著者
由井 義通 宮内 久光
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.59-59, 2010

沖縄県における情報通信関連産業は,1990年代後半から始まる日本政府と沖縄県の産業振興政策の誘導などにより,飛躍的な成長を遂げた。特にコールセンターは,沖縄県観光商工部が把握しているだけでも2000~2009年度までの10年間で48社が県内に拠点を開設し,12,031人の新規雇用を創出した。このことから、常に深刻な雇用問題に悩む沖縄県にとって,コールセンターは新たな中核的産業と位置付けられつつある。『平成15年特定サービス産業実態調査報告書テレマーケティング業編』によると,全国のコールセンター従業者の79.1%が女性であることから推察するに,沖縄県におけるコールセンターの集積は,特に女性の就業機会の確保にも大きく貢献しているといえるだろう。 今日,経済のサービス化に伴い,総労働力人口に占める女性労働力人口の割合が高くなる「労働力の女性化」が著しい。なかでもコールセンター業務は,仕事量が多く,マニュアル化された単純な作業,精神的なストレスの多い職場(林,2005)であることに加えて,低賃金の非正規雇用が中心で離職率の高さに特徴づけられる「女性の仕事」であるともいえよう。 沖縄県におけるコールセンターに関するこれまでの研究は,コールセンターの集積地としての動向が注目され,もっぱら産業振興策の紹介と現状把握の側面が強かった(鍬塚,2005)。すなわち,立地論的なアプローチが中心であったといえよう。一方,コールセンターで働く従業者,特にその多くを占める女性従業者の就業に焦点を当てた研究は乏しい。女性従業者の中には,仕事と家事・育児・介護との両立を求められている者も多く,コールセンターにおける雇用の実態とあわせて,生産と再生産の調和を検討することは,「労働力の女性化」が著しい現代において,女性就業を理解する上で重要なアプローチであると考えられる。そこで,本研究の目的は,沖縄県を事例としてコールセンターの雇用特性を把握するとともに,女性の就業と生活の状況を把握することである。研究資料を得るため,本研究ではコールセンター事業所および女性従業者へのアンケート調査および聞き取りを実施した。 結果は学会発表時に報告する。
著者
宮内 久光
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>本研究では,座間味島を対象地域として,観光事業所,特にマリンレジャー事業所の経営形態や事業状況を調査し,それらの結果を1997年調査以降の島を取り巻く環境の変化や経営者の現状評価や経営方針などと関連付けながら検討することを目的とする。2015年9月現在,座間味村公式HPには,座間味島にあるマリンレジャー事業者として39店が掲載されていた。このうち,調査時に営業をしていた34店の事業者に対して,アンケート調査を実施した(2015年9月〜10月)。回収したアンケート調査票は32店(有効回答率94.1%)であった。アンケート調査は全体集計とその考察のほかに,事業所設立年代別や,提供するマリンレジャーの種類別に集計を行い,グループ間の比較を行った。</p><p> 1997年調査時に座間味島には21店のダイビングサービスが立地していた。2015年調査ではそのうち19店が存続しており,事業の持続性は高い。また、1997年調査では,全事業所がスキューバダイビングのガイドサービスをしていたが,その後に開設された事業所の中には,ダイビングのガイドサービスをしない店が5店ある。2000年代以降,座間味島のマリンレジャー産業は,それまでのダイビングガイドサービス一辺倒から,SUPやカヤックなど新しいマリンレジャーを取り込んで,提供サービスの多様化が進んできている,といえる。 </p><p> 2010年代は島の観光を取り巻く社会的条件に恵まれて観光客は増加している。しかし,マリンレジャー事業者の中には,スキューバダイビング以外のマリンレジャーを楽しむ層が増えただけ,と認識している人もいる。また,一般旅行客が増えたために,船舶や宿泊施設の予約が取りにくくなり,ダイビングのリピーター客の中には,行きたい時に中々チケットがとれない座間味島を敬遠する動きが出ている,と経営者たちはみている。</p><p> マリンレジャー経営者は日本人の若年層の個人客を顧客のターゲットとして捉えており,外国人や団体客を重視していない傾向がみられた。</p>
著者
由井 義通 若林 芳樹 神谷 浩夫 古賀 慎二 宮内 久光 加茂 浩靖 中澤 高志 久木元 美琴 久保 倫子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働の女性化の実態を把握するために,労働市場,就業先における労働状況,終業後の生活時間,家族状況などの相互の側面を関連づけながら,労働力の女性化の実態について多面的な解明を試みることによって,経済のサービス化とグローバル化を原因とした労働の女性化について明らかにした。研究の意義としては,労働力の女性化に対して多様な女性就業の実態を捉えるとともに,住宅問題や保育問題を関連させて分析した点である。