著者
櫻木 まゆみ 丸谷 知己 土肥 昭夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.147-152, 1999-05-16
被引用文献数
3

九州山地の大藪川流域(520ha)において, シカの生息密度や分布域の変化を樹木年代学的手法により再現した。幼齢造林地における枝葉被食木率と糞粒密度との関係やこれまでの研究例から, 樹皮被食木率が過去のシカ生息密度の指標として有効であることを示した。林齢と糞粒密度の関係から, 4〜10年生の幼齢造林地がシカの環境収容力が高いことを明らかにした。流域における1982〜1991年の幼齢造林地の増加は, 樹皮被食木率の増加と一致していた。1992年以降の幼齢造林地の減少により樹皮被食木率はさらに高くなった。この結果から, 幼齢造林地の拡大は環境収容力の増大とそれにともなうシカの集中を引き起こしたこと, さらに生息密度の増加とその後の幼齢造林地の減少によって, 採食圧が高まりシカが流域全体に分散したプロセスが明らかにされた。造林の規模や配置がシカの生息密度や分布域の変化に大きく影響していることから, 被害地におけるシカの増加プロセスを明らかにし, その各時期に対応した被害防止対策の必要性が示唆された。
著者
土肥 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.62-66, 1969-04-01

The feeding experiments of the guppy, Poecilia reticulata, were carried out under various bait concentrations. A water flea, Daphnia pulex, was used as the bait. 1) The guppy continously feeds on the bait all through the day, when supplied with a sufficient amount. 2) The consumed number of baits can be described as a function of the time required for feeding, as follows, n=N(1-e^<-at>) where n is the number of baits consumed till the time t, N is the initial concentration of bait and 'a' can be expressed in the present experiments as the function of the initial concentration of bait and the full function can be described as, n=N(1-e^<-5.468t>/N^<0.913>) 3) The equation between the number of baits consumed and the initial concentration of the bait showed good agreement with the equation obtained by IVLEV (1955). This equation is described as, r=R(1-e^<-ξp>) where R is the maximum amount of food consumption at a definite time and ξ is the coefficient of proportionality.
著者
岩本 俊孝 坂田 拓司 中園 敏之 歌岡 宏信 池田 浩一 西下 勇樹 常田 邦彦 土肥 昭夫
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-17, 2000-06-30
被引用文献数
10

The pellet count method proposed by Morishita et al. (1979) has been widely used in Japan to estimate sika deer population density. However, it is limited in that its usage is only for year-based regular pellet samplings. It cannot be used for irregular sampling periods. This study reveals this limitation through experimental findings that pellets do not decay at a constant rate throughout a year. This study also proposes a modified method applicable to any seasonal/regional sampling by taking into consideration seasonally variable decay rates of pellets. In order to estimate month-specific decay rates of pellets from meteorological data, linear regression and fractional equations were established. Then, employing one of the equations, a computer program was written to estimate sika deer density. This modified method is useful for periodic sampling in which pellets are regularly removed after counting, as well as for one-time sampling made in any region and any month. Discrepancies between the results of density estimations from this modified method and those from the conventional one are also discussed.糞粒消失率を年中一定と仮定した糞粒法によるシカの個体群密度推定式は、1年を単位にした調査以外では使えないことが明らかになった。それは、季節的に糞の消失率が大きく異なるからである。この研究では、季節的に異なる消失率をあらかじめ推定することによって、どのような時期や土地で調査をおこなっても、また任意の調査ルーチンを作ってもシカの密度が推定できる計算方法を提唱する。そのために、土地の気象条件により糞粒の消失率を求めるための推定式を考案した。また、その式により得られた各月の連続消失率を使ってシカの密度推定ができるコンピュータプログラムを開発した。本研究の中で明らかになった糞粒の消失率は、従来使われてきた率に比べ数倍高いものであった。今後は、この違いを生んだ原因を探る研究が必要である。
著者
安田 宣紘 江崎 健二郎 阿久沢 正夫 伊沢 雅子 土肥 昭夫 阪口 法明 鑪 雅哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.1069-1073, 1994-12-15
被引用文献数
4

事故死したそれぞれ2頭のイリオモテヤマネコ(Felis iriomotensis)とツシマヤマネコ(Felis bengalensis euptilura)に寄生する蠕虫について検査した. イリオモテヤマネコからは Spirometra erinacei, Toxocara cati, Molineus springsmithi, Uncinaria maya, Capillaria aerophila, C. felis-cati, 肺に寄生する所属不明の線虫子虫, Acanthocephala 1種の計8種が検出された. ツシマヤマネコからは Pharyngostomum cordatum,Spirometra erinacei, Toxocara cati, Molineus springsmithi, Arthrostoma hunanensis, Uncinaria felidis, Capil-laria felis-cati, 肺に寄生している所属不明の線虫子虫, Acanthocephala 2種の計10種が検出された.
著者
伊沢 雅子 小野 勇一 土肥 昭夫
出版者
裳華房
雑誌
遺伝 (ISSN:03870022)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.p54-59, 1986-08
被引用文献数
1
著者
遠藤 晃 松隈 聖子 井上 渚 土肥 昭夫
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-28, 2006 (Released:2007-06-26)
参考文献数
17

霧島山地, えびの高原において, ニホンジカに対する餌付けの影響を明らかにする目的で, 観光客による餌付けの定量化を試みた. のべ71時間の観察時間のなかで, シカに何らかの興味を示し接近したのは977団体, 2,733人, このうち183団体, 579人がシカに餌を与えた. 接近した人数と餌付けした人数の間には正の相関がみられ, 接近した人数の約20%が餌を与えていた. 与えた餌のメニューは, スナック・菓子類が70%を占めており, 1団体が平均0.63袋の菓子類を与えていた. 餌付けされたシカのグループサイズは1~11頭で, 平均4.8頭であった. 一日の駐車場利用台数と一日の餌付け人数, 餌付け団体数の間には正の相関がみられた (一日の餌付け人数:r=0.737, F=10.7, p<0.0014, 一日の餌付け団体数:r=0.737, F=10.7, p<0.01). また, 回帰式から, 年間の餌付け人数, 餌付け団体数が23,000人, 7,000団体と推定され, 餌付けがシカにとって一つの餌資源となっていることが明らかになった.