著者
前田 貴記
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.178-186, 2019-12-25 (Released:2020-01-08)
参考文献数
21

自己意識という主観を実証的に扱うための方法論として,主体感(sense of agency)というアプローチについて紹介する.我々は主体感について実証的に評価するために,「Sense of Agency Task(Keio Method)」を考案し,主として統合失調症をターゲットとして研究を進めてきた.さらに,主体感に直接介入し,主体感の精度を向上させる手法を考案し,統合失調症のみならず,様々な神経疾患・精神疾患における認知リハビリテーションについても試みている.主体感を軸とした,統合失調症の症状論,病態論,治療回復論にわたる一連の研究について紹介したい.主体感というアプローチが,神経心理学において,人間の主観的体験を実証的に扱うための一つのモデルとなればと考えている.
著者
船山 道隆 前田 貴記 三村 將 加藤 元一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.40-48, 2009-03-31 (Released:2010-06-02)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

両側前頭葉損傷後,強制的に人物とりわけ人の眼を中心に凝視ないしは注視 (forced gazing) を続ける2 症例を報告した。この2 例では,人が視界に入れば必ず凝視ないしは注視が誘発され,人が視界から消えるまで持続した。すなわち,この行動は,外部環境刺激に対して戸惑うことなく駆動され継続した。  forced gazing は,能動性がほとんどみられない患者に出現する,外部の環境刺激に対して視線が自動的に反応する被影響性が亢進した現象と考えられ,また前頭葉の損傷による抑制障害のため頭頂葉の機能が解放された結果,これらの行為/行動が出現したと考えた。本2 症例は前頭眼野を含む広範な両側前頭葉損傷であった。本2 症例に随伴した把握現象や道具の強迫的使用から両側前頭葉内側面損傷がforced gazing の責任病巣の中で最も重要と考えられ,前頭眼野も責任病巣の1 つと考えられた。
著者
前田 貴記
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.420-425, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
15

高次脳機能障害において, 自己意識の異常は, 病識, 自伝的記憶, 身体感覚, 身体図式, 行為に伴う自己意識などの異常として, よく経験するところである。自己意識は主観的体験であるため, 主観性をいかに実証的に扱うかという方法論的な問題が存在する。本稿では, 統合失調症における自我障害の神経心理学研究である sense of agency 研究について紹介するが, 高次脳機能障害においてみとめられる自己意識について実証的に評価, 研究する際の参考になればと思う。
著者
大武 美保子 前田 貴記 加藤 元一郎 淺間 一 高木 利久
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
インテリジェントシステム・シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.323-324, 2006-09-25

Schizophrenic patients have abnormal sense of agency. The patients experiencing passivity phenomena believe their thoughts and actions to be those of external or alien entities. In this study, the authors propose method for simulating the cognitive deficit in schizophrenia whose data are comparable to the experimental data. We proposed the efferent copy activation and comparator inhibition model describes under-attribution and over-attribution in schizophrenic subjects. The output of this functional model is mapped onto the corresponding brain area based on Talairach atlas. The simulation results of this study well describe the experimental results of a schizophrenic cerebral pattern of activation.
著者
大武 美保子 新井 航平 前田 貴記 加藤 元一郎 高木 利久 淺間 一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.590, pp.41-44, 2007-03-09

意志作用感(sense of agency)とは,ある動作や思考などを,他人ではなく自分の意志によって為しているという感覚をさす.統合失調症患者は,この意志作用感が障害される。ある時は,自分の動作や思考が他者の意図によるものと感じ,また逆に,自分が制御していない事柄を自分が引き起こしたと感じることがある.本稿では,意志作用感の障害を説明する認知モデルを構築し,シミュレーションを行うことにより検討を行う.