著者
合原 一究
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.167-172, 2019 (Released:2020-08-01)
参考文献数
23

多くの動物にとって,音は周辺環境を把握するための重要な手がかりである.本稿では,音を活用する夜行性動物であ るカエルに注目する.カエルは多くの種でオスが鳴き声を発し,メスはオスの鳴き声を聞きつけて近寄ってくる.著者らは, ニホンアマガエルのオス同士の音声コミュニケーションを対象に,室内実験と野外調査を実施した.その結果,室内と野外の 両方で,近くのオス同士が交互に鳴く傾向を見出した.このような鳴き方には,タイミングをずらして自分の鳴き声が他個体 の鳴き声でマスクされないようにして,自分の存在をメスに効率よくアピールする機能があるものと予想している.次に,パ ナマ共和国でトゥンガラガエルとケヨソイカの関係を調べた.トゥンガラガエルのオスはメスを呼ぶために鳴くのだが,その 鳴き声は捕食者や寄生者に盗み聞きされてしまう.ケヨソイカもトゥンガラガエルのオスの鳴き声を聞いており,鳴き声を手 がかりに近づいてカエルの血を吸う.著者らはトゥンガラガエルの鳴き声と,その鳴き声に寄ってくるケヨソイカの行動を野 外環境で計測した.その結果,たくさん鳴いているオス,一声あたりに複雑な音声成分を多く含むオスのほうが,ケヨソイカ に狙われやすいことがわかった.トゥンガエルのオスにとって鳴くことは「メスへのアピール」と「捕食者・寄生者に狙われ るリスク」 という2つの側面があり, それらのトレードオフによって適切な鳴き方が決まっているのではないかと予想している.
著者
寶来 俊介 合原 一究 合原 一幸
出版者
東京大学
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.18-21, 2007-03
被引用文献数
1

2匹のオスのニホンアマガエル(Hyla japonica)が鳴き声を介して相互作用する発声行動において観測された音声データに関して,音声編集ソフトウェアAudacityを用いた時系列解析を行なった.特に,2匹のカエルの鳴き声を記録した単一の時系列データから,それぞれのカエルに対応する発声データを抽出し,2匹の発声の時間間隔および相互の発声の関係性について定量的に解析を行った.今回の解析により,2匹のカエルが位相差1.11πというほぼ位相が反転した状態で同期して交互に鳴いていることが明らかになった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
合原 一究
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.167-172, 2019

多くの動物にとって,音は周辺環境を把握するための重要な手がかりである.本稿では,音を活用する夜行性動物であ るカエルに注目する.カエルは多くの種でオスが鳴き声を発し,メスはオスの鳴き声を聞きつけて近寄ってくる.著者らは, ニホンアマガエルのオス同士の音声コミュニケーションを対象に,室内実験と野外調査を実施した.その結果,室内と野外の 両方で,近くのオス同士が交互に鳴く傾向を見出した.このような鳴き方には,タイミングをずらして自分の鳴き声が他個体 の鳴き声でマスクされないようにして,自分の存在をメスに効率よくアピールする機能があるものと予想している.次に,パ ナマ共和国でトゥンガラガエルとケヨソイカの関係を調べた.トゥンガラガエルのオスはメスを呼ぶために鳴くのだが,その 鳴き声は捕食者や寄生者に盗み聞きされてしまう.ケヨソイカもトゥンガラガエルのオスの鳴き声を聞いており,鳴き声を手 がかりに近づいてカエルの血を吸う.著者らはトゥンガラガエルの鳴き声と,その鳴き声に寄ってくるケヨソイカの行動を野 外環境で計測した.その結果,たくさん鳴いているオス,一声あたりに複雑な音声成分を多く含むオスのほうが,ケヨソイカ に狙われやすいことがわかった.トゥンガエルのオスにとって鳴くことは「メスへのアピール」と「捕食者・寄生者に狙われ るリスク」 という2つの側面があり, それらのトレードオフによって適切な鳴き方が決まっているのではないかと予想している.
著者
寳来 俊介 合原 一究 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.106-109, 2007 (Released:2007-03-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2匹のオスのニホンアマガエル(Hyla japonica)が鳴き声を介して相互作用する発声行動において観測された音声データに関して,音声編集ソフトウェアAudacityを用いた時系列解析を行なった.特に,2匹のカエルの鳴き声を記録した単一の時系列データから,それぞれのカエルに対応する発声データを抽出し,2匹の発声の時間間隔および相互の発声の関係性について定量的に解析を行った.今回の解析により,2匹のカエルが位相差1.11πというほぼ位相が反転した状態で同期して交互に鳴いていることが明らかになった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
奥乃 博 中臺 一博 公文 誠 糸山 克寿 吉井 和佳 佐々木 洋子 昆陽 雅司 合原 一究 鈴木 麗璽 加賀美 聡 田所 諭
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究では,ロボット聴覚ソフトHARKの「聞き分ける技術」を基に,自然環境・災害現場でも通用するように,豊富な機能拡充・高性能化と応用に取り組んだ.HARKはWindows版提供により9万件弱のダウンロードがあった.多人数インタラクション,音楽共演ロボットの可能性を示し, iGSVD-MUSICの開発によるUAV用音源定位の頑健化,索状ロボット用に姿勢推定・音声強調の開発により,レスキューロボットへの音利用の可能性を示し,さらに,カエルの合唱の解明,野鳥の鳴交解析のためのHARKBirdの開発と実地検証により音響生態学への可能性を実証し,ロボット聴覚の多面的展開のための基礎技術が確立できた.
著者
糸山 克寿 坂東 宜昭 粟野 浩光 合原 一究 吉井 和佳
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.55, pp.1-6, 2015-05-16

本稿では,映像と音響信号に対して統合的に非負値行列因子分解 (NMF) を行うことでカエルなどの動物の合唱行動を分析する手法について報告する.カエルをはじめとした様々な動物は合唱 (音声によるコミュニケーション) を行うことが知られており,各個体がどのように合唱に参加しているかを調べることはその生態の解明に重要である.空間的な音場を光に変換するデバイスであるカエルホタルを用いて,ビデオカメラで録画した映像およびモノラル音響信号に対して統合的にNMFを行うことで,各個体の鳴き声を分離抽出する.カエルホタルの輝度とパワースペクトルの振幅をNMFのアクティベーションとして共有させることで,スペクトル形状が類似した同種別個体の鳴き声を相異なる基底へと分解する.
著者
奥乃 博 合原 一究
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

(1)ギター演奏の手の動きとギター演奏音響信号との情報統合と,複数の追跡機構の結果統合による裏拍等に頑健なビート追跡法を開発し,音楽共演者ロボットを開発.(2)カエルの合唱でのリーダに倣ったリーダ度を設計し,実時間でリーダ度を求め,リーダ度が最も高いパートに演奏を合わせる合奏機構を開発し,音楽共演ロボットで有効性を確認.(3)2種の信号帯域に応答する音光変換装置「カエルホタル」の開発し,2種類のカエルの合唱の同時観測に日豪で成功.