著者
岩鶴 早苗 池田 敬子 板谷 裕美 服部 園美 日下 裕子 上田 恵
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
和歌山県立医科大学看護短期大学部紀要 (ISSN:13439243)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-70, 2002

本研究の目的は炭酸ガス入り足浴(;炭酸ガス浴)の有用性の検討である。健康な女性16人(平均年齢19.6±0.7歳,平均身長160.2±5.0cm,平均体重52.4±5.8kg)を対象とし炭酸ガス浴と従来の足浴(;混浴)を実施した。測定内容は生理的指標として,皮膚血流量,体温(中枢温・末梢温・・腋窩温),脈拍,血圧であり,主観的指標として炭酸ガス浴と温浴を比較した被験者の感想である。生理的指標は足浴前,足浴直後,15分後,30分後,1時間後,2時間後に測定した。データの分析はpaired-t検定を行った。その結果,炭酸ガス浴後の皮膚血流量において,温浴と比較して有意に上昇していた(p<0.01〜O.05)。体温,脈拍,血圧では有意な差はみとめなかった。被験者の感想では,炭酸ガス浴の満足度は非常に高かった。以上のことから,炭酸ガス浴は皮膚血流量増加による保温効果や心地よさのレベルを高めることが明らかとなった。
著者
日下 裕子 中村 康香 跡上 富美 吉沢 豊予子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-13, 2015 (Released:2016-11-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

要 旨目的:続発性リンパ浮腫は,リンパ節郭清を伴う婦人科がん手術によって引き起こされる後遺症であり,これを予防する予防教育が注目されている.本研究は予防教育で,リンパ浮腫の発症を予防するには生涯を通じてセルフケア継続が必要と説明されたとき,どのような思いを抱くのかを明らかにする.方法:婦人科がん手術後に実施するリンパ浮腫予防教室受講後に同意を得られた研究協力者に半構造化面接法を行い,質的帰納的に分析を行った.結果:研究協力者は30歳代から60歳代の女性15名であった.面接内容から,最終的に【終わりのないセルフケアは重荷】【セルフケアと継続性の不確かさ】【セルフケアは必要と自分に言い聞かす】【具体的にやらなきゃいけないセルフケア】という4つのカテゴリを抽出した.考察および結論:【終わりのないセルフケアは重荷】【セルフケアと継続性の不確かさ】の2つのカテゴリは自覚症状がないままに続くケアの重荷という予後の不確かさと確証のないケアと自身の継続性につながる医療の不確かさという認知であった.これらの不確かさの評価が【セルフケアは必要と自分に言い聞かす】【具体的にやらなきゃいけないセルフケア】というこれから行う具体的なセルフケアへと思考を発展させていく思いとなっていた.このことは,医療者がリンパ浮腫未発症者のセルフケアへの思考の喚起と実践につながる支援法の開発を示唆するものである.
著者
日下 裕弘
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
no.3, pp.27-36, 1995

本研究は、歴史を通じてわが国の代表的な余暇文化のひとつである湯浴の意味と、その文化的特性を明らかにすることを目的としている。<br>今日の「湯浴」の起源は、古代人の神聖な精神的風土としての「禊の精神」に根ざしており、「再生」という根源的意味を担っていた。わが国における湯浴の歴史は、このような神霊やどる古代の「ゆ」(斎川水)から、仏教による施浴、上流階層の御殿湯、および江戸庶民の「浮世風呂」等々を経て、現代の温泉や「お風呂」に至るまで、「聖」→「俗」→「遊」の発展過程を示すと同時に、そこには湯浴文化の階層下降現象が見られた。<br>世界中いたるところで見られる蒸風呂と湯風呂は、日本では江戸期に融合して「風呂」と称されるようになったが、日本人独特の風呂趣味は、温泉に恵まれた湿潤で寒暑の変化の激しい風土と、古代日本人の世界観、そして道教や仏教などの思想とによって醸成された「自然遊」(あるがままの自然に遊ぶこと) 感覚によって特徴づけられる。それらの契機は、長い歴史を経て融合し、世俗化・卑俗化すると同時に、身体化、即ち、無意識のレベルにおける「かくれた形」として定着し、湯浴を日常のあたりまえの習慣につくりあげた。即ち、世俗化したわが国の「湯浴」(あの世とこの世の中間に遊び、ふわっとなる、「自然になる」という感覚様式) 文化の基底には、「人間と自然の帰一」という文化原理 (エイドス) と「いのちの再生」という価値原理 (エトス) がある、ということができる。
著者
山本 浩之 緒方 辰男 日下 裕 蓮井 昭則 佐々木 康
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.718-731, 2008

計画された長大切土のり面の中央部に三成分(X, Y, Z 方向)地中変位測定孔を埋設し,掘削期間中の三成分の地山挙動を計測した.その結果,掘削時における鉛直変位(リバウンド)や水平変位などの変形量および収束時期の傾向,掘削除荷(土被り荷重が減少)することにより鉛直ひずみが非線形で増加する傾向が捉えられた.そして,掘削による除荷の大きさと鉛直変位から見掛けの弾性係数を整理するとともに,掘削前に実施した孔内載荷試験の除荷過程の応力−変位曲線から得られる除荷重と弾性係数との関係を比較した.さらに,切土のり面の変形挙動の予測手法として,掘削前の孔内載荷試験に基づく解析モデルの構築方法,また掘削時の管理基準値設定方法の考え方について提案した.
著者
日下 裕弘 海老原 宏美
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.9-21, 2004-10-30

An attempt was made to consider the mind moments of play world in a case of "making Shinning Mud-Dumpling", from the view point of mind and body theory of Ichikawa Hiroshi in the main. The following conclusions were obtained: 1) In the mind of play world, there were such moments as; (1) drift away from routine to freedom=being absorbed=unification with play object, (2) change in quality of the object, (3) change in relatinship with the object, (4) double existences of the subject, (5) creation of the original play world, and (6) formation of new self-identity. These moments have relations with each other, and existed simultaneously and progressively. 2) Those movements had not been created until through the body of play subject, especially through the "functions of Implexes" as latent possibilities like the five senses and the body senses of underconsciousness.
著者
日下 裕弘
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、自然の中で仲間と思いっきり楽しく遊び、活動する諸実践の分析を通じて、「フロー」状態にある子どもが、「他者」(自然、仲間、規範など)を、自らの身体に練り込む過程を、主として、市川の現象学的身体論やワロンの情動論の視角から明らかにした。茨城県で実施されている自然遊び・体験学習には様々なものがあったが、本研究では特に比較的長期の「夏の自然遊び合宿」(4泊5日)と「山中友子隊体験村」(29泊30日)に焦点をあて、分析・考察を深めた。前者については、「光るどろだんごづくり」を事例に、子どもたちが自然を身体に練り込む過程を、遊戯世界を構成する6つの契機((1)自由への離脱・没入・一体化、(2)どろだんごの変身、(3)遊び手とどろだんごの関係の深まり、(4)遊び手の二重存在、(5)独自の遊戯世界の生成、(6)遊び手のアイデンティティの確認)に分け、これらの「こころの契機」が、実は、意識下の身体のはたらき(例えば、体感、身体感覚、錯綜、受動的統合など)を基盤とし、それらに結びついてはじめて成立することを明らかにした。後者については、自然の中での1か月にわたる長期の体験学習が、喜怒哀楽をすべて含めた、深い「情動の体験」であること、また、子どもたちが「がんばり」と「協力・励まし合い」の体験を通じて、自らの身体に練り込んだ「他者」(他人、自然、仲間、リーダー、規範など)が、意識下の深い層に烙印され、意識下の他の「引き出し」と様々なかたちで錯綜しつつ、変質し、やがて、チャンネルとモードの切り替えによって、有意味な顕在的行動となって現れることを、「体験・追跡調査」によって明らかにした。
著者
丸山 富雄 市毛 哲夫 日下 裕弘 ICHIGE Tetsuo
出版者
仙台大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、わが国ではこれまで本格的な研究がなされてこなかった「スポーツと社会階層」の問題をとり上げ、統計的調査によって、一般成人の直接的・間接的なスポーツ参与と社会階層との関係を明らかにしようとしたものである。調査データは人口規模及び産業構造を参考に、東北地方を代表すると思われる宮城県内4市の選挙人名簿より郵送法によって得られた881(回収率35.4%)のサンプルを用いた。職業威信、学歴、所得、及び生活様式の社会的地位変数をクラスター分析した結果、調査対象者は上層及び下層と4つの様々なパターンをもつ中層の階層クラスターに分類できた。1.多様な運動やスポーツ活動のなかで、男性の手軽な体操や球技、ならびに女性のダンス系の運動では階層的な相違はあまりみられなかった。2.しかし、その他の運動やスポーツ、特に施設を利用する運動や野外スポーツ、競技的なスポーツの場合、階層による参与の違いは明らかであった。社会の上層及び将来上層に達するとみられる人々の参与率は高く、下層の成員は極端に低いという結果が得られた。3.また、間接的なスポーツ参与に関しては、一般的なスポーツ・ニュースやプロ野球では社会的な地位や社会階層による差はあまりなく、これらのスポーツ施設に関してはスポーツの大衆化を指摘しうると思われる。4.しかし、大相撲やゴルフ、プロレスのテレビ視聴では、一般に大相撲は高齢者、ゴルフは上層、プロレスは下層の人々がよくそのテレビを見るという傾向がみられ、これら種目の間接的参与と年齢や社会階層との関連性を指摘できた。