,かくはん工程に要する時間はわずか数秒であった。さらに,重力駆動型かくはん・切返し装置と発酵槽を鉛直直列に連結した自己切返し反応システム(STRシステム)を提案した。タイ王国における検証試験を通じて,STRシステムが妥当なかくはん・切返し性能を有すると共に,適切な発酵状態を実現することが明らかになった.