著者
石井 一郎 平舘 亮一 東畑 郁生 中井 正一 関口 徹 澤田 俊一 濱田 善弘
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.91-107, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

2011年東北地方太平洋沖地震により,東京湾岸に位置する千葉県浦安市では液状化現象で戸建住宅などの建築物やライフライン等に甚大な被害が発生した。浦安市内の被害が大きかったエリアにおいて,地震後にボーリング,サウンディング等の地盤調査を実施して,土質構成および土質特性を詳細に把握した。その結果,埋立砂質土層および沖積砂質土層の一部で土砂の噴出を伴う液状化が生じ,建築物やライフライン等が被災したことを確認した。本稿では,これらの液状化被害が生じた地盤の情報をできるだけ詳細に記述するとともに,表層地盤の土質特性および埋め立て時の排砂管吐出口の位置と建築物や下水道施設の液状化被害との関係を考察した。また、繰返し非排水三軸試験から得られた液状化抵抗比を求めた結果,原位置試験と土の物理特性から得られる液状化抵抗比と良く整合した。
著者
内村 太郎 古関 潤一 桑野 玲子 東畑 郁生 西江 俊作 WANG Lin QIAO Jian-Ping YANG Zongji HUANG Dong HUANG An-Bing LU Chin-Wei
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中国、台湾、日本で、強い地震によって損傷を受けた自然斜面が、その後の豪雨をきっかけに崩壊する「地震と降雨の複合的な作用」による斜面災害を対象として調査研究を行った。(1)地震で強震を受けた山岳地域の斜面で、踏査、機器を使った調査と観測、現地実験を行い、斜面の不安定化の実態とメカニズムを把握し、危険な斜面の抽出の方法や災害を軽減する方法を提案した。(2)低コストで簡易な斜面表層の変状の観測装置を用いて、斜面災害の前兆をとらえ、早期警報によって被害を軽減する技術の実用化を推進した。さらに、多点計測や、弾性波を用いた斜面監視など、新しい技術を開発した。
著者
佐藤 忠信 山崎 文雄 睦好 宏史 東畑 郁生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.507, pp.291-303, 1995

1993年8月8日にマグニチュード8.1の地震に襲われたグアム島の現地震害調査を行った. また断層の破壊過程から地盤加速度を予測した. グアム島の地盤は全般的に良好で, 液状化や崖崩れの発生は一部地域に限定され, 道路や橋梁の被害も軽微であった. しかし, 一部の鉄筋コンクリート建物や発電所が被害を受けた. このため島内の電力供給は2,3日間停止し, 上水道も揚水できなくなった. グアム島は頻繁に台風に襲われるため, 家屋の構造, ライフラインのバックアップ, 緊急対応などの面で備えがよく, 地震による影響を小さくした.
著者
東畑 郁生 風間 基樹 柳沢 栄司 杉戸 真太 片田 敏行 岩下 和義 大川 出 石川 裕
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

既住の地盤の地震応答解析法が,軟弱地盤において振動を過小評価することを最大の問題としてきた。前年度までの活動で、軟弱地盤は硬い地盤よりゆれやすいと考えなければ被害の実態、あるいは過去の地震記録にあわないことも判明していた。そこで今年度は2とおりの解析方法を開発、あるいは提案した。第1の方法は、既住の等価線形化手法に周波数依存性の考えを取り込んだ。不規則な地震時加速度には低周波かから高周波まで、多くの成分が含まれている。低周波成分は変位やひずみを大きくし、高周波成分は最大加速度を発生する。また土の剛性や減衰比はひずみ振幅に依存する。大ひずみほど剛性は小さく減衰は激しい。従来の等価線形化解析では、算出された最大ひずみにもとづいて剛性と減衰比を調節してきた。そのためひずみの大きい低周波成分も歪の小さい高周波成分も、一律に同じ剛性と減衰比を与えられていた。最大加速度を与える高周波成分が、歪は小さいにもかかわらず、低周波成分の大きな歪に影響されて過大な減衰を与えられてきた。その結果、最大加速度は過小評価された。新しい手法では、周波数成分ごとに歪を評価し、それに応じて剛性と,減衰比とを独立に決定している。高周波成分の減衰比は小さくなり、最大加速度をより妥当に評価できるようになった。第二の方法では、地層の連続性という概念を導入した。沖積地盤は過去1万年あまりの連続した堆積作用の結果できた。堆積した土質は、一時時な洪水堆積物を除くと、連続である。土の年齢も連続であり、有効応力も深さ方向に連続である。したがって、土の動的性質は深さ方向に変化はしても連続である。この連続性が当てはまらないのは、地質学でいう不整合部分である。既住の解析では地盤を層や要素に分割し、層間では物性が連続していない。そのため余分な波動反射が起こり、振動エネルギーが地表まで到達しにくくなっている。そしてその度合は高周波ほど著しい。新しい解析では剛性が深さ方向に連続するものとしている。剛性を深さのべき関数としてあたえ、地盤振動の微分方程式を解析的に解いた。それによると地表付近に軟弱層が厚く存在しているときほど、連続性を考慮したことによる増幅特性の増加が著しい。現在までに減衰比も考慮した解析理論ができており、今後不規則振動と土の非線形性を考慮に入れていきたい。以上の成果は今後の事例研究を通じ、有効性の確立に努めていく。
著者
東畑 郁生 GRATCHEV Ivan Borisovich BORISOVICH Gratchev Ivan
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

近年の都市再開発では、従来存在していた工場などから廃棄物が地中に浸透して地盤汚染を起こしていることが、しばしば発見されている。この問題への対処としては、汚染物質の除去あるいは封じ込めが想定されてきた。環境的な視点に立つならば、このアプローチは妥当である。しかしそれに加え都市の再開発を考えるならば、地盤の剛性や支持力のような力学的性質が化学物質の浸透によってどうに変化するのか、という問題意識を欠くことができない。さらに、地球温暖化に伴って海水面上昇が議論され、電解質である塩水の浸透によって粘土地盤の地盤沈下の可能性も、考慮しなければならない。このような視点から本研究では、全国各地から粘性土のサンプルを集め、これに酸性流体や電解質流体を浸透させる装置を製作し、粘土の剛性や沈下などの力学的性質に起こる変化を測定した。まず酸性流体の影響を調べるため、中性およびpHの小さい流体を浸透させ、その後一次元圧縮実験を行なって粘土の持つ剛性を測定した。当初、酸性流体は粘土の圧縮性を高め、剛性を減少させると予想していた。しかし実際には剛性が増加する粘土と減少する粘土とが存在し、その原因としてモンモリロナイトのような粘土鉱物の含有量が想定された。すなわち酸性流体廃棄物の浸透によって地盤沈下を起こしやすい地盤とそうでない地盤とが存在する。次に電解質であるが、真水で飽和した粘土試験体に、海水程度の濃度の塩水を浸透させ、体積収縮を測定した。粘土鉱物間の流体のイオン濃度が上昇すると電気二重層が収縮して鉱物同士が接近し、体積収縮につながるものと予測していた。使用した粘土は東京下町の有楽町粘土であり、東京における海水面上昇の影響を想定した。実験結果によれば電解質の浸透は体積収縮をあまり起こさなかった。これは当該粘土が本来海水中で堆積したものであり、塩水の影響はすでに完了しているもの、と考えられる。
著者
小長井 一男 東畑 郁生 清田 隆 池田 隆明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

2005年10月8日パキスタン・インド国境近くのカシミール山岳地でM7.6の地震が発生した。実数は9万人を超えると推測され、この地震がパキスタン社会に与えた影響が極めて深刻であることは言うまでもない。しかし同時にこの地震は、その後長期に継続する地形変化の引き金となり、被災地の復興に様々な問題を投げかけている。本年度で実施した研究の実績は主に以下の2点に集約される。(1)Hattian Ballahに出現した巨大な崩落土塊の変形については前年度までにをモンスーンの前後で精密GPSによる計測を行って、この土砂ダムの決壊にいたる懸念があり万が一の決壊時の流出解析を行い、この結果はState Earthquake Reconstruction & Rehabilitation Agency(SERRA)やMuzaffarabad市、そしてJICAにも報告されていた。この決壊は2010年2月9日に現実のものとなり、下流部に最高17m程度の洪水が押し寄せ30余りの家屋が流された。男子1名の犠牲者が報告されたが警戒していた住民の避難があったことが犠牲者を最小限に抑えたものと思われる。決壊に至った詳細を現地計測をもとにとりまとめ現地機関に報告するとともに、International Jopurnal "Landslides"にも2編の投稿を行っている(1篇は登載決定)。(2)カシミール地方の中心都市Muzaffarabad東側に南北に走る断層背面に露出したドロマイト混じりの斜面から流出する土砂はこれまでに谷沿いの家屋の多くを1階~2階レベルまで埋め尽くしていた。今年度はパキスタンが未曾有のモンスーン豪雨被害を受け、対象地域の様相は激変した。砂防堰堤の作られた沢とそうでない沢の被害の様相は大きく異なりこのような状況を調査し更なる対応への提言としてとりまとめている。
著者
前川 宏一 東畑 郁生 石田 哲也 内村 太郎 牧 剛史 半井 健一郎 龍岡 文夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

(1)土粒子間の連結空隙構造をセメント系複合材料の微細空隙構造モデルに導入し,物質平衡-移動-反応-変形解析に関する数値プラットフォームを開発し,拡張熱力学連成解析を土粒子間隙水の圧力と変形にまで連結させて,地震時の構造-地盤液状化解析と,構造中のコンクリートの過渡的な変性を追跡する多階層連結解析コードを完成させた。(2)コンクリートおよび地盤材料の水分保持能力の温度履歴依存性を実証し,過渡応答時の水分平衡モデルの精度を向上させた。大径空隙でブロックされる水分が高温時に急速に開放される状況が解明され,従来の定説を大きく変える契機を得た。セメント硬化体からのカルシウム溶出と自然地盤における吸着平衡モデルを,水和反応の過渡的状態に対して拡張した。(3)水和生成ゲルおよびキャピラリー細孔内の水分状態からセメント硬化体の巨視的な時間依存変形を予測するモデルを完成させ,分子動力学を適用し温度依存性に関するモデル化の高度化を図った。(4)鋼材腐食生成ゲルと周辺コンクリートのひび割れ進展,さらにゲルのひび割れへの浸入を考慮することにより,様々な条件下でのかぶり部コンクリートの寿命推定を可能にした。(5)飽和及び不飽和地盤中にRC群杭を設置した動的実験を実施し,初期振動状態から一気に液状化する厳しい非線形領域での杭と地盤の応答を詳細に分析した。土粒子構成則と多方向固定ひび割れモデルの結合で,地中埋設構造応答をほぼ正確に解析できることを示した。(7)非線形時間依存変形の進行モデルを弾塑性破壊型構成則の一般化で達成し,時間成分を取り除いた繰返し作用の影響度を、数値解析連動型実験から抽出することに成功した。ひび割れ面での応力伝達機構の疲労特性を気中・水中で実施し,高サイクル疲労に対応可能な一般化モデルを構築し,直接積分型高サイクル疲労破壊解析を実現した。
著者
東畑 郁生 Ghalandarzadeh Abbas Shahnazari Habib Masoud Mohajeri Ali Shafiee
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.69-80, 2004

Following the devastating earthquake disaster in Bam city, Iran, a reconnaissance team was sent to the site. The authors participated in its activities with special emphasis on geotechnical issues. A soil investigation in the city revealed that local soils have su$ciently good properties and cannot be the main source of heavy damage to houses. Because bridges and structures other than buildings experienced minor damage during the same earthquake, it seems that the structural weakness of houses made of masonry and adobe is a major problem. A possible mitigating measure may be to use light materials such as ESP, although consideration has to be given to the local climate and the landscape.