著者
尾島 俊雄 増田 康広
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.75-89, 1976-10-25 (Released:2017-09-05)
被引用文献数
1

住環境水準の向上および省エネルギの要請の中で,住宅におけるエネルギ消費の実態調査結果を,つぎの目的で整理した.1)住宅のエネルギ消費の実態を,設備・生活パターンとの関連でとらえ,住環境水準の現状を明確にすること2)住宅用エネルギのシェアの実態把握など,マクロ推計の基礎資料とすること3)今後予想される各種の住宅エネルギ関連施策の位置づけなど,将来推計の基礎資料とすること第1報では実態調査の概要と,上記目的1)に照らして各種住宅の時刻別・月別の電気・ガス・灯油その他の消費実態を中心に述べる.
著者
高 偉俊 杉山 寛克 尾島 俊雄
出版者
Architectural Institute of Japan
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.469, pp.53-64, 1995-03-30 (Released:2017-01-27)
参考文献数
13
被引用文献数
10 8

1. 概要 多くの都市における高密度な土地利用は路上の歩行者にとって不快な環境を作り出している。沿道に建てられた高い建物は冬には日射を遮断し、逆に夏の広い街路では、必要以上に日射を取得している。加えて、都市ではコンクリートやアスファルトヘの土地被覆の変化や人工排熱の増加により気温が高くなる。これらの都市の熱環境を改善するために様々な手法が用いられているが、街路樹を導入することが最も一般的に試みられている。特に冬の日射取得を妨げずに夏の日射遮蔽をもたらす街路樹の影響を街路の形態との関係を踏まえて把握することは歩行者の快適性を向上させるために重要である。そこで異なる季節において街路の形態と街路樹の有無による影響評価を行った結果、街路の形態が夏冬ともに大きな影響を及ぼしている一方で、街路樹は夏の熱環境緩和に効果的であることを示した。2. 実測方法 本研究では、街路の形態と街路樹が歩道上の熱環境にもたらす影響を夏と冬、24時間に渡って実測調査を行った。実測地点は図1に示す東京都新宿区の早稲田大学大久保キャンパス周辺の4地点。地点Aは南北街路で街路樹が約10m間隔にある。地点B、C、Eは東西街路上に位置し、地点Bは街路樹のない狭い街路、地点Cは緑化道路で両側の歩道沿いと道路中央に街路樹の樹冠が連続している。地点Dは道路の両側に街路樹の樹冠が連続している。実測地点Aは西側歩道、地点B、C、Dは北側歩道上に位置し、路面の素材はアスファルトであった。実測は1993年8月23日〜24日、1994年2月23日〜24日、各地点は共通して地上1.2mの高さにおいて移動計測によって気温、湿度、風速、歩道の表面温度、壁面温度をアスマン乾湿度計、熱線式風速計、赤外線放射温度計を用いて測定した。所要時間は24時間を通じて各々20〜25分であった。3. 実測結果 3-1. 冬の実測結果 図3に気温の日変化を示す。東西方向の広い街路にある地点Dが日中最も高く最高気温は12.5℃であった。一方で、狭い街路にある地点Bが一番低く、最高気温は10.5℃であった。しかしながら夜間は地点Bが地点Aを除いて高くなる傾向を示した。これは地点Bの天空率が低いことから夜間の放射冷却が抑えられているためと考えられる。また地点Cと地点Dの最高気温の差は天空率に起因している。図4では東西街路に位置する地点B、C、Dについて日射量を計算した。これより地点Dの日射量が最も多く、地点Bが最も少ない。つまり地点Bが他の地点と比べて気温が低くなるのは、取得する日射量が少ないからである。またほぼ同じ幅員の街路方位の異なる地点Aと地点Dを比較すると最高気温では地点Dの方が高いにもかかわらず、平均気温でみると地点Aの方が高い。これは日中を通じて南北街路の方が東西街路より日射を多く受けていることが日平均気温の上昇につながっていると思われる。図5は歩道の表面温度を示す。最高温度は地点Dで24℃、最低温度は地点Bで-1.5℃であった。日中は地点間の温度差が大きいが、夜間にはその差は縮小した。日中の最高温度は地点Cと地点Dでは13時付近でみられたが、地点Bとは1時間の時差があった。また地点Aでは直達日射を午前中にのみ受けていたために最高温度は12時付近でみられた。図6と図7には東西街路の壁面温度を示す。表面温度差は日中において顕著にみられ、直達日射をほとんど受けない南壁では温度差は小さく、天空率の最も高い地点Dが夜間において壁面温度が最も低くなった。しかしながら、北壁については地点BはH/W1.33で狭い街路であることから日射が遮断され最も低い壁面温度を示した。図8は湿度の日変化を示す。湿度は午後低くなり、夜間に上昇する傾向がみられたが、地点間の差は認められなかった。図9は風速の日変化を示す。地点Dのような広い街路では風速か弱くなるような傾向がみられた。一方では地点Bのような狭い街路では風速が強くなる傾向がみられた。3-2. 夏の実測結果 気温の日変化を図11に示す。夏には地点Bが日中を通じて気温が高く、地点Aと同様の変化を示す。これに対し、地点C、Dは平均気温で0.6-0.7℃、最高気温で1.7-2.0℃低くなり、街路樹の日射遮蔽により、気温を緩和する効果が認められる。図12は歩道上の表面温度の日変化を示す。街路樹によって覆われている地点Cは他の地点と比較して最高で約15℃低い。また、平均でみると街路樹がある地点の表面温度の方が街路樹のない地点と比較して約5℃低くなる。湿度の日変化を図13に示す。街路樹のある地点C、Dは街路樹のない地点Bと比較して僅かながら湿度が高くなる傾向がみられた。図14には風速の日変化を示す。冬と同様に地点Bは他の地点と比較して風速が最も強くなる傾向にあった。4. 考察 図15は気温と歩道の表面温度の関係を示す。夏と冬の結果は、街路空間の気温が歩道の表面温度と高い相関関係にある。気温と街路の形態との関係については冬のデータを用いて、地点Bと地点C、Dの間で検討した。その結果、図16に示すように日中は地点C、Dが地点Bに比べて気温が高くなるが、夜間にはむしろ地点C、Dが地点Bに比べて気温が低くなった。これは広い街路は日中では日射を多く取得するが、逆に夜間には狭い街路に比べて放射冷却しやすいことを示している。図17は街路樹の気温に対する影響を示す。地点C、Dは地点Bに比べて最高で1.7から2.0℃低く、街路樹は日射を遮蔽することにより、日中の熱環境を緩和する効果が明らかである。一方で夜間には地点Cは地点Bとほぼ同じもしくは僅かながら気温が高くなる。これは地点Cが低い天空率にも表れているように街路樹によって覆われ、夜間の放射冷却が抑えられていると考えられる。また地点Dは街路樹があるにもかかわらず、地点Bに比べて天空率が高いために気温が低く推移したとみられる。5. 結論 本研究は街路樹と歩道上の熱環境との関係を夏と冬の実測調査により次のような成果を得た。(1)街路形態の影響について冬の結果を解析すると街路の幅員が広いほど取得する日射量が多くなり、日中の気温が高くなる。(2)夜間の気温は主に天空率によって影響され、狭い街路ほど広い街路に比べて気温が僅かながら高くなる。(3)夏の結果からは街路樹により最高で気温が約2℃緩和されることがわかった。つまり、街路樹の量によって気温は低下し、街路樹か歩道の熱環境の緩和に非常に効果的であることが確かめられた。(4)気温は歩道の表面温度と高い相関関係にあり、歩道の表面温度が低くなると、気温も低くなる傾向にあった。一方で街路樹は歩道の表面温度に対して大きな影響を及ぼしている。つまり街路樹の緩和効果は主に歩道の表面温度の低下によって表れ、結果として気温の低下につながっているといえる。
著者
鍵屋 浩司 尾島 俊雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.63, no.507, pp.41-46, 1998-05-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

The aim of this study is to analyze the effectiveness of agricultural land as a disaster refuge in an earthquake fire. Safety evacuation areas and places of temporal refuge are planned in disaster prevention planning. However, they are not always close to residents. On the other hand, there are many small open spaces closer represented by agricultural land in urbanized area. But agricultural land is decreasing by land development year after year. As a result, we showed the effectiveness of planting fire preventive trees in agricultural land or putting fire resistive buildings around agricultural land against earthquake fire, thus we showed necessity to preserve agricultural land.
著者
増田 幸宏 堀 英祐 川合 廣樹 佐土原 聡 中嶋 浩三 尾島 俊雄
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.15, no.31, pp.833-838, 2009-10-20 (Released:2009-10-26)
参考文献数
14

One example of the evaluation of Japanese cities from the viewpoint of a foreign country is “A natural hazard index for megacities” published by Munich Re Group, one of the world’s major reinsurance companies.Among 50 large cities from around the world that were evaluated, Tokyo and Yokohama showed an exceptionally high score by the index. It is necessary to consider such a report as a warning regarding the safety measures in Japan, to behave responsibly as the world’s second leading economic power. However, it should be noted that the content of the evaluation is limited.
著者
尾島 俊雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.1115, pp.78-81, 2018-03-08

博士課程の1年目に、井上先生が担当することになったのが、「国立代々木競技場(国立屋内総合競技場)」の設備設計です〔写真2、3〕。丹下(健三・当時東京大学教授)、構造の坪井(善勝・当時東京大学生産技術研究所教授)、設備の井上という3人が組みまし…
著者
タハ ハイデ メイエア アラン 高 偉俊 尾島俊雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.529, pp.69-76, 2000
被引用文献数
1 7

This paper presents results from energy, meteorological, and photochemical (air quality) modeling for the Los Angeles Basin, one of the largest and smoggiest urban regions in the U.S. and the world. Our simulations suggest that by mitigating urban heat islands, savings of 5 to 10% in peak utility load may be possible. In addition, heat island mitigation can reduce smog formation by 10-20% in summer, which is as effective as controlling emissions from all mobile sources in the region. For a typical late-August episode, our simulations suggest that implementing cool cities in the Los Angeles Basin would have a net effect of reducing ozone concentrations. Peak concentrations at 3 pm decrease by up to 7% (from 220 down to 205 ppb) while the total ozone mass in the mixed layer decreases by up to 640 metric tons (a decrease of 4.7%). Largest reductions in concentrations at 3 pm are on the order of 50 ppb whereas the largest increases are on the order of 20 ppb. With respect to the National Ambient Air Quality Standard, domain-wide population-weighted exceedance exposure to ozone decreases by up to 20% during peak afternoon hours and by up to 10% during the daytime.
著者
高 偉俊 杉山 寛克 尾島 俊雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.469, pp.53-64, 1995
被引用文献数
3 8

1. 概要 多くの都市における高密度な土地利用は路上の歩行者にとって不快な環境を作り出している。沿道に建てられた高い建物は冬には日射を遮断し、逆に夏の広い街路では、必要以上に日射を取得している。加えて、都市ではコンクリートやアスファルトヘの土地被覆の変化や人工排熱の増加により気温が高くなる。これらの都市の熱環境を改善するために様々な手法が用いられているが、街路樹を導入することが最も一般的に試みられている。特に冬の日射取得を妨げずに夏の日射遮蔽をもたらす街路樹の影響を街路の形態との関係を踏まえて把握することは歩行者の快適性を向上させるために重要である。そこで異なる季節において街路の形態と街路樹の有無による影響評価を行った結果、街路の形態が夏冬ともに大きな影響を及ぼしている一方で、街路樹は夏の熱環境緩和に効果的であることを示した。2. 実測方法 本研究では、街路の形態と街路樹が歩道上の熱環境にもたらす影響を夏と冬、24時間に渡って実測調査を行った。実測地点は図1に示す東京都新宿区の早稲田大学大久保キャンパス周辺の4地点。地点Aは南北街路で街路樹が約10m間隔にある。地点B、C、Eは東西街路上に位置し、地点Bは街路樹のない狭い街路、地点Cは緑化道路で両側の歩道沿いと道路中央に街路樹の樹冠が連続している。地点Dは道路の両側に街路樹の樹冠が連続している。実測地点Aは西側歩道、地点B、C、Dは北側歩道上に位置し、路面の素材はアスファルトであった。実測は1993年8月23日〜24日、1994年2月23日〜24日、各地点は共通して地上1.2mの高さにおいて移動計測によって気温、湿度、風速、歩道の表面温度、壁面温度をアスマン乾湿度計、熱線式風速計、赤外線放射温度計を用いて測定した。所要時間は24時間を通じて各々20〜25分であった。3. 実測結果 3-1. 冬の実測結果 図3に気温の日変化を示す。東西方向の広い街路にある地点Dが日中最も高く最高気温は12.5℃であった。一方で、狭い街路にある地点Bが一番低く、最高気温は10.5℃であった。しかしながら夜間は地点Bが地点Aを除いて高くなる傾向を示した。これは地点Bの天空率が低いことから夜間の放射冷却が抑えられているためと考えられる。また地点Cと地点Dの最高気温の差は天空率に起因している。図4では東西街路に位置する地点B、C、Dについて日射量を計算した。これより地点Dの日射量が最も多く、地点Bが最も少ない。つまり地点Bが他の地点と比べて気温が低くなるのは、取得する日射量が少ないからである。またほぼ同じ幅員の街路方位の異なる地点Aと地点Dを比較すると最高気温では地点Dの方が高いにもかかわらず、平均気温でみると地点Aの方が高い。これは日中を通じて南北街路の方が東西街路より日射を多く受けていることが日平均気温の上昇につながっていると思われる。図5は歩道の表面温度を示す。最高温度は地点Dで24℃、最低温度は地点Bで-1.5℃であった。日中は地点間の温度差が大きいが、夜間にはその差は縮小した。日中の最高温度は地点Cと地点Dでは13時付近でみられたが、地点Bとは1時間の時差があった。また地点Aでは直達日射を午前中にのみ受けていたために最高温度は12時付近でみられた。図6と図7には東西街路の壁面温度を示す。表面温度差は日中において顕著にみられ、直達日射をほとんど受けない南壁では温度差は小さく、天空率の最も高い地点Dが夜間において壁面温度が最も低くなった。しかしながら、北壁については地点BはH/W1.33で狭い街路であることから日射が遮断され最も低い壁面温度を示した。図8は湿度の日変化を示す。湿度は午後低くなり、夜間に上昇する傾向がみられたが、地点間の差は認められなかった。図9は風速の日変化を示す。地点Dのような広い街路では風速か弱くなるような傾向がみられた。一方では地点Bのような狭い街路では風速が強くなる傾向がみられた。3-2. 夏の実測結果 気温の日変化を図11に示す。夏には地点Bが日中を通じて気温が高く、地点Aと同様の変化を示す。これに対し、地点C、Dは平均気温で0.6-0.7℃、最高気温で1.7-2.0℃低くなり、街路樹の日射遮蔽により、気温を緩和する効果が認められる。図12は歩道上の表面温度の日変化を示す。街路樹によって覆われている地点Cは他の地点と比較して最高で約15℃低い。また、平均でみると街路樹がある地点の表面温度の方が街路樹のない地点と比較して約5℃低くなる。湿度の日変化を図13に示す。街路樹のある地点C、Dは街路樹のない地点Bと比較して僅かながら湿度が高くなる傾向がみられた。図14には風速の日変化を示す。冬と同様に地点Bは他の地点と比較して風速が最も強くなる傾向にあった。4. 考察 図15は気温と歩道の表面温度の関係を示す。夏と冬の結果は、街路空間の気温が歩道の表面温度と高い相関関係にある。気温と街路の形態との関係については冬のデータを用いて、地点Bと地点C、Dの間で検討した。その結果、図16に示すように日中は地点C、Dが地点Bに比べて気温が高くなるが、夜間にはむしろ地点C、Dが地点Bに比べて気温が低くなった。これは広い街路は日中では日射を多く取得するが、逆に夜間には狭い街路に比べて放射冷却しやすいことを示している。図17は街路樹の気温に対する影響を示す。地点C、Dは地点Bに比べて最高で1.7から2.0℃低く、街路樹は日射を遮蔽することにより、日中の熱環境を緩和する効果が明らかである。一方で夜間には地点Cは地点Bとほぼ同じもしくは僅かながら気温が高くなる。これは地点Cが低い天空率にも表れているように街路樹によって覆われ、夜間の放射冷却が抑えられていると考えられる。また地点Dは街路樹があるにもかかわらず、地点Bに比べて天空率が高いために気温が低く推移したとみられる。5. 結論 本研究は街路樹と歩道上の熱環境との関係を夏と冬の実測調査により次のような成果を得た。(1)街路形態の影響について冬の結果を解析すると街路の幅員が広いほど取得する日射量が多くなり、日中の気温が高くなる。(2)夜間の気温は主に天空率によって影響され、狭い街路ほど広い街路に比べて気温が僅かながら高くなる。(3)夏の結果からは街路樹により最高で気温が約2℃緩和されることがわかった。つまり、街路樹の量によって気温は低下し、街路樹か歩道の熱環境の緩和に非常に効果的であることが確かめられた。(4)気温は歩道の表面温度と高い相関関係にあり、歩道の表面温度が低くなると、気温も低くなる傾向にあった。一方で街路樹は歩道の表面温度に対して大きな影響を及ぼしている。つまり街路樹の緩和効果は主に歩道の表面温度の低下によって表れ、結果として気温の低下につながっているといえる。
著者
黒川 洸 尾島 俊雄 高橋 信之 増田 幸宏 小澤 一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都直下地震対策が緊急の課題である現在、世界に多大な影響力を持つ東京の企業の業務中枢機能を維持することが重要である。ミュンヘン再保険会社が発表した都市のリスク指数では、東京の危険度は710と他の都市の高くても100前後という値に比べて非常に高く、国際的に東京の危険性が危惧され、今後東京での国際的企業の経済活動が阻害される恐れがある。現在国際的に行政のみならず民間企業も地震リスクに対策を行うことが必要とされている。特に中央防災会議首都直下地震専門対策委員会においても、企業が災害時に重要業務を継続するためのBCP(事業継続計画)の策定を行うことが必要と報告されている。しかし日本の企業の地震リスク対策は不十分であり、ここ30年以内に起こる可能性の高い首都直下地震による多大な被害も懸念される。そこで企業が具体的にこれらの地震リスクを低減し事業継続を行なうための防災投資の提案を行う必要がある。都市の防災基盤整備としての安全街区構築のためのスキーム検討として、新たな保険制度の提案を目指して下記項目について検討を進めた。BCPのISO化や、企業統治の一環として企業の一層の危機管理が求められる中で、都市のライフラインや建築の設備系統を強固に整備して、特別に信頼性を高めた地域を、日本独自の「安全街区」として提案する。こうした「安全街区」が実現した場合の、安全街区内の高い仕様の建物について、地震利益保険や再保険市場での査定、あるいは不動産投資市場における評価への影響について調査を行った。また海外への研究発表に重点をおいて研究活動を進めた。また、環境と防災両面に資する「都市環境インフラ」の構築に向けての包括的な概念検討を継続して進めており、関連の実測調査や現地調査、文献調査を組み合わせ、今後の研究展開に資する基盤的な要素について幅広く検討を行い成果を得た。研究は、1.人工系都市基盤・都市インフラに関連する研究、2.都市内自然資本に関連する研究、3.各都市の基礎調査、4.安全・安心確保のための関連事例等の基礎調査に分類される。関連する社会的な要求を背景に、意義ある研究を行うことができた。研究助成に御礼申し上げる次第である。
著者
中島 裕輔 尾島 俊雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.532, pp.109-116, 2000
被引用文献数
2 3

This paper's point is as follows: 1. As a concept for residential system for resources circulation, we propose a "Site-scale circulation" for saving energy and resources in the life and "Wide area-scale circulation" for recycling of building materials and household waste. 2. To put into practice this system, we planned an experimental house which has high endurance, high facility of pulling down, and supply & treat functions in it. 3. The result of the simple estimation of this residential system for resources circulation, quantity of primary input energy is estimated to reduce about 50 percent. In relation to this paper, an experimental house is to be constructed from March, 2000.