著者
吉田 寛
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、コンパートメントモデルにおける薬物動態に対する解析手法の開発を行った。手法の特色として、通常のTime domain(時間tの空間)上ではなく、ラプラス空間上で反応定数を決定する事が挙げられる。これにより、従来のTime domain上では、複雑だった式が、ラプラス空間上では、簡潔かつ厳密に表された。本手法は、特に、観測できない、あるいは、したくない時系列データが存在し、そのデータの代替として目的部位以外の参照部位を観測した場合に、有効である。更に、コンパートメントモデルと非線形な酵素反応が絡む系においても、上記の手法を適用した。その結果、定常状態を仮定した上でミカエリス・メンテン型に変形して解析する従来の方法では扱えないような非平衡系における解析が可能となった。この系は、過少決定系であって、本質的に素イデアル分解が必要になった。このように、本手法は、コンパートメントモデルには収まらない薬理動態の解析を押し広げるものである。実応用として、マウスのDox動態において、Dox・TetR蛍光イメージング技術に適用した。
著者
吉田 寛 田尻 孝 真々田 裕宏 谷合 信彦 平方 敦史 川野 陽一 水口 義昭 清水 哲也 高橋 翼
出版者
日本門脈圧亢進症学会
雑誌
日本門脈圧亢進症学会雑誌 (ISSN:13448447)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.185-188, 2002-12-15 (Released:2012-09-24)
参考文献数
9

内視鏡的静脈瘤結紮術 (EVL) の意義と適応を検討した.対象は, 初回にEVLを施行した80例で, 後日EVL追加した34例 (EVL群) と後日1%ASによる内視鏡的硬化療法 (EIS) を追加した46例 (EVL+EIS群) の2群に分類した. (EVL, EVL+EIS) (mean±SD) (1) 完全消失率 (94.1, 93.5%) (NS), 治療回数 (2.5±0.5, 3.1±1.0回) (p<0.005), 総結紮数 (22.1±8.2, 13.2±4.9) (p<0.0001). (2) 累積初回再発率は有意にEVL群で高率 (p<0.05). (3) 再発例 (30例, 36例) (NS) に対する追加治療再入院回数 (1.8±0.6, 2.9±1.2回) (p<0.0001).うち手術, 塞栓術を追加例 (3例, 12例) (p<0.05) であった.EVL群では再発率は高率だが, 少ない追加治療回数にてコントロール可能であった.-方EVL+EIS群は, 内視鏡治療の限界例が多かった.EVLは, 当初より再発を念頭にいれ, 追加治療も含めて一連の治療法と考えれば, 良好な長期成績が得られ, first choiceの治療法になりうる.
著者
吉田 寛 古田 智昭 福永 健司
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.512-519, 2003-05-31
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

貝殻廃棄物を利用した酸性雨対策や強酸性土壌地における緑化手法「アルプラスエ法」の概要について紹介する。本緑化工法は,酸性矯正材(中和材)として臨海施設や養殖産業から排出される貝殻廃案物を調整加工したリサイクル資材「シェルレミディ」を用いることを特徴としている。この資材は,中和効果が長期間持続するほか,多くのミネラルを含んでいることから一般的な中和剤である炭酸カルシウムを使用した場合と比較して植物の成長を促進することができ、植生基材や酸性矯正層の材料として使用することにより,酸性雨や強酸性土壌が原因で植生の回復が困難な法面等における良好な緑化が期待できる。
著者
吉田 寛 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.269-277, 2005 (Released:2007-03-12)
参考文献数
37
被引用文献数
2 3

厚層基材吹付工により中国産コマツナギ(Indigofera spp.)と常緑広葉樹(イボタノキ(Ligustrum obtusifolium Sieb. et Zucc.),シャリンバイ(Rhaphiolepis umbellata Makino),ヤブツバキ(Camellia japonica L.),サザンカ(Camellia sasanqua Thunb.))が混生する植物群落を形成した切土法面について,施工後約9年間の追跡調査を行った。その結果,これらが混生する植物群落を早期に形成させることにより,1)発芽・成立した常緑広葉樹は,林冠が中国産コマツナギに鬱閉された場合でも林床植生を形成して法面表層を保護できること,2)中国産コマツナギと常緑広葉樹との競合により,中国産コマツナギの密度と基底面積が低下する傾向が認められ,常緑広葉樹主体の群落への遷移を促す効果が示唆されること,3)林床植生として形成された常緑広葉樹は,イボタノキのような半常緑性の種を除いて,中国産コマツナギの落葉期においても緑量を持続できることから,特に周辺の森林が常緑性の樹木で構成されている場合には景観保全という観点からも有効であることが確認された。こうした改善効果は,今回使用した中国産コマツナギのほか,法面緑化で広く用いられているヤマハギ(Lespedeza bicolor Nakai.)やイタチハギ(Amorpha fruticosa L.)等を使用した場合においても発揮されると考えられ,マメ科低木群落が有していた,林床植生の衰退,単純林化,遷移の停滞,および落葉期の景観保全上の問題等を比較的容易に改善する手段のひとつとして有望と思われる。
著者
吉田 寛 真々田 裕宏 谷合 信彦 山下 精彦 田尻 孝
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.161-167, 2005 (Released:2005-11-09)
参考文献数
67

Bleeding from esophagogastric varices is a catastrophic complication of chronic liver disease. We have been attempted surgery, embolization, and endoscopic treatment for the treatment of esophagogastric varices. Endoscopic injection sclerotherapy (EIS) is an established treatment for esophageal varices. EIS is associated with a high incidence of local and systemic complications. Endoscopic variceal ligation (EVL) is increasingly used because of its safety and simplicity and because no sclerosant is used. Nevertheless, EVL is not always effective, and early recurrences have been reported. Furthermore, most patients with esophageal varices treated endoscopically require treatment for recurrent varices. We invented that EVL performed three times at bimonthly intervals. EVL performed at bimonthly intervals for the treatment of esophageal varices attained a higher complete eradication rate, a lower recurrence rate, and a lower additional treatment rate. It is generally believed that bleeding from gastric varices is more severe than bleeding from esophageal varices, but bleeding from gastric varices occurs less commonly than from esophageal varices. The endoscopic risk factors for bleeding from esophageal varices include presence of raised red markings, cherry-red spots, blue color, and large size. However the risk factors for bleeding from gastric varices have yet to be characterized. Once gastric variceal hemorrhage did occur, bleeding from these varices was successfully stopped in all cases. Therefore, prophylactic treatment of gastric varices is not recommended.
著者
吉田 寛
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.331-342, 2003-11-30
被引用文献数
15 17

本四連絡橋尾道〜今治ルート(西瀬戸自動車道)の伯方島で1975年に行われた植生基材吹付工の試験施工地において,客土種子吹付工により導入されたヤマハギ(Lespedeza bicolorvar.japonica Nakai)群落とイタチハギ(Amorpha fruticosa L.)群落についてこれまでの調査記録を整理し,施工25年後の植生調査を行った。その結果,客土種子吹付工で導入されたマメ科低木群落は,施工後約17年以降に自然侵入した木本植物の成長が進むことが確かめられ,イタチハギ群落やヤマハギ群落は,施工後25年間という長期スパンで観察すると,主に鳥散布や小動物の貯食によると思われる木本植物の自然侵入には有効に働いていると考えられた。また,客土種子吹付工と同時期に同じ法面に施工した厚層基材吹付工の24年後の調査結果をもとに比較すると,客土種子吹付工は導入したイタチハギ群落の持続性が厚層基材吹付工よりも低く,先駆性の落葉広葉樹やアカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)の自然侵入が早くからみられるのに対し,厚層基材吹付工は生育基盤の土壌化学牲などの違いからイタチハギ群落の持続性が高く,自然侵入種には先駆性の落葉広葉樹が少なく,常緑広葉樹のネズミモチ(Ligustrum japonicum Tunb.)とウバメガシ(Quercus phyllyraeoides A. Gray)が多くなることが確かめられた。マメ科低木群落を造成した場合の植生遷移は,主に先駆性の木本植物の自然侵入には導入群落の持続性が高い厚層基材吹付工より客土種子吹付工の方が有効と思われる。しかし,厚層基材吹付工を適用する場合において,導入種の高い持続性から得られる動物散布種の自然侵入促進効果を発揮させるために,マメ科低木類の発生期待本数を大幅に減量することにより,これらが単層で高密度に形成するのを回避したり,施工後早期に客土種子吹付工の施工後25年後にみられたような,先駆性落葉広葉樹と常緑広葉樹が混生した比較的疎な状態の多層の群落を形成することにより,客土種子吹付工が有する導入植生の早期衰退という法面防災上のリスクを伴うことなく,植生遷移をさらに早めることが可能ではないかと考えられた。