著者
北垣 郁雄
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.71-89, 2022 (Released:2023-02-27)

本ノートでは、笑いを主旨とするイグノーベル賞受賞作品に関し、日本の業績の定性分析と定量分析を行う。その結果を参照しつつ、「笑いを含むイノベーション」を考察することを目的とする。 定性分析については、笑いの諸理論を援用して受賞作品の特徴を抽出する。まず、その諸理論の解釈を行うとともに、理論間の関係を調べる。次に、その中の価値論を取り上げて、価値の構造を図式化する。その構造表現を援用しつつ日本人による受賞作品を解釈する。また、笑いの感情の誘発要件に言及するとともに、その誘発モデルを提案する。 定量分析については、受賞数を国別に求め、日本が先進国の中でも高い業績を有する国であることを述べる。 また、日本のビジネスを中心にして、今後のイノベーションを考察する。多くのイグノーベル賞受賞作品が「イノベーション」を志向していることを述べるとともに、「笑いを含むイノベーション」を図る際の留意点をまとめる。そして、STEM(理工学)の拡張として、「笑い(Laughter)を含むイノベーションSTLEAM」を図ることを事例提案している。
著者
北垣 郁雄 大膳 司 永岡 慶三 匹田 篤 村澤 昌崇
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ファジィ理論の一つであるファジィ測度は、評価問題の解決への応用が期待されていた。当時、理論的な進展は見られていても、システム開発への応用や評価対象ごとの評価の特質や応用時の課題の検討が進んでいなかった。標記の課題名に含まれる「複眼評価」とは、評価対象の性質、評価の観点・基準など、評価を取り巻く諸要素の変動によって「評価値」が変わり得るという状況を想定し、評価値に幅が存在するという特徴を活かした評価方法を指している。そのような評価は、物理量よりも心理量の計測で関心が持たれることが多い。なぜならば、心理量としての評価値には、本来的にあいまいさが存在するからである。アンケートに即して述べるならば、客観的な事実調査よりも意識調査の分析において、複眼的な要素が多分に含まれると思われる。以上のような背景のもとに、本研究課題では、複眼評価の特質をまとめている。一つの評価対象に対しても、当該評価システムの構築にあたって複眼的な評価の数理を開発するとともに、評価の領域を広げて複眼評価自体の特質をつかむことを目的とする。複眼評価の研究は、「捉えなおし」の研究と呼んでも良い。そのような観点から、複眼評価という特徴を生かした電子アンケートの構築・分析論理をまとめた。その論理では、評価論理にファジィ理論を導入し、アンケート処理システムに資する複眼的アルゴリズムを用いた。また、これまでの諸研究成果を複眼評価という点で捉えなおすという工夫も試みた。そして、評価行為を伴う種々の研究素材(高等教育研究、グループウェア、e-learning、メディア研究など)において、複眼評価の可能性と問題点を整理した。
著者
北垣 郁雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.100-104, 1990-02-15 (Released:2017-09-19)
被引用文献数
1

あらまし コンピュータが"笑う"には、"笑い"の誘発の仕方を定式化する必要がある。ここでは、客体の通俗性と劣弱性をはじめ、おかしみにかかわる数個の要因に限定し、これらから、"おかしみの大きさ"を規範的に求める方法をファジィ論的に提案している。また通俗性と劣弱性についての若干の考察を行う。
著者
北垣 郁雄
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.30, pp.187-192, 1990-04-25

ストーリのなかの客体に対して"笑う"ことのできるコンピュータの構築に向けて、環境整備を行う。主な作業は、用語の整備、笑い/おかしみの要因の分類、そのなかで工学の対象となる要因の抽出、おかしみのモデルの設定、"おかしみの総量"のファジィ論的定式化、おかしみと諸感情との関係の図式表現、おかしみの誘発論理の考察などである。特に、工学的視点から、おかしみの要因としては、通俗性と劣弱性をとりあげる。いわば"笑うコンピュータ"の原初的研究である。
著者
北垣 郁雄
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
no.50, pp.145-159, 2018-03

This paper deals with the Ig®noble prize which is sometimes called a parody of the Nobel Prize. This activity has been conducted every year and each year nearly ten outcomes are selected then given the prize. The general reputation for the prize varies widely, from its high value for laughing matters to its low value for the foolish matters.The main objective here is surveying and analyzing the selected outcomes then considering their influence on the researcher development due to the following reason.First, after the inauguration of the Ig®nobel prize in 1991, the activity has continued for more than 25 years. The fact that it has been done for many years shows that the there has been positive assessment for the activity. Anyway the prize could make a crucial discussion on "research" resulting from its given outcomes. Unexpected creativity could have the impact on researcher development especially in the graduate education.Second, the prize could have an impact on the promotion of future technology. A new paradigm of research has been researcher interest in the times that technology outcomes have had an enormous influence on human life. For example, computer has been developed mainly for obtaining practicability of human life; for finding the possibility of computer such as artificial intelligence; or for finding an emotional technology method by making an appropriate human-computer interaction. In the time that divergent technology method has been researched, divergent interest as shown in Ig®noble prize could promote the researcher development through the transdisciplinary approach.
著者
永岡 慶三 竹谷 誠 北垣 郁雄 米澤 宣義 赤倉 貴子 植野 真臣
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,複数の人間により形成されるグループに対して「グループの学力」を定義し,その評価法を開発することにある.今後のネットワーク社会のさらなる進展を考えれば,社会の各分野においては個人的活動は限られ束面となり,ほとんどがプロジェクトなど複数の人間の協力する活動が多くを占めることになると思われる.そこでは,個人個人の能力の高さだけでなく,いかに複数のメンバーの協同によるグループとしての能力の高さが要求されるものと考えられる.その評価法の開発・実用は,特定の人材の集合からどのように効率的なプロジェクトメンバー構成をすればよいかという人材活用の方法論としての価値を持つものと考える.さてテストを科学的に、計量的に扱うもっとも根本的な主要概念は信頼性である.信頼性(の推定方法)は考え方により多くの定義があるが,理論的明快さや実用性など種々の利点から最も多く用いられるのはCronbachのα係数である.本研究においても信頼性といった場合,Cronbachのα係数をさすものとする.研究実績の成果は,これまでのテスト理論では扱われていなかった受検者側の内部一貫性の特性・概念を導入したことといえる.さて有力な応用目的として,たとえば,N人の受検者集団から構成員数2のグループを構成するとする.すなわち二人ずつのペアを組むとする.Guttmannスケールの項目群を仮定すれば,個別学力の大きい順に第1位から第N/2位までのN/2人を異なるグループに配すればよく,いささか自明解である.ここに受検者側に内部一貫性の特性を導入すれば,話は別で,グループ(ペア)内のθ値の大小だけでは決まらないのである.すなわちペアで考えれば,お互いがお互いの弱点を補い合うような組合せ,すなわちその2名の1,0得点パターンの排他的論理和が全体で最大化するような組合せを行うことで最大化が見込まれる.