著者
内山 巌雄 吉川 敏一 高野 裕久 谷川 真理 東 賢一 村山 留美子 東 実千代 萬羽 郁子
出版者
財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

医療法人社団医聖会百万遍クリニック・シックハウス外来の化学物質過敏症患者を対象に、居住環境調査、免疫機能評価、臭い物質による嗅覚負荷評価を実施した。その結果、症例群では自然免疫系の機能が高めであるにも関わらず、Th2優位の傾向はみられなかった。居住環境調査の結果、症例群では室内空気中の化学物質濃度が抑制されており、清浄な室内環境で日常生活を行うよう心掛けていることがうかがえた。嗅覚負荷評価では、症例群は前頭前皮質において臭い刺激に対して脳の活動が活発化した。化学物質過敏症患者では、臭い刺激に対して嗅神経系が過剰に反応しやすくなっていること、免疫機能に変化がみられることなどの特徴を明らかにした。
著者
藤長 愛一郎 岸川 洋紀 村山 留美子
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.249-259, 2022-03-25 (Released:2022-04-22)
参考文献数
52

Since Coronavirus disease 2019 (COVID-19) was spread in the world, we have been compelled to do infection controls such as putting a mask on, washing hands, avoiding contact to other people, and so on. However, it is difficult to know how effective the infection controls are. Therefore, the purpose of this study is to provide the information about the evaluation of the infection controls based on infection risk. In this study, infection risk was calculated semi-quantitatively. As a result, it is numerically shown that air-mediated routes such as droplets and aerosols are important for the infection. And also, it is effective to put a mask on, take social distancing, and ventilate as infection controls. If people could understand what infection controls are effective on the infection risk, the people would continue the infection controls in order to control COVID-19.
著者
塚本 和正 町田 和彦 稲 恭宏 栗山 孝雄 鈴木 克彦 村山 留美子 西城 千夏
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.827-836, 1994-10-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
28
被引用文献数
6 9

動物の過密飼育(crowding)は,心理社会的なストレッサーとされているが,従来の方法は飼育面積を一定にし,個体数のみを変化させているため,個体数の増加と1匹あたりの占有スペースの狭少化という2つの要因が複合されたものであるといえる。そこで本研究ではケージ内の個体数とケージのサイズの両方を変化させるという方法をとり,免疫能に及ぼす影響を追求した。またケージ内の動物の構成メンバーの変化が及ぼす影響についても検討を加えた。実験1ではマウスをまずケージあたり4匹ずつに分けて14日間馴化飼育し,その後ケージあたり4匹(Control群),小スペースあたり4匹(Crowding-I群),ケージあたり16匹(Crowding-II群)の計3群に無作為に分け7日間飼育を行った。結果は以下の通りであった。(1) 体重に群間で有意差は認められなかった。(2) 総白血球数に有意差は認められなかったが,Crowding-II群にリンパ球百分率の有意な低値,そして好中球百分率および絶対数の有意な高値が認められ,ストレッサーの継続負荷による白血球構成比の変動が示唆された。(3) 好中球NBT還元能ではCrowding-II群に低値を示す傾向が観察され,細菌貪食能ではCrowding-II群に有意な低値が認められた。一方Crowding-I群では,NBT還元能,貪食能ともにCrowding-II群ほどの低下は認められなかったが,いずれもControl群とCrowding-II群の中間の値を示す傾向がみられた。これらの結果から,個体数の増加によるマウス相互間の心理社会的要因の複雑化がストレッサーとして重要な意味をもつことが示唆された。実験2ではマウスをまずケージあたり5匹ずつに分けて14日間馴化飼育し,その後ケージあたり5匹(Control群),小スペースあたり5匹(Crowding-(1)群),ケージあたり20匹(Crowding-(2)群)の3群に分けたが,Control群とCrowding-(1)群はケージ内のマウスの数と構成メンバーは馴化飼育と同一にし,ケージへの移動のみを行った。群分け後2日目に抗原としてSRBCを腹腔投与し,7日間飼育を行った。結果は以下の通りであった。(1) 体重にはいずれの時期も有意差は認められなかった。(2) 特異免疫反応として測定したPFCおよび抗SRBC抗体価は,群間に有意差は認められなかった。なおマウスの産生した抗体はIgMであると考えられた。(3) 血漿中のIgM濃度に有意差は認められなかったが,Crowding-(1)群が高値を示した。またIgG濃度では,Crowding-(1)群に有意な高値が認められた。(4) 好中球NBT還元能は,エンドトキシン刺激時では有意差は認められなかったがCrowding-(2)群が低値を示し,細菌刺激時ではCrowding-(2)群に有意な低値が認められた。また好中球の細菌貪食能においてもCrowding-(2)群に有意な低値が認められた。一方Crowding-(1)群はControl群に比べて,有意差は認められなかったがいずれも高値を示した。このように,マウスの構成メンバーを変えず飼育面積の狭少化のみを施して過密にした場合は,同様にマウスの構成メンバーを変えなかった対照群に比べ,免疫能が亢進する傾向が観察された。一方ケージ内の個体数を増やして過密にした場合は,条件設定は実験1とは異なるが,好中球機能の顕著な低下が認められた。本研究は7日間という短期間のストレス負荷の結果であり,今後より綿密な実験デザインを設定し長期間の検討を行いたいと考えている。
著者
村山 留美子 内山 巖雄 中畝 菜穂子 岸川 洋紀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

全国の成人を対象とし,一般市民のリスクや科学技術に関する認知レベルとその構造の把握のための調査を行った。その結果,1)17の項目について,それぞれの項目が持つ特徴的な認知構造について明らかにした。日常良く使用するものや科学技術では,必要性や恩恵を感じている場合,危険度の認知が低くなる傾向が示された。2)東日本大震災一年前の市民の地震へのリスク認知は非常に高かった。特に京浜,東海地域で意識が高く,一方で東北地方はやや低くなっていた。また,原子力発電所については,生活への必要性が高いと認知されている項目であった。半数以上が危険であると認知し,安全性がないとの意識を持っていたが,他の項目から相対的に見た場合,その意識はそれ程高くなかった。東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故を鑑み,大地震や原子力発電所等の電力供給源については東日本大震災以後大きく認知構造が変わる可能性があり,今後もその変動を検討する必要がある。