著者
金子 真人 宇野 彰 春原 則子
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

新1年生203名と通級指導学級に通う児童19名(ADHD児5名、視覚認知困難児10名、その他4名)にDCD課題と他の認知機能に関わるスクリーニング検査を実施し、DCDの併存特性を検討した。その結果、DCD課題は単純な運動に限定した上肢道具なし課題にて相関が高く、特にグーパーによる上肢交互運動が相応しかった。また、発達障害疑い児の中で、複数の発達障害を併存する児がDCDを呈する児の検出確率は、92.1%を呈した。
著者
宇野 彰 新家 尚子 春原 則子 金子 真人
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 = The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.185-189, 2005-07-20
参考文献数
15
被引用文献数
13 22

レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM) を小児用知能検査として活用することを目的として検討を行った.対象は東京近郊40万人都市における, 2つの公立小学校の2年生から6年生の通常学級の児童, 合計644名である.その結果, 2年生の平均点は29.5点, 1標準偏差は5.6であった.学年が上がるにつれ平均点は上昇し, 6年生では平均点33.0点, 1標準偏差は3.8であった.クロンバックのα係数やWISC-IIIとの相関係数から, 小児においても信頼性や妥当性の高い検査であることがわかった.以上の結果から, RCPMは小児の知能検査として有用であると思われた.
著者
唐澤 健太 春原 則子 森田 秋子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.242-249, 2015-06-30 (Released:2016-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

仮名一文字や仮名単語の音読は比較的良好だが, 仮名非語の音読に著明な障害を示す音韻失読の 1 例を経験した。単語音読では同音擬似語効果を認め,転置非語において語彙化錯読を多く認めた。音韻操作課題ではすべての検査において成績の低下を認め, 特に単語の逆唱のような音韻操作に負荷がかかる課題で誤りが多くみられた。また, 単純動作を指示された通りに素早く繰り返す課題では, 異なる順序に誤る傾向を認めた。訓練として, 文字を使用しない音韻操作課題と順序情報処理課題を約 3 週間実施した。 その結果, この間音読訓練はまったく実施しなかったにもかかわらず非同音非語の音読が有意に改善し, 音韻操作課題,順序情報処理課題ともに成績が向上した。本例における非語音読の改善は, 音韻操作と順序情報処理のいずれか, あるいは双方へのアプローチによる可能性が大きいと考えられた。
著者
猪俣 朋恵 宇野 彰 酒井 厚 春原 則子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.208-216, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
30
被引用文献数
8 12

年長児の読み書き習得に関わる認知能力と家庭内の読み書きに関連した環境要因を検討した.年長児243名に対し,ひらがな1から3文字の音読と書取,音韻認識課題(単語逆唱,非語復唱),RAN課題,図形の模写と記憶課題,語彙課題を実施した.保護者には,家庭内で子どもが読書活動に従事する頻度,および家庭内で子どもに文字の読み書きを教える頻度について聴取した.重回帰分析の結果,RAN,単語逆唱,非語復唱の成績は音読成績を有意に予測したものの,環境要因に関する尺度は,音読成績に有意な貢献を示さなかった.書取については,RAN,単語逆唱,非語復唱,図形模写の成績,および家庭での書き指導頻度が有意な予測変数であった.年長児におけるひらがなの読み書き習得には,これまでに報告されている認知能力の貢献度が高い一方,書字の習得においては,家庭での文字指導頻度も関与している可能性が示唆された.
著者
宇野 彰 新家 尚子 春原 則子 金子 真人
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.185-189, 2005-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
15
被引用文献数
29 22

レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM) を小児用知能検査として活用することを目的として検討を行った.対象は東京近郊40万人都市における, 2つの公立小学校の2年生から6年生の通常学級の児童, 合計644名である.その結果, 2年生の平均点は29.5点, 1標準偏差は5.6であった.学年が上がるにつれ平均点は上昇し, 6年生では平均点33.0点, 1標準偏差は3.8であった.クロンバックのα係数やWISC-IIIとの相関係数から, 小児においても信頼性や妥当性の高い検査であることがわかった.以上の結果から, RCPMは小児の知能検査として有用であると思われた.
著者
春原 則子 宇野 彰 金子 真人 加我 牧子 松田 博史
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.122-129, 2002 (Released:2006-04-24)
参考文献数
14

言語性の意味理解力障害を認める小児の臨床像について検討した。言語性意味理解力障害が疑われた15名を対象に,各種神経心理学的検査とSPECTによる局所脳血流量の測定を行った。その結果,神経心理学的検査では言語性の課題において同年齢の健常児に比して低得点であった。また,非言語性の意味理解は可能であったが,言語性の意味理解力に障害を認めた。意味理解力障害は聴覚的過程,視覚的過程のいずれにも生じていた。復唱や音読といった音韻処理課題は良好であっても意味理解力が低下していたことから,音韻処理能力と意味処理能力に乖離があると考えられた。   各症例に共通した局所脳血流量の低下部位は左大脳半球側頭葉だった。左側頭葉損傷による成人失語症例においても言語性の意味理解力障害が生じることが知られており,後天性の損傷例の病巣と類似した部位の機能低下によって言語性の意味理解力障害が出現していることが示唆された。
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 加我 牧子 松田 博史
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.388-392, 1999-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

特異的言語機能障害 (SLI: specific language impairment) 児の言語的発達と非言語的発達について認知神経心理学的な障害構造から検討した.その結果, SLI児では音読や復唱は可能であるが意味を理解することが困難であることから意味理解障害が中心症状と考えられた.SLI児は言語に関する意味理解力は障害されている一方で, 非言語的意味理解力は正常に発達していると思われた.同じ先天的障害例である, 非言語的能力も障害されている特異的漢字書字障害児と対称的であった.以上から, 言語的能力と非言語的能力は共通に発達していくだけでなく, 意味能力に関しては独立して発達していることが示唆された.
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 片野 晶子 狐塚 順子 後藤 多可志 蔦森 英史 三盃 亜美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-251, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 発達性ディスレクシア (DD) と後天性の大脳損傷によって生じる失読失書例との共通点と相違点について要素的認知機能の発達や局在化に関して検討することである. DD群は10名の右手利き例である. 失読失書例は右利きの男児2名である. 失読失書症例KYは8歳にてモヤモヤ病術後, 脳梗塞にて軽度失語症を発症し, その後軽微な失語症とともに失読, 失書症状が認められた発症半年後から追跡している症例である. 症例MSは, 8歳時の脳梗塞により健忘失語が観察された10年以上追跡してきている現在21歳の症例である. いずれも, 失語症状は軽微で失読失書症状が中心となる症状であった. SLTAではDD群, 失読失書例ともに読み書きに関連する項目以外は定型発達児群と差がなく音声言語にかかわる項目は正常域であった. DD群における局所血流低下部位は左下頭頂小葉を含む, 側頭頭頂葉結合領域であった. また, 機能的MRIを用いた実験により, 左下頭頂小葉にある縁上回の賦活量に関して典型発達群と比較して異なる部位であった. 一方, 失読失書2例における共通の大脳の損傷部位は左下頭頂小葉であった. DD群ではROCFT (Rey-Osterrieth Complex Figure Test) において遅延再生得点が平均の-1SDよりも得点が少なかったが, 失読失書2例においてはともに得点低下はなかった. 一方, 発達性ディスレクシアと後天性失読の大脳機能低下部位は類似していたが, 非言語的図形の処理能力は, 発達性ディスレクシア群で低く, 後天性失読例では保たれていた. 後天性言語的図形である文字と非言語的図形の処理は, 少なくとも8歳までの発達途上で機能が分離されてきているように思われた.
著者
宇野 彰 加我 牧子 稲垣 真澄 金子 真人 春原 則子 松田 博史
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.418-423, 1996-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
5
被引用文献数
9

漢字書字に特異的な障害を示す学習障害児としては2例目の報告である. 本男児は13歳でWISC-RにてVIQ 1o1, PIQ84と全般的な知能は正常であったが漢字書字は小学校1, 2年生レベルの単語の約20%しか書けなかった. 認知心理学的には既報告例とは異なり視覚的認知機能の異常を認めた. 電気生理学的には視覚性事象関連電位の異常も伴った.本症例は漢字や図形の弁別は可能で再生が困難であったことや漢字音読が可能であったことから, 視覚的認知障害に形態想起障害が加わった可能性が高いと思われた.
著者
春原 則子 宇野 彰
出版者
目白大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

日本で初めて、発達性dyslexia(DD)のある成人例を評価するための検査法と基準値を作成した。日本語話者のDD成人例では既報告の小児例と同様、音韻情報処理や視覚認知、自動化の問題が背景にあることが示唆された。また,聞き取り調査の結果、日本でのDD例の社会参加における困難さが示された。英語で初めてDDとの診断評価を受けた日本人留学生を調査したところ、6名中2名では日本語でもDDの症状がみられ日本におけるDD検出の不十分さが伺われた。英国ではDDに特化した小中学校があり大学における支援も充実しているなど、日本でのDDに対する支援への示唆が得られた。
著者
春原 則子 宇野 彰 朝日 美奈子 金子 真人 粟屋 徳子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.263-270, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
21
被引用文献数
11 7

近年発達性dyslexiaにおいて注目されている音読の流暢性に関して, 音読所要時間を評価尺度として, 872名の小学1年から6年生の典型発達児を対象に, その発達と背景にある認知機能を検討した. 刺激として, ひらがな, カタカナの単語と非語, および文章を使用した. 単語の音読速度は小学3年生までに急速に発達し, その後も緩やかに発達すること, 非語と文章の音読速度は高学年になっても発達する可能性のあることが示された. 日常生活上の必要性を鑑みて, 音読速度も文章での評価が重要と考えられた. 重回帰分析の結果, 音読速度に影響する要因として自動化能力と音韻認識力が示されたが, それぞれの寄与率は学年によって変化し, 単語の音読速度に対する音韻情報処理能力の影響は学年が上がるにつれて小さくなり, 自動化能力の影響が大きくなった. また, 単語と文章については語彙力の寄与も示唆された.
著者
明石 法子 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 Taeko N. Wydell 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-7, 2013 (Released:2013-04-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

発達性読み書き障害児における漢字単語音読の特徴を明らかにすることを目的とし,小学校2年生から6年生の発達性読み書き障害児37名と典型発達児991名を対象に,「小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)」漢字単語音読課題における誤反応の分析および単語属性効果の検討を行った.誤反応分析の結果,発達性読み書き障害児は典型発達児に比べ,課題語を他の実在語に読み誤る語性錯読および無回答が多く,文字と音の対応は正しいが語単位では誤っている読み方である類音性錯読の出現率が低いという特徴が認められた.単語属性効果に関しては,親密度の高低にかかわらず,心像性の低い語,すなわちイメージが思い浮かべにくい語で誤りやすいことが明らかになった.こうした特徴には,音韻情報処理過程と視覚情報処理過程双方の障害という発達性読み書き障害児の認知能力が背景となっている可能性があり,診断の補助的指標や有効な学習法の開発に役立つと考えられた.