著者
宮本 崇 本田 利器
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.3_41-3_52, 2016 (Released:2016-03-10)
参考文献数
10

著者らは耐震設計用地震動として地震動の集合を代表する波形を用いる手法について検討をしているが、性質の大きく異なる波形を代表する波形を設定することは合理的ではない。この問題を回避するには、類似した地震動波形に分類することが考えられる。本研究では、地震動の性質の非類似度を構造物の非線形応答値に基づいて定量化し、地震動波形の集合をクラスター化する著者らの既開発の手法について、基礎的な有効性の検証を目的とした数値解析を実施する。構造モデルを線形系として提案手法を適用した場合、応答スペクトル形状の異なる地震動波形の集合を提案手法によって適切に分類できることを示した。また、構造モデルを非線形系とした場合は、スペクトル形状とは異なるクラスターが形成されるということも明らかになった。
著者
野津 厚 室野 剛隆 本山 紘希 本田 利器
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_448-I_458, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

危機耐性に関する今後の議論の活性化に資する目的で,鉄道・港湾分野における設計指針の動向を概観するとともに,東日本大震災前後を問わず,危機耐性への配慮と見なすことのできる事例をとりあげ整理した.鉄道の分野では,車両逸脱防止装置,自重補償機構などのdeviceの開発・改良が進められている.一方,港湾の分野では,津波に対する「粘り強い構造」の開発が重要な課題となっている.危機耐性を考慮した設計においては,狭義の設計における想定を越える外力が作用した場合の構造物・システムの応答に対する深い理解が重要であると考えられる.また,鉄道分野・港湾分野に共通する今後の課題として,耐震の観点からの路線計画や港湾計画の重要性が挙げられる.
著者
本田 利器
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1078-I_1086, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
32
被引用文献数
2

耐震設計での想定を越える状況における性能を考える「危機耐性」という概念が議論されるようになっているが,定義が曖昧な面もある.危機耐性を指向した設計の実装に向けては,概念を理論的に整理したうえで具体化することが求められる.本稿では,情報という観点を設けて,危機耐性を指向した設計の考え方について考察した.親和性の高いレジリエンスの研究との比較などから,コミュニティ(社会)との連携の重要性等を示した.また,設計手順についても述べ,ストレステストのための仮想的外力としての地震動や,コミュニティと技術者の情報共有を促す体系の重要性について考察した.共有情報のマネジメントとしてリスクガバナンスが重要であること,および,設計指針ではなく認証制度として実装することの妥当性を示した.
著者
本田 利器 高橋 良和 Pradono Mulyo Harris Kurniawan Rudi
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会 報告集
巻号頁・発行日
vol.28, pp.216, 2005

2004年スマトラ沖大地震の際のバンダアチェにおける地震動の強さや, 地震動による被害の分布等を推定する基礎資料を得るため, アンケートによる震度評価を行い, 地震動強度の評価を試みた. 市内の幹線通り沿いや, 津波により甚大な被害を受けた海岸部では, 震度は5強~6弱程度であり, これらの地区でも, グランドモスク周辺と同等の地震動及び同程度の地震動被害が生じていたと考えられるという結果を得た.
著者
藤野 陽三 長山 智則 本田 利器
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、社会基盤施設に関わる災害事故の未然防止、保全の効率化のためには振動モニタリング法が有効であることを,いくつかの実構造物におけるモニタリングデータの分析例から具体的に明らかにした.また,「想定外」事態の未然検出に対しても、その有効性を示すとともに,社会基盤施設の終局性能の推定の立場からモニタリングデータからのモデル化を具体的な例を通じて示した.なお,ワイヤレスセンサーによるマルチホップデータ通信などのミドルウェア技術や損傷検出技術についても高い成果を挙げた.
著者
佐藤 忠信 小長井 一男 堀 宗郎 澤田 純男 本田 利器 盛川 仁 張 至鎬 濱田 政則
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、エジプト側研究協力者が主体となりナイルデルタを取り巻く地震活動資料の収集を行った。また、過去に発生しカイロ市に被害を及ぼした地震の断層破壊過程を明確にするとともに、将来発生する地震のシナリオを作成した。日本側研究分担者はエジプト側研究者の協力の下にカイロ市を取り巻く地域の詳細な地盤調査の資料収集を行った。収集した資料の内容は以下のようである。1.ボーリング調査(PS検層、サンプリングを含む)と室内試験2.微動調査および屈折法探査(板叩き)による地盤構造調査3.重力異常による深層地盤調査4.RI(ラジオ・アイソトープ)コーン貫入試験による浅層地盤物性調査さらに、得られた資料からカイロを含むナイルデルタ地帯の地盤構造をモデル化するとともに、エジプト側の研究協力者と共同して、ナイルデルタ地帯の地震危険度マップを作成した。特に、今年度は最終年度であるので、平成18年9月にエジプト国立天文台・地球物理学研究所を研究分担者全員と研究協力者1名の合計6名で訪問し、研究の途中経過発表会をエジプトで開催するとともに微動観測点の選定を行なった。また、カイロ内の特定構造物の耐震性能を評価するために用いる動的解析用の入力地震動のシミュレーション方について議論した。特定地点を選定し微小地震の観測を継続するためのプロジェクトを立ち上げた。そのために必要な予算措置をエジプト国家地震局に申請すると共に、エジプト国立天文・地球物理学研究所の地震観測網を利用してナイルデルタにおける微小地震活動を評価した。