- 著者
-
下村 吉治
- 出版者
- 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
- 雑誌
- 日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.3, pp.97-103, 2012 (Released:2012-07-13)
- 参考文献数
- 46
- 被引用文献数
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分岐鎖アミノ酸(BCAA:ロイシン,イソロイシン,バリン)は,タンパク質の構成材料としてばかりでなく,タンパク質代謝および糖代謝を調節する生理作用の強い栄養因子であることが明らかにされつつある。よって,体内のBCAA 濃度の調節機構は種々の代謝を正常に保つために極めて重要である。体内には BCAA の分解系が存在するが,その分解系の調節がBCAA 濃度に影響を及ぼす。BCAA 分解系の律速は,その系の第2ステップに存在する分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体(BCKDC)である。BCKDCは酵素タンパク質のリン酸化による活性調節を受けるが,そのリン酸化を触媒する酵素が分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素キナーゼ(BDK)である。この総説では,著者等がおこなってきたBDK に関する酵素化学的研究,および種々の生理状態におけるBDK によるBCKDC 活性調節に関する研究を中心に紹介し,BCAA代謝調節機構を解説する。