著者
外村 香子 藤本 雷 奥田 英右 井庭 憲人 坂本 幸子 小杉 笑 岸田 寛子 松尾 裕彰 片岡 葉子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.48-53, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
21

症例は16歳男性,高校生.昼食後の体育の授業中に突然,全身に膨疹,掻痒感,呼吸困難が出現した.昼食の食材について皮膚テスト,血清検査,誘発テストの順に原因検索をおこなった.プリックプリックテストではブラックタイガー(生及び加熱),バナメイエビ(加熱)に陽性,抗原特異的IgE(ImmunoCAP®)はすべて正常範囲であった.アスピリン内服下エビ(ブラックタイガー,加熱)摂取後運動負荷試験により強いアナフィラキシー症状を呈し,エビの食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:以下,FDEIA)と診断した.さらに抗原解析により,本症例は40kDaタンパク質が原因抗原と考えられ,それをfructose1,6-bisphosphate aldolase(以下,FBA)と同定した.エビのFDEIAの診断において,現時点では病歴の確認と生・加熱双方を用いたプリックプリックテストが有用であり,抗原特異的IgEの精度は低い.今後原因抗原を明らかにし,コンポーネントアレルゲンを用いた抗原特異的IgE検査の開発が望まれる.
著者
吉川 博 佐藤 智人 檜山 洋子 福島 隆宏 佐伯 康之 畝井 浩子 松尾 裕彰
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.691-695, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

救急・集中治療領域の患者は重症度が高く,過少投与や必要薬剤の不使用など,薬物治療効果が適正に得られない状態は不利益となる可能性がある。そのため薬物治療効果を最大限に得るための適正使用(以下,適正使用)は重要である。本調査は2016年1月〜2017年12月にICU,高度救命救急センター,HCUでの薬剤師による適正使用介入事例を調査した。 対象期間での適正使用介入事例は227件。薬剤の種別として抗微生物薬が117件(51%),抗凝固薬23件(10%),消化器系薬14件(6%),循環器系薬11件(5%)であった。介入の種類として投与量の増量が105件(46%),薬剤追加が59件(26%),投与方法変更が30件(13%),薬剤変更が20 件(9%)であった。薬剤師は適正使用において,とくに抗微生物薬の増量,排便・血糖コントロールやDVT などの予防薬剤の追加について貢献していると考えられた。
著者
松尾 裕一 坂下 雅秀 末松 和代 染谷 和広 高木 亮冶 土屋 雅子 藤岡 晃 藤田 直行
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-210, 2010-10

本報告は,旧航空宇宙技術研究所において2002 年10 月に導入され,宇宙航空研究開発機構(JAXA)に統合された以降もJAXA スーパーコンピュータシステムの一部として2008 年10 月まで稼動したスーパーコンピュータシステム「数値シミュレータIII」に関して述べる.まず,調達から設置・運用までの経緯を俯瞰し,システム概要・特徴を明確化することにより,今回の導入において成功した点,あるいは注意点・課題を洗い出す.次に,性能評価データや運用統計データを用いて,技術的に実際にできたこと・できなかったことや,運用によって得られたものを明らかにするとともに技術課題や運用上の課題を分析する.特に,SMP クラスタという中核計算機の構成上の特徴から来るJAXA アプリケーションのハイブリッド並列における特性や性能推定法について言及する.これらの材料をもとに,航空宇宙分野におけるスーパーコンピューティングの重点技術やスーパーコンピュータシステムのあり方を考察するともに,設備運用のノウハウや勘所(=暗黙知)を抽出・可視化し,次世代実務者の礎とする.
著者
松島 葵 冨田 隆志 鴫田 江理嘉 吉川 博 柳田 徳栄 髙松 花絵 松尾 裕彰
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.206-210, 2023-02-28 (Released:2023-04-07)
参考文献数
9

Objective: In the instructions for package inserts (PI) of prescription drugs revised in June 2017, the section “persons with reproductive potential” was established under “precautions concerning patients with specific backgrounds.” The description rules associated with contraceptive duration were modified in these. In this study, we investigated descriptions of contraceptive duration in PI that were prepared based on the revised instructions, interview forms (IF), and other proper use materials (PM).Methods: We collected PI, IF, and PM of prescription drugs containing a new active ingredient approved from April 2017 to March 2022 for which the PI were prepared based on the revised instructions and investigated descriptions of PI, contraceptive duration, and its evidence in each information material.Results: Of the 181 drugs studied, 43.1 and 12.7% required females and males to use contraception during the period of drug consumption, respectively. Among these, the ratio of drugs that had descriptions of contraceptive duration were 15.4 and 0% for females and males at PI, respectively; 51.3 and 39.1% for female sand males at IF, respectively. Anticancer drugstended to describe contraceptive duration in the PM rather than PI or IF. For some drugs, there was no description of contraceptive duration in any of the materials. Contraceptive durations ranged from the period of administration of that drug to over a year for females and approximately one week to six months for males. The reasons for these contraceptive durations were diverse.Conclusion: Contraceptive information in the PI based on revised instructions were not sufficient for use by healthcare workers, even when the IF and PM were confirmed. These results suggest that there is a need for standardizing the descriptions, types of materials to be described, and choice of evidence for contraceptive duration.
著者
森田 久樹 水重 克文 平林 浩一 中島 茂 林 英宰 深田 英利 千田 彰一 高光 義博 松尾 裕英
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.1435-1440, 1987-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

マイコプラズマ感染により,心膜心筋炎と肺炎を合併した症例を報告する.症例は59歳,男性.主訴は発熱,筋肉痛.入院時心電図では完全房室ブロック,完全右脚ブuック,広範囲のST上昇を認めた.胸部X線写真では,心胸郭比63%で,右肺野には炎症像を疑わせる異常陰影が認められた.CPKの上昇はなく,白血球数は正常であった.入院4日目,高度の咳漱,高熱が出現し,右肺野には明らかな炎症像が広範囲に出現した.ドキシサイクリンの投与で,肺炎は約10日で治癒した.心臓の調律は,入院3日目に心房細動に移行したが完全房室ブロックは続いた.入院16日目カウンターショックにて心房細動を洞調律にもどし,この時点ではII度房室ブロックがみられたが,発症約!カ月で正常洞調律に復した.各種ウイルス抗体価の有意な上昇はなく,マイコプラズマ抗体価はペア血清にて8倍の上昇がみられ,臨床所見とも併せて,本例はマイコプラズマ感染にまれな心膜心筋炎が,多彩な不整脈を呈し肺炎に合併して出現したものと考えられた.
著者
松尾 裕幸 柗本 真佑 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1262-1272, 2018-04-15

近年,ソフトウェアの電力消費の削減のため,APIやアルゴリズムなどの実装手段の違いによる電力消費の比較研究がさかんに行われている.しかしながら,我々は,プログラムの実行時間とその総消費電力量との間には,強い相関があるのではないかという仮説をたてた.この仮説が正しければ,電力消費量の削減という問題は,実行時間をいかに短縮させるかという問題に帰着させることができる.本研究では,異なるソーティングアルゴリズム,およびJavaの異なるCollectionsクラスについて,その総消費電力量および実行時間の両方について調査する.実験の結果,両者の間には非常に強い正の相関が存在することが示された.また回帰分析の結果,プログラムの実行時間,単位時間あたりの消費電力量の順に,総消費電力量に与える影響が大きいことが分かった.これらの結果から,電力の計測基盤を用いずとも実行時間が短い実装手段を選ぶことが,プログラム全体の省電力化につながることが示唆された.
著者
金子 栄 各務 竹康 松尾 裕彰 直良 浩司 森田 栄伸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.1250-1257, 2014

【背景・目的】アトピー性皮膚炎は慢性・反復性経過をとる疾患であるために,継続した治療が必要である.併せて患者の生活に配慮した指導が重要である.これまでの医師及び患者に対しての調査からは「外用薬の塗り方の指導」が重要であることが判明した.今回,「外用薬の塗り方の指導」について重要な役割を担う薬剤師に指導についてのアンケート調査を行った.【方法】島根県および広島県の病院および調剤薬局にアンケートを配布し,勤務する薬剤師全員にアンケートを依頼した.アンケートは指定した項目ごとに指導しているものを選択する形式とし,自由記述欄も設けた.【結果】集まった548通(回収率13.8%)を解析した.皮膚科の処方箋を扱わない薬剤師も多く, 1日で取り扱う処方箋枚数の中央値は1枚であった.ステロイド外用薬で最も多く指導している項目は,「塗布部位」(86%)でついで「回数とタイミング」(68%)であった.「副作用が出ないように少量塗布を指導」も45%の人が選択していた.タクロリムス軟膏については副作用の「ヒリヒリ感の説明」が最も多く(52%),ステロイド外用薬と保湿剤にくらべ,「パンフレットにて指導」(27.3%)が多くみられた.「実際に塗って塗り方を指導」は,どの外用薬でも少なかった.自由記述欄での医師への要望は用法用量の確実な記載と外用量指示が多く,失敗談の欄では自身の指導不足や副作用を説明することにより患者が外用しなかったことが挙げられていた.【結語】今回のアンケート調査により,薬剤師は外用薬の用法用量の指導を最も重視していることが明らかとなった.クロス集計からは,アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを知っている薬剤師が有意に様々な指導を行っていることが判明し,まずは薬剤師へのガイドラインの普及が重要と考えられた.
著者
松尾 裕彰
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

昨年度に行った研究で、健常人においてアスピリン以外の非ステロイド性抗炎症薬であるロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクにもアスピリン同様に小麦製品摂取後の血中グリアジン濃度上昇作用があること、および、非ステロイド性抗炎症薬のなかでもシクロオキシゲナーゼ2を選択的に阻害するメロキシカムはその作用がほとんど無いことを明らかにした。本年度は、血中に検出される小麦グリアジンの性状および生物学的活性を明らかにする目的で以下のとおり実施した。健常人3名にアスピリン(1000mg)を投与し、30分後にうどん(小麦粉120g)を摂取させ、試験前及び食後0,15,30,60,120,180分に採血を行った。食後60分の血清から70%エタノールによりグリアジンを抽出し、ゲル濾過HPLC(TSKgel-2000)により解析した結果、分子量約3万をピークトップとするブロードなピークが認められた。すなわち、グリアジンは抗原性を有する高分子の状態で吸収され血液中に存在していることが示唆された。また、血清を直接ゲル濾過により分析すると、分子量3万のピークに加え免疫複合体と推測される分子量10万以上のピークが認められた。次に、血清中に検出されるグリアジンの抗原としての活性を、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者由来好塩基球を用いて評価した。その結果、健常人の血中に存在するグリアジンは好塩基球からのヒスタミンを遊離する活性をもつことが明らかとなった。さらに、小麦依存性運動誘発アナフィラキシー患者の小麦負荷試験時の血中に存在するグリアジンは、同様に好塩基球からのヒスタミン遊離活性を有することが示された。以上の結果は、非ステロイド抗炎症薬の服用が食物抗原の吸収を促進することを示唆するものである。従って、非ステロイド抗炎症薬の服用は食物アレルギーの症状誘発やアレルゲンへの感作段階における危険因子であると考えられた。