著者
櫻庭 京子 今泉 敏 広瀬 啓吉 新美 成二 筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.749, pp.49-52, 2003-03-20
参考文献数
7
被引用文献数
3

本研究では、男性から女性へ性転換を希望する性同一性障害者(Male to Female transsexuals=MtF)のために音声訓練(ボイス・セラピー)法を確立するために、日本文化圏で女声と判定される基本周波数(F0)の範囲を検討した。その結果80%以上女性と判定されたMtFのF0は180〜214Hzで、平均F0は193Hzとなり、欧米の先行研究より若干値が高くなった。180Hz以下では男声と判定される率が高くなる一方、平均値以上でも「男子の裏声」と判定される場合があり、高さだけでなく声の質も女声と判定されるためには重要であることが示唆された。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.77-84, 2004-04-30
被引用文献数
1

A primary purpose of this study was to examine the difference in identification by Japanese and English listeners of vocally-expressed emotions (happy, sad, angry, and neutral) on the utterance "pikachuu" as generated by Japanese and American children. Both sets of listeners identified the emotions uttered by Japanese children better than those by American children, but the difference was not significant. A second purpose of the study was to examine the acoustic differences between the Japanese and American English children's productions of 'pikachuu.' The results showed that in expression of emotions, the dynamic range of F0 was similar in the two languages; however, the length of syllables varied, reflecting language-specific characteristics.
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.393, pp.1-8, 1999-10-28
被引用文献数
3

本研究では音声による感情表現の発達的変化を解折した。3 ∼ 10歳の幼児・児童46名から、喜び、悲しみ、怒り、驚き、平静の5感情を「ピカチュウ」という単語音声で表現した音声を録音した。それらの内から、10名の成人聴取者による感情同定結果と話者の意図した感情が100%一致した132発話を選択して、基本周波数や時間構造を分析した。その結果、感情の主効果は多くのパラメータで有意であったものの、年齢の主効果は基本周波数と少数の時間的特性においてのみ有意であった。成人話者による感情表現と共通の音響的特性も多い反面、「怒り」などでは成人と異なる傾向も観測された。これらの結果は音声による感情表現の多くの特性がこの年代にすでに完成しているものの、感情によってはなお発達・変化していることを示唆している。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.335, pp.25-32, 2000-10-05

就学前後の幼児・児童と成人を対象に、音声による意図的感情表現と語の音勢・言語的制約の発達的変化を検討した。人気アニメ「ピカチュウ」の感情表現を被験者が行った音声から、発話長、音節長、FO構造を解析した。時間構造及びアクセント型に関しては幼児から成人にかけて発達的変化が観測された。成人のFO概形は就学前児のそれにより近いものになった。これらの結果は、感情表現と語の音声的制約の関係が発達的に変化するものであり、「ピカチュウ」という共通の感情表現にも年齢に応じた解釈と表現の変化があることを示す。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦 Erickson Donna
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.726, pp.47-54, 2001-03-23
被引用文献数
2

本研究では日米の幼児・児童を対象に、母語の音声的制約が感情表現に及ぼす影響の言語間差異を、日米同一の発話内容を用いて検討した。その結果、平静発話では母語の音声的制約を反映した特性が多くみられたものの、感情をこめることにより、FOピークの移行、音節長の延長なとの共通した傾向がみられた。しかしながら、母音の無声化率や音節長の制御の方略などは感情発話においても言語固有の特性を示した。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.353, pp.17-22, 1999-10-15

本研究では3∼10歳の幼児・児童を対象に音声による感情表現の発達的変化を検討した。幼児・児童46名から、喜び、悲しみ、怒り、驚き、平静の5感情を「ピカチュウ」という単語音声で表現したものを録音し、10名の成人聴取者による同定実験によって感情同定率を算出後、年齢と感情による同定率の変化を調べた。その結果、感情による同定率の変動は有意であったものの、各感情に共通して一貫した年齢による変化はなかった。しかし、感情によっては年齢に依存した発達的変化が観測され、感情表出の社交性、非社交性など社会的な要因が音声による意図的感情表現の発達に関係していることが示唆された。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.77-84, 2004-04-30 (Released:2017-08-31)
被引用文献数
1

A primary purpose of this study was to examine the difference in identification by Japanese and English listeners of vocally-expressed emotions (happy, sad, angry, and neutral) on the utterance "pikachuu" as generated by Japanese and American children. Both sets of listeners identified the emotions uttered by Japanese children better than those by American children, but the difference was not significant. A second purpose of the study was to examine the acoustic differences between the Japanese and American English children's productions of 'pikachuu.' The results showed that in expression of emotions, the dynamic range of F0 was similar in the two languages; however, the length of syllables varied, reflecting language-specific characteristics.
著者
筧 一彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.659-669, 2015

Speech perception in prelexical processing is reviewed mainly due to the research of the author of this paper to show a view of speech perception. Phonemic features are distributed in time course by co-articulation in speech pro-duction. The distributed features are perceptually integrated to perceive the phoneme according to the intensity of the feature. The basic perceptual unit of speech is larger than phoneme unit. It is determined due to the timing (rhythmic) system of the lis-tener's native language e.g. syllable (French), mora (Japanese), unit determined due to stress (English). These results indicate that the perceptual integration of phonemic feature is organized to perceive a basic perceptual unit. Then cross-linguistic experiments among French, Dutch and Japanese show that a listener of each language perceive the unit not to violate the phonotactic constraints of his/her native language. The results show that it is important to take into account language rhythmic system to learn the language as the second one. Finally, it is proposed that the study of speech perception could contribute to that of language acquisition and second language learning and vice versa.
著者
筧 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.521, pp.67-78, 2003-12-11

人間同士の対話において,言語情報は勿論のこと音声に随伴する感性情報や表情などの感情の知覚も,対話の進行や理解において重要な役割を持っている.本稿は,「声」,「顔」,「ことば」の3つの部分からなっており,それぞれが持つ感性情報について,筆者らが展開して来た研究を感情の表出と知覚という視点から紹介した.「声」については,(1)音声による感情表出の発達を就学前児と就学見の2群に分けて検討した.(2)感皆時報の表出理解に関する言語依存性について目,未見のピカチュウ発話の分析と日,米母語話者の感情認知特性から検討した.(3)モーフィング法を用いて音声感情知覚のカテゴリ性について検討した.「顔」については,顔画像処理技術を用いた表情認知過程とさらにfMRIやERPを用いた表情認知における脳内処理過程の研究を紹介した.「ことば」については,音声の言語情報処理過程と感性情報処理の相互作用を明らかにし,相互作用のモデルについて述べた.
著者
筧 一彦 広瀬 友紀
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.23-28, 1997-12-30 (Released:2017-08-31)

In languages such as Japanese, hearers often encounter a sequence of more than two identical vowels. We investigated how, and to what extent a hearer can successfully segment each mora in such consecutive vowel series. In the following experimental reports, we particularly discuss effects of prosodic information such as pitch pattern and rhythm of speech. We argue that various kinds of information (pitch, rhythm, duration, lexical information) contribute to the segmentation of three or more consecutive vowels.
著者
筧 一彦
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1_1-1_1, 1998-03-01 (Released:2008-10-03)
著者
八田 武志 三輪 和久 川口 潤 筧 一彦 川上 綾子 栗本 英和
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

昨年度に続き本年度も今までに収集した漢字誤記のタイプ別分類(1)とその産出メカニズムの説明モデルの作成と、(2)さらなる自発書字における漢字誤記の収集を行った。さらに,(3)今までに収集した漢字誤記のデータベース作成と,(4)データベースの利用容易性の検討である。(1)については,音韻、形態、意味の3つの基本要素を中心にそれらの組み合わせから生じる音韻+形態、音韻+意味、形態+意味、音韻+形態+意味、語順、部品欠損、その他の合計10タイプに漢字誤記は分類できることが明らかとなった。このような誤記の産出は3基本要素の心内辞書での活性化によるとする認知モデルは,基本的に変更する必要を感じなかった。これは,10タイプの分類で不可能とするような新しいタイプの誤記は生じなかったためである。(2)について本年度行ったのは,(1)ベネッセ「赤ペン先生」に解答者が記載する赤ペン先生へのletterにおける誤記(この場合中学生が主な対象となる)。(2)大学生における約400名の自由記述タイプの試験答案における誤記(これは一人あたりおよそ2000文字以上の記述がある),(3)専門学校生におけるレポートおよび感想文における誤記を対象に収集した。(1)については,添削がネット上で行われる様態に変更されたために,途中で収集は断念せざるを得なかった。(3)および(4)に関しては,誤記を考慮した手書き入力デバイスへの支援ソフトに利便性の高い形式を模索中である。本研究に関連の深いものとして,書字において情動価をどの様に伝達するのかに関する実験研究を行い結果を発表した。その内容は,漢字,平かな,カタカナなど表記のタイプと活字体の種類を変数にしたもので音声言語でのプロソディに相当する機能を書字でも行っていることを立証するものであった。
著者
櫻庭 京子 今泉 敏 筧 一彦
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-8, 2002-01-20
参考文献数
29
被引用文献数
1

就学前後の健常な幼児・児童 (N=46) を対象に, 「ピカチュウ」という発話を用いて, 音声による意図的な感情表現の音響的特性を解析した.その結果, 音節長, 母音無声化, 基本周波数の変化範囲やピークは感情に応じて変化することがわかった.F0が低く, 変化範囲の狭い「怒り」, 「平静」と, F0が高く, 変化範囲の広い「喜び」, 「驚き」に2極分化する傾向があった.「悲しみ」のF0の変化範囲は就学前児で高く, 就学児で低くなった.母音無声化率は「平静」発話では高く, 感情発話で低下した.発達に伴い, 東京方言の環境に順応した無声化率の上昇がみられた.音節長の制御には年齢による差はなかった.本研究で得られた健常児の音声による感情表現の知見は, 感情表現に問題を抱える児童の音声を評価する場合, 有用と考えられる.
著者
西田 鶴代 筧 一彦 穂刈 治英 島田 正治
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.735-741, 1999-11-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
4

聴覚による音源の方向定位は,視覚的な手がかりによって影響を受けることがよく知られている。このため,一般に音源定位の実験においては音源に関する視覚情報を与えないようにしている。しかし,スピーカを多数配置する場合には,音源に関する視覚情報の手掛かりは小さいとしてスピーカが見える状態で実験を行っている例が多い。この影響を検討するため,スピーカが見える場合(視覚情報"あり")と見えない場合(視覚情報"なし")で音源栄位受聴試験を行い,その実験データをもとに知覚のファジィ論理モデル(FLMP)を用いて,音源定位における視覚情報の影響の強さを定量的に示した。この結果に基づいて,音源定位実験の実験方法に関する考察を行った。
著者
筧 一彦 曽我部 優子 河原 英紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.291, pp.31-38, 2005-09-16
被引用文献数
2

すでに表情の知覚に関する研究は非常にたくさんある。しかし、表情知覚が次元的であるかカテゴリカル的であるかについての決着はまだついていない。これに対して音声では感情レベルを連続的に変化させた発声が困難であるため、感情音声の知覚に関する研究はほとんどないと言ってよい。最近になってSTRAIGHT (VOCODERの一種で高品質の音声を合成可能とする)をベースとする音声の新しいモーフィング法が提案された。本報告ではこのモーフィング法を用いて音声感情の強さや一つの感情から他の異なる感情の間を連続的に変化させた高品質のモーフィング音声を実現し、感情音声の知覚的特性を検討した。最初に感情音声の知覚がカテゴリカルかどうかについて検討した。その結果を表情知覚のカテゴリカル性と比較し、検討を加えた。次に6個の基本感情とそれに平静を加えた7感情の間の関係を多次元心理空間上で検討した。最後に感情音声の知覚特性と表情のそれについて議論した。