- 著者
-
山村 麻予
中谷 素之
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.3, pp.219-229, 2023 (Released:2023-10-13)
- 参考文献数
- 45
本研究は,これまで向社会的行動の研究で取り上げられづらかった「様子を見守る」「待つ」といった能動的ではない行動を「非表出的向社会的行動」として取り上げ,その認知について,児童を対象に検討したものである。具体的には,同一場面において生起する向社会的行動のうち,表出的行動と非表出的行動に対する評価が,発達的にどのように異なるかを質問紙調査にて検討した。予備調査から抽出された4場面を用い,小学校4年生と6年生を対象に,提示された行動が向社会的であるかの判断を調査した。その結果,向社会的行動であるかの評価には学年差は検出されず,表出的な行動が非表出的な行動に比べて向社会的だと評価された。児童期を通し,直接的な援助行動が生起している場合がより向社会的であると判断されることが明らかになった。さらに,学年と行動種別の交互作用が有意となり,非表出的行動に対する向社会的評価は,小学校6年生が4年生よりも高かった。これにより,行動が顕在的でない場合に,その向社会的意図を認知する能力に発達差がみられることが明らかとなった。