著者
安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2082-2091, 2001-12-01
参考文献数
44
被引用文献数
52

GPSは1970年代に米軍により開発が開始され, 1993年に完成した衛星測位システムである.世界中どこでもいつでも実時間の高精度測位が可能となり, それ以来10年足らずの間に, 各種の航法のみならず, 膨大な分野での応用開発が進行中で, 今やこのシステムなしでは, 日常生活もままならぬほどの展開を見せている.一見, オールマイティで今更研究の余地が残されているのかと思われがちであるが, まだ解決すべき多くの課題を抱えている.GPS受信機自体の改良, 広域・狭域補強システムの開発, 屋内から, 上空が制限された市街地に至るシームレスな測位を可能とする擬似衛星技術の開発研究, RTK-GPSの広域化をめざす仮想基準点方式(VRS)の研究と枚挙にいとまがない.本論文ではGPSシステムの概要を示すとともに, GPSにかかわる諸般の技術の展望を述べる.
著者
前田 裕昭 川口 佳久 安田 明生
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-35, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
5

準天頂衛星測位システム(以下QZSSと呼ぶ)では,地上軌跡が東経135度を中心とし8の字を描く軌道(以下QZOと呼ぶ)に衛星(以下準天頂衛星,あるいは,QZSと呼ぶ)を軌道上に打ち上げて,日本を中心とした東アジアやオセアニアに測位サービスを提供する. しかし,軌道は,地球質点重力以外に,Zonal項やNon Zonal項等の非球対称地球重力項の影響や,太陽や月の重力,太陽輻射圧の影響を受ける. そのため,それぞれの影響の大きさがどの程度であって,どれだけの期間でそれらを補正する必要があるか,またその補正に必要な速度増分量がどれくらいかの把握は,QZSS及びQZSの研究開発において主要な課題の一つであった. この研究課題については,既に幾つかの検討がなされているが,いずれも断片的であったり,視点が異なる. 今回我々は,主に,軌道傾斜角=45deg,離心率=0.099,近地点引数=270deg,及び,地上軌跡の中心を東経135deg(これは昇交点経度=146.5degに相当する)とする軌道が受ける摂動を解析し,その特性を評価した. 2.では,Zonal項について,2体問題と対比させて述べる.Zonal項は,主として昇交点赤経,近地点引数,平均近点離角,及び昇交点赤経と平均近点離角の変動に起因して昇交点経度に影響を与える. これらZonal項による昇交点赤経,近地点引数,平均近点離角の変動は,永年摂動項としてよく知られている. ここでは,永年摂動項に関しては,軌道長半径の調整により,昇交点経度がほぼ変動しないようにすることができることを示す. 3.では,地上軌跡変動に主要な影響を与えるNon Zonal項についてその影響が経度に依存することを示す. Non Zonal項は地球の経度に関係するものであって,主として軌道長半径に影響を与え,その影響の様子は静止衛星に対するものと似ている. 適切な頻度での東西制御が必要である. 4.では太陽輻射圧の影響,太陽と月の重力の影響を,昇交点赤経ごとに評価した. 5.では研究・考察の検討をまとめて,むすびとした.まとめとしては,次のようになる.すなわち,まず,永年摂動項による昇交点経度の変動は,軌道長半径の調整により,変動しないようにすることができる.地上軌跡の東西方向の変動は,その軌道保持運用間隔Pを半年とすると,その時の軌道長半径の毎回の制御量は15kmであり,昇交点経度の変動は4.5deg以内である.10年間の軌道傾斜角の変動幅は最大で7deg程度であり,QZSSのサービス仕様次第では,その変動幅が許容して放置することもできることを示唆した. 同様に,これもQZSSサービス仕様によるが,仮に初期の昇交点赤経が135deg~270degであれば,近地点引数でさえもその変動幅は20deg以下であるので放置が可能である. なお,離心率の変動は大きいため,軌道保持運用間隔に実施する軌道長半径の毎回の制御と併せて,保持制御されることが望ましいことも分かった.
著者
海老沼 拓史 近藤 俊一郎 岩 張 安田 明生
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.213-220, 2008-03-25 (Released:2017-01-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Galileo is the European Global Navigation Satellite System (GNSS) designed to be interoperable with the United States' Global Positioning System (GPS). Galileo and GPS interoperability means that hybrid GPS/Galileo receivers will offer improved performance in several ways compared to GPS- or Galileo-only receivers. This paper presents the design and implementation of a software GPS/Galileo receiver, together with testing results using a real Galileo signal from GIOVE-A, the first Galileo in-orbit validation satellite. Furthermore, a new navigation solution algorithm to estimate the GPS-Galileo system time difference is proposed. Hybrid navigation results show that 2 m (2drms) positioning accuracy can be achievable without knowing the exact system time difference.
著者
橋田 祥子 加治屋 亮一 小池 義和 安田 明生 大森 宏 藤崎 健一郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、明星大学緑地環境保全ボランティアクローバーを、日野市、あきる野市、八王子市の市民が、緑地保全や緑の環境緩和効果に関する環境測定を通じて交流する仕組みの核として位置づけ、芝浦工業大学と共同で開発した環境教育ツール(GPSを用いた移動観測装置)を用い、中学生と共同で環境測定を実施した。また、東京大学大森研究室と共同開発した、ホームページを用いた対話型環境教育ツールを用いて樹名板の作成や構内樹木マップの作成に取り組み、市民が緑に親しむきっかけづくりに取り組んだ。今回開発した環境教育ツールを様々な場面で応用し、若い世代が緑に親しみ、緑地保全に興味を持つきっかけを広げてゆきたい。
著者
安田 明生 北條 晴正 樊 春明 海老沼 拓史 久保 信明
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,海面で反射したGPS信号を利用した新しい海面高度計測センサを開発した.このセンサは,GPS衛星を信号源として利用するパッシブなシステムであるため,小型・省電力である.また,一度に複数のGPS反射波を観測できるため,広範囲な海洋観測が可能である.航空機からの観測実験では,数十cmの精度で海面高度を観測できることが確認された.本研究成果の応用として,航空機や人工衛星から津波監視などが考えられる.
著者
安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1207-1215, 1999-12-25
被引用文献数
28

GPSは米国防省により開発された人工衛星による測位システムであるが,民間利用者にも開放され,手軽で信頼性の高い測位システムとして,近年カーナビの主要な要素として急速に普及してきている.このシステムの概要と,種々の測位誤差を削減するためのディファレンシャルシステムとその現状について解説する.更に搬送波位相を測距に用い,数cmの精度の測位が実時間で可能なリアルタイムキネマティックGPS及び測地学や気象学への応用について述べる.最後にGPSの将来展望とGPSにかかわる諸問題について概説する.
著者
近藤 俊一郎 海老沼 拓史 久保 信明 安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.169, pp.25-30, 2007-07-20

電離層シンチレーションは電離層のF層(≧地上高150km)の局地的な電子密度の不規則性によって起こるとされている.この不規則な領域と送信機および受信機の相対的な運動により,GPS信号の信号強度と位相が急激に変化し,受信機のロックはずれやサイクルスリップを起こすことが知られている.本研究では,既存の研究で提案されているモデルを基にシンチレーションサンプルの生成ソフトウェアを製作し,日本で観測される標準的な強度のシンチレーションに対する位相ロックループ(PLL)の性能をシミュレーションで評価した.シミュレーションの結果,帯域可変型Fast Adaptive Bandwidth (FAB) PLLはシンチレーションの影響下にいても位相誤差を見積もって帯域幅を制御できることが確認できたが,信号強度の低い信号では利用は困難であることも明らかになった.
著者
安田 明生 鈴木 治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.97, no.554, pp.17-24, 1998-02-20

船舶の運航に人工衛星は無くてはならないものになってきている。GMDSSは特殊な通信技術を廃し、衛星通信を駆使して簡単な操作で必要な通信が可能となる。遭難時には効率の良い救難体制が準備される。また衛星を使ったテレビ放送のサービスエリアは海上に広く及んでおり、筆者らはこれらを船上の受信するシステムの開発を続けてきた。その装置を世界の静止気象衛星の受信に適用した。また、日本の静止衛星を使った測位システムに関する研究を続けておりこれらについて紹介した。船舶では測位にGPSが導入されているが、さらに高精度の測位が可能とする中波ビーコンDGPS補正データ放送の精度評価、RTK-GPSを使った船舶の三次元姿勢測定についても紹介した。