著者
井上 勝一 中島 収 宮本 宏 川上 義和 伊藤 正美
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.513-520, 1990-08-20

赤血球亜鉛量と血清亜鉛量を64例の肺癌患者で測定し, 以下の結果を得た.1)進行肺癌患者では健康成人に比し血清亜鉛量は低下し, 赤血球球亜鉛量は増加した.2)しかし, 炭酸脱水素酵素量に差はなかった.3)進行肺癌患者の赤血球をヘパリン加生食で洗浄すると, 赤血球亜鉛量の約1%の亜鉛の遊離を認めた.4)以上より, 進行肺癌患者では亜鉛の赤血球への集積が見られ, 担癌生体の亜鉛の動態に多大な影響を示すものと考えられた.
著者
西村 正治 川上 義和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.349-356, 1984-04-15

低酸素換気応答とは,文字通り生体に低酸素刺激を加えたときの換気の応答パターンを評価する検査方法である。周知の如く,一般に生体に低酸素血症を誘導すると末梢化学受容器,ヒトでは主として頸動脈体を介して換気は代償的に増加する。しかし酸素受容が生命維持に最も重要で必須の生理学的事象であるにもかかわらず,不思議なことにこの低酸素換気応答の程度は個体間のばらつきが非常に大きく,ときには低酸素により換気はむしろ抑制されるという現象すら生ずる。従ってこの応答が種々の心肺疾患の病態の修飾因子となり,病因・病態の解析や治療とくに酸素療法を考えるうえでも重要な意味をもつものと想像されるが,検査手技の複雑さや検査自体のもつ危険性のため,必ずしも日常的な臨床検査項目となるには至っていない。当施設においては,動脈血ガス二重制御装置の開発以来1),高炭酸ガス換気応答と合わせて,本検査を数多くの健常人や患者で比較的容易に施行できるようになった。本稿においては,それらの知見も合わせて,測定方法と評価法に関する現在の問題点を概説し,次に臨床的立場から慢性閉塞性肺疾患と低酸素換気応答にふれ,最後に低酸素換気抑制の問題についても解説を加えたい。
著者
磯部 宏 西村 正治 稲葉 秀一 山本 宏司 神島 薫 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.535-538, 1987-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

症例は28歳女性で, 咳嗽, 喘鳴を主訴に当科に入院した. 約5年前より上記症状を繰り返し, 気管支喘息として通院加療を受けていたが, コントロールは不十分であった. ペットとして猫を飼育している. アロテック吸入による1秒量の改善率は24.4%であり, 皮内テストでは猫毛, 犬毛, ハウスダストが陽性, IgE-RAST score は猫毛4, 犬毛3, ハウスダスト3であった. 猫毛抗原による吸入誘発試験を施行したところ二相性喘息反応を呈した. 以上より猫毛による気管支喘息と診断し, 猫を遠ざけた生活を指導し良好なコントロールが得られている. 我々の知る限りでは, 我が国での猫毛, 猫毛皮屑による気管支喘息の報告は少なく, また二相性喘息反応を呈した報告例は認めない. 猫毛による気管支喘息の臨床像とともに, 特に二相性喘息反応での臨床的, 肺生理学的変化について報告した.
著者
高橋 亨 棟方 充 大塚 義紀 佐藤 敦子 本間 行彦 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.723-727, 1995-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

特発性間質性肺炎 (IIP) の急性増悪症例におけるウイルス感染の関与を血清抗体価・喀痰封入体検査から検討した. 当科に入院したIIP 105名のうち急性増悪(1ヵ月以内に自覚症状の増悪, PaO2 10 Torr以上の低下, 胸部レ線像の悪化のすべてを満たすもの) を呈した症例を対象とした. 経過中にウイルス抗体価の4倍以上変動を認めたか, 喀痰ウイルス封入体を証明したかの, いずれかの例をウイルス関与ありとした. これらの症例につき, 関与したウイルス, 臨床像などを検討した. 急性増悪例は全IIP患者の27% (28例) であった. ウイルス関与ありは増悪例の39% (11例) であった. 関与したウイルスは Influenza: 6例, Parainfluenza: 1例, Adeno:1 例, Herpes simplex: 1例, RS: 1例, Cytomegalo: 2例であった. ウイルス関与群は非関与群に比べ, 増悪前の血清IgA値が有意に低値であった (p<0.05). これらの結果から, 急性増悪では血清IgA低値と関連したウイルス感染の可能性がある.
著者
本村 文宏 棟方 充 土肥 勇 南須原 康行 川上 義和
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.455-460, 1997-04-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

症例は48歳の男性. ウサギ飼育6ヵ月後に気管支喘息を発症し, 症状が改善せず, 胸部X線写真にて浸潤影も出現したため, 精査のため入院となった. 末梢血好酸球は軽度増加していた. 入院時には陰影は消失していたが, ウサギ毛のスクラッチ抗原による吸入誘発試験で二相性喘息反応とともに胸部CTに浸潤影が出現し, 同部位からの気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検で好酸球浸潤を認めたためウサギ毛によるPIE症候群 (pulmonary infiltration with eosinophilia) と診断確定し, ウサギ飼育の中止, 環境の改善およびステロイド薬により4年来再発をみていない.
著者
久村 正也 田代 典夫 川上 義和 宮田 康邦
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.2995-2999_1, 1989

気管支喘息と消化管病変を伴った不全型Behcet病(腸管Behcet病)の1例を紹介し,その食道病変を中心に報告した. 症例は55歳,女性.再発性口腔内アフタ,嚥下痛,発作性呼吸困難を主訴として受診した.既往歴に外陰部潰瘍,右膝関節炎があり,主訴出現時炎症反応陽性,針反応疑陽性などからBehcet病(不全型)と診断した.X線検査で中部食道に潰瘍性病変を認め,内視鏡検査で白苔を有する楕円形の食道潰瘍を証明した.注腸造影検査では回腸末端部に潰瘍および潰瘍瘢痕を認めた.食道病変を,その後48週に亙って内視鏡的に観察した.観察期間中,病変は中部~下部食道に多発し,大~小,びらん~浅深潰瘍,楕円~円~不整~タテ長形など病期的にも形態的にも多彩な変化を示した.本症例はBehcet病発病約4年後に非アトピー性気管支喘息を合併したが,両疾患の因果関係は現在のところ不明である.