- 著者
-
宅見 央子
中村 弘康
釜阪 寛
米谷 俊
灘本 知憲
寺尾 純二
栗木 隆
- 出版者
- 一般社団法人 日本応用糖質科学会
- 雑誌
- 応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.2, pp.186-193, 2011-04-20 (Released:2017-12-15)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
3
2
ヘスペリジンは,柑橘類の果皮に多く含まれるフラボノイドで,多岐にわたる生理作用を有するものの水溶性が極めて低いために食品への利用に制限があった。われわれは,シクロデキストリン合成酵素により,ヘスペリジンにα-1,4結合でグルコースを転移させ,水溶性を高めた糖転移ヘスペリジンの生理活性に着目し,血流改善作用について研究を行ってきた。冷え性をモデルとした試験では,局部急速冷却負荷試験および全身緩慢冷却負荷試験の両方において,糖転移ヘスペリジンが末梢の血流や皮膚表面温度を高く維持する作用がみられた。また,糖転移ヘスペリジンを継続摂取することにより,目の下の「くま」が軽減され,肌のハリや柔らかさが改善する傾向が示唆された。血流改善作用の機構として,血管内皮細胞由来のNO(血管拡張物質)の産生促進作用に関する機構と,自律神経を介した機構の2つの関与が示唆された。実際に,糖転移ヘスペリジンをヒトが継続摂取することで,血流や自律神経に関する項目で体調の改善がみられた。以上の結果より,糖転移ヘスペリジンは,冷えや肩こり,腰痛,肌荒れなどの婦人科疾患の改善をはじめ,人々の健康増進に役立つ成分である可能性が示された。