著者
川島 亜紀子 眞榮城 和美 菅原 ますみ 酒井 厚 伊藤 教子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.353-363, 2008-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
5 8

本研究は, 青年期の子どもがいる家族を対象に, 両親の夫婦間葛藤が子どもによる両親間葛藤認知を媒介として子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。父親, 母親, および子どもを対象に, 質問紙調査を実施し, 両親回答による夫婦間葛藤の深刻さ評価と子ども回答による両親間葛藤認知, 父母への情緒的つながり, および抑うつ傾向を測定した。その結果, 男女ともに両親間葛藤が深刻なほど葛藤への巻き込まれ感が強まり, さらに両親の夫婦間葛藤に対する自己非難や恐れの認知につながっていた。男子については, こうした自己非難や恐れの認知が抑うつに関連していたが, 女子についてはこうした相関は見られなかった。一方, 両親間葛藤の深刻さは両親への情緒的つながり, 特に, 父親への情緒的つながりにより強い関連が見られた。抑うつとの関連では, 同性の親との情緒的つながりが重要であることが明らかになった。母親による夫婦間葛藤認知は子どもの葛藤認知に有意に関連していたが, 父親のそれは有意ではなく, いずれも子どもの抑うつ傾向とは直接関連しなかった。
著者
酒井 厚 菅原 ますみ 眞榮城 和美 菅原 健介 北村 俊則
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.12-22, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42
被引用文献数
9 9

本研究では, 中学生の学校適応の諸側面について, 親および親友との信頼関係との関連から検討した。学校適応は, 教室にいるときの気分 (反抗的・不安・リラックス) と学校での不適応傾向 (孤立傾向・反社会的傾向) について測定した。縦断研究に登録されている中学生270名 (13.7歳) とその両親 (母279名; 父241名) を対象に解析を行い以下の結果を得た。1) 親子相互の信頼感において, 子どもの学校適応に影響を与えているのは子が親に抱く信頼感の方であり, 親が子に抱く信頼感は関連が認められなかった。また, 子が親に抱く信頼感に関しては, 母親に対するものばかりではなく父親に対する信頼感も学校適応に重要な役割を担うことが示唆された。2) 親子間相互の信頼感得点の高低から分類した親子の信頼関係タイプによる結果では, 総じて親子相互信頼群の子どもの学校適応がほぼ良好であるのに対し, 親子相互不信群の子どもは学校に不適応な傾向が示された。3) 親友との信頼関係が学校適応に与える影響に関しては, 学校で不適応な傾向にある親子相互不信群において特徴が見られ,「孤立傾向」や「リラックスした気分」の変数では学校への適応を良くする防御要因として働く一方で,「反社会的傾向」の得点はより高めてしまうという促進要因ともなりうることが示された。
著者
梅崎 高行 酒井 厚 眞榮城 和美 前川 浩子 則定 百合子
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2023-2109, (Released:2023-08-29)
参考文献数
47

The purpose of this study was to longitudinally examine the effects of parent and peer motivational climate on sport autonomy motivation in early adolescent athletes. We hypothesized that parents’ performance-oriented motivational climate would negatively affect player autonomy, but peers’ mastery-oriented motivational climate would moderate negative effects on player autonomy. Participants were 74 soccer players (66 male, 8 female) who completed the study at two time points separated by one year, with a mean age of 11.04 years (SD=0.71 years) at the first time point. At Time 1, a self-report questionnaire measured soccer competence (The Basic Needs Satisfaction in Sport Scale; BNSSS) as a control variable and parent-initiated motivational climate (Parent-Initiated Motivational Climate Questionnaire 2; PIMCQ-2) and peer motivational climate (Peer Motivational Climate in Youth Sport Questionnaire; PeerMCYSQ) as explanatory variables. At Time 2, the level of motivational autonomy (revised Sport Motivation Scale; SMS-II) was measured as an objective variable. After calculating correlations to confirm the relationships between the variables, a hierarchical multiple regression analysis was conducted, including an interaction term between parent and peer motivational climate. Results indicated that an anxiety-promoting parental motivational climate predicted low player autonomy under different peer motivational climates and did not support the hypothesis that a masteryoriented peer motivational climate moderate negative parental influences. We discussed the importance of a mastery-oriented parental motivational climate in supporting player autonomy motivation during the developmental transition from childhood to adolescence.
著者
山形 伸二 菅原 ますみ 酒井 厚 眞榮城 和美 松浦 素子 木島 伸彦 菅原 健介 詫摩 武俊 天羽 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.103-119, 2006-08-30
被引用文献数
6

本研究は,人間行動遺伝学と双生児研究の方法,とりわけ多変量遺伝分析について紹介し,その適用例として4-6歳児の気質と問題行動の関連性を検討した。双生児の母親142名に対し質問紙調査を行い,子どものエフォートフル・コントロール(EC)および外在化問題,内在化問題についての評定を得た。表現型の相関を検討した結果,外在化問題と内在化問題は中程度の正の相関を示し(r=.55),またECは外在化(r=-.42),内在化(r=-.18)のいずれの問題行動とも負の相関を示した。多変量遺伝分析の結果,ECを低めるような遺伝的影響は同時に両方の問題行動のリスクを高めるような働きをすることがわかり,ECの低さが両問題行動の共通の遺伝的素因である可能性が示唆された。また,外在化問題と内在化問題の相関関係には遺伝(22.8%),共有環境(53.4%),非共有環境(23.8%)のいずれもが寄与していた。問題行動間の相関関係への遺伝要因の寄与は相対的に小さかったが,これはECに関わる遺伝要因が両問題行動を正に相関させるように働くのに対し,ECとは関連しない遺伝要因が両問題行動を負に相関させるように働くため,互いに相殺しあった結果である可能性が示唆された。
著者
酒井 厚
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.63-80, 2022-03-30 (Released:2022-11-11)
参考文献数
126

2020年7月から2021年6月までの1年間に,日本人研究者が発表したパーソナリティに関する研究の概観を通して,わが国のパーソナリティに関する研究の動向を捉え,今後の研究の在り方の展望を論じた。諸研究は,パーソナリティを総合的に捉えた観点からの研究,特定の構成概念や特性の個人差を扱った研究,社会的態度に関する研究,パーソナリティの形成・発達と適応に関する研究の4つの枠組みから整理された。それぞれの研究動向と展望については,メタ分析や大規模データの二次利用からの特性理解の進展とさらなる展開への期待,多様な構成概念や特性を多角的な視点から検討する研究の蓄積とそれらを統合することの必要性,様々な社会的問題に対する態度を扱った研究の重要性,社会的適応や精神的健康に関して今後の発展が予想される研究テーマの萌芽としてまとめられた。
著者
山形 伸二 菅原 ますみ 酒井 厚 眞榮城 和美 松浦 素子 木島 伸彦 菅原 健介 詫摩 武俊 天羽 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.103-119, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
65
被引用文献数
13 6

本研究は,人間行動遺伝学と双生児研究の方法,とりわけ多変量遺伝分析について紹介し,その適用例として4–6歳児の気質と問題行動の関連性を検討した。双生児の母親142名に対し質問紙調査を行い,子どものエフォートフル・コントロール (EC) および外在化問題,内在化問題についての評定を得た。表現型の相関を検討した結果,外在化問題と内在化問題は中程度の正の相関を示し (r=.55),またECは外在化 (r=−.42),内在化 (r=−.18) のいずれの問題行動とも負の相関を示した。多変量遺伝分析の結果,ECを低めるような遺伝的影響は同時に両方の問題行動のリスクを高めるような働きをすることがわかり,ECの低さが両問題行動の共通の遺伝的素因である可能性が示唆された。また,外在化問題と内在化問題の相関関係には遺伝 (22.8%),共有環境 (53.4%),非共有環境 (23.8%) のいずれもが寄与していた。問題行動間の相関関係への遺伝要因の寄与は相対的に小さかったが,これはECに関わる遺伝要因が両問題行動を正に相関させるように働くのに対し,ECとは関連しない遺伝要因が両問題行動を負に相関させるように働くため,互いに相殺しあった結果である可能性が示唆された。
著者
猪俣 朋恵 宇野 彰 酒井 厚 春原 則子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.208-216, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
30
被引用文献数
8 12

年長児の読み書き習得に関わる認知能力と家庭内の読み書きに関連した環境要因を検討した.年長児243名に対し,ひらがな1から3文字の音読と書取,音韻認識課題(単語逆唱,非語復唱),RAN課題,図形の模写と記憶課題,語彙課題を実施した.保護者には,家庭内で子どもが読書活動に従事する頻度,および家庭内で子どもに文字の読み書きを教える頻度について聴取した.重回帰分析の結果,RAN,単語逆唱,非語復唱の成績は音読成績を有意に予測したものの,環境要因に関する尺度は,音読成績に有意な貢献を示さなかった.書取については,RAN,単語逆唱,非語復唱,図形模写の成績,および家庭での書き指導頻度が有意な予測変数であった.年長児におけるひらがなの読み書き習得には,これまでに報告されている認知能力の貢献度が高い一方,書字の習得においては,家庭での文字指導頻度も関与している可能性が示唆された.
著者
酒井 厚 江川 伊織 菅原 ますみ 松本 聡子 相澤 仁
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17053, (Released:2018-12-25)
参考文献数
54
被引用文献数
2

This study investigated the moderating effects of children’s conflicting relationships with their best friends on how positive parent-child relationships buffer against children’s externalizing problem behaviors directly or through their self-esteem. It also examined whether this moderating effect was conditional on children’s age. Nine hundred and twenty-six elementary and junior high school students completed the questionnaire, which covered their sense of trust in parents, self-esteem, conflicting relationships with best friends, and externalizing problem behaviors. The results of a mediation analysis revealed that children’s high sense of trust in parents buffered against externalizing problem behaviors by enhancing their self-esteem. However, moderated mediation analyses indicated that children with highly conflicting relationships with their best friends reduced the buffering effects of children’s sense of trust in parents on externalizing behaviors both directly and through their self-esteem. These findings were discussed in terms of the children’s conflicting relationships with their best friends and the children’s perception of ego-threat.
著者
眞榮城 和美 菅原 ますみ 酒井 厚 菅原 健介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.182-188, 2007
被引用文献数
6

This study developed revised Japanese versions of the self perception profile for Children, for Adolescents and for College Students. The original versions have an idiosyncratic and time-consuming item format, which was revised by using only one statement for each item. Subjects were fifth to sixth grade students (Boys=129, Girls=152), tenth to twelfth grade students (Boys=112, Girls=100), and college students (Boys=96, Girls=153) in Japan. The reliability and validity measures showed that the revised versions were similar to the original versions. The present study provides some evidence for the use of these scales with Japanese students.
著者
酒井 厚 中山 紫帆 深澤 祐介 熊谷 好恵 菅原 ますみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.505-517, 2016
被引用文献数
4

本研究は, 学校が家庭や地域との連携の核を担うアンカーポイント役割(小泉, 2002)の観点から, 小学校教員が子どもに他者と関わる機会を提供するためにその役割を担うことをアンカーポイント活動と定義し, 測定尺度の開発に基づく構造の確認と関連要因について検討することを目的とした。236名の小学校教員に対して, アンカーポイント活動への積極性, 保護者や地域に抱く信頼感, 勤務校が出身地かどうかなどの項目を含む自記入式の質問紙調査を実施した。教員のアンカーポイント活動への積極性尺度を作成し探索的および確認的因子分析を行ったところ, 「子どもの仲間づくり活動」, 「子どもと地域をつなげる活動」, 「子どもの暮らし・安全を支える活動」の3因子が抽出された。つぎに, 階層的重回帰分析を用いて, アンカーポイント活動への積極性の因子ごとに関連要因を検討した。その結果, 教員が保護者や地域住民に抱く信頼感の高さが, 各活動への積極性の高さを有意に予測しており, 両者間の関連性は, 教員の年齢や教員の勤務地が出身地かどうかによって調整されていた。例えば, 勤務地が出身地の場合に, 教員が地域に抱く信頼感の高さがアンカーポイント活動への積極性の高さをより予測しており, これらの結果から教員のアンカーポイント活動への積極性が高められる状況について議論された。