- 著者
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木村 妙子
関口 秀夫
- 出版者
- The Malacological Society of Japan
- 雑誌
- 貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.307-318, 1994-12-31 (Released:2018-01-31)
ホトトギスガイMusculista senhousiaとコウロエンカワヒバリガイLimnoperna fortunei kikuchiiは, 静岡県西部に位置する浜名湖の奥部の潮間帯に優占するイガイ類である。筆者らはこれらの幼生を室内飼育し, 得られた試料をもとに2種のD型幼生から初期稚貝までの外部形態および交装を比較した。試料はSEMと光学顕微鏡を用いて観察した。その結果, D型幼生, 殻頂期幼生および初期稚貝のすべての成長段階で2種の間には, 形態に相違が認められた。D型幼生ではコウロエンカワヒバリガイの方がホトトギスガイよりも殻長が大きい傾向があったが, 計測値は重複しているので, D型幼生の種を殻長のみから同定することは困難である。しかし, D型幼生の交歯は, ホトトギスガイが14-15個であるのに対し, コウロエンカワヒバリガイでは9-11個と差異がみられた。殻頂期幼生では, ホトトギスガイの中央の交歯は小さくなり, 第1靱帯が交歯中央やや後方に形成される。殻の輪郭は卵型で, 殻頂は中央に位置する。これに対し, コウロエンカワヒバリガイでは, 殻頂期幼生の交歯は同大であり, 第1靱帯は交歯後端に形成される。殻の輪郭はほぼ三角形で, 殻頂は前方に偏る。初期稚貝では, ホトトギスガイは3種類の側歯を持つのに対し, コウロエンカワヒバリガイは側歯類を欠く。殻頂の位置は, コウロエンカワヒバリガイの方がホトトギスガイよりも前方に偏る。