著者
敦見 和徳 奥田 圭 小金澤 正昭
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-91, 2015-12-25 (Released:2016-04-15)
参考文献数
47

シカの高密度化に伴う林床環境の変化が土壌動物群集に与える影響を明らかにするため,栃木県奥日光のシカ密度の異なる3地域(各地域8地点)において林床環境と土壌動物群集との関係を検討した。シカ密度と林床環境条件との関係を検討した結果,シカ密度と土壌硬度に正の相関,A0層の厚さ,乾燥重量および孔隙度との間に負の相関がみられ,シカの高密度化により林床環境が改変されていることが示唆された。次に,TWINSPANと判別分析を用い,土壌動物の群集組成の変化要因を解析した。TWINSPANの結果,調査地点はグループA(シカ低密度地点)とB(シカ高密度地点)に,動物群はグループⅠ~Ⅳに分類された。土壌の孔隙に生息する中型の土壌動物や,捕食性の多足類などは,グループⅠ~Ⅲに属し,グループBよりもAに多く出現した。一方,土壌の撹乱に耐性があるハネカクシ科や,植食性の半翅目などはグループⅣに属し,グループAとBに同程度出現した。また,判別分析の結果,グループAとBの違いを最もよく判別する林床環境条件は,A0層の厚さと孔隙度であった。以上から,本調査地において土壌動物群集が変化した主要因は,シカの高密度化に伴うA0層の薄化および孔隙度の低下であると結論した。
著者
奥田 圭 田村 宜格 關 義和 山尾 僚 小金澤 正昭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-118, 2014-11-30 (Released:2017-08-01)

栃木県奥日光地域では、1984年以降シカの個体数が増加し、1990年代後半から植物種数が減少するなど、植生にさまざまな影響が生じた。そこで当地域では、1997年に大規模な防鹿柵を設置し、植生の回復を図った。その結果、防鹿柵設置4年後には、柵内の植物種数がシカの個体数が増加する以前と同等にまで回復した。本研究では、防鹿柵の設置がマルハナバチ群集の回復に寄与する効果を検討するため、当地域において防鹿柵が設置されてから14年が経過した2011年に、柵内外に生息するマルハナバチ類とそれが訪花した植物を調査した。また、当地域においてシカが増加する以前の1982年と防鹿柵が設置される直前の1997年に形成されていたマルハナバチ群集を過去の資料から抽出し、2011年の柵内外の群集とクラスター分析を用いて比較した。その結果、マルハナバチ群集は2分(グループIおよびII)され、グループIにはシカが増加する以前の1982年における群集が属し、シカの嗜好性植物への訪花割合が高いヒメマルハナバチが多く出現していた。一方、グループIIには防鹿柵設置直前の1997年と2011年の柵内外における群集が属し、シカの不嗜好性植物への訪花割合が高いミヤママルハナバチが多く出現していた。これらのことから、当地域におけるマルハナバチ群集は、防鹿柵が設置されてから14年が経過した現在も回復をしていないことが示唆された。当地域では、シカが増加し始めてから防鹿柵が設置されるまでの間、長期間にわたり持続的にシカの採食圧がかかっていた。そのため、柵設置時には既にシカの嗜好性植物の埋土種子および地下器官が減少していた可能性がある。また、シカの高密度化に伴うシカの嗜好性植物の減少により、これらの植物を利用するマルハナバチ類(ポリネーター)が減少したため、防鹿柵設置後もシカの嗜好性植物の繁殖力が向上しなかった可能性がある。これらのことから、当地域における防鹿柵内では、シカの嗜好性植物の回復が困難になっており、それに付随して、これらの植物を花資源とするマルハナバチ類も回復していない可能性が示唆された。
著者
奥田 圭 藤間 理央 根岸 優希 ヒントン トーマス G. スマイサー ティモシー J. 玉手 英利 兼子 伸吾
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.137-144, 2018 (Released:2018-07-23)
参考文献数
27

2011 年の東北地方太平洋沖地震は、福島県の一部地域における人間活動を大きく変えた。福島第一原子力発電所の津波被害やその後に生じた放射能汚染は、結果的に放棄耕作地や住民の避難に伴う空き家を増加させ、避難区域内における家畜の逸出を招き、野生の哺乳動物の個体群も拡大させた。本研究では、福島県におけるニホンイノシシと逸出したブタとの交雑の可能性を検証した。2014 年から2016 年の間に福島県内の個体群から集められた75 頭のニホンイノシシのミトコンドリアDNA 配列を分析した結果、71 個体からはニホンイノシシ固有の既知の配列が得られたが、それらから著しく分化したブタに該当する配列が4 個体から得られた。この結果は、野生化したブタからニホンイノシシ個体群への遺伝子汚染を示唆している。また、今回の知見は、当該地域における核DNA マーカーを用いた詳細な遺伝解析とモニタリングに基づく個体群管理の必要性を示唆している。
著者
奥田 圭 關 義和 小金澤 正昭
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.121-129, 2013-11-30

シカの高密度化に伴う鳥類群集への影響を明らかにするため、栃木県奥日光地域における1977年から2009年にかけての繁殖期の鳥類群集のデータを過去の資料から抽出し、当地域においてシカが増加し始めた1980年代前半以前からシカが高密度化した現在までの鳥類群集の変遷を検討した。そして、その変遷要因についてシカの高密度化と絡めて考察を行なった。鳥類群集の変遷過程の概略をつかむため、1977年、1978年、1979年、1991年、1992年、1993年、1998年、2003年、2008年、2009年の計10時期のデータを用い、各時期において確認されたすべての鳥種を生活型(営巣型および採食型)により分類し、その組成の経年変化を検討した。また、TWINSPANにより種組成の似通った時期および出現傾向が類似する鳥種の分類を行なった。その結果、生活型の組成は1993年と1998年を境に大きく変化していた。また、TWINSPANの結果からも同様に、1993年と1998年を境に種組成が大きく変化していたことが示された。キツツキ類などの樹洞営巣型および樹幹採食型に属する鳥種や、サメビタキ属などの樹上営巣型、フライキャッチ(飛翔採食)型の鳥種は1998年以降に高い相対優占度を有していた。一方、ウグイス類やムシクイ類などの森林の下層を営巣や採食に利用する鳥種や、托卵習性を有するカッコウ類の鳥種は、1993年以前には高い相対優占度を有していたものの、1998年以降にはほとんど欠落していた。奥日光地域では1990年代後半からシカによる下層植生の衰退や樹皮剥ぎの増加などの森林植生への影響が顕在化したことが報告されている。これらのことから、シカの高密度化に伴う下層植生の衰退は、ウグイス類やムシクイ類などの営巣および採食環境の劣化をもたらし、負の影響を及ぼしたことが考えられた。さらに、それに付随して、これらの鳥種を主な托卵相手とするカッコウ類の鳥種にも二次的な負の影響を及ぼした可能性が示唆された。また、シカの高密度化に伴う樹皮剥ぎの増加は枯死木を増加させ、枯死木を営巣や採食に利用する樹洞営巣型や樹幹採食型の鳥種に正の影響を及ぼしたことが考えられた。また、枯死木の増加は樹上営巣型やフライキャッチ型の鳥種にも正の影響を及ぼした可能性が示唆された。以上から、奥日光地域において1993年と1998年を境に鳥類群集が大きく変化した主要因は、シカの高密度化に伴う植生改変であると結論した。
著者
村瀬 香 佐藤 俊幸 奥田 圭
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

原発事故が野生動物の遺伝子に与える影響に関するこれまでの研究には、汚染度が異なる地域間で比較したものは報告されているものの、同じ場所で、事故前後の比較を行なった報告はほとんどない。そこで本研究では、事故前からサンプリングしているイノシシを研究材料として、汚染度が異なる地域間と、同じ地域の事故前後において比較し、イノシシの遺伝的組成の変化を明らかにすることで、野生動物の被曝影響を分析することを目的としている。昨年度は複数の地域でイノシシのサンプリングを行なった。その際、調査地域、性別、サイズなどの生態データを集めるとともに、既存のソフトではなくプログラミングを通じて解析しやすいようにデータを整理した。また、マイクロサテライトを用いたフラグメント解析とシーケンスを行なった。特に昨年度は、ゲルマニウム半導体検出器で汚染度を測定する目的ですり潰して時間が経過したサンプルを対象に、どのような実験条件なら塩基配列を決定することができるのかを検討した。その結果、比較的多くのサンプルで塩基配列を決定することができる条件が明らかになった。さらに、そのうちのいくつかのサンプルについては、ハプロタイプを決定することが出来た。学術論文としては、原発事故や自然災害などの緊急事態には、長期的な視野に立った従来の解析手法を選択するよりも、ベイズ法を用いた統計モデリングの方が有用であることついて啓蒙する論文を執筆した。
著者
奥田 圭 田村 宜格 關 義和 山尾 僚 小金澤 正昭
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-118, 2014-11-30

栃木県奥日光地域では、1984年以降シカの個体数が増加し、1990年代後半から植物種数が減少するなど、植生にさまざまな影響が生じた。そこで当地域では、1997年に大規模な防鹿柵を設置し、植生の回復を図った。その結果、防鹿柵設置4年後には、柵内の植物種数がシカの個体数が増加する以前と同等にまで回復した。本研究では、防鹿柵の設置がマルハナバチ群集の回復に寄与する効果を検討するため、当地域において防鹿柵が設置されてから14年が経過した2011年に、柵内外に生息するマルハナバチ類とそれが訪花した植物を調査した。また、当地域においてシカが増加する以前の1982年と防鹿柵が設置される直前の1997年に形成されていたマルハナバチ群集を過去の資料から抽出し、2011年の柵内外の群集とクラスター分析を用いて比較した。その結果、マルハナバチ群集は2分(グループIおよびII)され、グループIにはシカが増加する以前の1982年における群集が属し、シカの嗜好性植物への訪花割合が高いヒメマルハナバチが多く出現していた。一方、グループIIには防鹿柵設置直前の1997年と2011年の柵内外における群集が属し、シカの不嗜好性植物への訪花割合が高いミヤママルハナバチが多く出現していた。これらのことから、当地域におけるマルハナバチ群集は、防鹿柵が設置されてから14年が経過した現在も回復をしていないことが示唆された。当地域では、シカが増加し始めてから防鹿柵が設置されるまでの間、長期間にわたり持続的にシカの採食圧がかかっていた。そのため、柵設置時には既にシカの嗜好性植物の埋土種子および地下器官が減少していた可能性がある。また、シカの高密度化に伴うシカの嗜好性植物の減少により、これらの植物を利用するマルハナバチ類(ポリネーター)が減少したため、防鹿柵設置後もシカの嗜好性植物の繁殖力が向上しなかった可能性がある。これらのことから、当地域における防鹿柵内では、シカの嗜好性植物の回復が困難になっており、それに付随して、これらの植物を花資源とするマルハナバチ類も回復していない可能性が示唆された。
著者
齋藤 朋之 橋本 雄一 立川 真弓 島崎 睦久 新井 丈郎 奥田 圭子 斎間 俊介 安達 絵里子 奥田 泰久
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.516-518, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
8

神経障害痛に対する各治療ガイドラインで第一選択薬であるプレガバリンの通常初回投与量は150 mg/日とされる.主な副作用に浮動性めまい,傾眠,浮腫および体重増加などがあり,強く発現した場合はその投与の継続を中止せざるを得ない場合も少なくはない.今回,他施設にて150 mg/日の投与が開始されたが,副作用のために投与が中止された4症例に対して,当科ペインクリニック外来において再度75 mg/日から開始して,その後に重篤な副作用は発現せずに継続および増量投与が可能となった症例を経験したので報告する.特に副作用が生じやすい高齢者などでは,初回は少量投与で開始し,徐々に増量する方法が推奨される.
著者
小金澤 正昭 田村 宜格 奥田 圭 福井 えみ子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.99-104, 2013-12-25 (Released:2017-04-03)

2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は,広範な地域に放射性核種を飛散させ,原発から約160 km離れた栃木県奥日光および足尾地域においても低線量ではあるが,放射性セシウムの飛散が確認された。そこで,今後,森林生態系における放射性セシウムの動態と野生動物に及ぼす影響を明らかにしていく上での基礎資料を得るため,両地域において2012年の2月と3月に個体数調整で捕獲された計80個体のニホンジカの筋肉,臓器類および消化管内容物等の計9試料と,各地域における冬季のシカの餌植物8種の放射性セシウム濃度を調べた。9試料のセシウム濃度は,両地域ともに直腸内容物が最も高く,次いで第一胃内容物,筋肉,腎臓,肝臓,心臓,肺,胎児,羊水の順となっていた。このことから,放射性セシウムは,シカの体内全体に蓄積していることが明らかとなった。また,奥日光と足尾における放射性セシウムのシカへの蓄積傾向には,明瞭な差異が認められた。これは,両地域における放射性セシウムの沈着量と冬季の餌資源の違いが反映した結果と考えられた。さらに,直腸内容物の放射性セシウム濃度は,第一胃内容物および餌植物8種よりも高濃度であった。このことから,シカは採食,消化,吸収を通じて,放射性セシウムの濃縮を招いていることが示唆された。
著者
小金澤 正昭 田村 宜格 奥田 圭 福井 えみ子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.99-104, 2013-12-25

2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は,広範な地域に放射性核種を飛散させ,原発から約160 km離れた栃木県奥日光および足尾地域においても低線量ではあるが,放射性セシウムの飛散が確認された。そこで,今後,森林生態系における放射性セシウムの動態と野生動物に及ぼす影響を明らかにしていく上での基礎資料を得るため,両地域において2012年の2月と3月に個体数調整で捕獲された計80個体のニホンジカの筋肉,臓器類および消化管内容物等の計9試料と,各地域における冬季のシカの餌植物8種の放射性セシウム濃度を調べた。9試料のセシウム濃度は,両地域ともに直腸内容物が最も高く,次いで第一胃内容物,筋肉,腎臓,肝臓,心臓,肺,胎児,羊水の順となっていた。このことから,放射性セシウムは,シカの体内全体に蓄積していることが明らかとなった。また,奥日光と足尾における放射性セシウムのシカへの蓄積傾向には,明瞭な差異が認められた。これは,両地域における放射性セシウムの沈着量と冬季の餌資源の違いが反映した結果と考えられた。さらに,直腸内容物の放射性セシウム濃度は,第一胃内容物および餌植物8種よりも高濃度であった。このことから,シカは採食,消化,吸収を通じて,放射性セシウムの濃縮を招いていることが示唆された。