著者
戸田 俊文 益子 典文 川上 綾子 宮田 敏郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.171-183, 2009
被引用文献数
1

現職の教員研修のねらいの一つは,研修の成果を日常の教育活動の改善に活かすことにある.そのためには,研修と実践を一定期間,継続的に実施することが有効である.しかし,通常の研修形態は,学習者が物理的に研修の場へ移動する集合研修が中心のため,研修後の教育実践の改善は個々の学習者に委ねられている.そこで,本研究では,遠隔研修の特性を活かし,学習者が具体的な教育改善の構想から実践を完了するまでの期間,継続的に学習者自身が研修と実践を行き来し,インストラクタや他の学習者と相互に関わり合いながら研修課題の解決を図っていく遠隔研修コースを,研修課題構成,インタラクション,研修のマネジメントの3つの要件を枠組みとして設計開発し,教育センターの研修において2年にわたる実践研究を行った.その結果,3つの要件について肯定的な結果が得られるとともに,効果的な運用のための条件として,研修課題構成においては,学習者すべての教育活動に共通するような一般性とともに個々の学習者が実践可能な課題であること,研修マネジメントでは,理論理解の局面においてはインストラクタと,実践化の局面では学習者間のインタラクションの活性化を目指すとともに,掲示板におけるインフォーマルな会話が共同体意識の醸成に有効であることが示唆された.
著者
八田 武志 三輪 和久 川口 潤 筧 一彦 川上 綾子 栗本 英和
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

昨年度に続き本年度も今までに収集した漢字誤記のタイプ別分類(1)とその産出メカニズムの説明モデルの作成と、(2)さらなる自発書字における漢字誤記の収集を行った。さらに,(3)今までに収集した漢字誤記のデータベース作成と,(4)データベースの利用容易性の検討である。(1)については,音韻、形態、意味の3つの基本要素を中心にそれらの組み合わせから生じる音韻+形態、音韻+意味、形態+意味、音韻+形態+意味、語順、部品欠損、その他の合計10タイプに漢字誤記は分類できることが明らかとなった。このような誤記の産出は3基本要素の心内辞書での活性化によるとする認知モデルは,基本的に変更する必要を感じなかった。これは,10タイプの分類で不可能とするような新しいタイプの誤記は生じなかったためである。(2)について本年度行ったのは,(1)ベネッセ「赤ペン先生」に解答者が記載する赤ペン先生へのletterにおける誤記(この場合中学生が主な対象となる)。(2)大学生における約400名の自由記述タイプの試験答案における誤記(これは一人あたりおよそ2000文字以上の記述がある),(3)専門学校生におけるレポートおよび感想文における誤記を対象に収集した。(1)については,添削がネット上で行われる様態に変更されたために,途中で収集は断念せざるを得なかった。(3)および(4)に関しては,誤記を考慮した手書き入力デバイスへの支援ソフトに利便性の高い形式を模索中である。本研究に関連の深いものとして,書字において情動価をどの様に伝達するのかに関する実験研究を行い結果を発表した。その内容は,漢字,平かな,カタカナなど表記のタイプと活字体の種類を変数にしたもので音声言語でのプロソディに相当する機能を書字でも行っていることを立証するものであった。
著者
川上 綾子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.426-433, 1994-02-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
17
被引用文献数
4 3

The purpose of the present study was to investigate the relation between lexical and conceptual representations in the students learning English as a second language. Three groups of subjects with various years of studying English (ten English-major university students=EUS; fifteen high school students=HS; and eighteen junior high school students=JS) participated in an experiment, which employed the semantic priming paradigm with English and Japanese words as stimuli. Subjects were asked to decide as quickly as possible whether each target was a real word. After the task, a recognition test for stimulus words was conducted in order to examine the mode of word processing in such a bilingual situation. For EUS, priming effects were found in all conditions, but not for HS or JS. Results of the recognition test showed that retention was higher for HS and JS than EUS. Based on these findings, lexical representation and its processing in a second language were discussed. The present results appear to indicate that as second language is acquired, more direct links are formed between lexical and conceptual representations of the language.
著者
川上 綾子 秋山 良介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.109-112, 2006
参考文献数
7
被引用文献数
1

授業の計画・実施・評価の各段階における教師の行為(教授スキル)に対する重要度の評価について教師及び教職志望学生を対象に調査し,授業経験によるその違いを検討した.調査の結果,「1.個々の子どもへの対応」「2.授業中の学習活動の指示と評価」「3.授業評価」「4.学習方法の計画」「5.目標の設定と効果的達成」「6.話し方」「7.教材研究」の7因子が見いだされた.それらについて学生と教師の比較を行ったところ第2因子と第5因子で因子得点に差が認められた.また,教育実習経験と教職経験年数に基づくさらに詳細な比較では,第1因子,第2因子,第5因子で授業経験による違いが見いだされた.
著者
谷田 裕之 川上 綾子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学情報教育ジャーナル (ISSN:13491016)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-38, 2006-03-30

Web検索活動を取り入れた調べ学習で見られる課題を克服するために児童間の相互作用に着目し,効果的な検索活動と児童の学びに対してそれが果たす役割をまず検討した。次に,児童間の相互作用を促す手だてを組み入れた総合的な学習の時間の授業設計を行い,その効果を検証した結果,スムーズな検索活動を促す相互作用が活発化し,調べ学習の成果に対してもそれらが有効に働くことが示唆された。また児童ら自身も,自分たちの相互作用がコンピュータ操作の面だけでなくWeb検索の過程にも有用であると認識していることが示された。