著者
岩月 啓氏 大野 貴司 山崎 修
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.Suppl.7, pp.B29-B32, 2006 (Released:2011-03-11)
参考文献数
16

アトピー性皮膚炎の増悪因子の一つとして黄色ブドウ球菌は重要である。黄色ブドウ球菌表面のタイコ酸はTh2型免疫応答へシフトさせ,protein Aは表皮角化細胞からIL-18を持続的に産生させる。Enterotoxin A(SEA)とB(SEB)は,正常表皮角化細胞にICAM-1 やHLA-DRを発現させる。また,アトピー性皮膚炎患者の半数以上はSEAまたはSEBの両方あるいはいずれか一方に対するIgE型抗体を有する。SEBの経表皮的感作によって真皮に好酸球や単核球細胞浸潤を誘導でき,Th2型サイトカインであるIL-4 mRNA発現を起こすが,Th1型サイトカインのIFN-γは発現しない。最近,スーパー抗原によって制御T細胞(Treg)の機能である抑制効果が失われることが示された。黄色ブドウ球菌はその菌体成分や外毒素によってアトピー性皮膚炎を増悪させる。しかし,皮膚に定着している黄色ブドウ球菌を完全に除菌し,無菌状態に保つことはできない。角層内でバイオフィルムに包まれて静止期にあるような定着(colonization)した黄色ブドウ球菌に対しては,抗菌療法も消毒も十分な効果発現は期待できない。皮膚を清潔に保ち,適切なアトピー性皮膚炎治療を実施することにより,黄色ブドウ球菌を増えすぎないようにコントロールして,正常細菌叢と仲良くするストラテジーが理想的と思われる。
著者
岩月 啓氏
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.317-325, 2015 (Released:2015-10-21)
参考文献数
15

EBウイルス関連T/NKリンパ球増殖症(LPD)は,慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV),古典的および全身性種痘様水疱症(cHVとsHV)と蚊刺過敏症(HMB)を含む一群の疾患である.cHVは,露光部のヘルペス型水疱丘疹を特徴とする小児の光線過敏症で,血中にEBウイルス感染γδT細胞が増数している.HMBは,虫刺されやワクチン注射に続いて,激しい皮膚反応と発熱や肝障害などの全身症状を特徴とする.HMB患者は通常,EBウイルス感染NKリンパ球増殖症を示す.cHV群は,良好な経過をとるが,他の2群,すなわちsHVとHMBの予後は不良で,50%死亡はそれぞれ発症後10年,5年である.単因子解析結果では,予後不良因子として,発症が9歳以上であること,超早期再活性化マーカーBZLF1 mRNAの発現が皮膚で検出されること,の二つが見出された.CAEBVの診断基準案におけるHV,HMBの位置づけについて言及した.
著者
岩月 啓氏 辻 和英 山本 剛伸 山崎 修
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.EBウイルス関連NK/T細胞増多症の疾患スペクトラム:本症の診断拠点施設としての役割を担ってきた。集積例の解析からそのスペクトラムを明確にし、悪性転化群の特徴を明らかにした(Arch Dermatol 2006,Eur J Dermatol 2006).皮膚リンパ腫登録制度を発足させ、EBウイルス関連リンパ腫の実態把握を開始。2.非侵襲的診断法および細胞内遺伝子発現解析:痂皮を用いた非侵襲的EBウイルス潜伏感染診断法を開発し(J Microbiol Methods 2007),国際特許申請中(PCT/JP2006/317851)。他のヘルペスウイルス感染にも応用し、ウイルス遺伝子産物とともに細胞内シグナルを解析(Eur J Dermatol投稿中)。3.ウイルス再活性化の証明と潜伏感染パターン変化:重症型では、病変内におけるEBウイルス再活性化シグナル(BZLF-1 mRNA)が明らかになった。一方、軽症の種痘様水疱症では、再活性化ではなく、皮膚病変内での潜伏感染IIへの移行がみられた。4.EBウイルス感染細胞株解析:樹立EBウイルス感染NK/T細胞株にて,PMAおよびある種のサイトカインによって潜伏感染から溶解感染への誘導ができた(論文準備中)。5.宿主免疫応答解析:ウイルス遺伝子発現と反応性CTLを解析して本症の主たる病態を明らかにした。6.治療への取り組み:腫瘍抗原に対する免疫応答誘導を確認し(Int J Cancer 2007),同時に免疫機構からの回避現象を解析した(Cancer Immunol Immunother 2008).EBウイルス感染細胞がHDAC阻害薬に感受性があることを見出した。EBウイルス関連疾患における免疫・薬物療法展開にとって貴重なデータを得た。7.EBウイルス関連リンパ腫を含めた診療ガイドラインを作成した。