著者
樋口 匡貴 磯部 真弓 戸塚 唯氏 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.1, pp.53-68, 2001

本研究は,恋愛関係における効果的な告白方策としての言語的方策を明らかにすることを第1の目的とし,そうした告白方策の効果に関する状況差を明らかにすることを第2の目的とした.大学生18O名に対し,19種類の告白の言語的方策を呈示し,それぞれの告白を受けることによって,相手との関係が進展する程度を尋ねた.また状況要因として,告白者に対する被告白者の好意(片思い,両思い)を操作した.因子分析の結果,恋愛の告白に使用する方策は,"単純型","懇願型","理屈型"の3種類に整理されることが明らかになった.さらに,2(性別)×2(状況)×3(言語的方策)の3要因の分散分析を行った結果,①両思い状況で告白した方が片思い状況でよりも関係が進展しやすい,②単純型の告白を用いた場合にもっとも関係が進展しやすい,③単純型告白方策の効果の優位性は,状況および性別を問わない,ということが明らかになった.これらの結果が,言語的方策の持つイメージの点から考察された.
著者
戸塚 唯氏 深田 博己
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.54-61, 2005 (Released:2005-08-26)
参考文献数
10
被引用文献数
4 2

集合的防護動機モデルとは,集合的対処行動を勧告する脅威アピール説得の効果とメカニズムを説明するモデルである。同モデルは8つの要因から成る4つの評価が集合的対処行動意図を規定すると仮定している。本研究の目的は集合的防護動機モデルの妥当性を検証することであった。独立変数は脅威評価(高,低),対処評価(高,低),個人評価(高,低),社会評価(高,低),性(男性,女性)であった。被験者は大学生707人(男性365人,女性342人)であり,34条件(32実験条件と2統制条件)のうちの1つに無作為に割り当てられた。そして,実験条件の被験者にはダイオキシン問題に関する説得メッセージを読ませ,質問紙に回答させた。その結果,全ての仮説が支持されたわけではないが,脅威評価,対処評価が大きいほど,集合的対処行動意図が大きいことが明らかとなった。また男性被験者の集合的対処行動意図に対しては,わずかではあるものの社会評価の影響も見られた。
著者
戸塚 唯氏 深田 博己 木村 堅一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.83-90, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

本研究の目的は, 脅威アピールを用いた説得メッセージにおいて, 脅威に晒されていることを強調する脅威ターゲットとして受け手自身と受け手にとって重要な他者である家族を用いた場合の説得効果を比較検討することであった。独立変数は, (1) 脅威ターゲッ (受け手, 家族), (2) 脅威度 (高, 低), (3) 対処効率 (高, 低) であった。249人の女子大学生を8条件のうちの1つに無作為に配置した後, 被験者に説得メッセージを呈示し, 最後に質問紙に回答させた。質問紙では, 勧告した2つの対処行動に対する実行意図と肯定的態度を測定した。その結果, 脅威度や対処効率が大きいほど, 実行意図と肯定的態度の得点が大きくなることが明らかとなった。また実行意図の得点は, 受け手ターゲット条件よりも家族ターゲット条件の方で大きいことが明らかとなった。本研究で得られた知見によって, 重要な他者を脅威ターゲットとする説得技法が, 説得効果を高めるために有用であることが示唆された。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.7, pp.49-58, 2014-02

本研究の第1の目的は、恋人の性格特性に関する許容範囲について検討することである。第2の目的は、ある性格特性をある水準で持っている個人は同じ特性に関して同じ水準を恋人に望むのかについて検討することである。 調査参加者は日本人大学生212名(男性119名、女性93名)である。彼らに対して特性リストを呈示して、そこに掲載されていた性格特性がどの程度自分に当てはまるかを回答させた。これが現実自己得点である。また、それらの性格特性を恋人にどの程度持っていてほしいか(理想点、上限点、下限点)について回答させた。これが理想得点、上限得点、下限得点である。 分析の結果、許容範囲はほぼ全ての性格特性において男女で差がなかった。一方、特性ごとの許容範囲の広さは異なり、比較的許容範囲が広い特性(例えば「頭の良さ」)や狭い特性(例えば「意志の強さ」)があることが明らかとなった。また、現実自己得点と理想点、上限点、下限点について相関係数を算出したところ、男性データの「言葉づかい」、女性データの「言葉づかい」と「おしゃれ」でのみ中程度以上の相関が見られ、その他の特性については無相関、あるいは弱い相関しか見られなかった。
著者
戸塚 唯氏 伊勢﨑 翼
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Insitute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.12, pp.139-151, 2019-02-28

江戸時代、銚子は政治・流通・交通の要衝であり、人口も多かった。そのため、多くの寺子屋が設立された。寺子屋とは6歳から12歳頃までの庶民の児童を対象とした当時の教育施設である。本研究の目的は、江戸時代中期から明治初期にかけて銚子地域に存在した寺子屋師匠の数と名前を明らかにすることであった。様々な文献や筆子塚の記載を調査した結果、最終的に107名の寺子屋師匠の存在を明らかにした。また、寺子屋師匠の没年情報を用いて年代別の寺子屋師匠数を算出したところ、銚子では19世紀中旬に多くの寺子屋師匠が存在していたことが明らかとなった。
著者
藤本 一雄 戸塚 唯氏 坂巻 哲
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.79-88, 2021-03-26 (Released:2021-12-25)
参考文献数
82

The purpose of this study is to propose the compliance-gaining strategies of interpersonal persuasion in evacuation from natural disasters, such as tsunami and heavy rainfall disaster. Stories of victims and rescuers of the evacuation during the disasters were collected. Extracting from the stories, the case examples of refusal in persuasive communication were obtained. The cases were classified according to reason of refusal such as “risk perception”, “family gathering”, “prioritizing property”, “prioritizing business”, etc. Furthermore, the cases of compliance-gaining in persuasion were analyzed. Finally, we proposed compliance-gaining strategies of persuasion in evacuation guidance from natural disasters.
著者
藤本 一雄 戸塚 唯氏
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-11, 2015-11-13 (Released:2017-08-02)
参考文献数
54
被引用文献数
1

This study examined the prolonged regrets of suffers due to the 2011 Great East Japan Earthquake based on their 2,284 narratives in written form in order to find out the purpose of disaster prevention activity. Among them, 66 narratives are referred to regret. These narratives were classified in terms of individual attribute, actual action at the time of the disaster, and counterfactual thinking (thoughts of what might have been). The document analysis for the counterfactual statements suggests that the suffers who lost irreplaceable person or property tend to feel prolonged regret and they tend to blame themselves (e.g., counterfactual statement is such as “I would not have lost my family member if only I would return home faster”).
著者
戸塚 唯氏 早川 昌範 深田 博己
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.26-36, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
16

防護動機理論 (protection motivation theory: PMT) とはRogers (1983) によって提唱された脅威アピールの説得効果を説明するための理論である。本研究の目的はPMTに基づいて, 環境ホルモン (擬似エストロゲン物質) の対処行動意図を促進, あるいは抑制する要因を検討することであった。独立変数は, 脅威 (高・低), 反応効果性 (高・低), 反応コスト (高・低), 性 (男性・女性) であり, 400人の被験者 (男性200人, 女性200人) を16条件のうちの1つに割り当てた。その後被験者に説得メッセージを呈示し, さらに質問紙に回答させた。分散分析の結果, 脅威と効果性, 性の主効果が見いだされ, 脅威や効果性が大きいほど, また男性よりも女性の方が, 環境ホルモン対処行動意図が大きいことが明らかとなった。次に実験的検討を補うために, PMT認知要因 (深刻さ, 生起確率, 効果性, コスト, 自己効力, 内的報酬), 性, 恐怖感情を順に説明変数に投入する階層的重回帰分析を行った。その結果, コストを除いたPMT要因と性, および恐怖感情が環境ホルモン対処行動意図に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-41, 2016-02

本研究は、Big Five モデルの枠組みを採用し、開放性の性格側面に関して対人魅力に及ぼす類似性の効果を実験的に検討した。分析対象者は129名(男性68名、女性61名)、平均年齢は18.43歳であり、彼らに架空の人物に関する文章(開放性を高くあるいは低く描写した)を読ませ、その後、質問紙に回答させた。独立変数は参加者開放性(高・低)、描写人物開放性(高・低)、描写人物性(男性・女性)であり、従属変数は好ましさ得点、友人希望得点であった。分析の結果、2つの従属変数に関して参加者開放性の主効果やそれに関係する交互作用は見いだされず、開放性の側面における類似が対人魅力を増加させるという効果は確認できなかった。一方、2つの従属変数に関して描写人物開放性の主効果が見いだされ、社会的に望ましい特徴(本研究の場合には開放性が高いという特徴)が対人魅力に影響を与えていることが示唆された。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-56, 2018-02-28

性的マイノリティの児童生徒はいじめや差別の困難に直面している。そのためいじめや差別を低減し、性的マイノリティへの援助意図を高めるような説得が重要となっている。本研究でははじめに性的マイノリティの児童生徒の現状を考察し、その後性的マイノリティへの援助意図を高める要因を検討した。実験参加者は79名の大学生(男性56名、女性23名)であり、11の認知と性的マイノリティへの援助意図を測定した。11の認知とは、迷惑認知、深刻さ認知、二次被害の確率認知、二次被害の深刻さ認知、内的規範認知、義務認知、実行者割合認知、支持認知、意義認知、コスト認知、当惑認知である。重回帰分析の結果、当惑認知と内的規範認知、意義認知が性的マイノリティへの援助意図に影響を与えていたことが明らかとなった。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-43, 2010-02-28

本研究の目的は、大学生が恋人・結婚相手のどのような性格特性を嫌だと思うのかを検討することであった。調査参加者は日本人大学生154名(男性106名、女性48名)で、まず彼らに対して肯定的特性リストを呈示して自分自身にどの程度これらの特性があるかを回答させた。これが自己評価得点である。次に否定的特性リストを呈示し、恋人・結婚相手にこれらの特性があったら、どのくらい嫌だと思うかを回答させた。これが嫌悪得点である。自己評価得点に関して、男女のデータを比較した結果、全体的に見て男女の得点に大きな違いがないことが示唆された。次に、嫌悪得点を従属変数にとして分散分析を行った。独立変数は、性(男性・女性)と対象(恋人・結婚相手)であった。その結果、次のことが示唆された。1. 女性は男性性特性が低い恋人や結婚相手を嫌悪し、男性は女性性特性が低い恋人や結婚相手を嫌悪する傾向があること。2. 男性も女性も、恋人よりも結婚相手に対して高い資質を求めていること。
著者
戸塚 唯氏 上北 彰 狩野 勉
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-53, 2011-02-28

Byrne & Nelson (1965)は、態度の類似性が、相手への好意度を増加させることを報告している。では、社会的にネガティブな特徴である情緒不安定性に関する類似も相手への好意度を増加させるだろうか。本研究の目的は、情緒不安定性に関する類似性が対人魅力に及ぼす影響を検討することであった。実験参加者は日本人大学生130 名であり、独立変数は参加者の情緒不安定性(高・低)、参加者の性(男性・女性)、描写人物の情緒不安定性(高・低)、描写人物の性(男性・女性)であった。まず実験参加者に情緒不安定性に関する質問項目に回答させ、その後、4 人の描写人物に関する印象を測定した。分散分析の結果、情緒不安定性の類似が対象人物に対する好意を促進する効果は認められなかった。一方で、参加者の情緒が不安定なほど対象人物に対してよりよい印象を持つ傾向があること、情緒が不安定な女性描写人物よりも情緒が不安定な男性描写人物の方がよりよい評定を受けることが明らかとなった。
著者
深田 博己 戸塚 唯氏 湯 永隆
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第三部, 教育人間科学関連領域 (ISSN:13465562)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.273-280, 2002-02-28

The experimental study on censorship was conducted to investigate the effects of (1) censor power and (2) the type of freedom re-establishment of communication on the recipients' attitude change in hypothetical situations. The censor was either a powerful or powerless agent, and the type of freedom re-establishment was direct re-establishment of freedom, re-establishment of freedom by implication, or non-re-establishment of freedom. The results indicated that both of the two independent variables, i.e. (1) and (2), mentioned above did not influence the subjects' attitude change toward the censored communication topic. The subjects in the non-re-establishment condition perceived greater threat to freedom than those in the direct re-establishment condition. And the subjects in the direct re-establishment and re-establishment by implication conditions perceived the communicator more positively than those in the non-re-establishment condition. The results in the present experiment have been interpreted according to the psychological reactance theory.