- 著者
-
岸 政彦
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.4, pp.466-481, 2016 (Released:2018-03-31)
- 参考文献数
- 28
この論文で私は, 沖縄が語られるその語られ方の変化について書く. 具体的に取り上げるのは, 沖縄本島にあるA市の市史編纂室によって書かれる予定の, 新しい市史の取り組みである.この地域誌は, 行政が公式に発行する, いわばその地域の「教科書」である. それはその地域の, あるいは沖縄そのものについての「語り方」を規定する力を持っている.本論で特に, 沖縄本島にある「A市」の市史編纂室における新しい実践を考察の対象とする. A市史民俗編には, 古くから存在し, 沖縄的な伝統芸能や習慣を伝える集落だけではなく, 団地や建売住宅のニュータウンなども含まれることになっている. このことは, それまでの地域誌の民俗編が, 本来的な, 真正なる沖縄文化を記録し後世に伝える目的で書かれていたことを考えると, 画期的な試みであるといえる.本論ではA市の市史編纂室での聞き取り調査を通じて, 沖縄の語り方はどのように変わりつつあるのか, 語り方を変えるときに何が起きているか, それはどのようにして可能になるのかについて考える.