著者
大平 明弘 海津 幸子 和田 孝一郎
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

網膜光障害の首座は視細胞と網膜色素上皮細胞に生じる。ラット、マウスを用いてフラボノールの一種である、クエルセチン (文献1) と栃の実の殻に存在するプロアンチシアニジン (文献3) とカルテオロール塩酸 (文献2)の網膜への影響を調べ、これらの物質が網膜の機能、形態を光障害から防御することを報告した。クエルセチンは光による視細胞のアポトーシスを抑制し、網膜の変性を防御した。光障害の指標として用いた8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG), Heat shock protein (Hsp70) の発現は光で誘導され、クエルセチンの投与で抑制された。電気泳動移動度シフトアッセイの結果は、AP-1結合活性が露光により活性化され、c-Fosおよびc-Junの結合は結合活性を媒介したが、JunBの結合は媒介しなかったことを示した。 ケルセチンの腹腔内投与は網膜における光酸化損傷を減少させ、ラットにおける光誘発光受容体細胞変性に対する細胞保護を仲介する AP - 1結合部位でのc - Junおよびc - Fosタンパク質のヘテロ二量体組み合わせの抑制は、ケルセチン媒介細胞保護に非常に関与している。栗の実の殻からのポリフェノール化合物は網膜脂質の酸化を抑制した。 種子の殻からの高分子量のA型プロアントシアニジンは、酸化ストレスとアポトーシスのメカニズムを抑制することによって、ラットの網膜を光照射による損傷から保護した。カルテオロールは生理食塩水処置群と比較してチオレドキシン1とグルタチオンペルオキシダーゼ1のmRNAレベルを有意に上方制御した。カルテオロールは、BSO /グルタミン酸誘導細胞死を有意に抑制し、in vitroでカスパーゼ-3/7活性およびROS産生を減少させた。
著者
氏平 明
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.65-75, 1999-04-30 (Released:2017-08-31)

The purpose of this study is to elucidate the nature of disfluencies produced by stutterers and normal speakers of Japanese. The first part of the paper reports the result of a detailed analysis of over 2000 stuttering samples (repetition) produced by 36 stutterers and 286 normal speakers. The analysis has revealed that most of the segmentation patterns in the samples are mora-based segmentations. The second part is to seek the difference between stutterers' and normal speakers' repetitions. The statistic analysis from the viewpoint of a phonetic transition defect has revealed that the trigger of nonstutterers' disfluency is not so relevant to the phonetic transition as that of stutterers'. This implies that the two kinds of disfluencies have different backgrounds. On the other hand, the triggers of stuttering, which are stops, can be interpreted as stutterers' flaws in their phonetic plans. This finding makes up for a weak point of The Covert Repair Hypothesis.
著者
平 明徳 三宅 裕士 亀田 卓 末松 憲治 高木 直 坪内 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.194, pp.51-56, 2013-08-29

日本の天頂付近に8時間程度留まることが可能な準天頂衛星(QZS)を活用し,高精度な位置情報とポケベル程度の簡単なデータ/メッセージを双方向通信できる準天頂衛星システム(QZSS)の開発が進められている.本稿では,長拡散符号を用いたスペクトラム拡散(SS)を用いて,高い拡散利得の確保と数100万に及ぶ多数のユーザ収容を目指すSS-CDMA方式におけるタイミングジッタの影響について検討を行った.限られた送信電力で,端末とQZS間で直接通信を行うためにSSは非常に有効であるが,多重ユーザ数が大きくなることからユーザ間の符号直交を確保することが重要となる.本稿では全端末がQZSSの測位信号により時間・周波数領域で同期する送信タイミング制御方式を提案し,各ユーザに巡回シフトした直交M系列を割当てた場合の伝送特性について,計算機シミュレーションによる評価を行った.その結果,1チップシフトの符号をユーザに割り当てるフルロードに近い条件(1024拡散,1000ユーザ多重)において,タイミングジッタ量を1/8チップ以下に抑えれば,特性劣化を0.5dB以下とできることを明らかにした.
著者
加藤 圭子 澤井 信江 土師 俊子 稲垣 寿美 徳永 香里 中川 栄太 川平 明子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本の要介護高齢者が好む粥の誤嚥予防について検討するために、食事援助中の粥の粘度の経時的変化を明らかにした。また、食事援助中の粥の基本的な性質の経時的変化等についても明らかにした。
著者
渡辺 俊一 下川 新二 上原 景光 場集田 寿 山内 励 古園 耕治 岩村 弘志 上村 亮三 平 明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
呼吸器外科 : 日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09174141)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.750-754, 1990-11-15
被引用文献数
1

より生理的な肺保存法として,摘出肺の胸膜外からの空冷保存を考案し,肺換気にはhigh frequency jet ventilationを用い,その後同所性に移植した.実験は2群で,4℃生理食塩水でflushしたdonor肺を,教室で開発した空冷保存装置で2時間及び5時間保存して同種左肺移植した群では,5〜79日の生存犬7頭を得た.他の群では,血液を含む細胞外液組成液でflushした6時間保存肺を同様に移植し,術直後及び術後3日目に100%酸素下で右肺動脈を閉塞,移植肺の機能を評価した.移植直後(n=5)の動脈血酸素分圧は,両肺で398.9±47,3mmHg(mean±SE),移植肺のみで357.6±48.0mmHgで,両老間に有意差はなかった.術後3日目(n=4)では,両肺で475.7±41.1mmHg,移植肺のみで330.5±53.6mmHgで,後者で低い傾向にあったが有意差はなかった.2つの実験群から,本法の有用性及びflush後6時間の肺保存が可能なことが示された.
著者
平 明徳 石津 文雄 三宅 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1255-1264, 2001-07-01
被引用文献数
50

都市部における移動体通信需要の高まりから, 周波数選択性フェージング環境下において優れた特性を示すOFDM通信方式が注目を集めており, 各国で標準化作業も進められている。OFDMではFFTウインドウの設定位置にずれが生じると, シンボル間干渉によりサブキャリヤ間の直交性が崩れて特性劣化が生じるため, 高精度なタイミング同期が必要となる。本論文では, 受信信号と参照信号の相互相関に基づいた同期方式を提案し, これまでに提案されている受信信号の自己相関に基づく方式とともに計算機シミュレーションによりPER特性に与える影響を検討する。また, 参照信号を硬判定データとして表現することにより, 相関処理で必要とする計算量を効果的に削減する手法を示し, 遅延波広がりの大きな伝送路においても本提案方式により適切なタイミング同期が実現できることを明らかにする。
著者
森脇 広 奥野 充 大平 明夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南九州の鹿児島湾を構成する姶良カルデラ周辺の臨海平野には完新世海成段丘が分布する.これらの段丘面の編年と高度分布,さらに,露頭調査とボーリング掘削によって得られた構成堆積物の古環境的解析を行い,旧海水準の高度分布を明らかにし,姶良カルデラを中心とした鹿児島湾周辺の第四紀地殻変動を検討した.編年の方法は,テフラと^<14> C年代による.その結果,これまで示唆されてきた姶良カルデラを中心とした完新世の曲隆がさらに確かなものとなった.これは,姶良カルデラの火山活動と関連していると考えられ,桜島火山などの将来の噴火を評価する基礎資料として活用できると考える.