著者
辻内 琢也 扇原 淳 桂川 泰典 小島 隆矢 金 智慧 平田 修三 多賀 努 増田 和高 岩垣 穂大 日高 友郎 明戸 隆浩 根ケ山 光一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「帰還か移住か避難継続か」の選択を迫られる原発事故被災者が、今後数年間で安心して生活できる新たな居住環境をどのように構築していくのか、現状と問題点を明らかにし、「居住福祉」に資する心理社会的ケアの戦略を人間科学的学融合研究にて提言していくことにある。「居住は基本的人権である」と言われるように、被災者が安心・安全に生活できる基盤を構築するためには、内科学・心身医学・公衆衛生学・臨床心理学・発達行動学・社会学・社会福祉学・平和学・建築学・環境科学といった学融合的な調査研究が欠かせない。応募者らは2011年発災当時から被災者支援を目指した研究を継続させており、本課題にてさらに発展を目指す。
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
河西 ひとみ 辻内 琢也 藤井 靖 野村 忍
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.59-68, 2017 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

本研究は, 過敏性腸症候群 (IBS) の軽快・治癒プロセスを明らかにすることを目的とし, 主観的に軽快・治癒に至った7名のIBS患者にインタビューを行った. 分析には質的研究法の複線径路等至性モデル (Trajectory Equifinality Model : TEM) を使用した. 結果, プロセスは3型に分けられ, すべての型が 「IBS症状の発現」 から 「とらわれ」, 次に 「対処行動」 と 「IBS症状の一部軽快」 に至るまでは同じ径路をたどったが, 以降の径路は 「環境調整」 と 「心理的葛藤に直面」 に分岐した. 分岐後は, いずれの径路を選択した型も, サポート資源を受け取ることによって, すべての型において 「受容的諦め」, 「人生観の変化」, 「IBS体験への肯定的意味づけ」 という認知的変容体験を経て, 主観的な軽快・治癒に至った. また, 7例中3例において, 他者からの受容・共感と, 変化への圧力の相補的な働きがプロセスを推し進めた可能性が示唆された.
著者
辻内 琢也
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.4_8-4_13, 2017-04-01 (Released:2017-08-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
菊地 真実 辻内 琢也
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.10-22, 2016-06-10 (Released:2016-07-06)
参考文献数
22

A questionnaire-based survey was administered to determine how community pharmacists recognize the necessity for and frequency of touching their patients during care giving. The questionnaire was sent to 400 community pharmacies that practiced home care, and 147 valid responses were analyzed. The survey suggested that acts recognized by pharmacists to require touching were measuring vital signs and helping patients take oral medications. It was thought that pharmacists needed to help patients in taking oral medications and also needed to determine issues related to oral intake. The survey also indicated that the frequencies of measuring vital signs and applying plasters to patients were high. Measuring vital signs was considered routine work, and applying plasters to patients was considered occasional work. Many respondents stated the need for practical study sessions on measuring vital signs. The frequency of measuring vital signs has increased because pharmacists have increasingly recognized this need. Additionally, females tended to touch their patients more frequently than males. However, there was no relationship between the frequency of examining bedsores and applying ointments on them and gender because it was thought that knowledge and experience were more important. The recognition of necessity for touching their patients was high but the frequency was comparatively low, and there was a discrepancy between the recognition of necessity and frequency. It was suggested that practical study sessions on when patients should be touched should be a high priority.
著者
辻内 琢也 鈴木 勝己 辻内 優子 熊野 宏昭 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.53-62, 2005-01-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
6

本研究では, クラインマンが提唱した「説明モテル」を鍵概念として, わが国における民俗セクター医療を利用する患者の社会文化的背景に対して, 医療人類学的視点に基づいた質的研究法による解明が試みられた. 対象は東洋医学, 仏教医学, スピリチュアリズム理論に基づく治療実践を行う治療家Aのクライエントらとし, 自由記述式のアンケート調査および聞き取り調査が行われた. その結果, 民俗セクター医療を利用しやすい病態群や受療行動パターンが持定され, 病いの物語りからは, 人々が多元的医療システムの中でそれぞれのライフストーリーに裏づけられた価値観に基づいて, 自分に合った医療を主体的に選択していくありさまが認められた. 研究の背景と目的 「医療」が「人間の病気に対する対処行動の全体系」であると定義されるように, 現代社会には治療の基盤となる根本原理がまったく異なる複数のヘルス, ケア, システムが多元的, 多様的, 多層的に存在しており, そのありさまは「多元的医療システム(pluralistic medical systems)」とよばれる.
著者
辻内 琢也 河野 友信
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.585-593, 1999-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
27
被引用文献数
5
著者
吉田 邦彦 辻内 琢也 今野 正規 津田 敏秀 成 元哲 窪田 亜矢 淡路 剛久 今中 哲二
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、《福島放射能被害・水俣病・アスベスト被害などの潜伏的健康被害と地球温暖化の大規模災害の救済システムの国際的学際研究――21世紀型不法行為に関する医学・法学・工学の対話》がテーマである。敷衍すると、福島原発事故の放射能被害をはじめとする蓄積的健康被害および地球温暖化に関わる大災害の救済システムについて、医学・原子力工学などの自然科学の経験分析研究と、環境法・医事法・居住福祉法学やリスク論の方法論的展開を踏まえた法学研究を糾合しつつ、被災者の社会学的知見や医療人類学的な分析も取り込みながら、従来の損害賠償法のスキームに囚われぬ総合的枠組みを現状批判的に再構築することを目指す。
著者
高梨 知揚 西村 桂一 辻内 琢也
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.196-203, 2014 (Released:2015-08-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的】本研究は、 在宅療養支援診療所の医師を対象として、 在宅緩和ケア領域における鍼灸師との連携の実態を明らかにすることを目的とする。 【方法】在宅でのがん緩和ケア実績のある在宅療養支援診療所 297 施設を対象とした。 郵送法による自記式質問紙調査を行い、 回答は診療所所属の医師に依頼した。 質問紙は、 鍼灸師と連携をして在宅緩和ケアを実践している施設数、 連携の現状、 および情報共有の実態と方法を把握する内容とした。 【結果】294 施設中 98 施設から回答を得た (回答率 33.3%)。 現在鍼灸師と連携して末期がん患者のケアを実践しているのが 14 施設 (14.3%)、 過去に連携をしたことがあるのが 9 施設 (9.2%) であった。 鍼灸師と連携してケアする患者の症状は、 疼痛、 吃逆、 浮腫、 腹水、 便秘等が挙げられていた。 鍼灸師と連携することによるメリットについては、 「症状の緩和」、 「患者の満足度の向上」、 「患者のモチベーションの向上」 などの記述が見られた。 鍼灸師との情報共有の有無について、 「必ず共有する」 が 7 施設 (50%)、 「状況に応じて共有する」 が 7 施設 (50%) で、 「情報共有しない」 施設は無かった。 今後の在宅緩和ケアにおける鍼灸師との連携についての考えを尋ねたところ、 全体のうち 「積極的に連携したい」 が 9 施設 (9.2%)、 「状況によっては連携を考える」 が 65 施設 (66.3%) であった。 【結論】本研究より、 在宅緩和ケア領域において、 在宅療養支援診療所医師と鍼灸師とが連携している施設が 14.3%存在することが判明した。 また、 連携により症状緩和だけではない患者ケアが実践できる可能性が示唆された。 一方で、 鍼灸師が在宅緩和ケアの現場に関わるためには、 患者情報やチームとして行われているケアの状況を適切に把握する必要があり、 医師をはじめとした他職種と連携を図り情報共有する為の環境整備を推進すべきであると考えられた。
著者
辻内 優子 熊野 宏昭 吉内 一浩 辻内 琢也 中尾 睦広 久保木 富房 岡野 禎冶
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-216, 2002-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
28

化学物質過敏症(MCS)とは, Cullenによって提唱され, 化学物質の少量持続暴露か大量暴露を受けた後に, 多臓器にわたって臨床症状が発現する機序不明の病態とされている.本研究ではこのMCS概念に基づき, 心身医学的観点から比較検討(患者18名, 健常者35名)を行った.その結果, 発症および経過には心理社会的ストレスの関与が認められ, 過去1カ月間の飲酒・喫煙歴が少ないという生活習慣の特徴が認められた.発症後の状態として, 患者群は多くの身体症状と精神症状を自覚しており, 精神疾患の合併が83%で, 身体表現性障害・気分障害・不安障害が多く認められた.
著者
辻内 琢也 増田 和高
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

原子力発電所事故広域避難者に対して、大規模アンケート調査、半構造化インタビュー調査、人類学的フィールド調査を行なった。その結果、避難者には極めて高い心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性が見いだされ、その精神的被害には、原発事故によってもたらされた経済的問題、住宅問題、賠償格差の問題、家族やコミュニティ分断の問題、などの社会経済的問題が関与していることを統計学的に明らかにした。避難者のメンタルヘルスの問題は決して個人的なものではなく、社会のいわば「構造的暴力」が避難者の生活や人生を傷つけていると考えられた。避難者の自殺予防には、様々な社会経済的問題の解決といった「社会的ケア」が必要である。
著者
Al-Adawi Samir 鄭 志誠 辻内 琢也 葉山 玲子 吉内 一浩 熊野 宏昭 久保木 富房
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.933-941, 2005-12-01

国際的にみて, 精神的外傷を引き起こすような死別に対し, 十分に対処がとられている社会は少ない.これにもかかわらず, 死別に対する反応を社会的特性という観点でとらえる人類学的研究はごくわずかであり, 死への悲嘆反応は, 心身医学的問題としてとらえられている傾向がある.本稿では, オマーンの伝統的な社会に存続する不慮の死における死者の生き返り(zombification), そして呪術や魔法に関する信仰(信念)を紹介する.これらの反応は社会的に容認されており, 死者の死の否定を基礎としている.さらに考察では, これらを説明モデルという概念を用いて分析し, 世界各地で観察される類似する悲嘆反応を欧米のタナトロジー(死亡学)研究におけるそれと比較し, 新たな視点で論じる.
著者
菊地 真実 辻内 琢也
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.81-96, 2015-12-10 (Released:2015-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

A questionnaire-based survey was conducted to clarify how community pharmacists recognize the legal validity of acts that involve touching their patients and to determine if the pharmacists had personal feelings of resistance toward particular acts. The questionnaire was sent to 400 community pharmacies that practiced home care and 147 valid responses were analyzed. The survey suggested that there were many pharmacists who had no objection toward measuring vital signs, such as temperature and blood pressure. Additionally, they recognized that it was necessary for doctors, other professionals, and patients to recognize their ability to measure vital signs. The survey also suggested that there were strong feelings of resistance toward invasive acts, such as insertion of an enema tube or a suppository. It was considered that these feelings were due to insufficient knowledge and experience, as well as uneasiness with hygiene issues. The necessity to participate in a practical study session was emphasized. When pharmacists recognized a problem with the legality of an act, their feelings of resistance, particularly toward examining bedsores and applying ointment on them, tended to become strong. Therefore, it was suggested that pharmacists may be able to perform the acts without feelings of resistance if the legality of the acts was clarified. Based on these findings, it is necessary to find a suitable rationale for performing each act, so that pharmacists will be able to perform the acts that involve touching their patients without feelings of resistance.
著者
岩垣 穂大 辻内 琢也 扇原 淳
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.1013-1019, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
31
被引用文献数
2

災害復興におけるソーシャル・キャピタルの役割が注目されている. ソーシャル・キャピタルとは 「社会関係資本」 と訳され, 他者への信頼感, 助け合いの意識, ネットワーク, 社会参加などで評価される人間関係の強さを表す概念である. 先行研究において, 災害発生時, ソーシャル・キャピタルの豊かな地域ではPTSDやうつといった精神疾患の発症リスクが低いとの報告も行われている.本研究では福島第一原子力発電所事故からの避難者を対象にソーシャル・キャピタルとメンタルヘルスの関連について調査を行った. その結果, 高齢者を対象とした調査, 子育て中の母親を対象とした調査のいずれも, 個人レベルのソーシャル・キャピタルが豊かなほどメンタルヘルスが悪化しにくいことが明らかとなった.今後, ソーシャル・キャピタル醸成の視点を取り入れた災害復興政策を行っていくことが重要であると考えられた.
著者
辻内 琢也 鈴木 勝己 辻内 優子 鄭 志誠 熊野 宏昭 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.799-808, 2006-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
2

「医療人類学」は社会・文化人類学の一分野として,健康や病いと社会・文化システムとの関係を探求してきた.本稿では,はじめに病いの経験の社会的・文化的な相互作用を明らかにするうえでとても有用な,(1)多元的ヘルスケアシステム,(2)説明モデル・アプローチ,(3)病いの語りと臨床民族誌,という三つのキーコンセプトについて解説する.次に,われわれがこれまでに取り組んできた,医療人類学的アプローチを応用した質的研究3点を具体的に提示し,物語りに基づく医療(ナラティプ・ベイスト・メディスン; NBM)の理論的骨格の一つとも言える,「医療人類学」の目指す学問的姿勢を明らかにする.
著者
Samir Al Adawi 鄭 志誠 辻内 琢也 葉山 玲子 吉内 一浩 熊野 宏昭 久保木 富房
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.933-941, 2005-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
22

国際的にみて, 精神的外傷を引き起こすような死別に対し, 十分に対処がとられている社会は少ない.これにもかかわらず, 死別に対する反応を社会的特性という観点でとらえる人類学的研究はごくわずかであり, 死への悲嘆反応は, 心身医学的問題としてとらえられている傾向がある.本稿では, オマーンの伝統的な社会に存続する不慮の死における死者の生き返り(zombification), そして呪術や魔法に関する信仰(信念)を紹介する.これらの反応は社会的に容認されており, 死者の死の否定を基礎としている.さらに考察では, これらを説明モデルという概念を用いて分析し, 世界各地で観察される類似する悲嘆反応を欧米のタナトロジー(死亡学)研究におけるそれと比較し, 新たな視点で論じる.