著者
山口 恵子 稲垣 美智子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.2_79-2_90, 2012-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
28

本研究の目的は,FBSSの患者が手術や痛みの体験と生活にどのような意味づけをしているのかを明らかにすることである。外来通院のFBSSの患者10名を対象に半構成的面接を実施し,M-GTAで分析した。 その結果,手術や痛みの体験と生活の意味づけには『だましだまし付き合う』と『治療を探す』の2つがあった。『だましだまし付き合う』は,《手術が振り出し》から始まり,手術の結果を【とりあえず納める】,そして《痛みと取引しながらの生活》《痛みをもったまま生活することの弱さからの脱出》と時間の流れとともに生活の幅が広がる意味づけであった。『治療を探す』は,《手術が振り出し》の体験から始まり,痛みや症状が残ったことで【腑に落ちない】と考え,《痛みにとらわれた生活》に留まる意味づけであった。生活の知恵としてできた『だましだまし付き合う』は,今後,FBSSの患者教育の内容として重要であることが示唆された。
著者
田巻 松雄 狩谷 あゆみ 文 貞実 中根 光敏 山口 恵子 山本 薫子 稲月 正 稲葉 奈々子 野村 浩也 佐藤 繁美 西澤 晃彦
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究から得られた主な知見は以下の通りである。1.近年における野宿者の増大と寄せ場における労働市場の縮小とは密接な関係にある。ただし、寄せ場の縮小は不況の単なる反映ではなく、建設産業の大きな再編に起因する。建設日雇労働市場の就労経路が多様化するとともに、飯場の実態に見られるように、建設日雇の労働条件が一般的に悪化している。2.近年の寄せ場の著しい変容には、寄せ場を都市下層の姿を隠蔽しつつ同時に労働力をプールする場として利用してきた行政の寄せ場対策のドラスティックな政策転換が関係している。3.野宿者の増大と可視化にともなう社会問題化によって国及び自治体でのホームレス対策が本格化しているが、従来、福祉面での対応に比べて労働対策の遅れが著しかった。近年、「就労自立」を軸とするホームレス対策が急展開しているが、行政的な狭い枠組みでの「自立」をもとに野宿者を分類・選別するなど、改善すべき課題は多い。4.従来、寄せ場や野宿の問題を語ることは、とりわけ高齢単身の男性を語ることであった。しかし、女性の野宿者が増大している事態、さらに寄せ場の歴史を捉えなおす上でも、ジェンダー的視点を盛り込み、男性野宿者の周辺部にいる女性野宿者の位置から探題設定することが必要になっている。5.野宿者問題は産業構造の変容・再編に伴う労働問題や行政施策の仕組みなどが深く係わる現代の貧困問題であり社会問題であるが、野宿者や日雇労働者、さらには外国人労働者を社会に適合しない特殊な人々と見る社会的風潮は依然強く、このことに起因すると思われる社会的排除の現象が様々な形で生じている、
著者
青木 秀男 大倉 祐二 山口 恵子 結城 翼 渡辺 拓也
出版者
特定非営利活動法人社会理論・動態研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

山谷・釜ヶ崎の日雇労働者・雑業就業者・福祉受給者・路上生活者の労働・居住・生活が、ネオリベ経済による労働市場の変容、ジェントリフィケーションによる空間構造の変容の中でどのように変容しているか、またそれらの変容がコロナ禍の中でどのように加速しているかについて見る。さらにそれらが山谷と釜ヶ崎でどのように異なるかについて比較を行う。これらにより、日本の都市底辺層の階層構造と変容の動向を探り、そのうえで都市底辺層研究の理論的更新めざす。この研究は、研究代表者・分担者が別のプロジェクトで行っているグローバル都市の底辺層の国際比較研究に連続するものである。
著者
山口 恵子 小島 理沙 石川 雅紀
出版者
環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.375-380, 2010-09-30
被引用文献数
1

2007年2月、神戸市に立地するコープ六甲アイランド店にて、"「ごみ減量」市民の大実験!!簡易包装を買おうプロジェクト"が実施された。このプロジェクトでは、神戸大学の学生を中心とした特定非営利活動法人ごみじゃぱん(Gomi-jp)が、店舗内の食料品や生活雑貨品から包装ごみの少ない推奨商品を選定し、店頭広告・チラシ・イベントなど様々なメディアを用いて生活者に簡易包装商品の情報を発信した。本研究では、この実験で用いられたパブリックマーケティングアプローチ(PMA)に基づく減装(へらそう)ショッピングによって、簡易包装商品の需要に対してどのような影響を及ぼすのかをパネルデータモデルを用いて分析した。分析結果より、実験期間における生活雑貨品(推奨理由:詰め替え)カテゴリーの推奨商品の販売量はプラスの影響を受けていることが明らかにされた。さらに、実験期間を前半期間と後半期間に分けて分析した場合には、集中陳列棚を用いて効果的にアピールした後半期間にはプラスの効果が表れることが示された。結論として、PMAは容器包装ごみの発生抑制に有効であることが示された。