著者
安井 真也 高橋 正樹 島田 純 味喜 大介 石原 和弘
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.59-76, 2013-03-29
被引用文献数
1

桜島火山の歴史時代の大規模噴火である安永噴火(1779-1782年)と大正噴火(1914-1915年)の噴出物の岩相や層序,地形,噴火当時の記録を比較した.両噴火では山頂をはさんだ両測山腹で割れ目火口列が活動した.割れ目の推定の長さは大正噴火で約2.3km,安永噴火では5kmに及ぶ.噴火開始後数10時間の大正噴火と安永噴火の噴火様式は共通しており,プリニー式噴煙柱から火口近傍への大量の火砕物降下により斜面上に火砕丘を形成しながら火砕成溶岩をもたらした.引き続く数週間には両噴火とも溶岩流出が繰返されて溶岩原が形成された.その後は,大正噴火が陸上での溶岩流出を主としたのに対し,安永噴火では北東沖で海底噴火が起きて安永諸島を形成した点で大きく異なる.両噴火とも噴火初期に割れ目火口近傍へ著しい火砕物降下があることが特徴的である.これは火山体形成の観点からは,両噴火では山頂部の地形変化はほどんどないが,山腹斜面が成長したことを意味する.また桜島の大規模噴火の減災という観点では,居住地域近くまで到達しうる割れ目火口の活動への迅速な初期対応の重要性を示している.
著者
島田 純 保富 宗城 九鬼 清典 山中 昇 満田 年宏 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.552-559, 2000-05-20
参考文献数
15
被引用文献数
7

近年,市中においてペニシリン耐性肺炎球菌による上気道感染症が急速に蔓延し治療に難渋する疲例に遭遇する機会が増えてきている.急性中耳炎は鼻咽腔から中耳への細菌の侵入と増殖によって発症するとされているが,耐性菌感染症の病態を考える上では,感染源としての鼻咽腔細菌の状態を把握することは重要である.<br>小児急性中耳炎患児の鼻咽腔より検出された肺炎球菌80株についてPCR法によりペニシリン結合蛋白(penicillin binding protein: PBP)遺伝子の変異を検索したところ,pbp1a, pbp2x, pbp2bの3つの遺伝子すべてが変異した株が30%にみられ,74%が何らかの遺伝子変異を有するものであった.またこれらの遺伝子変異株は1歳児から最も多く検出された.最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)が0.06&mu;g/mL以下を示す菌株群(46株)のうち,セフェム耐性化に関わるpbp2x遺伝子の変異を有する株が43%(20/46)を占めていた.<br>また,急性中耳炎を繰り返した11組のエピソードについて,エピソード毎に鼻咽腔から分離された肺炎球菌の遺伝子型をパルスフィールドゲル電気泳動法を用いて比較したところ9組(82%)において菌株が異なっていた.さらにpbp遺伝子の変異パターンから菌株を識別した場合には,8組(72%)において菌株が異なつておりほぼ同様の結果が得られた.<br>以上のことから,急性中耳炎患児の鼻咽腔においてはpbp遺伝子に変異を有する菌株が大きく関与しており,エピソード毎に異なる菌株によって感染が起こりやすいことが判明した.したがって急性中耳炎においては鼻咽腔検出菌の各種薬剤に対する感受性をエピソード毎に評価していくことが重要である.また,PCR法によるpbp遺伝子検索方法は分離菌の薬剤耐性判定を迅速に行えるだけでなく,個々の菌株を識別する上でも有用であると思われる.
著者
鈴本 正樹 島田 純 山中 昇
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.523-528, 2006 (Released:2006-12-15)
参考文献数
18

近年の薬剤耐性菌の急増に伴い, 従来まで経口抗菌薬により良好な経過をとっていた急性中耳炎や副鼻腔炎の難治化が臨床上の大きな問題となっている. 薬物移行が不良である中耳腔および副鼻腔における感染症に対しては, 抗菌薬の持つ殺菌作用のみでなく, 有効な抗菌薬濃度を感染局所へ到達させるdrug delivery system (DDS) の利用が鍵となる.チンチラ実験的中耳炎モデルを用い, 徐放抗菌薬製剤による治療効果についての比較検討を行った結果, 徐放抗菌薬製剤は全身投与あるいは局所点耳投与に比較して高い除菌効果を示した. 徐放製剤を用いた局所抗菌薬治療は, 感染局所へ高濃度の抗菌薬を長期間作用させることができ, 薬剤耐性菌が急増する現状においても有効な治療法の一つとなるものと期待される.
著者
木村 貴昭 山中 昇 九鬼 清典 林 泰弘 斉藤 匡人 木下 和也 田村 真司 赤城 ゆかり 山本 良一 玉置 かおり 高野 郁晴 保富 宗城 戸川 彰久 山室 日出子 島田 純 藤原 啓次 寒川 高男 神人 崇
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.121-130, 1997-01-01
被引用文献数
2

A comparative study was performed for the purposes of studying the prophylactic effectiveness of an antecedent treatment for Japanese cedar pollinosis with DAREN<sup>®</sup> (emedastine difumarate), an anti-allergic drug. Thirty-five cases (A group) received the drug at 4mg/day at least 2-4 weeks before the day when the pollen began to scatter. Another thirty-nine patients received the treatment after the scattering (B group). A significant inter group difference was observed in the global improvement rate for pollinosis. These findings suggest that DAREN<sup>®</sup> produces a slow, long-acting effect such as the inhibition of the release of chemical mediators. Prophylactic medication seems to be suitable for the treatment of Japanese cedar pollinosis, because sufficient anti-allergic action is obtained a few weeks later. Side effects occurred in 6.9% of all of the cases, but the incidence was lower than with any other anti-allergic drug previously reported.<br>In summary, a prophylactic treatment with DAREN<sup>®</sup> is effective in treating Japanese cedar pollinosis.