著者
五味 馨 藤田 壮 越智 雄輝 小川 祐貴 大場 真 戸川 卓哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_249-II_260, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
40

2018年4月に閣議決定された第五次環境基本計画において「地域循環共生圏」が大きく打ちだされ,政府の施策・事業にもその理念が取り入れられつつある.これまでのシステム・アプローチを基礎とした持続可能な発展に関する研究はこれと共通する部分が多く,その実現に大いに貢献することが出来るものと考えられる.本研究では提案型論文として,地域循環共生圏の考え方を取り入れたシステム研究の推進に必要な基礎的・理論的な整理と課題の検討を行う.まず地域循環共生圏の定義を確認し,その中核的な要素を抽出した「原則」として目標・方法・条件を提案する.また,行政計画や既往研究における圏域概念を分類して地域循環共生圏を位置づける.さらにシステム的な研究において必要となる課題を挙げ,その初動的なアプローチとして地域循環共生圏構築の活動をその構成要素に分解して構造化する手法を開発し,分析の基本的枠組みとして提案する.
著者
水谷 哲也 大場 真己 本道 栄一
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

「植物ウイルスはヒトを含む動物には感染しない」これは常識と考えても良かった。しかし、少しずつではあるがヒトや動物において増殖している可能性を示唆するデータが出てきている。このことから、生野菜を食べて植物ウイルスが大量に体内に取り込まれた場合にはある種の病気を起こすのではないか、という発想も成り立つ。これまでは常識にとらわれて、植物ウイルスとヒトや動物との関係が真剣に研究されてこなかった。それゆえ、本研究において植物ウイルスがヒトや動物に感染する可能性を科学的に検証する。
著者
渡邊 学 榎原 友樹 肱岡 靖明 大場 真 戸川 卓哉 エストケ ロナルド カネーロ 永井 克治
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.61-66, 2018

気候変動による影響を最小限に抑えるには,リスクを科学的に捉え,個々の要素に対して適切な対策を行うことが求められる。気候変動による影響のリスクを構成する主要な要素として外力・暴露とともに脆弱性があるとされる。外力・暴露については研究が進む一方,脆弱性については,その指標化や評価が困難であると捉えられてきた。本研究では,まず脆弱性の概念や脆弱性指標の特性について既往研究を基にレビューし整理を図った。その後,脆弱性指標を特定するスキームを開発し提案を行った。本スキームは適応策立案への貢献が期待できる。
著者
大場 真 戸川 卓哉 中村 省吾
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.315, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

中山間地におけるエネルギー目的のバイオマス利活用促進には、施業と燃料生産・配送、エネルギー生産と消費という流れの調整と共に、社会システムの課題解決として捉え直す必要があることを実例を踏まえ指摘する。かつての主要な産業が森林に関わるような地域では、人口減少や高齢化に起因する人的資源や地域経済の衰退という一律の課題を抱えている。歴史的文化的背景を踏まえつつ、豊かな森林とその恵みを受ける地域を創り出すためには、新しい潮流を取り入れる必要がある。国連の持続的開発目標(SDGs)は、様々な主体(官民)と様々な分野(経済、社会、環境など)に渡るマルチセクターでの目標の解決を促している。国内での類似した取り組みとしては林野庁の「地域内エコシステム」や環境省の「地域循環共生圏」等が挙げられる。本報告ではケーススタディ地域での取り組みを説明した後に、地域が必要とする社会システム(インフラ)として、主体的に再生可能エネルギーシステムを導入し、マルチセクターで取り組む体制づくりが必要であることを指摘する。また、森林やエネルギーだけでなく様々なセクターにおける事業を緩く結びつける方策について検討する。
著者
中村 省吾 大場 真 森 保文 根本 和宣
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>地方創生に向けた地域資源活用による活性化方策の一環として、木質バイオマス利用には多くの期待が寄せられているが、その具体化にあたっては多様なステークホルダーの存在もあり課題が山積しているのが現状である。</p><p>本研究では、福島県奥会津地域に位置する三島町(本町は人口約1,600人の小規模な自治体で、地域資源を活用したエネルギー施策の検討を進めている)が近年進める森林利活用施策に注目し、同町における木質バイオマスに関する取組の現状を把握することを目的として、町役場担当者に対するヒアリング調査を行った。</p><p>三島町では2016年から町内の森林活用の観点から木質バイオマスの検討が開始され、その中で木質バイオマスの事業利用(年間数千m3)と家庭利用(年間数m3)を並行して推進する必要性が確認された。特に後者では薪ボイラーによる冷暖房システムを町内施設に整備し、燃料供給を町主体の木の駅プロジェクトにより収集する方式を採用した。2019年度には上流(山主)、中流(森林事業者)、下流(エネルギー需要家)の各ステークホルダーが一体的に検討する場として協議会の設立が予定されていた。</p>
著者
大場 真 戸川 卓哉 藤井 実 安田 肇 中村 省吾 村上 高広
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本課題にて設定した以下サブテーマ(1)-(5)について、以下のような研究を実施した。(1)福島県三島町との連携研究を推進し、三島町内の住宅における地域ICTシステムの導入数を10件追加して17件とし、家庭における時間別のエネルギー消費量や太陽光パネルによる発電量等に関する基礎的データを取得した。(2)統合木質バイオマス利用モデルBaIMにおける、木質バイオマスコストにかかるパラメーターの検討を行った。(5)と関連して素材収集範囲や林業機械に対する習熟度などの新しい変数に関する検討を行った。(3)研究分担者らがこれまで開発してきたバイオマスガス化実験施設を拡張し、ガス化に供する原料の水分調整を実施した場合や未利用材の利用がガス化反応挙動に与える影響を明らかにする研究を継続した。(4)これまで開発した地域特性に応じた分散型エネルギーシステム設計プロセスのモデルのフレームワークによって、中山間地域での評価が可能な木質バイオマス資源に関連するシステムの拡張に引き続き着手した。地域ICTシステムで得られたデータも活用し、町内18集落におけるエネルギーの利用状況や望ましい地域エネルギーシステムに関する分析をとりまとめた「集落カルテ」のプロトタイプを検討した。(5)地域の木質バイオマス資源の利用促進が地域の産業連関構造に与える影響を定量的に計測するため、関連する統計資料を収集した。また、町が実施した山形県内を対象とした視察に同行し、木の駅や森林組合等の先進的な事例の現地調査を行った。森林組合には事後調査も実施し、三島町の森林を利活用した地域循環システムの構築に向けた基礎情報を収集した。三島町の産業連関表の精度を高めるとともに、奥会津地域における広域的な木質バイオマス資源の利用促進が地域循環・経済圏へ与える波及効果の検討を行った。