26 0 0 0 OA 序文

著者
川本 思心
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-6, 2020-04

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に鑑み,本誌『科学技術コミュニケーション』は科学技術コミュニケーションの観点に則った事態の把握,分析,提言や解決に資することを目的に,関連する論考を募り,可能な限り速やかに公開することを目指す緊急小特集を企画する.本稿では,新型コロナウイルス感染症の科学技術コミュニケーション的な側面と事例,それを扱うことの意義を述べる.そして最後に本緊急小特集での具体的な編集方針について述べる.
著者
成田 真由美 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門 : CoSTEP
雑誌
CoSTEP Report
巻号頁・発行日
vol.5, 2022-03

アイヌ民族が住む土地に「北海道」という名前を付け、開拓の名のもとに本州から大勢の人々が入植してから、約150年が経過した。2020年には、民族共生をうたう民族共生象徴空間(ウポポイ)が開業した。しかし、ウポポイに併設される慰霊施設には、全国の大学等に保管されていたアイヌ遺骨が集約され、返還を待っていること、さらには何故そのようになったのかを知る人は少ないように感じている。遺骨を持ち去られたアイヌの方々の悲しみが二度と繰り返されないことを私は願っているが、問題は絡み合っていて容易には理解できない。そこで私はCoSTEP研修科で、アイヌ遺骨を巡る諸問題に関して関係者へのインタビューを通じて、過去の研究が現在にもたらした「負の側面」に、それぞれの立場でどのように向き合っているのか伺うことにした。筆者の取り組みの趣旨等詳細は成田(2020)を御参照いただきたい。このレポートでは、北海道大学アイヌ・先住民研究センター長である常本照樹教授(所属等は執筆当時)から、アイヌ遺骨問題を中心に慰霊施設建設の経緯や国が考える課題と解決への道筋、諸外国の事情などを伺った内容を報告する。氏は政府の有識者懇談会、政策推進会議の構成員でもあり、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ施策推進法)」にも尽力した。本稿ではまず第1章でインタビューおよび本稿公開までの概要を説明した。続く第2章では、長時間に及ぶインタビューの内容からポイントを抽出し、文書での追加取材を行った内容を加えたQA形式で要約した。そして第3章ではインタビューの詳細を大まかな内容ごとに節に分けて掲載した。
著者
成田 真由美 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門 : CoSTEP
雑誌
CoSTEP Report
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, 2022-04

北海道では、過去に「研究のため」と称して大量のアイヌ遺骨を、アイヌの方々が管理する墓地から発掘・収集することを容認する社会的な環境があった。差別と偏見に抑圧されたアイヌ民族は、1970年代から一部のアイヌの方々が中心になり、自らのアイデンティティを確立しようとする「アイヌ民族活動」を展開する。しかし、現在も姿を変えて差別や偏見は残っていると言わざるを得ない。私は、CoSTEP研修科に所属し、アイヌ遺骨を巡る諸問題に関して関係者へのインタビューを通じて、過去の研究が現在にもたらした「負の側面」に、それぞれの立場で、どのように向き合っているのか伺うことにした(成田・川本2020;2021)。本稿はアイヌ遺骨問題に関する関係者インタビューの第3弾となる(成田・川本2022a;2022b)。私にできることを探す第1歩とするために。このレポートでは、北海道に居住しているアイヌ民族を主な構成員とした公益社団法人北海道アイヌ協会(以下、「北海道アイヌ協会」)の事務局長を2015年に定年退職した竹内渉氏に行ったインタビューについて報告する。竹内氏は「アイヌ民族解放運動」を牽引したアイヌ解放同盟の結城庄司代表(1938-1983)の行動を間近に見ており、その思想も理解されている。また、竹内氏は非アイヌであるが、現在もアイヌ・コミュニティの一員として生活されており、非アイヌがアイヌの抱える問題の解決にどのように協働できるか、または求められるものは何かなどもお伺いした。まず第1章でインタビューおよび公開までの概要を説明した。続く第2章では、インタビューの概要を記載した。そして第3章ではインタビューの詳細を大まかな内容ごとに節に分けて掲載した。第4章ではインタビューで触れた事例や団体の概要を補記した。
著者
成田 真由美 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門 : CoSTEP
雑誌
CoSTEP Report
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, 2022-04

「研究のため」に発掘・収集され、全国の大学が保管していたアイヌ遺骨が民族共生象徴空間(ウポポイ)に併設された慰霊施設に集約された。慰霊施設は、遺骨がアイヌの方々に返還されるまでの間、尊厳のある慰霊を実現し、適切な管理を行うための施設であるとされている。しかし、返還されたアイヌ遺骨はごく一部である。研究の名のもとに大量に発掘・収集され、現在も解決していないアイヌ遺骨問題は、研究が社会に及ぼした「負の側面」を扱う、科学技術コミュニケーションの重要なテーマである。私は、CoSTEP研修科に所属し、アイヌ遺骨を巡る諸問題に関して関係者へのインタビューを通じて、過去の研究が現在にもたらした「負の側面」に、それぞれの立場で、どのように向き合っているのか伺うことにした(成田・川本2020;2021)。遺骨を持ち去られたアイヌの方々の悲しみと怒りを受け止めることが必要であると考えた本稿は、アイヌ遺骨問題に関する関係者インタビューの第2弾となる(成田・川本2022a;2022b)。このレポートでは、強制労働、強制移住を受けたアイヌの子孫であり、平取アイヌ遺骨を考える会の共同代表である木村二三夫氏から、遺骨の返還を求める当事者の声を報告する。まず第1章でインタビューおよび公開までの概要を説明した。続く第2章では、2020年9月25日の本インタビューを中心に、今までの木村氏の講演やラジオ等の内容も参考にし、その主張を要約した。そして第3章ではインタビューの詳細を大まかな内容ごとに節に分けて掲載した。最後の第4章では、木村氏の主張の拠り所のひとつともなる資料『一通の嘆願書』についてまとめた。
著者
大谷 祐紀 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
CoSTEP Report
巻号頁・発行日
vol.4, 2021-09

英国は科学技術コミュニケーションが生まれた国ともいわれる。本レポートは、その英国社会で私が束の間みた、COVID-19を取り巻く状況と人々についての微視的な記録である。私は所属大学院のインターンシップ活動として、2020年3月10日に日本から英国エジンバラへ渡航した。渡航時の英国はCOVID-19に対して楽観的な雰囲気だった。WHOによるパンデミック宣言は英国の人々の行動や意識を大きく変えなかったが、トイレットペーパー購入への焦燥を高めた。英国政府は科学的根拠を強調しながら情報を発信し、大学や公共施設は速やかにその指示に従った。一方、飲食店は賃金の補償が示されるまで営業を続けた。私は所属大学院の方針によりインターンシップを中断し、3月23日に日本に帰国後、日本政府の「水際対策強化に係わる新たな措置」のもと14日間自宅待機した。「帰国者の感染確認」といった報道は、他者に迷惑を掛けてしまうかもしれない、という強い不安を私にもたらした。これらの経験から、あらためて情報とその受け手の関係性に関して、科学技術コミュニケーションの課題を認識した。英国における科学的発信では科学者のオープンマインドネスが信頼を生み出していると私は考察したい。また、社会的スティグマ防止の観点では日本政府や報道機関の情報発信には課題があったが、科学者や学術団体による積極的な情報発信はこれからの希望と感じた。
著者
鈴木 努 川本 思心 西條 美紀
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-18, 2012-12

Most universities in Japan conduct course evaluation as part of the faculty development program, and many methods to improve course content have been proposed. However, few studies discuss the improvement of omnibus courses. In this paper, we suggest a new method to improve omnibus courses, especially their consistency and relevance. We designed an omnibus course named "Clean Energy Business and Social Acceptance," which consisted of six serial lectures, each conducted by a different lecturer. Prior to the running of the course, we interviewed the lecturers and formulated a conceptual network with regard to the course content. The conceptual network helped lecturers grasp the course content and facilitated the improvement in relations among lectures. At the end of each lecture, we collected students' responses including some keywords pertaining to topics they were interested in. We integrated these keywords into another conceptual network and then examined the consistency and relevance of the lectures. The measures of network analysis were used to compare the keyword network with that of the previous year's course, with regard to which no conceptual network was formulated before the course and no interviews were conducted. The comparison revealed the effectiveness of our method.
著者
川本 思心
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション = Japanese journal of science communication (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.19, pp.135-146, 2016-06

現在、科学技術政策において安全保障関連技術の研究が積極的に推進されている。一方で、大学や研究機関の対応は遅れている。デュアルユース研究(軍民両用研究)に関する意思決定において、研究者個人、研究組織、独立の審査機関、そして政府がどのような役割を果たすべきか、専門家による議論が求められる。その際、市民が大学や研究機関におけるデュアルユース研究をどのように捉えているのかを把握し、それを議論に反映させることが重要である。しかし、市民の意識について現状では十分に把握されていない。本稿はデュアルユース研究をテーマに開催した公開シンポジウム「デュアルユースと名のつくもの~科学技術の進展に伴う両義性を再考する」の参加者に対して実施した質問紙調査の結果について報告する。サンプルバイアスがあるため、この結果から議論できることは限定的である。しかし、賛成と反対が二分された結果は示唆的である。科学技術コミュニケーションの観点からも、デュアルユース問題に関して専門家と市民の議論を喚起する必要がある。
著者
川本 思心 鈴木 努 種村 剛 杉山 滋郎 田中 幹人 石井 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-10-21

文献・インタビュー・質問紙調査等によって、日本におけるデュアルユース概念の特徴は以下のように概括された。1)用途両義性と軍民両用性の連続性がない。2)軍民両用研究ではなく軍事研究に着目している。3)資金出資組織によって軍事研究か否かを判断する「入口議論」に傾いている。4)「両義性がある」ことが、軍民両用研究を肯定(追認)する根拠にも、否定する論拠にもなっている。5)核兵器や化学兵器、バイオテロといったイメージが中心。これらの成果は学会・シンポジウムで10回発表し、論文6本、書籍5冊、一般記事等3本として公開した。また、一般向けイベント主催・登壇5件を行い、本件に関する議論を広く社会に発信した。
著者
鈴木 克治 川本 思心
出版者
科学技術コミュニケーション教育研究部門 : CoSTEP
雑誌
CoSTEP研修科 年次報告書
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-9, 2017-03

「出生前診断を受けますか?」「原子力発電所は必要だと思いますか?」「遺伝子組み換えを導入した食品を購入しますか?」義務教育を終え、自立した個人として社会へ歩み出す15 歳の生徒たちは、これらの問題にどう答えるだろう。筆者は中学校の理科教師として、発展し続ける科学技術とそれに付随する社会問題について系統的に授業で扱い、トランスサイエンスに関する知識・思考力・判断力を育成する必要があると考えた。そこで本活動では、中学校の理科でトランスサイエンスをテーマにした授業を実際に行い、どのような内容や時数・時期・配慮事項などが必要かを検討した。結果として、取り上げたいテーマに関わりの深い教科書の内容を学習した直後に、ト ランスサイエンスの授業(トランスサイエンス授業)を行うことが生徒にとって課題の理解が容易であることが分かった。一方で、授業テーマによっては、生徒のプライバシーに関わる可能性があり、内容や使用する言葉について十分な検討が必要となった。そのため、授業準備に多くの時間が割かれ、頻繁にトランスサイエンス授業を行うことはできなかった。今後はより簡便にトランスサイエンス授業を行う方法を検討する必要がある。
著者
早岡 英介 郡 伸子 藤吉 亮子 池田 貴子 鳥羽 妙 川本 思心
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-55, 2015-07

福島第一原子力発電所の事故以降,主に放射能リスクをテーマとしたリスクコミュニケーションの取り組みが各地で進められてきた.だが,多くは啓蒙的な説明会にとどまっており,専門家と一般市民との間に十分な双方向の対話の場を生み出せていない.こうした状況を克服するためには, リスク情報を正確かつ受け手側に配慮しながら発信できるリスクコミュニケーターの育成が急務である.北海道大学CoSTEPでは2014 年度にリスクコミュニケーション選択実習という新しい実習を設け,福島の農業と放射能リスクをテーマに活動した.最終的に2015 年2 月から3 月にかけ,三つの対話イベントを実施した.本実習では,「コンテンツの制作能力」「コミュニケーションの場を生み出す能力」「適切なフレームを協働構築する能力」の三つの能力を育成することを目指し,TV番組等を活用して実習中に何度もリスク問題を取り上げて議論を重ねたこと.実際に福島で調査したこと.現地取材した映像を実習メンバーで編集してサイエンス・カフェ等で映像レポートとして上映したことの三つが大きな特徴である.これらの実践を通して「当事者性」「主体性」「多様な価値観」を獲得することができ,上記三つの能力にポジティブな効果がもたらされた.
著者
早岡 英介 三上 直之 杉山 滋郎 藤吉 亮子 鳥羽 妙 川本 思心 郡 伸子 滝沢 麻理 池田 貴子 添田 孝史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故以降,主に放射能リスクをテーマとしたリスクコミュニケーションの取り組みが各地で進められてきた.だが,多くは啓蒙的な説明会にとどまっており,専門家と一般市民との間に十分な双方向の対話の場を生み出せていない.こうした状況を克服するためには,リスク情報を正確かつ受け手側に配慮しながら発信できるリスクコミュニケーターの育成が急務である.北海道大学CoSTEPにおける2014年度の実践から,リスクコミュニケーター人材育成においては「伝え方を工夫できるコンテンツの制作能力」「対話の場を生み出す能力」「問題設定を適切に設計できるフレーミング能力」の3つの能力が重要だと考察した.
著者
川本 思心 浅羽 雅晴 大石 麻美 武山 智博 関島 恒夫 島谷 幸宏 西條 美紀
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-40, 2009-03

Dialogues with community constituents are indispensable for scientists whose research fields and applications are closely related with communities throughout the research processes of consensus building on executions of research projects, making decisions on research policies, sharing the products of the projects, corrections. What kind of guidance is required for scientists to maintain a dialogue with the society? Using mailing list and web portfolio, we recorded a process of planning and executing a science cafe with two researchers who research for reintroduction of Crested Ibis (Toki) into Sado Island. Additionally, to understand the reality of the research, we observed the field research by the scientists in Sado Island. This record and analysis about difficulty and the solution of the science cafe serves scientists as a effectively guidance.
著者
川本 思心 中山 実 西條 美紀
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
no.3, pp.40-60, 2008-03
被引用文献数
3

The definition of science and technology literacy is constantly changing reflecting the relation between scienceand society. The more recent one is not only for a person to understand science and its methodology, butalso to be able to make a comprehensive judgment on the influences of science and technology on the societyand to reflect the judgment on one's activities. In this paper, the author will first make a general survey ofthe views on science and technology literacy based on earlier domestic as well as foreign studies. Next, theauthor will make a survey of the questionnaires used as means to judge the "literacy," to know how and whatthey measured. The author then describes a new questionnaire developed as a part of this study designed toevaluate the literacy in connection with the social recognition, and the result of the survey conducted usingthe questionnaire, reporting its finding that it is necessary to propose a separate educational program for eachcluster of people with different tendency.