著者
関 雅樹 小長井 一男 村松 浩成 渡邊 康人 可知 隆 古関 潤一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-18, 2013 (Released:2013-02-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究は,2004年10月の新潟県中越地震による上越新幹線の脱線事象を踏まえ,大規模地震発生時においても,列車の走行安全性を確保する対策工の具体化をテーマとしている.東海道新幹線では,長期不通防止を目的とした土木構造物の耐震補強は概ね完了する段階となったが,本研究の成果を踏まえた新たな地震対策として,地震時の土木構造物の変位を抑制したうえで,列車の脱線と逸脱による被害拡大の双方を極力防止する二重系の脱線・逸脱防止対策を実施している.ここでは,対策の核となる脱線防止ガードについて,a)耐震性能の評価,b)要求性能を満たす具体的な設計仕様,c)現行の鉄道システムへの適合の3点に関する評価手法と検討結果を示す.本研究の成果は,鉄道システム全体のさらなる安全性の向上に寄与するものである.
著者
京川 裕之 清田 隆 近藤 康人 小長井 一男
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.265-273, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
21
被引用文献数
8 3

東北地方太平洋沖地震によって埋立地の大部分が液状化した千葉県浦安市において,著者らは地震発生直後から航空レーザ測量,粒度分析,SWS試験などを行い,液状化による地盤の変動を継続的にかつ定量的に把握してきた。これらの調査より,(1) 浦安市の埋立地では地盤沈下が広範囲に生じており,その沈下量の分布は家屋・ライフラインの被害と対応している。(2) 同時期の埋立地(未改良地区)で,被害程度が大きく異なる場所がある。(3) 広範囲に採取した噴砂の粒度およびSPT試料の粒度は,大量の噴砂と再液状化が確認されているニュージーランド・クライストチャーチのケースと非常に似通っている。(4) 液状化により地盤の貫入抵抗は大きく低下し,その後2ヶ月程度で強度は回復・安定するが依然として低い値を示している。本稿では以上の知見より,同地区の再液状化の可能性についても検討する。
著者
佐藤 忠信 東原 紘道 小長井 一男
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. A = Disaster Prevention Research Institute Annuals. A (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.A, pp.63-80, 1991-04-01

This is a survery report, in which the damage to structures done by the 1990 Philippin Earthquake and the intensity of ground shaking during the earthquake are discussed. No strong motion acceletographs were available for areas 100 to 150 kilometers from the epicenter.We therefore calculated the theoretical distribution of maximum accelerations in the region near the earthquake souce. The calculated intensty of gruond motion was compared with the estimated maximum acceleration levels from fallen religious statues in churches. The survey results on heavily damaged bridges especialy failure modes are discussed.The slope filures along the falut extent are also discussed.
著者
池田 隆明 小長井 一男 清田 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_970-I_980, 2017

2016年熊本地震では2日間に震度7の地震が2度発生するという特徴的な地震であった.地震の活動域は熊本県熊本地方から阿蘇地域,そして大分県の大分・別府地域に広範囲に拡大した.震度7の地震のうち最初のM<sub>j</sub>6.5の地震は日奈久断層,二番目のM<sub>j</sub>7.3の地震は布田川断層が起震断層と考えられ,ほぼ従来指摘されていた活断層の周辺で地表変位が確認された.震源近傍では強震動と断層変位に伴う地盤変形に起因すると考えられる構造物の被害が発生した.M<sub>j</sub>7.3の地震を対象に被害地域の強震動を再現するための震源モデルを経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリングにより構築した.
著者
片桐 俊彦 小長井 一男
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.717-722, 2011

東京メトロ株式会社の委託を受け,1976年以降東陽町並びに新木場において地震観測を実施している.これらの観測点は2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって液状化の被害が起きた東京湾岸地区の近くに位置する.また,新木場では洪積層内で地震記録が得られている.ここに東陽町並びに新木場の観測概要および地震記録について報告する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
小長井 一男 ヨハンソン ヨルゲン 田島 芳満 藤田 智弘 富安 由里子 野村 文彦 伊達 真生 片桐 俊彦
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.531-536, 2008

2008年6月14日, 岩手, 宮城県境(北緯39度01.7分, 東経140度52.8分)で発生したM7.2(気象庁暫定値)の地震では斜面災害が顕著であった.幸いにも死者を出す惨事にいたらなかった荒砥沢ダム湖北側斜面の崩壊は, その土量が7000万m<sup>3</sup>に達するとの推測もあるほど大規模なものでダム湖に津波を引き起こすなど, 当時の状況を推定しえる痕跡を随所に留めている.本報告は著者らが2008年6月15日~17日, 7月12~13日, 7月28日, 9月12日に行った現地調査の結果の一部を紹介するものである.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
小長井 一男 東畑 郁生 清田 隆 池田 隆明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

2005年10月8日パキスタン・インド国境近くのカシミール山岳地でM7.6の地震が発生した。実数は9万人を超えると推測され、この地震がパキスタン社会に与えた影響が極めて深刻であることは言うまでもない。しかし同時にこの地震は、その後長期に継続する地形変化の引き金となり、被災地の復興に様々な問題を投げかけている。本年度で実施した研究の実績は主に以下の2点に集約される。(1)Hattian Ballahに出現した巨大な崩落土塊の変形については前年度までにをモンスーンの前後で精密GPSによる計測を行って、この土砂ダムの決壊にいたる懸念があり万が一の決壊時の流出解析を行い、この結果はState Earthquake Reconstruction & Rehabilitation Agency(SERRA)やMuzaffarabad市、そしてJICAにも報告されていた。この決壊は2010年2月9日に現実のものとなり、下流部に最高17m程度の洪水が押し寄せ30余りの家屋が流された。男子1名の犠牲者が報告されたが警戒していた住民の避難があったことが犠牲者を最小限に抑えたものと思われる。決壊に至った詳細を現地計測をもとにとりまとめ現地機関に報告するとともに、International Jopurnal "Landslides"にも2編の投稿を行っている(1篇は登載決定)。(2)カシミール地方の中心都市Muzaffarabad東側に南北に走る断層背面に露出したドロマイト混じりの斜面から流出する土砂はこれまでに谷沿いの家屋の多くを1階~2階レベルまで埋め尽くしていた。今年度はパキスタンが未曾有のモンスーン豪雨被害を受け、対象地域の様相は激変した。砂防堰堤の作られた沢とそうでない沢の被害の様相は大きく異なりこのような状況を調査し更なる対応への提言としてとりまとめている。
著者
小長井 一男 有田 毅 松村 有見子
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1025-1034, 2009

2009年8月11日午前5:07に駿河湾の深さ23kmの地点(N34°47.1', E138°29.9')を震源とした地震では, 静岡県内の数市で震度6弱が報告されたにもかかわらず, 幸い軽微な被害にとどまり, 県の対策本部も地震の2日後には解散されている.しかしながら棟瓦の被害分布などを見ると, この地震が我々に, その発生が懸念されている東海地震を前に弱点箇所のあぶり出しを行う機会を与えてくれたものと見ることもできる.著者らが踏査した範囲で, 地形, 地質と被害の関連を検討する.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
佐藤 忠信 小長井 一男 堀 宗郎 澤田 純男 本田 利器 盛川 仁 張 至鎬 濱田 政則
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、エジプト側研究協力者が主体となりナイルデルタを取り巻く地震活動資料の収集を行った。また、過去に発生しカイロ市に被害を及ぼした地震の断層破壊過程を明確にするとともに、将来発生する地震のシナリオを作成した。日本側研究分担者はエジプト側研究者の協力の下にカイロ市を取り巻く地域の詳細な地盤調査の資料収集を行った。収集した資料の内容は以下のようである。1.ボーリング調査(PS検層、サンプリングを含む)と室内試験2.微動調査および屈折法探査(板叩き)による地盤構造調査3.重力異常による深層地盤調査4.RI(ラジオ・アイソトープ)コーン貫入試験による浅層地盤物性調査さらに、得られた資料からカイロを含むナイルデルタ地帯の地盤構造をモデル化するとともに、エジプト側の研究協力者と共同して、ナイルデルタ地帯の地震危険度マップを作成した。特に、今年度は最終年度であるので、平成18年9月にエジプト国立天文台・地球物理学研究所を研究分担者全員と研究協力者1名の合計6名で訪問し、研究の途中経過発表会をエジプトで開催するとともに微動観測点の選定を行なった。また、カイロ内の特定構造物の耐震性能を評価するために用いる動的解析用の入力地震動のシミュレーション方について議論した。特定地点を選定し微小地震の観測を継続するためのプロジェクトを立ち上げた。そのために必要な予算措置をエジプト国家地震局に申請すると共に、エジプト国立天文・地球物理学研究所の地震観測網を利用してナイルデルタにおける微小地震活動を評価した。